ソードアートオンライン VIRUS
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調査依頼
前書き
プロローグのような感じ
季節は丁度いいくらいの気温だった秋の初めから冬を感じさせるくらいの肌寒さの時期に移り変わり、そろそろマフラーや手袋が必要と思う。布で覆われていない顔や首に冷たい風に叩かれると体を震わせながらそう思った。せめて少しでも温まろうとポケットに手を入れて冷たい手を少しずつ暖めていく。
「寒ぃ……」
そう呟いてまだ人通りの少ないアーケード街を歩いてバイト先であるエギルの店へと向かう。最近は暗くなるのが早いため、バーになる時間も早く働く時間も少ないが、自分が入る時間帯には多くの客が来ているのでそれを捌いていくとそれ相応の給料がもらえるから安心だ。まあ、そのおかげで現在はGGOに早めに入れるため、もうすぐ始まるBoBの準備をゆっくりと進められる。そして不意にポケットに入れているスマホが震えだす。取り出して誰か確認すると顔を若干ゆがめた。そして通話ボタンを押して電話に出る。
「何だよ、今の時間帯は俺がバイトって知ってるだろ。菊岡さん」
嫌そうに言いながら話しをなるべく聞かれないためにバイト先であるエギルの店とは少し遠回りになるが小道に入った。
「知ってるよ。だから今日は無理と伝えといたから安心してくれていいよ」
「何勝手にそんなことしてるんだよ。今から俺はバイト先に行こうとしてたのによ」
「すまない。ちょっとこっちもいろいろとあって手間取ってたんだ。本当に申し訳ないね」
そう謝罪しているが本当に誤っているのかと今までの態度から疑ってしまう。正直、この人の本性はまったく持って読めないのである程度は警戒してる。それでも、少しは情報を集めてくれるだろうと思い、この人にもウィルスの話をしたのだが、今になって本当にこの人に話してよかったのだろうかと思っている。
「で、なんのようだよ。何かわかったのか?」
「いや、まったくわからなかったけどこっちでもいろいろと問題が起きてきてるんだよ。今君がプレイしているGGOでね」
それを聞き一昨日ゲームをしていたときに聞いた死銃のことを思いだす。
「死銃?」
「そう。どうやら知ってるみたいだね」
「一昨日ちょっと小耳に挟んだ。確かモニターに映っていたゼクシードに向け銃弾を撃ったところ、その銃弾はモニターに弾かれたはずなのに、画面に映っていたゼクシードの回線が切断されて消えた。そしてそれ以来はゼクシードは出てきてないことから死んだって言う噂が立ってる。俺が知ってるのはこのくらいだ」
「それだけ知ってれば十分だよ。で、そのゼクシードのことなんだけど、本名、茂村保は死亡している。死因は心不全だよ」
「おいおい、何でそんなことを一般人である俺に話すかな」
「何を言っているんだい。僕と君との仲じゃないか」
「切っていいか?」
自分と菊岡が仲がいいなんてそれを考えると正直あまりいい気がしない。それを聞いた菊岡は切らないように何度も自分に言って来るので溜め息を吐きながら聞く。
「で、あんたは俺にゲームで死銃に接触しろといいたいのか?」
「話が早くて助かるよ。君の言うとおりその死銃に接触してもらいたい。もしかしたら”ウィルス”の手がかりがある可能性もある。ゲーム内で殺した奴を現実で殺すなんてそんなことを出来るなんて無理にだからね。もしかしたら君の言うウィルスが関与してる可能性があるかもしれない」
「あるかもしれないが、その可能性はない。ウィルスならこの数ヶ月プレイしていてウィルスの存在を察知していないからな。ウィルスがいるなら、もうすでに気づいてる」
「そうかい?それなら別の可能性があるのか……まあ、とりあえず、キリト君にも頼んでいるから二人で捜査をしてくれると助かるよ。まだ、僕は仕事があるからこれで失礼するよ」
「おい、まだ俺は受けると言って……って切りやがった」
自分がいいと言っていないのに勝手に受けさせるなんてひどい話だ。だが、人が死んでいると聞いたら動かないで人が次々に殺されていくと寝覚めが悪い。ここは解決のためにこの調査に参加するべきだろう。スマホをポケットに戻してアーケード街に戻る。
エギルの店を休むということならもう行く意味はないだろう。それなら今日の晩飯を買いに行くことにする。今日の晩飯は何にするかな、と考えながらアーケード街の中にあるスーパーに入ろうとした時、その横で同じ制服の女子高生が四人いた。仲良く話しているという感じではなく、一人を囲んで何かしているという感じだった。これは、いじめだろうと思いすぐにその四人に近づいた。
「こんなところで何してるんだ?」
「誰だよ、お前?」
「ねえちょっと、こいつ顔良くない?モデルかなんか?」
「あたしらちょっと話したただけだって」
自分を見て急に態度を変えた奴を見ながら溜め息を吐いた。
「じゃあ何でその人は顔真っ青にしてんの?あんたらがこの人の触れられたくないことでも話したからじゃないのか?」
「ちょっとあたしらは話してただけだし、勝手に決め付けないでくれる?それにあんた、あたしらと関係ないんだしそういわれるわけがわからないんだけど。もしかして正義の味方気取り?」
そう言うと他二人はけらけらと笑い始める。本当にこんなのを相手にしていると疲れるなと思いながら頭を掻く。こういうタイプの人間はどうも苦手だ。
「別に、正義の味方じゃない。ただの偽善者だ。それと、あんまりそんなことばっかり言ってると殴るぞ?」
殺気を混ぜた視線と圧力をかけるとヒッと怖じ気づいた。そして本能的にヤバイと感じたのか三人は退散して言った。
「ったく。大丈夫か?」
「……」
少女に向けて話しかける。黙っているがちゃんと首を縦に振って大丈夫と意思表示をしてくれる。しかし、それでもこの調子だと家に帰れるかも心配だ。家まで送りたいのは山々だがこういうので女の子の家まで行くのは少し悪い気がする。
「本当に大丈夫か?顔色良くないし、俺の知り合いの店で少し休んでいくか?」
「いいです。ただ、ちょっと吐き気に襲われただけどもう大丈夫なんで」
少女がそう言ったときの顔は先ほどよりもマシになってはいるがこの状態で帰れるかも心配だ。どこかにこの少女の知り合いがいればいいのだが。
「朝田さん!」
不意に誰かの名前をこちらに向けて叫ぶ少年の声が聞こえた。振り向くと少し顔立ちの幼さの残る少年がこちらに向けて走ってきていた。そして少女に近寄ると心配そうに聞く。
「大丈夫、朝田さん!」
その少年を見てその朝田さんと呼ばれる人物は顔を上げると微笑んで答える。
「大丈夫、新川くん……」
「そう、でもこの人に何かされなかった!?」
そう言ってからこちらを睨んでくる。その瞳からは何かしらの感情が読み取れる。どこか怒りのようなものとその中に混じる狂ったような憎悪の感情が渦巻いているように感じる。
「大丈夫だって……この人が私を助けたから……」
「そうなんだ……。ゴメンね、僕がもう少し早く出てきてたらこんなことにはならなかったのに……」
「いいのよ。それより、先ほどはありがとうございます」
新川という少年にそう言うとこちらに頭を下げてくる。
「別にいいって」
そして少女は顔を上げてこちらの顔を始めて見ると少し表情を変える。
「……」
「どうした?俺の顔に何かついてるのか?」
「……あ、ごめんなさい。ちょっと知り合いに似ていて……」
「そうなのか?まあ、そっちは置いといて、そこの人がいれば何とかなるだろ。送ってもらって家で休むことをオススメするよ。顔色は少しは良くなったみたいだけどまだ心配だしな」
「はい。心配かけてすいません」
「じゃあ、俺もそろそろ行くから。じゃあな」
そう言って細い道を出て最初の目的だったスーパーに入る。そこで安売りなどの商品を買って、家へと帰る。帰るとすぐに冷蔵庫に食品類などを入れて、洗濯物を洗濯機に放り込むと、ラフな格好に着替えるとケータイを取り出して、メールや無料通話アプリなどの返信をする。そこには和人のもあった。
【今度俺もガンゲイルオンラインに行くことになったから、そん時はいろいろレクチャーしてくれるか?】
そのメールを見て、了解と短い返信を送り、ベットの横にある台の上にあるアミュスフィアを被る。
「大分金も貯まって来たことだし、このまま還元するのもいいとは思うけどやっぱり今回は大会を優勝するためにバギーの改良に使うかな。バギーのメカニック技術のスキルで、バギーにあたらしいボディにしたいしな」
そう呟いてからベットに寝転んで呟く。剣と魔法のファンタジーな世界ではなく血生臭い硝煙が舞う銃の世界へ。
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