八条学園怪異譚
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第三十九話 狸囃子その十一
「わし等はそばじゃ」
「それでたぬきそばなのね」
「油揚げを入れて」
「揚げは一緒じゃがな」
二人と狸は関西の話をする、たぬきそばは地域によって入れるものが違うからだ。
「しかしそばじゃ」
「そこが違うのね」
「おうどんとおそばっていうところが」
「とはいってもお互いうどんもそばも食うがのう」
狐もそばを食べるし狸もうどんを食べるというのだ。
「どっちも好きじゃ」
「そうなのね、どっちもなの」
「狸さんもおうどんを食べるの」
「四国には徳島県があるじゃろ」
団十郎狸は讃岐うどんの話もした。
「うどんもよく食うぞ」
「あっ、そういえばそうよね」
「四国っておうどんよね」
「ついでに言えば愛媛の松山もある」
今度はこの場所だった。
「ほれ、坊ちゃんで主人公が天ぷらそばを食っておったな」
「あっ、三杯食べてたわね」
聖花は狸の言葉にこのことを思い出した。
「そうだったわよね」
「そうじゃ、わしは五杯食った」
団十郎狸は腕を組み誇らしげに言った。
「あの小説を読んで店に行ってみたら随分美味くてのう」
「それで五杯なの」
「そんなに食べたの」
「うどんもそばもよい」
狸はあらためて言った。
「しかしどっちかというとやはり狸はそばじゃ」
「そっちなのね」
「それになるのね」
「そういうことじゃ、だからじゃ」
それでだとだ、狸達はここで酒と共にそばも出した。言うまでもなくそのそばの上には薄揚げが置かれている。
そのたぬきそばを見てだ、茉莉也は二人に言った。
「さあ、早く泉かどうか確かめないとね」
「先に確かめてですか」
「それからですね」
「おそばが冷えてのびるわよ」
「そうですね、じゃあ」
「今のうちに」
二人も茉莉也の言葉に頷く、そうしてだった。
狸達が集まっている場所のすぐ横にある倉庫に鍵を持ったうえで向かう、そしてその倉庫を開けて中に入ってみると。
そこには箒や塵取りといった掃除用具に体育の用具もあった、ボールもある。
そうしたものが揃っているが他にあるものはというと。
「違ったわね」
「そうね」
聖花は愛実の言葉に頷いた、中に入ってみたがそれだけだった。
「ここも違ったわね」
「ええ、じゃあ次ね」
愛実は特に落ち込むこともなく聖花に言った。
「次の場所は普通科のね」
「体育館の倉庫よね」
「開かずの間っていうけれど」
愛実はこのことから考えていた。
「何が出るかよね」
「それが問題ね、幽霊さん達かしら」
「ちょっとわからないわね」
首をかしげさせて愛実に言う。
「まあ行ってみてよね」
「それでわかるわね」
「日下部さんが出て来るのかしら」
「日下部さん?」
「そう、日下部さんね」
彼が関わっているというのだ。
「あの人に聞いてみる?次は」
「そうね、じゃあね」
二人でこう話してだった、そして。
二人は倉庫を出てその扉を閉めた、鍵もかけた。
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