DQ4 導かれちゃった者達…(リュカ伝その3)
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第5章:導かれし者達…トラブルを抱える
第67話:暇潰しと穀潰し
(スタンシアラ)
シンSIDE
数多の島々で構成されてる国家、それが『スタンシアラ』だ。
国土自体も狭く、人々が生活する為のスペースも確保しにくい。
その為か王都も奇抜な造りになっており、筏に乗って水路を移動しなければ城にも辿り着けない。
女性陣は『水の都だなんてステキね♡』と彼氏に寄り添いウットリしてるが、『面倒臭ー造りだな……橋を架ける予算無いのかよ!?』と愚痴るリュカさんと同意見な俺。
珍しく彼と気が合い、ちょびっと嬉しい。いや悲しんだ方が良いのかな?
だがそんな事を言ってられない……
何故なら、この国にあると噂される『天空の兜』は、国王が出した御触れをクリアした者にしか入手出来ないのだ!
もっと詳しく説明すると、この国の王様が『余を笑わせた者に、我が王家に代々伝わる宝……天空の兜を授けよう!』と言ったらしい。
この御触れを聞いた時『この国の国王は馬鹿なのか!?』とリュカさんが大声で叫んだが、俺も全く同意見だった……何だか意見が噛み合うなぁ。
とは言え、王様を笑わせるだけで『天空の兜』が貰えるのなら、これほど楽な事は無い!
俺も最初は唖然としてたが、ウルフさんが『危険なミッションを熟せとか言われるよりマシだろ……我が儘こいてねぇで、ギャグのひとつでも考えとけよ!』と言い、目から鱗状態で納得しました。やっぱウルフさんは凄ー!
だから今俺達は、お城で受付を済ませ行列に並んでます。
皆さん“王家の宝”と言う言葉に色めき立っており、天空の勇者にしか利用価値が無いと言うのに、手に入れるのに躍起になってるみたいです。
世の中馬鹿ばっかりだなぁ~と思う反面、そんな連中と一緒に並んでいる俺達も同類なのかもしれないと、自己嫌悪に陥ります。
だって、本当に俺が伝説の勇者とは限らないですから……
村のみんなや、ウルフさん達の思い違いって事もありますから!
もし俺が本当に勇者ではなかったら、立場無いよね……夜中にコッソリ逃げ出すしかないよね。
最近仲間が多くなった所為か、俺自身の思考がネガティブな事に気が付いた。
でもしょうが無いと思う。だって俺より実力も経験も……ついでにキャラまでもが強烈な面々の中に身を置いてるんだもん!
その筆頭が俺の尊敬するウルフさんと、また訳の解らない事をやっています……
「お、お、“おっぱ○”」
「“い”か……い、い、“イマラチ○”」
「んだよ、また“お”かよ! え~と……“オナ○ー”でどうだ!」
「今度は“に”か……う~ん“ニプルファ「何デカい声で言ってるんですか!?」
トンデモナイ単語を言い合う二人……何を考えてるんだ!?
「何シン君も参加する?」
「さ、参加……?」
「そうだよ、あまりにも暇だったからウルフと『エッチな言葉シリトリ』をやってたんだ!」
暇潰しで行う事じゃないだろう。
「何だそれは……」
「解らない? エッチな単語限定でシリトリをする事だよ! 簡単だろシン君」
「単語自体がエッチじゃなくてもいいんだ……エッチな事に使用するのであればね! 例を上げると、『目隠し』とか『ロウソク』とかだね(笑)」
あれ、どうして俺の言いたい事が伝わらないんだこの穀潰し共は?
「んな事を聞いてんじゃないんだよ! 何でそんな事を今ここで行っているのかを聞いてんの!?」
「何でって……暇だからだけど何か?」
「うん。ウルフの言う通り凄く暇だったから……でもそれが何か?」
「何かって……何でエッチな単語限定なんだよ!? 他の言葉でやれば良いだろ! 俺達以外にも並んでいる人は大勢居るんだから、そんな単語を大声で叫ばれたら迷惑だろ!」
「何が迷惑なんだよ!? 世の中に存在する単語を使って暇潰しを行って何が迷惑なんだよ!」
「そうだそうだ! 『ぼくは純情ボーイだから、聞いてて恥ずかしいからヤメて♡』って言うんなら解るが、僕達がどんな迷惑をかけたんだよ!?」
本気か!? 本気で言ってるのかコイツ等……いや、そんなはずない!
絶対ワザと言ってるに違いない。
俺や周囲の人々に迷惑をかけて、心の底で楽しんでいるんだ!
この根性悪共め!
「ウルフとシリトリを普通にやっても絶対勝てないんだ……コイツ頭良いだろ? だから知ってる単語数が膨大で、僕には勝ち目が無いんだよ。だから『限定シリトリ』になるんだ!」
確かにウルフさんと会話してると、その知識量の多さに驚かされる。
「そう……何らかのジャンルで単語を限定すれば、限定したジャンルによっては拮抗した勝負が出来る! で、導き出されたジャンルがコレだ……」
胸張って自慢気に言う事か!?
いい大人がエロ単語を叫ぶ遊び事に、何を自慢してるんだ!?
「お前達うるさいぞ! 今は他の者が陛下の前で、自慢のネタを披露してるんだ……静かにしておれ!」
目の前のトラブルメーカーズに絶望感を感じていると、この御触れを取り仕切っているだろう大臣らしき男が近付き、この二人を厳重注意し始めた。無駄なのに……
「はぁ? そんな事知るかよ……何処にも“待てる間は静かにね♡”って書いてなかったじゃんか! 注意事項が何処にも無いのに、因縁付けるのはやめて下さいぃ! 騒がれたく無かったら、至る所に張り紙でもして注意を促せっての……ふざけんな馬鹿!」
「そうだそうだ! 待ってる間“ネタの打ち合わせするな!”とも書いて無かったぞ! 俺達は御触れに参加してるんだから、空いた時間を見計らって練習するのは当然だろ! そんな事も解らないで偉そうに説教してるのか!? 引っ込め阿呆!」
二大屁理屈男降臨……
一般常識で考えれば、お城では静かにするものだし、何らかの出し物の出番待ちをしているのなら、現在演じている方々の邪魔にならない様に静かにするものだ。
にも拘わらずこの屁理屈っぷり……
「な、何が“練習”だ! さっき暇潰しと大声で言ってただろう!」
確かに言ってた……さて、どう切り返す?
「それもネタの一部だって解れよ馬鹿!」
「一般常識で考えて、あんな不謹慎な単語を他人様の前で連呼する人間が居る訳ねーだろアホ! 俺達一座の一連のネタだバ~カ!」
そうきたか! 流石屁理屈師弟!
まさかコイツ等に『一般常識』とか言われたく無かっただろうなぁ……
それに『不謹慎な単語を他人様の前で連呼する人間が居る訳ねーだろ』と言ったが、お前等の事だ!
常識人はネタでも連呼しないんだよ!
「うぐっ……キサマ等……」
常識のある人間には勝ち目の無い相手……
それが解る大臣さんは、悔しそうに口籠もり睨み付ける。状況が違ったのなら友達になれた気がする。
「大臣……もう良い!」
すると、別の人のネタを鑑賞していた王様が、とてもつまらなそうな表情で大臣を止めた。
あまりのうるささに『今日はもう止めじゃ!』とか言われたら困るな……
「その者等の言い分は尤もだ。城内では静かにするのが常識だと思い込み、そんな事も知らぬ愚か者達への配慮を忘れておった……だから特別に、その者等のネタを先に鑑賞しようと思う。余の側まで連れて参れ」
しれっと嫌味が入っていたが、まぁ良い……ざっと見ても、まだ2.3時間は待たねばならないと思っていたが、嫌気がさした王様の投げ遣りな計らいで、直ぐにネタ披露が出来る事になった。
先に並んでた人々は複雑な表情をしている……順番を抜かされるのは腹が立つが、あのうるささの中では全力を出し切れないだろうから。
それに下手な事を言うと、どんな逆撃を被るか恐いのだろう。
贔屓目に見たって変人共だしな!
シンSIDE END
後書き
何で私が書く勇者様って苦労人が多いんだろう?
シン君には胃薬服用はさせないようにと気を付けてるんだけどなぁ……
時間の問題な気がする。
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