Element Magic Trinity
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潜入せよ!エバルー屋敷
フィオーレ王国東方、マグノリアの街。
人口6万人、古くから魔法も盛んな商業都市。
街に聳え立つ協会『カルディア大聖堂』を抜けると、そこにはこの街唯一の魔導士ギルド、妖精の尻尾が見えてくる。
「いいトコ見つかったなぁ」
街の中のとある建物の一室、そこに住む事になったルーシィはただ今入浴中。
ぐぅーっと腕を伸ばし、ご機嫌だ。
「7万にしては間取りも広いし収納スペース多いし、真っ白な壁、木の香り、ちょっとレトロな暖炉に、竈までついてる!そして何より1番素敵なのは・・・」
バスタオルを体に巻き、キラキラ輝くオーラを纏ったルーシィが扉を開ける。
するとそこには・・・。
「よっ」
「邪魔してるぜ」
「あたしの部屋ーーーーーーーーーーーーっ!」
遠慮なしにお菓子を食い荒らしているナツと魚を齧るハッピー、ルーシィの本を勝手に読むアルカがいた。
「なんであんた達がいるのよー!」
「まわっ」
そう叫びながらルーシィはナツとハッピーに回し蹴りをお見舞いし、2人は壁に勢いよく打ちつけられる。
アルカはひょいっと避け、先ほどまでナツが座っていたソファで読書を続けた。
我関せず、とはこの事だろう。
「だってミラから家決まったって聞いたから・・・」
「聞いたから何!?勝手に入ってきていい訳!?親しき仲にも礼儀ありって言葉知らないの!?アンタ達がした事は不法侵入!犯罪よ!モラルの欠如もいいトコだわ!」
「おい・・・そりゃあ傷つくぞ・・・」
「傷ついてんのはあたしの方よー!」
「まぁ落ち着けよ」
「落ち着ける訳ないじゃありませんかー!っていうか、どうしてアルカさんまで!?」
「ナツに誘われたから」
さらっと言ってのける。
そのあまりのさらっとさに、ルーシィは何も言えなくなった。
「いい部屋だね」
「爪とぐなっ!ネコ科動物!」
「ん?何だコレ」
「!」
机の上に置かれた紙の束にナツが手を伸ばす。
「ダメェーーーーーーーっ!」
それを見たルーシィは目にも止まらぬ速さでナツの手から紙束を奪い取った。
なぜか顔を赤くして震えている。
「なんか気になるな。何だソレ」
「何でもいいでしょ!てか、もう帰ってよーっ!」
「やだよ。遊びに来たんだし」
「超勝手!」
「つかルーシィ、まともな服着ろよ」
「あい!」
騒ぐだけ騒ぎ終えたルーシィは、とりあえず紅茶を出す。
「まだ引っ越して来たばっかりで家具もそろってないのよ。遊ぶモンなんか何もないんだから、紅茶飲んだら帰ってよね」
「残忍な奴だな」
「あい」
「いや、紅茶出してもらっただけありがたく思おうぜ」
アルカの御尤もな意見はスルーされた。
「あ、そうだ!ルーシィの持ってる鍵の奴等、全部見せてくれよ」
「いやよ!凄く魔力を消耗するじゃない。それに鍵の奴等じゃなくて星霊よ」
「ルーシィは何人の星霊と契約してるの?」
「6体。星霊は1体2体って数えるの」
「ほー。そういやルーが『鍵から牛が出た』って言ってたな」
ルーシィはまず、3本の鍵を取り出す。
「こっちの銀色の鍵がお店で売ってるやつ。時計座のホロロギウム、南十字座のクルックス、琴座のリラ」
次にもう3本、鍵を取り出す。
「こっちの金色の鍵は黄道十二門っていう門を開ける超レアなカギ。金牛宮のタウロス、宝瓶宮のアクエリアス、巨蟹宮のキャンサー」
「巨蟹宮!カニかっ!?」
「カニー!」
「うわー・・・また訳解んないトコに食いついてきたし」
「星霊魔法・・・」
蟹、という事に食いつく2人とは逆に、アルカはまじまじと鍵を見つめている。
「どうかしたんですか?」
「あ、いや・・・」
「そっか。アルカのお姉さんは・・・」
「ハッピー、それ以上言うな」
「?アルカさんのお姉さん?」
「気にすんな」
笑ってそう答えるアルカをルーシィは黙って見つめる。
「そういえばハルジオンで買った小犬座のニコラ、契約するのまだだったわ。丁度良かった!星霊魔導士が星霊と契約するまでの流れを見せてあげる」
「おおっ!」
「血判とか押すのかな?」
「痛そうだな、ケツ」
「なぜお尻・・・」
ナツとハッピーの会話に呆れながら、ルーシィは鍵を構える。
「我・・・星霊界との道を繋ぐ者。汝・・・その呼びかけに応え門をくぐれ」
キィィィン・・・と鍵が輝き始める。
鍵の先に現れた鍵穴が徐々に大きくなっていった。
「開け、小犬座の扉。ニコラ!」
輝きが増す。
ばふっと音を立てて出てきたのは・・・。
「プーン!」
真っ白な身体にオレンジ色の角のような鼻、二足歩行の犬とは言いにくい生物だった。
「「ニコラーーーーー!」」
「アイツのとは違うな・・・」
予想外のニコラの姿に驚くナツとハッピー、アルカは1人何かを呟いていた。
「ど、どんまい!」
「失敗じゃないわよーーーーーー!」
まぁ、失敗だと思ってもおかしくはない。
ナツにツッコみを入れると、ルーシィはプルーを抱きしめた。
「ああん、かわい~♪」
「プーン」
「そ、そうか?」
「ニコラの門はあまり魔力を使わないし、愛玩星霊として人気なのよ」
「ナツ~、アルカ~、人間のエゴが見えるよ~」
「うむ」
「面白れぇからいいんじゃね?」
ナツは顔を顰め、アルカはいつも通りのテンションで答える。
「じゃ、契約に移るわよ」
「ププーン」
ルーシィはメモを取り出し、ニコラは了解と言うようにさっと左手を上げる。
「月曜は?」
「プゥ~ゥ~ン」
無理、とでもいうようにニコラはふるふると首を横に振る。
「火曜」
「プン」
今度はこくんと頷いた。
「水曜」
「ププーン!」
「木曜も呼んでいいのね♪」
「地味だな」
「あい」
「見飽きたな」
そうこう言ってる間に、契約は終わったようだ。
「はいっ!契約完了!」
「ププーン!」
「随分簡単なんだね」
「確かに見た目はそうだけど大切な事なのよ。星霊魔導士は契約・・・すなわち約束事を重要視するの。だからあたしは絶対約束だけは破らない・・・ってね」
「へぇ~」
「立派だな」
アルカが感心した声を出す。
「そうだ!名前決めてあげないとな」
「ニコラじゃないの?」
「それは総称でしょ」
そう言ってルーシィは少しの間悩むと、思いついたようにポンと手を叩く。
「おいで!プルー」
「プーン!」
「プルぅ?」
「なんか語感が可愛いでしょ。ね、プルー」
「プーン」
「プルーは小犬座なのにワンワン鳴かないんだ、変なの~」
「プーン」
「アンタもにゃーにゃー言わないじゃない」
すると突然プルーが踊り出した。
つたたたっと歩き、しゃかしゃかしゃかしゃかっと腕を振り、まるっと手で丸を作る。
「な、何かしら・・・」
「さぁ?」
「プルー!お前いい事言うなぁっ!」
「なんか伝わってるし!」
ルーシィとアルカが首を傾げる中、ナツだけには伝わったようだ。
「星霊かぁ・・・確かに雪山じゃ牛に助けてもらったなぁ」
「そうよっ!アンタはもっと星霊に対して敬意を払いなさい」
「あん時はルーシィがついて来るとは思わなかった。けど・・・結果ルーシィがいなかったらヤバかったって事だよなぁ。よーく考えたらお前変な奴だけど頼れるしいい奴だ」
まさかのナツに「変な奴」と言われ軽くへこむルーシィ。
「そっか・・・」
「な、何よ?」
「ナツ、どうしたの?」
「よし決めた!プルーの提案に賛成だ!」
そう言って立ち上がると、ルーシィに満面の笑みを見せる。
「俺達でチームを組もう!」
「チーム?」
「あい!ギルドのメンバーはみんな仲間だけど、特に仲のいい人同士が集まってチームを結成するんだよ」
「1人じゃ難しいクエストもチームでやれば楽になるしな」
「いいわねそれっ!面白そう!」
「おおおしっ!決定だーっ!」
「契約成立ね!」
「あいさーっ!」
「プーン!」
チーム結成を喜ぶ3人。
「おめでとさん」
「あれ?アルカさんは入らないんですか?」
「オレはもうルーとチーム組んでるからな」
「そういえば今日、ルーいないね」
「どーしたんだ?」
「あー・・・実はアイツ、病欠で」
「「「えっ!?」」」
困ったように笑うアルカの言葉に3人は驚く。
あの空気クラッシャーで元気の塊のようなルーが病欠とは・・・病気とは無縁そうな男だというのに。
「な、何の病気!?」
「元気になるんだろうなっ!?」
「病院には行ったの!?」
「いや、それが・・・」
アルカは言いにくそうに口を開けたり閉めたりを繰り返し、ようやく声を出した。
「食い過ぎちまって、腹痛で・・・」
その瞬間3人は黙った。
(あぁ・・・)
(ルーらしいな)
(あい)
声には出さず、3人はそれぞれ思う。
空気を変えるようにナツが1枚の依頼書を出した。
「さっそく仕事行くぞ!ほら、もう決めてあるんだ!今回はアルカも手伝ってくれ!」
「いいぞ。ミラとのデートの予定もねぇし、ルーがいねぇと仕事もしにくいしな」
早速ルーシィとアルカは依頼書を見る。
「シロツメの街かぁ・・・聞いた事ある様なない様な」
「ここって確かティアが盗賊団半殺しにした街だったはずだ」
「うっそ!エバルー公爵って人の屋敷から一冊の本を取って来るだけで・・・20万J!?」
「な!オイシー仕事だろ」
「確かにな・・・ん?注意事項・・・」
アルカがルーシィの手から依頼書を取り、注意事項を読み上げる。
「とにかく女好きでスケベで変態!ただいま金髪のメイドさん募集中・・・」
「は!?」
それを聞いたルーシィは油が切れたロボットのようにギギギ・・・と振り返る。
「ルーシィ、金髪だもんな」
「メイドの格好で忍び込んでもらおーよ」
「あんた達最初から・・・ハメられたーーーーっ!」
「星霊魔導士は契約を大切にしてるのかぁ。偉いなぁ」
「ひでぇーーーっ!」
そりゃそう言いたくもなるだろう。
そう泣き叫んでいたルーシィだったが、ふと何かを思いついたように振り返った。
「そうだ!ティアさんに頼めばいいじゃない。アンタ達、仲いいんじゃないの?」
ルーシィの提案に、3人は顔を青くして震えあがる。
ハッピーは元々青いが。
「おいおい・・・何言ってんだよルーシィ」
「ティアは今仕事中でいないんだよ・・・」
「いたとしても頼める訳ねぇだろ・・・金髪じゃねぇし、んな事頼んだら・・・」
「頼んだら・・・!?」
そのあまりの気迫に、ごくっと唾を呑み込むルーシィ。
「全治10年くらいの怪我!」
「それで治まるわけねぇだろ、確実に殺される」
「そこまではいかないよ、半殺しじゃない?」
「ど、どれでも怖いわよっ・・・!」
とにかく『ティア』には要注意という事を学んだルーシィだった。
一方、ギルドでは。
「あれ?エバルー屋敷の一冊20万Jの仕事・・・誰かにとられちゃった?」
「えぇ・・・ナツがルーシィとアルカを誘って行くって」
「あーあ・・・迷ってたのになぁ・・・」
残念そうにそう呟くのはギルドのチームの1つ『シャドウ・ギア』の『レビィ』。
その後ろにいるのはチームメイトの『ジェット』と『ドロイ』。
「レビィ・・・行かなくて良かったかもしれんぞい。その仕事・・・ちと面倒な事になってきた。たった今依頼主から連絡があってのう」
「キャンセルですか?」
「いや・・・報酬を200万Jにつり上げる・・・だそうじゃ」
その言葉にギルドの面々が一気に驚愕し、ざわつく。
「10倍!?」
「本1冊で200万だと!?」
「な・・・何故そんな、急に・・・」
「討伐系の報酬並みじゃねぇか・・・一体、どうなってんだよ・・・」
「ちィ・・・おしい仕事のがしたな」
ざわざわとギルド内がざわつく中、カウンターに座って煙草を吸っていたグレイがにやりと笑う。
「面白そうな事に・・・なってきたな」
「言ってみれば、随分と簡単な仕事よねー」
シロツメ行きの馬車の中、ルーシィが口を開いた。
「あれ?嫌がってた割には結構乗り気?」
「トーゼン!何てったってあたしの初仕事だからね!ビシッと決めるわよ!」
ぐっとガッツポーズをとるルーシィ。
「要は屋敷に潜入して本を一冊持ってくればいいだけでしょ?」
「スケベオヤジの屋敷にな」
「そう。スケベオヤジ。こー見えて、色気にはちょっと自信あるのよ。うふん♪」
「ネコにはちょっと判断できないです」
「ミラの方が色気スゲーぞ」
お色気作戦で1000Jしか値切れなかったのはどこの誰だっただろうか・・・。
「言っとくけどこの仕事・・・アンタ等やる事ないんだから、報酬の取り分7・1・1・1だからね」
「ルーシィ1でいいの?」
「んじゃあオレが7な」
「あたしが7よ!」
今回の依頼は金髪のルーシィが活躍するであろう。
その為ルーシィは報酬の取り分を自分が多くなるように決めたのだが、ハッピーとアルカには違う聞こえ方をしたようだ。
「ちょ、ちょっと待て・・・オレ達、もやる事・・・ある・・・」
「何よ」
馬車移動の為酔っているナツが口を開いた。
「捕まったら助けてやる」
「そんなミスしません」
「って言ってる奴が絶対捕まるんだよな」
「魚釣りでもね、エサは無駄になる事多いんだよ」
「あたしはエサかいっ!」
「着いた!」
「馬車には二度と乗らん・・・」
「いつも言ってるよ」
その頃、ナツ達4人はシロツメの街にいた。
「とりあえず腹減ったな。メシにしよ、メシ!」
「ホテルは?荷物置いてこよーよ」
「腹が減っては戦は出来ぬ、だろ?」
「あたしおナカ空いてないんだけどぉ~、アンタ自分の「火」食べれば?」
「とんでもねぇ事言うなぁ。お前は自分の「プルー」や「牛」食うのか?」
「食べる訳ないじゃない!」
「それと同じだよ」
「ナツは自分の火を食う事は出来ねぇんだ」
「めんどくさー」
アルカの説明を聞いたルーシィが呆れたように呟く。
「そうだ!あたし、ちょっとこの街見てくる。食事は3人でどーぞ」
ここでルーシィは別行動をとる。
「なんだよ・・・皆で食った方が楽しいのに」
「あい」
「腹減ってないのに無理に食ったら、美味いモンも美味くなくなるだろ」
その後、ホテルに荷物を預けた3人はとあるレストランにいた。
「脂っこいのはルーシィにとっておこっか」
「脂っこいの好きそうだもんね」
「おおっ!これスゲェ脂っこい!」
「2人とも、もっと味わえよ。それに女ってのは甘いモンが好きだって知らねぇのか?」
凄い勢いで骨付き肉や寿司を頬張るナツとハッピーを、シーフードトマトパスタをくるくるとフォークに巻きながらアルカが注意する。
「あ・・・あたしがいつ脂好きになったのよ・・・もう・・・」
「お!ルー・・・シィ?」
「用事は終わった・・・の・・・か?」
ナツとアルカは同時に言葉を詰まらせた。
理由は1つ、そこにルーシィが立っていたから。
「結局あたしって、何着ても似合っちゃうのよねぇ」
・・・メイド服姿で。
金髪をツインテールにし、白いエプロンやヘッドドレスなど・・・頭のてっぺんから足の先までメイドである。
その姿を見て呆然とする3人。ナツとハッピーは口から食べ物を落とし、アルカは持っていたフォークをカラン、とテーブルに落とした。
「お食事はお済みですか?ご主人様。まだでしたらごゆっくり召し上がってくださいね♪」
すっかりメイドになりきってルーシィが言うが、ナツとハッピーとアルカは顔を見合わせひそひそと話し始める。
「ど~しよぉ~!冗談で言ったのに本気にしてるよ~!メイド作戦」
「今更冗談とは言えねぇしな。こ・・・これで行くか」
「上手くいく気がしねぇよ・・・」
「聞こえてますがっ!」
一悶着終えた4人は、ドでかい屋敷の前にいた。
「立派な屋敷ね~、ここがエバルー公爵の・・・」
「いいえ、依頼主の方です」
「クエストについて詳しく聞かねぇとな」
「そっか・・・本一冊に20万Jも出す人だもんね。お金持ちなんだぁ」
そんな会話をしている間にも、ナツは扉をノックしていた。
「どちら様で?」
「魔導士ギルド、フェアリー・・・」
「!しっ!静かに!すみません・・・裏口から入っていただけますか?」
「先ほどはとんだ失礼を・・・私が依頼主のカービィ・メロンです。こっちは私の妻」
「美味そうな名前だな」
「メロン!」
「ちょっと!失礼よ!」
「すんません、こいつ等が失礼を・・・」
「あはは!よく言われるんですよ」
ナツとハッピーの失礼すぎる発言をルーシィが注意しアルカがカービィに謝罪するが、本人は気にしていないようだ。
「まさか噂に名高い妖精の尻尾の魔導士さんがこの仕事を引き受けてくれるなんて・・・」
「そっか?こんなうめぇ仕事、よく今まで残ってたなぁって思うけどな」
「しかもこんなお若いのに。さぞ有名な魔導士さんなんでしょうな」
「ナツは火竜って呼ばれてるんだ」
「オレは、別に有名なんかじゃ・・・」
「おお!その字なら耳にしたことが」
そんな会話を終えると、カービィがゆっくり口を開く。
「仕事の話をしましょう」
その言葉に全員が気を引き締める。
「私が依頼したい事はただ1つ。エバルー公爵の持つこの世に一冊しかない本『日の出』の破棄又は消失です」
「盗って来るんじゃねぇのか?」
「実質上他人の所有物を無断で破棄する訳ですから、盗るのと変わりませんがね・・・」
「驚いたぁ・・・あたし、てっきり奪われた本かなんかを取り返してくれって感じの話かと」
「だが、20万払ってまで消したい本なんて・・・カービィさんにとって、その本は何なんですか?」
アルカの疑問にカービィは黙り込む。
そんな姿をアルカは鋭い目で見ていた。
「どーでもいいじゃねぇか。20万だぞ、20万!」
「いいえ・・・200万Jお支払いします。成功報酬は200万Jです」
「はぁっ!?」
「にっ!?」
「ひゃ!」
「くぅ!?」
その言葉を聞いて、上からアルカ、ルーシィ、ハッピー、ナツが驚く。
「なんじゃそりゃあああああっ!」
「おやおや・・・値上がったのを知らずにおいででしたか」
「200万!?ちょっと待て!4等分すると・・・うおおおっ!計算できん!」
「簡単です。オイラが100万、ナツが100万、残りはルーシィとアルカです」
「残らないわよっ!」
「お前らなぁ・・・1人50万Jだろ」
はぁ、と溜息をつくと、アルカはカービィに向き合う。
「だが、どうして突然値を上げたんですか?20万でさえつり合わないのに、10倍なんて・・・」
「それだけどうしてもあの本を破棄したいのです。私はあの本の存在が許せない」
意味深なカービィの発言に、アルカは眉を顰める。
すると、隣にいたナツの顔が燃え上がった。
「おおおおおっ!行くぞルーシィ!燃えてきたぁ!」
「ちょ・・・ちょっとォ!」
ナツはルーシィとハッピーを連れ、屋敷を出て行った。
「ったくよぉ・・・」
アルカも溜息をついて3人を追う。
広間にはカービィ夫妻が残った。
「あなた・・・本当にあんな子供たちに任せて大丈夫なんですか?先週、同じ依頼を別のギルドが一回失敗しています。エバルー公爵からしてみれば、未遂とはいえ自分の屋敷に賊に入られた事になります。警備の強化は当然です。今は屋敷にはいる事すら難しくなっているんですよ」
「解っている・・・解って・・・いるが・・・あの本だけは・・・この世から消し去らねばならないのだ」
その重たい言葉を、アルカは聞いていた。
屋敷を出ていくフリをして、扉の陰に隠れていたのだ。
「ほぅ・・・そういう事か」
「失礼しまぁす♪金髪のメイドさん募集を見てきましたぁ♪」
ここはエバルー公爵邸。
「すみませーん、誰かいませんかぁ」
メイド姿のルーシィは、ドでかい門に向かって声を上げていた。
(ふふ・・・簡単簡単。エバルー公爵ってのに気にいられればいいんでしょ?あとは本を燃やして200万!何買おーかな・・・)
「うまくやれよルーシィ」
「頑張れ~!」
そんなルーシィを近くの木の陰から見ているナツとハッピー。
すると、突然地面がボコッと盛り上がり、ズシィンとドでかい門にも負けないほどの大きさの女が出てきた。
「メイド募集?」
「うほっ」
「御主人様!募集広告を見てきたそうですが」
「うむぅ」
メイド姿の大女は、自分が出てきた穴に向かってそう声を掛ける。
するとそこから今度は男が1人。
「ボヨヨヨヨーン、我輩を呼んだかね」
コイツが日の出の所有者『エバルー公爵』。
エバルーはすぐさまルーシィに目を向ける。
「どれどれ」
「よろしくお願いしまぁす♪」
にこっと愛想笑いを振りまくルーシィ。
エバルーの目はまずルーシィの胸に、続いて足・・・というか太ももに向かった。
(と・・・鳥肌が・・・頑張れあたし!)
これも200万の為!とルーシィは耐える。
そして結果は・・・。
「いらん!帰れ『ブス』」
「ブ・・・」
ダメだった。
まさかのブスとまで言われている。
「そーゆー事よ、帰んなさいブス」
「え・・・!?ちょ・・・」
「我輩の様な偉ーーーーーーーーーーい男には・・・」
自分で言ってる時点で全く偉くないと思うが。
そして4つの人影が地面から飛び出す。
「美しい娘しか似合わんのだよ。ボヨヨヨ・・・」
そこにいる4人の「美しい娘」は・・・。
「まぁ、御主人様ったら♪」
「お上手なんだからぁ」
「うふ~ん」
「ブスは帰んな!しっしっ!」
とてつもなくセンスの悪い、はっきり言えばルーシィよりブスな4人だった。
「あちゃーーーっ!」
「使えねぇな」
「違うのよ!エバルーって奴、美的感覚がちょっと特殊なの!アンタも見たでしょ!?メイドゴリラ!」
「言い訳だ」
「キィーーー!くやしーーーー!」
ルーシィは悔し涙を流しながら叫ぶ。
「・・・は?」
と、そこにアルカがやってきた。
「あっ、遅ぇぞアルカ」
「悪いな・・・で、何でルーシィは泣いてんだ?」
「あい。メイド作戦が大失敗したんです」
「あー・・・なるなる」
何が起こったのかは知らないが、ルーシィが泣く程の何かがあった事は悟ったアルカだった。
「こうなったら作戦Tに変更だ!」
「突撃ー!」
「あのオヤジ、絶対許さん!・・・てゆーかそれ、作戦なの?」
「面白そうじゃねぇか、ククク・・・」
所変わって、ここはエバルー屋敷。
「性懲りもなくまた魔導士が来おったわい。しかもあのマーク、今度は妖精の尻尾か。隠さんトコもマヌケだが、どーせなら美人を連れて来いっての」
葉巻を吸いながらそう言うのは、エバルー公爵。
その後ろには2人の大柄な人がいた。
「さーて・・・今度の魔導士はどうやって殺しちゃおうかね。ボヨヨヨヨヨヨ!」
後書き
こんにちは、緋色の空です。
ここで相談なのですが、私の書く文章は基本下のように・・・
【例】
どんっとナツは尻餅をついた。
こんな感じですが、擬音を地の文として使う下のような・・・。
【例】
どんっ!
ナツは尻餅をついた。
どっちの方がいいですか?
なんか私は擬音を地の文として書くのは避けてしまうのですが・・・。
どっちの方が読みやすいんですか?
感想・批評、お待ちしてます。
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