八条学園怪異譚
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
第三十九話 狸囃子その五
二人は今は茉莉也と別れてそれぞれの店に戻った、そのうえで二人の家の仕事を手伝ったのであった。
その夜だ、神社に行くとだった。
茉莉也はもうスタンバイしていた、二人を昼と同じ巫女の姿で迎えて言って来た。
「今晩は、じゃあ今からね」
「はい、中等部ですね」
「そこの中庭に」
「行こうね、そういえばだけれど」
「そういえば?」
「そういえばっていいますと?」
「いや、若しもよ」
この前置きをしてからだ、茉莉也は二人に尋ねた。
「今度も泉じゃなかったらね」
「その時はですか」
「次は何処に行くかですね」
「それはもう決まってるの?」
問うのはこのことだった。
「これまで相当色々なところ回ってて場所がなくなってきてると思うけれど」
「はい、次は高等部で」
「普通科の体育館です」
そこに行こうと考えているというのだ。
「そこに行ってです」
「体育館の倉庫に」
「体育館の倉庫ねえ」
その場所だと聞いてだ、茉莉也は二人にこんなことを言った。
「密室でマットがあって体操服でね」
「あの、その組み合わせは」
「ちょっと」
「わかるわよね、まあ実際はそんな話jはないから」
よくある逢引の話だが実際は、というのだ。
「ありそうだけれどね」
「というか普通学校の中でとかあるんですか?」
「見つかりますよ」
「言っておくけれど見つかったら終わりよ」
その時点でだというのだ。
「もうそれでね」
「それはわかります」
「流石に、ですよね」
「そもそも普通科の体育館の倉庫ってね」
そこはだ、どうかというと。
「皆中々近寄らないから」
「怪談と思われてですね」
「そうなんですね」
「倉庫が二つあって一つが開かずの間なのよ」
そしてその開かずの間が、だというのだ。
「そこを開けたら何が出て来るかわからないってね」
「そう言われてるんですね」
「実際に」
「そうなの、私もあそこは開けたことがないから」
茉莉也にしてもそうだというのだ。
「噂ではそこで自殺した生徒がいたとかね」
「そんな噂があるんですね」
「実際に」
「そうなの、自殺した人の幽霊って危ないからね」
茉莉也は二人にこのことを注意した。
「うちの学園はそうした幽霊はいなくてもね」
「学園の外ではですか」
「違うんですね」
「そうよ、だからそうした話がある場所には近付かないでね」
それは決してだというのだ。
「取り憑かれたら後が大変よ。特に首を吊って死んだ人はね」
「その人が一番危ないんですか」
「首を吊って死んだ人が」
二人はその話を聞いて目を瞬かせて問い返した。
「そんなになんですか」
「危ないんですね」
「縊鬼っていってね」
茉莉也はそうした幽霊の名前も話した。
ページ上へ戻る