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もしもこんなチート能力を手に入れたら・・・多分後悔するんじゃね?

作者:海戦型
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黒鎧演義・其ノ八

 
前書き
屍鬼の漫画版が揃ったから原作も読もうかと思ったらカーチャンが持ってたでござる。
しかも文庫じゃなくて単行本。こりゃ休日返上して読みまくらないといつ読み終わるか分からない・・・ 

 
 
大人は無知ではないが、時として愚かだ。
大人は気付いていないだけで、子どもたちは意外なほど大人をよく見ている。何故なら子供は大人に倣い社会的規範を学ぶからだ。だから子供は時として大人以上に「真実」を見据えていることがある。


「僕たちは先生たちの思っているほど短絡的な存在ではないんだ・・・」
《だが今回は仕方あるまい。大人には大人の責任と義務がある》

何か言い返したかったが、その理屈も分かるので黙らざるを得なかった。

簡単に何があったかを説明すると、月村邸襲撃が陽色小学校の耳に届いてしまい「海鳴自警団」は活動停止になった。特にこの計画を主導していた僕と由良君、ついでに道ずれで数名の生徒が保護者厳重注意を受けた。

新お父さんと先生には「皆で鬼ごっこをしていたら話がおかしな方に傾いてそうなった」と言っておいた。・・・由良君が事前に用意していた緊急対策マニュアルに従って。ごめんなさい大人の皆さん、子供は貴方達の想像以上に賢しいです。




こうして活動が出来なくなった僕はやることが無くなり、やんちゃした罰もかねて「翠屋」の方の手伝いをすることに。人生初のエプロン・・・気のせいかフリフリが妙に多いけどきっと気のせいだよね!
新母さんがこれを着る様にと言われたけどどうも女の子向けの服っぽいような気がしてならない。いつものようにゼルギウスさんで髪を留めて・・・これでよし?


「いらっしゃいませー」

===========================================
サイドテールで可愛らしいエプロンを着たショタっ子が上目づかいでこちらを見ている!
どうしますか?

ニア お持ち帰り
   アメちゃんあげる
   愛でる
   hshsする                                 ▼
===========================================

「・・・すいません、この子貰って行っていいですか?」
「駄目です」

僕は非売品です。あしからず。メニューからちゃんと選んでください・・・スマイル?こうですか?

「にぱー」
「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!可愛いぃぃぃぃぃぃ!!!」」」

いつの間にやらすうぃーつを食べに来たのか僕を見に来たのか良く分からなくなってしまった。新お母さんが(計画通り!)な顔をしていたけど僕はいい子だから見なかったことにしました。騎士に憧れていたころの僕は何処へ行ってしまったのでしょう。ここで一句。


                 い
              い  ず
           あ  き  こ
    き  い   こ  た  へ
    ゃ  ま   が  ま  と
    く  や   れ  ひ
    ひ  わ   よ  し
    き  が      か
    め  み
    い  は
 く  ど
 ろ
 ゑ


何処へと 往きたまひしか 憧れよ
 今や我が身は 客引きメイド    黒衣


「次はこの珈琲をあっちのお客さんに運んでね!」
「かしこまりましたー」
「駄目・・・!あんな可愛い男の娘を見せられたら私・・・貯金をつぎ込んでこの店に通ってしまうわ!!」
「むしろあの子だけでご飯3杯はイケル!!」
「この喫茶店にライスってあったっけ?」
「知るかバカ!そんなことよりクロエたんだ!!」

あの、新お母さん。お手伝いはいいけど槍の鍛錬の時間が・・・

「だーめ♪今お客さんが多いからしっかり手伝ってね?」
≪あきらめよ・・・≫
(これも罰なのか・・・)

御櫃から始まったお手伝いは午後4時を回るまで続きました。途中お客さんの鼻血をみて危うく失神しかけたのを見た新お母さんからようやく休憩の許可が出て、僕はくたくたになりながら家のリビングへ戻っていきました。

後日、店の張り紙に「店内鼻血厳禁」という意味不明の張り紙が貼られたとか。







ヒトの定義は何なのだろう。

僕には昔おばあちゃんがいた。何でも知ってていつも優しいおばあちゃんだった。
ある日、おばあちゃんは老衰で死んでしまった。僕は悲しくていっぱい泣いた。
でも、おばあちゃんは帰って来た。息をしてなかったけど、ご飯が食べられなくなっていたけど、体がとっても冷たくなってたけど、下顎の犬歯がとても長くなってたけど、それでもおばあちゃんはいつもの笑顔で帰って来たんだ。

でも、おばあちゃんは村に皆に捕まって殺されちゃった。村の皆はおばあちゃんを死人だ、化物だ、起き上がりだって言いながら心臓に僕の腕よりも太い木の杭を刺したんだ。おばあちゃんはそのまま動かなくなっちゃった。

どうして殺しちゃったの?だっておばあちゃんは優しかったよ?身体だって動いてた。普通の人と違っていたけど確かにおばあちゃんのままだったんだ。起きて歩いて、僕にやさしくしてくれて、なのにおばあちゃんは生きてないって言えたの?本当に?

おばあちゃんの身体を見た。心臓からたくさんの赤色が溢れて出いて、僕はこう思った「あの赤色はおばあちゃんの命なんだ。心臓がどうとかじゃない、あの赤色がヒトの、生命の源なんだ」って。だから、血が流れるのはとても怖い。それは生命が流れ出ているってことだから。


「・・・という感じの夢を見た」
「それはまた・・・難しい夢を見てるんだね」

そう言って考えるようなしぐさを見せる少女。彼女は海鳴自警団が襲撃を掛けた月村邸のご息女にあらせられるすずかお嬢様というらしい。何と新お兄ちゃんが月村家長女と恋仲らしく、その関係で僕の顔を見に来たらしい。襲撃事件もちゃんと謝ったら笑って許してくれた。むしろあの襲撃で警備増強の方向性が定まったらしい。・・・あな恐ろしや、あれ以上強化するんですか。

そして現在は先ほど言ったすずかお嬢様とおしゃべり中。なのはから僕の話を聞いていたらしく、興味があったそうな。しかし特に話すことが思いつかなかったのでさっき見た夢を話した。すずかお嬢様は考えた後、ちょっと顔を曇らせながら自身の考えを口にする。

「そのおばあちゃんは生きてたんだよ。だって、殺されたんでしょ?生物に死は一度しか訪れないよ」
「でも夢の中のおばあちゃんは一度死んだ。きっと死亡診断書だってあった」
「本当に死んだの?ただ人と違う身体に作り替わったのが、普通の人から見て死んだように見えただけじゃないかな?それなら死んだって言えないと思うよ。何より命の証・・・血が流れたんだし」
「・・・でも、それじゃどうしておばあちゃんは殺されなきゃならなかったの?」
「それはきっと・・・ヒトと違ったから。人間は弱いから、自分と違う生き物を恐れ、手懐けようとしてきた。でもおばあちゃんは人間の姿をしているのに人間じゃなかった。だから手懐けられないと思って怖くなったんだ」

法律。ルール。決まり事。人が獣にならないように作った野性を束縛する鎖にして楔。それに当てはまらないから夢の中のおばあちゃんは殺された。おばあちゃんの意思も聞かずに一方的に殺すのが、ルールだろうか。

「そんなのおかしい。人が勝手に作ったルールで人じゃない存在が殺されるなら、人は神になったとでも言うの?知恵の実を食べたからって完全な存在には程遠い。神はアベルの供物を選び、カインの供物を受け取らなかったじゃないか。なのに人でない存在は殺されるの?供物ですらないのに?」
「カインはアベルも殺したよ。人も殺す存在が人以外を殺さないなんてあるかな?兄弟を殺したんだから兄弟以外も人は殺せる。人でなければもっと殺せる。同族じゃないからって言うだけの理由で・・・人間は臆病だから、自分以外は何だって殺せるよ」
「人の方がよっぽど化物じゃないか。まるでリヴァイアサンだ。人と言うくびきそのものが怪物だ」
「そうだよ。人間は怖い。だから化物は人の振りをして怪物に紛れ込むか、ずっとかくれんぼをするしか争わない道はない。争ったら、人と変わらなくなっちゃうから」
「争いは嫌だ。沢山の赤色が流れる。赤は命の色だから、命が流れ出れば生物は死ぬ。死ぬのは怖いけど、死なれるのも怖いから僕は血が見たくないんだ」
「じゃあ命を吸わないと生きていけない吸血鬼はどうするの?」
「・・・怖い。でも僕は・・・怖い存在の命が流れるのも怖いよ。僕はカインの末裔の命と自分の命を天秤にかけた時に、化け物と怪物のどちらかになるんだろうか・・・今はそれが怖い」
「ふふっ、クロエ君って怖がりなんだ。大丈夫、吸血鬼はきっと少食だから」
「そうかな」
「そうだよ」

そう言ってすずか嬢は微笑んだ。

―――このやり取りを終えて一つ分かったことがある。

すずか嬢、きみは・・・・・・



・・・ひょっとしてこの世界に最初に来たとき(クロエ編第1話、もしも最強の騎士の力を手に入れたら・・・? )に会った女の子ですか?

≪気付いていなかったのかッ!!?≫
(忘れてました)

ゼルギウスさんの声が若干裏返っていたことが個人的に一番衝撃的でした。






「どうしよう忍、俺はまだ弟の事を全然分かってなかったらしい・・・」
「ヒトに対する不信感・・・やはりあの子は?」
「分からない・・・分からないけど、もしもおばあさんの話が夢じゃなくて本当だったとしたら・・・」

そのころ、2人の会話をバッチリ聞いていた恭也と忍はクロエの与り知らぬところで勘違いを加速させていた。既に二人の認識ではクロエは「人ならざる一族の者で、人間の弾圧を受けて家族と死別したショックで記憶を失った哀れな少年」というイメージに固定されている。


人は過ちを犯す生き物である。但し、その過ちが必ずしも人を傷つけるとは限らない訳だが・・・
 
 

 
後書き
クロエ君主役の回は全体的に評価が低い。まぁここ最近はクロエ君メインの話とは言い難い部分あったから今回は出番大増量でお送りいたしました。

・・・ところで、クロエ君の夢は果たしてただの夢なんでしょうか?それともどこかの物語を見た影響なのでしょうか?将又実は、彼はその物語の世界に居たのでしょうか?それはきっと、永遠の謎。
 
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