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Element Magic Trinity

作者:緋色の空
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DEAR KABY


「羽・・・まだ消えないわよね」
「あい」
「っと」
「とーちゃくです」
「ありがとね、ハッピー」

ここはエバルー屋敷の屋上。
ルーシィの金髪メイド作戦が失敗したため、作戦Tに変更になったのだ。
作戦T・・・作戦突撃。正面突破という訳なのだが・・・。

「何でこんなコソコソ入らなきゃいけねぇんだ?」
「決まってるじゃない!依頼とはいえ泥棒みたいなモンなんだから」
「作戦Tってのはな、突撃のTだ」
「正面玄関から入って邪魔な奴は全員ぶっ飛ばす」
「ダーメ!」
「で・・・本を燃やす」
「ついでにあのエバルーって奴をティアに渡して半殺しにしてもらうか」
「だからそれじゃダメなの!ってか、ティアさんは関係ないんだからちょくちょく出してこない!」

ルーシィが正面突破はダメだと言い張るのだ。
それじゃあ作戦Tとは言えない。

「あんた等が今まで盗賊退治やら怪物退治やらいくつの仕事してきたのか知らないけどね。今回のターゲットは街の有力者!ムカつく変態オヤジでも悪党じゃないのよ。ヘタな事したら軍が動くわ」
「ならこっちは評議員動かしてやらぁ。ティアならそんくれぇ容易い」
「動くわけないでしょっ!」
「絶対動くさ」
「何だよ。お前だって『許さん!』とか言ってたじゃん」
「ええ!許さないわよ!あんな事言われたし!だから本を燃やすついでにアイツの靴とか隠してやるのよっ!」
「うわ・・・小っさ・・・」
「あい」
「隠すんじゃなくて燃やしちまえよ。ついでにティアに頼んで半殺しだ」
「ティアさんって半殺し好きなのね・・・」

呆れたようにルーシィが呟く。

「違うぞ。ティアは相手に3つの選択肢を与えるんだよ。『評議員に捕まる』か『視界から消える』か『半殺しにされる』か」
「それもどうなのかしら・・・」

そんな会話をしている間にもナツが窓を少し溶かし、鍵を開ける。
開いた窓から侵入すると、そこには色々なものが置かれていた。

「ここは物置か何かかしら?」
「埃っぽいな・・・」
「ナツ、見て~」
「お!似合うぞ、ハッピー」
「そこの扉から出れそうね。行きましょ!慎重にね」
「ねぇ、ルーシィもアルカも見て~」
「うるさい!ネコ」
「ナツ、それビックリ箱か?」

髑髏を被るハッピーとそれを見て笑っているナツ、ナツの開けたビックリ箱を指さすアルカを先導しながらルーシィが扉を指さした。
少し扉を開け、きょろきょろとハッピーが顔を覗かせる。

「誰もいないよ」
「それ、とりなさいよ。気味悪いから」
「おいルーシィ、まさかこうやって1個1個部屋の中探してくつもりなのか?」
「トーゼン!」
「誰かとっ捕まえて本の場所聞いた方が早くね?」
「俺もそう思う」
「あい」
「見つからない様に任務を遂行するのよ。忍者みたいでカッコいいでしょ?」
「に、忍者かぁ・・・」
「俺、忍者に興味ねぇけど」

忍者、と聞いて若干嬉しそうな顔をするナツと、忍者には興味ない、と軽く眉を顰めるアルカ。
すると地鳴りのような音が響き、床が盛り上がった。

「侵入者発見!」

床から飛び出してきたのはピンク色の髪のメイドゴリラに、美人とは程遠いルックスのメイド達だった。手にはそれぞれ槍のようなものを持っている。

「うほぉおおぉおおおおっ!」
「見つかったぁーっ!」
「ハイジョ、シマス」

メイドゴリラの目が光る。
ナツが構えた、その時。

大火鎖乱(レオチェーン)!」

メイド達の足元に深紅の魔法陣が展開し、一気に炎の鎖が出現する。
鎖はメイド達を絡め取り、一瞬で縛り上げた。

(バースト)!」

魔法陣が光る。
それと同時に鎖が光を放ち、爆発した。
鎖はメイドも巻き込んで爆発し、メイドは吹っ飛んだ。

「こんなモンか?」
「アルカ!」
「助かったでござるよ、にんにん」
「にんにん」

忍者になりきっているのか、顔を隠すようにマフラーを巻くナツ。

「今のって・・・」
「俺の魔法、大火(レオ)。炎を操る魔法だ」
「とにかく一度隠れましょう!どっかの部屋に入るの!」
「来るなら来いでござる!」
「いーから隠れっぞ、ナツ」

そう言ってルーシィがナツを引っ張りながら近くの部屋に入る。

「ふぅー、危なかったぁ」
「うおおっ!スゲェ数の本でござる!」
「あい!でござる」

2人の言う通り、部屋の壁には本、本、本。
かなりの量の本があった。

「エバルー公爵って頭悪そうな顔してるわりには蔵書家なのね」
「探すぞーっ!」
「あいさー!」
「全部読むのに何年かかるんだろうな・・・ルーなら一生かかっても読みきれねぇよ。アイツ、活字に弱いから」
「これ・・・全部読んでるとしたらちょっと感心しちゃうわね」
「うほっ!エロいのみっけ!」
「魚図鑑だ!」
「お前ら、真面目に探せよ」
「はぁ~、こんな中から1冊を見つけんのはしんどそぉ」
「何だコレ!字ばっかだな」
「ナツ・・・普通はそうだよ」
「こーゆー時はここにある本全部一気に燃やせばいいんじゃねぇか?」
「ダメに決まってますよ!」

真面目に探す気のなさそうなナツとハッピーに、本人は至って真面目なんだろうけど真面目に見えないアルカ。唯一真面目なルーシィは溜息をつく。

「おおおっ!金色の本、発っけーん!」
「ウパー!」
「あんた等真面目に探しなさいよ!」
「・・・ん?待てナツ、その本のタイトル・・・」

アルカがナツの手から本を奪い取り、タイトルを読み上げる。

日の出(デイ・ブレイク)!」
「見つかったーっ!」
「こんなにあっさり見つかっちゃっていい訳!?」
「おおっ!」

お目当ての本が見つかった事に喜ぶ4人。

「さて、燃やすか」
「簡単だったね!」

手に炎を灯して燃やそうとするナツの手から、また本を奪い取るアルカ。

「何すんだよ、アルカ」
「悪いけどこれは燃やす訳にはいかねぇ」
「でも燃やすのが仕事だぞ」
「あのなぁっ・・・!これはケム・ザレオンが書いた文化遺産で・・・」
「ケム・ザレオン!?」

アルカの口から飛び出た名前にルーシィが反応する。

「あたし大ファンなのよー!うっそぉ!?ケム・ザレオンの作品、全部読んだはずなのにー!未発表作って事!?」
「らしいな。俺もケム・ザレオンの作品は全部読んだがそんな本見た事ねぇ」
「いいから早く燃やそうぜ」
「だから!ダメだっつってんだろーが!この本には・・・」

アルカが何かを言いかけた、その時だった。

「なるほどなるほど、ボヨヨヨヨヨ・・・貴様等の目的は日の出(デイ・ブレイク)だったのか。泳がせておいて正解だった!我輩って賢いのう。ボヨヨヨヨ」

床を突き破り登場したのは、この屋敷の主エバルー。

「ホラ・・・もたもたしてっから!」
「ご、ゴメン・・・」
(この屋敷の床ってどうなってんだろ)

まぁ、ハッピーの疑問も解る。
アルカはエバルーを真っ直ぐに睨みつけていた。

「フン・・・魔導士どもが何を躍起になって探してるかと思えば・・・そんなくだらん本だったとはねぇ」
「くだらん本?」

依頼主が200万も出して破棄したい本を、所有者までもがくだらないと言うとは・・・。

「も、もしかしてこの本、貰ってもいいのかしら?」
「いやだね。どんなにくだらん本でも我輩の物は我輩の物」
「ケチ」
「うるさい、ブス」

低レベルな言い争いをするルーシィとエバルー。

「燃やしちまえばこっちのモンだ」
「ダメ!絶対ダメ!」
「ルーシィ!仕事だぞ!」
「じゃ、せめて読ませて!」
「「「「ここでか!?」」」」

予想外すぎるルーシィの言葉に全員がツッコむ。

「ええい!気にくわん!偉ーい我輩の本に手を出すとは!来い!バニッシュブラザーズ!」

エバルーが叫ぶと、背後の本棚が音を立てて開く。
なぜか本棚の横には「隠し扉」「御開帳」の文字。
そこから現れたのは2人組の男だった。

「やっと仕事(ビジネス)時間(タイム)か」
「仕事もしねぇで金だけもらってちゃあ、ママに叱られちまうぜ」
「グットアフタヌーン」
「こんなガキ共があの妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士かい?そりゃママも驚くぜ」

そう言う2人の男の腕には、狼のような紋章が付いていた。

「あの紋章・・・傭兵ギルド、南の狼か」
「こんな奴等雇ってたのか!?」
「ボヨヨヨ!南の狼は常に空腹なのだ!覚悟しろよ」

エバルーが言うと同時に睨み合う。
・・・その中で1人、本を読み耽るルーシィ。

「「「「「「おい!」」」」」」

当然全員ツッコむ。

「何とふざけた奴等だ」
「これが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士か・・・」
「バニッシュブラザーズよ!あの本を奪い返せ!そして殺してしまえっ!」
「これ・・・」

すると、本を読んでいたルーシィが少し震えたような声を出す。
そしてさっき入ってきた扉まで走っていった。

「ナツ!少し時間をちょうだい!この本には、何か秘密があるみたいなの!」
「は?」
「秘密!?」
「ルーシィ!どこ行くんだよ!」
「どっかで読ませて!」
「はぁ!?」

早口にそう言うと、ルーシィは部屋を出て行った。
何を考えているのか、エバルーの目が輝く。

「作戦変更じゃ!あの娘は我輩が自ら捕まえる!バニッシュブラザーズよ!その小僧共を消しておけ!」

そう言うとエバルーは頭から床に潜っていった。

「やれやれ。身勝手な依頼主は疲れるな」
「まったくだ」
「めんどくせぇ事になってきたなぁ。ハッピーとアルカはルーシィを追ってくれ」
「加勢は必要ねぇか?」
「あぁ、1人で十分だ」
「あ?テメェ!ママに言いつけんぞ!」
「落ち着け。クールダウンだ」

自信満々にそう言うナツを見つめ、2人は頷き合う。

「任せたぞ、ナツ!」
「ナツ!気を付けてねー!」
「おー!ルーシィ頼むぞーっ!」

そう言ってアルカとハッピーはその場を後にし、ルーシィを追いかけて行った。

来い(カモン)!『火』の魔導士」
「ん?何で火って知ってんだ?」
「フフフ。全ては『監視水晶』にて見ていたのだよ」

監視水晶とは、名前の通り監視する水晶だ。

「あの娘は鍵・・・所持(ホルダー)系星霊魔導士だな。契約数は7。空を飛んだ猫は疑うまでもなく能力(アビリティ)系『(エーラ)』。もう1人の男は自分で言っていたし、元素魔法(エレメントマジック)大火(レオ)の使い手」
「そして貴様はガラスを溶かし、足に火を纏った・・・能力(アビリティ)系の火の魔導士と見て、まず違いないだろう」
「よく見てんなぁ・・・」

ナツは感嘆に似た声を発し、右拳に炎を纏う。

「じゃあ覚悟は出来てるって事だな!?黒コゲになる」
「残念ながら出来てないと言っておこう。なぜなら」

そう言いながら、バニッシュブラザーズの兄が背負っていた巨大フライパンを手に取った。

「火の魔導士は(ミー)が最も得意とする相手だからな」
「ふーん」

ナツは面白くないと言いたげに呟く。

「どうやら妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士は、自分達こそが最強か何かと勘違いしているらしい」
「まぁ確かに噂はいろいろ聞く。魔導士ギルドのしての地位は認めよう」
「・・・が、所詮魔導士」
「戦いのプロ、傭兵には敵わない」
「だったら早くかかって来い。2人一緒でいいぞ」

ナツは右手の指に『COME ON』の文字を炎で造る。

「兄ちゃん・・・マジでコイツナメてるよ・・・」
「相手が(ミー)の得意な火の魔導士とあっては、簡単(イージー)仕事(ビジネス)になりそうだな」

言うが早いが、バニッシュブラザーズは攻撃を仕掛ける。

「とう!」
「おっと」

兄がナツに向かって巨大フライパンを振り下ろすが、ナツはいとも簡単に避ける。
だが、空中という身動きの取れない場所で弟に服を掴まれた。

「うおおおおおおおおおおお・・・!」

ナツ達がいた部屋の壁をぶち抜け、廊下の柵に手をかける。
直後、そこに巨大フライパンが振り下ろされ、ナツはすぐさま屋敷1階の大広間に着地した。

「雇い主ん家そんなにぶっ壊していいのか?」

砂煙の中から姿を現した2人は、ナツの問いに答えずに口を開く。

貴様(ユー)は魔導士の弱点を知っているかね?」
「の、乗り物に弱い事か!?」
「よ、よく解らんが、それは個人的な事では?」

何で知ってんだ!?と言いたげな表情のナツ。

「肉体だ」
「肉、体!?」

その言葉にナツの頭にマッスルな男2人が浮かんだのは余談だ。

「魔法とは知力と精神力を鍛錬せねば身につかぬもの。結果・・・魔法を得るには肉体の鍛錬を不足する。すなわち・・・日々体を鍛えてる我々には、『力』も『スピード』も遠く及ばない」

「会話しながらナツに攻撃をする」という何とも器用な事をやってのける2人。
話すか攻撃するか、どちらかにしてほしいものだ。

「昔・・・こんな魔導士がいた。相手の骨を砕く『呪いの魔法』を何年もかけて習得した魔導士だ。俺達はその魔導士と向かいあった。そして奴が呪いをかけるより早く・・・一撃だ。逆に骨を砕いてやった。奴の何年もの努力はたったの一撃で崩れ落ちた」
「それが魔導士というものだ」
「魔法が無ければ普通の人間並みの力も持ってねぇ」

巨大フライパンと拳、一気に2つの攻撃がナツを襲う。
が、ナツは2回バック転をし、着地した。

「つーかさぁ、そーゆー割には全く攻撃当たってねぇぞ」

ベー、と相手を挑発するかのように舌を出すナツ。

「なるほど。スピードは大したものだ。少しは鍛えてるな」
「兄ちゃん・・・アレなら避けられねぇ。合体技だ!」
「OK!」

突然飛んだバニッシュブラザーズ弟。
それに『ヘイ、カモンカモン』と挑発していたナツの動きが止まる。

「余裕こいてられるのも今のうちだぜ!小僧!俺達がなぜ『バニッシュブラザーズ』と呼ばれているか教えてやる!」
「『消える』、そして『消す』からだ」

緊張感が高まる。

「ゆくぞ!『天地消滅殺法』!」
「HA!」

その言葉と同時に、弟が高く跳んだ。
当然、ナツの目は跳ぶ弟に向けられる。

(うえ)を向いたら・・・(した)にいる!」
「ごあっ!」

巨大フライパンがナツに直撃する。
今度はナツの目が兄の方へ向いた。

(した)を向いたら・・・(うえ)にいる!」
「ふぼっ!」

弟の全体重をかけた攻撃が決まる。
ナツは頭から床にめり込む。

「相手の視界から味方を消し・・・敵は必ず消し去る」
「これぞ、バニッシュブラザーズ合体技『天地消滅殺法』!これを喰らって生きてた奴は・・・いな・・・」

バニッシュブラザーズの言葉の途中で・・・ナツは起き上がった。
しかも。

「生きてた奴は・・・何?」

かなりケロッとした状態で。

「バ、バカな!」
「コイツ・・・本当に魔導士なのか!?」

天地消滅殺法。
本来なら、これを喰らって生きていた奴はいないのだ。
が、ナツは乗り物に酔ってしまう事と破壊癖を抜けば、かなり優秀な魔導士。
魔法は知力と精神力を鍛錬しないと身につかない、と2人は言う。
・・・まぁ、それも間違ってはいないのだが、ナツは知力よりも肉体の方を鍛えているのだろう。

「もういいや。これで吹っ飛べ!」
「!」

頬を膨らませるナツを見て、兄が目を見開く。

「火竜の咆哮!」
「来た!火の魔法!」
「終わった」

そう呟くと、兄はフライパンを構える。

「対火の魔導士専用・・・兼必殺技!火の玉料理(フレイムクッキング)!」

すると、フライパンにナツの咆哮が吸い込まれていった。

(ミー)の平鍋は全ての炎を吸収し・・・」
「!」
「威力を倍加させ、噴き出す!」
「!」

兄のフライパン・・・ではなく平鍋から、ナツの火竜の咆哮が威力を倍にされ、ナツに放たれる。
そしてナツはその炎に包まれた。

「妖精の丸焼きだ!飢えた狼には丁度いい!」
「炎の魔力が強ければ強いほど自分の身を滅ぼす。グッバイ」

バニッシュブラザーズはそう言うが、その炎の中から勢いよくナツが飛び出す。
全身に炎を纏った状態で。

「何!?」
「火が効かねぇ!?いや・・・いくら火の魔導士でも、それは・・・!」
「聞こえなかったか?」

笑みを浮かべてそう言うと、右手で兄の、左手で弟の顔を掴む。

「吹っ飛べ!火竜の翼撃!」

火竜の翼撃を喰らったバニッシュブラザーズは、地に落ちる。

「な、何なんだ・・・この魔導士は・・・」
「ママぁ・・・妖精さんが見えるよ」
「しっかりしろ!てゆーかもう無理か!?・・・ぶべ」
「妖精さぁぁん」

そしてナツは、溜息を1つ。

「さーて、ルーシィとアルカ探しに行くか。何だったんだコイツ等」
「傭兵っス」

ナツはルーシィとアルカを探しに歩き出す。
その背後で、ピンク色の髪のメイドゴリラの目が光った。











ここは屋敷の下水道。
ナツと別れルーシィを追ってきていたアルカはさっと陰に身を隠した。
その鋭い視線の先には、本を読むルーシィがいる。

「ボヨヨヨ・・・風詠みの眼鏡を持ち歩いているとは・・・主もなかなかの読書家よのう」
「ヤバッ!」

壁から出現した腕がルーシィの腕を掴む。

「さぁ言え、何を見つけた?その本の秘密とは何だ?」
「痛っ・・・ア・・・アンタなんかサイテーよ・・・文学の敵だわ・・・」
「文学の敵だと!?我輩の様な偉ーくて教養のある人間に対して」
「変なメイド連れて喜んでる奴が教養ねぇ・・・」
「我が金髪美女メイドを愚弄するでないわっ!」
「痛っ・・・いろんな意味で・・・」
(どこが偉いんだよ。女ってのはガラス細工みてぇに優しく扱うモンだって知らねぇじゃねぇか)

心の中でエバルーに向かって文句を言うアルカ。
ただ見ているだけではない。タイミングを計っているのだ。
下手をしてルーシィがますます痛めつけられたら、どうしようもない。

「宝の地図か!?財産の隠し場所か!?その本の中にどんな秘密がある?言え!言わんと腕をへし折るぞ!」
「・・・べー」

言うつもりはないのだろう。
ルーシィはエバルーに向かって舌を出す。
それがエバルーの逆鱗に触れた。

「調子に乗るでないぞ!小娘がぁぁっ!その本は我輩の物だ!我輩がケム・ザレオンに書かせたんじゃからな!本の秘密だって我輩の物なのじゃあっ!」

そう怒鳴りながら力を強めていく。
アルカは陰から飛び出し、床に手を置いた。

大火縄乱(レオロープ)!」
「ボヨ?」

炎で構成された縄がエバルーの首と腕に絡まる。

「どりゃあああああああっ!」
「ぎゃああああああああっ!」

そして力強く、思いっきり引っ張った。
エバルーは顔から真正面の壁に叩きつけられる。

「大丈夫か?ルーシィ」
「アルカさん!ハッピー!」

2人を見て安堵の表情を浮かべるルーシィ。

「おのれ・・・」
「形勢逆転ね。この本をあたしにくれるなら見逃してあげるわよ。一発は殴りたいケド・・・」

スーツが所々焼け焦げているが復活したエバルーにルーシィが鍵を構える。

「ほぉう・・・星霊魔法かボヨヨヨ。だが文学少女のくせに言葉の使い方が間違っておる。形勢逆転とは勢力の優劣状態が逆になる事・・・人1人とネコが一匹増えたくらいで我輩の魔法『土潜(ダイバー)』はやぶれんぞ!」

そう言って地面に潜るエバルー。

「この本に書いてあったわ。内容はエバルーが主人公のひっどい冒険小説だったの」
「何だソレ!」
「我輩が主人公なのは素晴らしい。しかし内容はクソだ。ケム・ザレオンのくせにこんな駄作を書きよって、けしからんわぁぁっ!」
「無理矢理書かせたくせに、よく偉そうな事が言えるな!」
「偉そう?我輩は偉いのじゃ。その我輩の本を書けるなど、ものすごく光栄な事なのじゃぞ」
「脅迫して書かせたんじゃないっ!」
「脅迫?」

エバルーの攻撃をかわしながらルーシィとアルカが叫ぶ。

「それが何か?書かぬと言う方が悪いに決まっておる」
「何それ・・・」
「根本的に腐ってんな。このハンプティ・ダンプティが」

全く反省していないエバルーに、ルーシィとアルカは呆れる。

「偉ーいこの我輩を主人公に本を書かせてやると言ったのに、あのバカ断りおった。だから言ってやったんだ。だから言ってやったんだ。書かぬと言うなら奴の親族全員の市民権を剥奪するとな」
「市民権剥奪って・・・そんな事したら商業ギルドや職人ギルドに加入できないじゃないか!コイツにそんな権限あるの!?」
「封建主義の土地はまだ残ってるのよ・・・」
「こんな腐った奴でもこの辺じゃ絶対的な権限を振るってるんだ、クソが」

アルカの顔は怒りと憎しみで満ちている。
そんな顔のアルカをルーシィは怪訝そうに見つめていた。
まるでエバルーに個人的な恨みがあるかのようで・・・。

「結局奴は書いた!しかし一度断った事はムカついたから独房で書かせてやったよ!ボヨヨヨヨ!やれ作家だ文豪だ・・・とふんぞり返っている奴の自尊心を砕いてやった!」
「自分の欲望の為にそこまでするってどうなのよ!?」
「独房に監禁された3年間!彼がどんな思いでいたか解るか!?」
「3年も・・・!?」
「我輩の偉大さに気づいたのだ!」
「違う!自分のプライドとの戦いだった!書かなければ家族の身が危ない!」
「けど、お前みてぇに腐った人間を主人公に書くなんて・・・作家としての誇りが許さねぇ!」

自分のプライドか家族の身か、ケム・ザレオンは3年もの間、その2つにぶつかっていたのだ。
そして、その間にも誇りが汚される本を書き続けていた。

「貴様等・・・何故それほど詳しく知っておる?」
「全部この本に書いてあったわ!」
「はぁ?その本なら我輩も読んだ。ケム・ザレオンなど登場せんぞ」
「もちろん普通に読めばファンもがっかりの駄作よ。でもアンタだって知ってるでしょ?ケム・ザレオンは元々魔導士」
「なっ・・・まさか!」
「そう。ケム・ザレオンは最後の力を振り絞って・・・この本に魔法をかけたんだ!」
「魔法を解けば我輩への恨みをつづった文章が現れる仕掛けだったのか!?け、けしからん!」
「発想が貧困ね・・・確かにこの本が完成するまでの経緯は書かれていたわ」
「だがケム・ザレオンが残したかった言葉はそんな事じゃねぇ・・・本当の秘密は別にある!」
「なっ・・・何だと!?そして貴様、なぜ貴様は知っている?本を読んでいたのは娘だけだったはずだが」

エバルーの目線がアルカに移る。
アルカはエバルーを鋭い視線で睨みながら、ゆっくり口を開いた。

「・・・ミレーユ・イレイザー」
「はぁ?」
「俺の姉だ」
「それが何だ?」

ギリッとアルカが歯を噛みしめる。

「俺の姉はとある魔導士ギルドに所属する星霊魔導士だった・・・」
「!」

ルーシィは思い出した。
この仕事に行く前、アルカの様子が少しおかしかった事に。
自分の持っている鍵を見せた時、アルカは少し様子が変だった。

「姉貴は俺達と同じ、日の出(デイ・ブレイク)を盗ってくるという依頼を受けた」

クリムゾンレッドの髪が揺れる。
黒いつり目に憎しみの光が映った。

「そして・・・俺の姉貴はテメェに殺されたんだ!」
「え!?」
「何!?」
「そんな・・・!」

ルーシィとハッピー、エバルーさえも驚く。

「テメェは一時期、赤髪のメイドを募集していた。赤髪だった姉貴は1人でこの仕事に行き・・・本を手に入れる直前にテメェに殺された」
「く、くだらん出まかせを!」
「出まかせじゃねぇ!姉貴は重傷を負いながら自分の家に戻り、最後の力を振り絞って俺に手紙を出した!そこにはこの本の秘密、この屋敷の主に殺された事・・・全て書かれていた!手紙は俺が1番信頼出来る女に預けてある。これでも出まかせと言えるか!?」

急激に下水道の中の温度が上がる。
炎の魔法を使うアルカが怒っているためだろう。

「とにかくこの本はアンタには渡さない!」
「つーか、テメェに持つ資格はねぇ!」

そう言ってルーシィは金色の鍵を構える。

「開け!巨蟹宮の扉・・・キャンサー!」

魔法陣から飛び出してきたのは、背中から蟹の足を生やした男だった。
サングラスをかけ、髪を編み込み、手にはハサミを持っている。

「蟹キターっ!」

ハッピーがはしゃぐ。

「絶対語尾に『~カニ』つけるよ!間違いないよね!カニだもんね!オイラ知ってるよ!『お約束』って言うんだ!」
「集中したいの・・・黙んないと肉球つねるわよ」

興奮するハッピーにルーシィは冷たく言い放つ。
そしてキャンサーが口を開いた。

「ルーシィ・・・今日はどんな髪型にするエビ?」
「空気読んでくれるかしら!?」
「エビーーーー!?」
「何でーーーーーーーーーーー!?」

キャンサーの語尾はなぜかエビだった。

「戦闘よ!あのヒゲオヤジやっつけちゃって!」
「OKエビ」
「まさにストレートかと思ったらフックを食らった感じだね。うん、もう帰らせていいよ」
「アンタが帰れば?」
「俺は蟹より海老派ー」
「何の話ですか!?」

そんなコントのようなやり取りをしていると突然エバルーが雄叫びを上げた。

「ぬぅおおおっ!」

そして1本の鍵を構えた。

「開け!処女宮の扉・・・バルゴ!」
「えっ!?」
「ルーシィと同じ魔法!?」
「金色の鍵・・・黄道十二門か!」

エバルーがルーシィと同じ魔法を使った事に驚く3人。
そして現れたのは・・・。

「お呼びでしょうか?ご主人様」
「バルゴ!その本を奪えっ!」

あのメイドゴリラだった。

「こいつ・・・星霊だったの!?」
「エビ」

そしてさらに驚きの事態が起こった。

「あっ!」
「あ!」
「あぁ!」
「あ!?」

それを見た瞬間、ルーシィ達だけでなくエバルーも驚愕した。
何故なら・・・。

「ナツ!」
「お?」

バルゴと共にナツがやってきたからである。
本人も何が起こったかよく解っていないようだ。

「なぜ貴様がバルゴと!?」
「アンタ・・・どうやって・・・」
「どう・・・って、コイツが動き出したから後つけてきたらいきなり・・・訳わかんねー!」
「『つけて』っつーか、『つかんで』な」

アルカの言う通り、ナツはバルゴの服をがっしりと掴んでいた。

「まさか・・・人間が星霊界を通過してきたっていうの!?有り得ないって!」

驚きと動揺が混ざって若干混乱しているルーシィに、ナツが声を掛ける。

「ルーシィ!アルカ!俺は何をすればいい!?」

その言葉でルーシィは我に返る。
後ろにいたアルカをチラッと見ると、アルカは頷く。

「そいつをどかして!」
「おう!」

威勢良く叫んだと思ったその時。

「どりゃあっ!」
「ぼふぉっ!」
「何ィっ!?」

言われたとおりバルゴを思いっきり殴り、地面に叩きつけた。

大火束縛(レオリストリクション)!」
「んぷっ」

エバルーの足元に真っ赤な魔法陣が展開し、そこから炎で構成された鎖や縄が生え、エバルーの首に巻きつく。

「もう地面にゃ逃がさねぇ!行くぞルーシィ、キャンサー!」
「うん!」
「エビ」

アルカの言葉にルーシィとキャンサーが頷き、構える。

「テメェなんか・・・!」

アルカは手をくいっと動かし炎を操ってエバルーを空中に放り投げる。
それに合わせて鞭を持ったルーシィとハサミを持ったキャンサーが跳んだ。

「ワキ役で十分なのよっ!」

そして、同時に攻撃を浴びせた。
炎でスーツが燃え、キャンサーのハサミによって髪の毛も髭も切られる。

「ハデにやっちまったな」
「ははっ。さっすが妖精の尻尾(フェアリーテイル)の魔導士だ」
「あい」

3人が笑い合う中、ルーシィは本をぎゅっと大切そうに抱きしめた。










その後、カービィの屋敷に戻ってきた一同は、盗って来た本をカービィに渡していた。

「こ、これは一体・・・どういう事ですかな?私は確か破棄してほしいと依頼したはずです」
「破棄するのは簡単です。カービィさんにだって出来る」
「だ・・・だったら私が焼却します。こんな本・・・見たくもない!」

そう言うとルーシィから乱暴に本を受け取る。

「カービィさん。貴方がなぜこの本の存在が許せないのか解りました」
「・・・!」
「父親の誇りを守る為・・・貴方はケム・ザレオンの息子だな」
「うおっ!」
「パパーーーーーーーー!?」

ルーシィとアルカの言葉にナツとハッピーが驚く。

「なぜ・・・それを・・・」
「この本を読んだ事は?」
「いえ・・・・父から聞いただけで読んだ事は・・・しかし読むまでもありません。駄作だ・・・父が言っていた・・・」
「だから燃やすって?」
「そうです」

それを聞いたナツは怒りの形相でカービィに詰め寄った。

「つまんねぇから燃やすだと!?そりゃあんまりじゃねぇのか!?父ちゃんが書いた本だろ!?お?」
「落ち着け、ナツ!」
「言ったでしょ!誇りを守る為だって」

怒鳴るナツをルーシィとアルカが押さえる。

「えぇ・・・父は日の出(デイ・ブレイク)を書いた事を恥じていました」

そこからカービィは全てを語った。
31年前、突然帰ってきた父親が作家を辞めると自らの手で腕を切り落とした事。
その後入院した父親を憎み、罵倒した事。
そしてその後、すぐに父親が自分の人生の幕を自分で下ろした・・・自殺した事。

「しかし年月が経つにつれ、憎しみは後悔へと変わっていった。私があんな事を言わなければ、父は死ななかったかもしれない・・・と」

そう語るカービィの他に誰も声を出さない。

「だからね・・・せめてもの償いに父の遺作となったこの駄作を・・・父の名誉の為この世から消し去りたいと思ったんです」

ポケットからマッチを取り出し、火をつける。
そしてそれを本に近づけていった。

「これできっと父も・・・」
「待って!」

ルーシィが叫んだと同時に、本が光り出す。

「え?」
「な、何だ・・・これは・・・!」

突然の出来事にカービィは驚く。
すると、本のタイトルの文字が飛び出し宙に浮かぶ。

「文字が浮かんだーーーっ!」
「ケム・ザレオン・・・いいえ、本名はゼクア・メロン」
「彼はこの本に魔法をかけた」
「ま、魔法!?」

ルーシィとアルカが説明しているうちに、タイトルの文字が入れ替わって本に戻る。
そこに書かれたタイトルは・・・。

DEAR(ディア)・・・KABY(カービィ)!?」
「そう。彼がかけたのは文字が入れ替わる魔法。中身も・・・全てだ」

アルカの言葉が終わると同時に、本が自然に開く。
本から光輝く文字が飛び出し、列を作って宙を舞う。

「おおっ!」
「きれー!」
「彼が作家を辞めた理由は・・・最低な本を書いてしまった事の他に・・・最高の本を書いてしまったことかもしれません・・・」
「息子であるカービィさんへの手紙っつー、最高の本をな」

そして、文字は全て本の中に収まる。

「それがケム・ザレオンが本当に残したかった本です」
「父さん・・・私は父を・・・理解できてなかったようだ・・・」
「当然です。作家の頭の中が理解できたら、本を読む楽しみが無くなっちゃう」
「ありがとう。この本は燃やせませんね・・・」
「じゃあ俺達も報酬いらねぇな」
「だね」
「当然だろ」
「え?」
「はい?」

ナツとハッピーとアルカの言葉にカービィとルーシィが呆然とする。

「依頼は『本の破棄』だ。達成してねーし」
「い、いや・・・しかし・・・そういう訳には・・・」
「えぇ・・・」
「そ、そうよ・・・せっかくの好意なんだし・・・いただいておきましょ」
「あー、ルーシィがめつー!さっきまで結構いい事言ってたのに全部チャラだ」
「それはそれ!」
「ですが・・・」
「いいって。依頼達成してないのに報酬貰ったら、ティアに叱られちまう」

かっかっかっとナツは笑いながら出口に向かって歩いていく。

「かーえろっ。メロンも早く帰れよ、自分家」
「「!」」
「え?」

最後にナツが言い残した言葉にメロン夫妻は驚き、ルーシィは首を傾げた。









「信じらんなーい!普通200万チャラにするかしらー!」
「依頼達成してねーのに金貰ったら、妖精の尻尾(フェアリーテイル)の名折れだろ」
「あい」
「全部上手くいったんだからいいじゃないのよぉっ!」
「そーゆー問題じゃねぇんだ」

その帰り道、ルーシィは報酬が貰えなかった事に文句を言っていた。
行きは馬車だったが、帰りは歩きである。

「はぁー・・・あの人達、お金持ちじゃなかったのかぁ・・・作家の息子のくせに何でよぉー。あの家も見栄を張る為に友人に借りたって言ってたし・・・そんな事しなくても、依頼引き受けてあげたのにね」
「どうかな?」
「引き受けたわよっ!多分ね」
「多分かよ」
「てゆーかアンタ何で家・・・気づいたの?」
「ん?アイツらの匂いと家の匂いが違った。普通気づくだろ」
「あたしは獣じゃないからっ!」

作家の息子が全員金持ちとは限らない。

「あの小説家・・・実はスゲェ魔導士だよな」
「あい・・・30年も昔の魔法が消えてないなんて相当の魔力だよ」
「若い頃は魔導士ギルドにいたらしいからな」
「そしてそこでの冒険の数々を小説にしたの。憧れちゃうなぁ~」
「やっぱりなぁ~」

ナツが意地悪そうな笑みを浮かべる。

「前・・・ルーシィが隠したアレ・・・」

アレ、とはこの仕事に行く前にルーシィの家で見つけた紙の束の事だ。

「自分で書いた小説だろ」
「やたら本の事詳しい訳だぁ~!」
「なるほど、そりゃ他人に見せたくないわな」

それを聞いたルーシィの顔が赤くなる。

「ぜ・・・絶対他の人には言わないでよ!」
「何で?」
「いい趣味だと思うけどなぁ」
「ま、まだヘタクソなの!読まれたら恥ずかしいでしょ!」
「いや・・・誰も読まねーから」
「それはそれでちょっぴり悲しいわっ!」











・・・時を少し前に戻そう。
ナツ達がカービィから31年前に起こった事を聞かされていた頃、同じシロツメの街でもう1人の魔導士が仕事をしていた。

「殴り込みか!?」
「生きて返すなーっ!」
「相手は小娘1人だ!どうって事ねぇ!」

ここはシロツメに本拠地を置く魔法盗賊団。
メンバー全員が魔導士なのが特徴の1つだ。
旅の商人や力の弱い女を狙う悪質な奴等で、金が入るのなら暗殺だってやる。
もはや闇ギルドに近い存在なのだ。

「・・・愚かね」

ふぅ、と溜息をついて腕を振る。
一瞬時が止まり、盗賊たちは全員まとめて吹っ飛ばされた。

「ぐおっ!」
「がはぁっ!」
「な、何だ・・・この小娘は・・・」

倒れ血を流す男たちを見下ろす少女は、口を開いた。

「アンタ達に3つの選択肢をあげる。『評議員に捕まる』か『私の視界から消える』か・・・『私に半殺しにされる』か」
「ひっ・・・ひぃっ・・・!」
「選びなさい」

そう言う少女の瞳は、感情がこもっていないかのように冷たい。

「こ、この小娘・・・この3つの選択肢・・・間違いねぇ・・・コイツが、あの・・・!」
「うるさい。選択肢以外の言葉を発しないで」
「うがっ!」

少女の手から勢いよく何かが発射され、男は吹き飛ぶ。
はぁ、と溜息をつくと、少女の目が光った。

「そう・・・答えないのね?なら私が決めるわ、アンタ達の『罰』を」

その言葉を言い終わったと同時に、辺りに悲鳴が響く。
悲鳴が聞こえなくなった時、盗賊団のアジトは真っ赤に染まっていた。
倒れる男たちの前に少女が立っている。

「仕事終了。大した事ないわね」

そう言い残して少女は去っていった。
意識を取り戻した男の1人が、その後ろ姿を見つめながら呟く。

「こ、これが・・・あの・・・妖精の尻尾(フェアリーテイル)最強の女問題児・・・」

声も体も震える。
少女の姿が完全に視界から消えた。

「ティア=T=カトレーン・・・!」 
 

 
後書き
こんにちは、緋色の空です。
遂に少しだけティア登場!そして次回からララバイ編です。

感想・批評、お待ちしてます。 
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