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DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)

作者:あちゃ
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第5章:導かれし者達…トラブルを抱える
  第66話:船上の狼

 
前書き
このサブタイトル気に入ってます 

 
(船上)
シンSIDE

初めてウルフさんと出会った時、とても頼りになる素敵なお兄さんだと感じてました。
暫くして厳しい中にも優しさを備えた、深慮遠謀な人柄だと実感しました。
そして、人を騙そうとする輩には遠慮しない怖い一面もあるのだと知りました。

俺にとってウルフさんへの評価は天井知らずで、例えうっかりリューノちゃんに手を出しても、協力して秘匿しようと思ってました……
でも今はどうだ!?

二股が周囲に知れ渡ってしまった為、イチャ付く事を憚らなくなった。
しかも彼女が二人いるから、鬱陶しさも2倍な気がする。
あの格好いいウルフさんは何処に行ってしまったのだろうか? 彼女二人と共に船室へ下りて行く彼を見て溜息を吐く。

このパーティーは色ボケ共ばかりなのだ!
新たに加わったライアンさんも、真面目そうな感じを醸し出してたクセに、先日までホイミスライムだった仲間が巨乳美女だと判った途端、気取りながらもイチャ付いてるし……

高貴な血筋のお姫様であるはずのアリーナ姫も、家臣のクリフトさんとラヴラヴ感を振りまいてるし……
リューラさんとアロー君までも最近ではそんな空気を滲ませている。

あえてリュカさん達の事には触れないが、全体的にエロエロな雰囲気がだだ漏れ状態なのが俺の取り纏める集団なんです。
なのに一番頼りにしてたウルフさんが、リュカさん等と同レベルでアレな状態になるなんて……何度溜息を吐いても、俺の気分は晴れやかにならない。

「シン……先程から溜息が途切れんが、この状況に脱力しておるのかのぅ?」
比較的常識派のブライさんが俺の事を心配して話しかけてくれる。
しかし気を抜く訳にはいかない……何故ならこの老人は、酒を飲み交わしただけで、リュカさんに洗脳された人だ。もうあっち側の人間だろう。

「いえ……別にそういう訳ではないのです。ただ、ちょっと皆さんが羨ましいなと思って……」
俺はシンシア一筋だから、別に他の女とイチャ付きたいとは思ってない。
まぁ……多少は羨ましく思う事もあるけど。

「連中……今がどういう状況なのか解ってないのかもしれんな。何時(いつ)何時(なんどき)敵の襲撃を受けるか分からんと言うのに……」
それもあるが、俺がこの面子を取り纏めるのに苦労しそうで悩んでるんだが……
ウルフさんがしっかりしてれば、多少は負担も軽減されたのだけど……

「まぁまぁ、仲良き事は美しき事じゃないですか。恋人と共に居る事で、団結力が向上し旅を優位に行えるのなら、素晴らしいと私は思いますよ」
突如口を出してきたのはトルネコさんだ。
彼はこのパーティーの真の実力者達に、媚を売りたいからそんな事を言ってるんだと思う。
勿論、真の実力者とは、リュカさんとウルフさんですが……

「ですが、男女間の事柄が原因で、先日の夜にパーティーが崩壊しそうになりましたけど……その点はどうお考えなのですかトルネコさん!?」
「そ、それは……その……」

意地の悪い質問だと思う。
でもリュカさん達に聞こえる様な声で、彼らの行いを推奨し胡麻を擂るオッサンに、苛つきを感じてしまったのも事実。
頼むから俺を利用して、リュカさんに気に入られようとするのは止めてくれ!

「しかしシン……あの騒動はリュカの経験豊富な体験談で無事に片付いたと思うのだが……一見アレな男じゃが、彼奴の人生経験は侮れないと思う。今後もこのパーティー内で人間関係のトラブルに見舞われても、彼奴が居る限り安心出来ると思うんじゃが?」

やはりコイツは洗脳されていたか!
あの人が頼りになるのは認めるし、ただふざけている訳でないのも認める。
だがトラブルを巻き起こすのも彼だと言う事を皆も理解して欲しい……望んでトラブルを巻き起こしてないにしろ、必ず拘わっていると言う事を理解して欲しい!

「それはそうなんですが……」
あまり彼の事でブライさんと口論をしても意味は無い。
取り敢えず俺が引く事でこの話題を打ち切った。



暫くの間、男三人が集まって気まずい沈黙に浸っていると……
船室の方から少しふらついたウルフさんが現れ、俺達を確認すると近付いてきた。
現在は心から尊敬できなくなってしまっている為、微妙な表情で迎え入れてしまう俺……

「ト、トルネコさん……ちょっとご相談があるんですが」
しかしウルフさんは俺やブライさんには関心が無く、珍しくトルネコさんへ話しかけてきた!
腹黒い商人は嫌いなんだと思っていたが……基本的何でも良いって事か?

「どうしましたウルフさん!? 何かお困り事のようですが……私の力で解決できることであれば何でも仰って下さい!」
あ~あ……立場的に上だと思ってる人物から、何やら重要な相談事を持ちかけられ、立場逆転を狙う狡猾な男が、ギラギラと瞳を輝かせ始めたよ……

「お恥ずかしい話なんですが……何か精力を増強させる代物は取り扱ってませんかね?」
「……はぁ?」
まったくもって“はぁ?”だ! 何を言い出すかと思いきや、12歳の少女相手に、精力増強剤を欲すとは……

「お、シン君……そんな目で睨むなよぉ(笑) 俺の彼女は二人ともリュカさんの娘だから、アッチの体力が尋常じゃ無いんだ! 一人だけだったら何とかなってたんだけど、倍に膨れ上がったからねぇ……」
自ら招いた事態だろうに……

「若いのに何を言っておるんじゃ!? お前の師匠はそんなものに頼らずに、お前よりも大人数を相手に戦っておるんじゃぞ! 情けないとは思わんのか?」
違う、そうじゃないだろ! 数を減らす方向で努力したり、自分たちの体力内で頑張ったりとか、そう言うことをするべきなのに……アレ(リュカさん)をスタンダードに考えてはダメだろう!

「そうは言いますが、その師匠の血を引いた娘なんですよ……一人を絶頂()かせ続いてもう一人を絶頂()かせても、既に先に絶頂()かせた方は体力を回復しており、俺に連戦を要求してくるんです! 奴等は俺の事を()かせるつもりなのかと思っちゃいますよ(笑)」

爺さんとオッサンが青年の親父ギャグで笑っているが、まだ子供な俺には笑えない……
ただ白い目で連中を見詰める事しか出来ない。
多分俺はこのパーティー内で少数派だ。
リュカさんの発する毒に感染していない少数派だ。

何で感染しなかったのだろうか?
一緒になって馬鹿をやってれば楽になれるのだろうに……
俺は自分が真面目な人間だと思った事は無い……だけど彼らを見ていると、自分自身の真面目さに驚いてしまう事がある。

「ウルフさん、ご安心下さい! 多分お気に召す商品があると思いますよ……ちょっと私の部屋でご案内しますよ」
そう言うとトルネコさんは満面の笑みでウルフさんを自室へと招待する。

「あ、ブライさんとシンさんも如何ですか?」
「う~む……ワシには不要な代物じゃと思うが、少しばかり興味が湧くのぉ! 見るだけでも構わないかな?」

「えぇ構いませんとも! 今は兎も角、未来で必要になるかもしれないじゃないですか! ……シンさんはどうしますか? もしかしたら今後素晴らしい人生が開けるかもしれませんよ(笑)」
「いえ、俺は……」

いい大人三人が馬鹿丸出しのユル顔で俺に問いかけてくる。
だが勿論断るだけ……
シンシア以外の女性など興味は持てないし、その彼女も既にこの世にいない……

楽しそうに船室へ引き上げる彼らを見て、大きな溜息を吐いてしまう俺が居る。
早く世界を平和にして、木こりのオジサンの下で静かに暮らしたいなぁ……

シンSIDE END



 
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