万華鏡
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第三十九話 読書感想文その七
八月三十一日は近い、美優はこのことについてこう言った。
「最悪の日だよな」
「うん、この世でね」
「最悪の日よね」
琴乃と彩夏が応える。
「もうこの日が来ると」
「苦しくなってきてね」
「それで遂に三十一日が来れば」
「その時は」
まさにだ、胸が潰れるというのだ。
「あんな嫌な日ってないわよね」
「冬休みと春休みの最後の日も嫌だけれど」
「夏休みが特にね」
「八月三十一日はね」
とにかくこの日は最悪だと二人で話す、そして美優もまた言った。
「あたしこの日幸せに過ごしたことないよ」
「気分的にね」
「どうしてもそうなるわよね」
琴乃と彩夏はまた美優に応えた。
「私も、その日はね」
「明るく過ごしたことはないわ」
「夏休みが終わるかと思うと」
「死にたくなるわ」
「夏休みでも学校に来て勉強してるけれどな」
そうした意味で夏休みは休みにはならない、だがだった。
「それでもな、夏休みっていうだけでな」
「気分がいいのよね」
「だからね」
例え学校に通っていても休みである、それでだった。
「部活だけで午前中で終わって」
「午後は塾あるけれどね」
「全体的な自由時間は普段より多いし」
「やっぱり楽なのよね」
「それが終わるからな」
また言う美優だった、迫る運命を見て浮かない顔になって。
「本当に八月三十一日は嫌な日だよ」
「私も、夏休みが終わるのは」
里香もここで言った。
「寂しいわ」
「ああ、里香ちゃんもか」
「確かに夏は暑くて苦手だけれど」
だがそれでもだというのだ。
「夏休みが終わるのは」
「寂しいよな」
「ええ、寂しいわ」
こう美優に答える。
「九月一日を辛くないって思ったことはね」
「ないよな」
「まあ九月一日が終わったらね」
その時はというと。
「徐々に落ち着いてくるけれど」
「そうそう、一週間もしないうちに慣れるけれどな」
美優は里香にこの現実を話した。
「それでもな」
「それまではね」
「ああ、気持ちが晴れなくてな」
「また夏休みになって欲しいって思って」
「敬老の日が待ち遠くなるんだよな」
「そうなのよね」
「夏休みってやっぱりいいものだよ」
美優は心から言った。
「色々なところで遊べて夏しかない遊びも一杯楽しめて」
「だから楽しいのよね」
「その夏休みが終わるのってな」
「寂しいわ」
里香もこうした考えだった、だが。
景子はここでだ、四人にこんなことを話した。
「ただ、お母さんが言うにはね」
「あっ、夏休みが終わるのがってね」
「いいっていうのね」
「そうなの、もう夏の神社は忙しいから」
それでだというのだ。
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