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八条学園怪異譚

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第三十九話 狸囃子その六

「そうした鬼がいるのよ」
「首を吊って死んだ人の幽霊ですか」
「そういうのもいるんですね」
「大体自殺した人っていうのは強い怨念を持って死ぬけれど」
「その中でもですか」
「特に怖いんですね」
「中国の幽霊でね」
 中国にも幽霊はいる、むしろいないと思える方がないであろう。人間が生活を営んでいる場所に幽霊はいるからだ。
「怨念の力が強くて」
「だからですか」
「絶対に近寄ったらいけないんですね
「自殺したその時の顔で出て来て」
 茉莉也はその姿のことも話す。
「目は吊り上がってて舌を出してね、凄い顔で出て来るらしいのよ」
「まさに首を括ったその時の顔ですか」
「それで出て来るんですか」
「そうなの、実は首を吊って死んだら綺麗に死ねないのよ」
「それ聞いたことがあります」
「そうらしいですね」
 二人もこのことは聞いていた、首を吊って死ぬというのもかなり後味の悪い死に方なのだ。
「何か身体がやけに伸びて失禁して」
「それで死ぬまでに時間もかかるんですよね」
「そうよ、線路に飛び込む場合も酷いけれど」
 こちらはバラバラになる、やはり無残な死に方だ。
 そして飛び込みと同じだけだ、首を吊るのもだというのだ。
「こっちも酷いから」
「自殺はしないことですね」
「それでそうして死んだ人の場所には近寄らないことですね」
「引き込まれるわよ」
 茉莉也はここでは真剣そのものの顔で注意した。
「下手をしたらね」
「それで自分もですか」
「自殺することになるんですね」
「そう、自殺の名所ってあるけれど」
 崖や踏切だ、こうしたものも世の中にはあるものだ。
「そうした場所には絶対に近寄らないでね」
「わかりました、っていうか」
「この学園にはそういう場所はないんですね」
「みたいね。まあ校舎の屋上から飛び降りとかは」
 この死に方もある、自殺といっても本当に様々だ。
「止めてるけれどね、日下部さん達が」
「日下部さんいい人ですしね」
「そういうことは止められるんですね」
「そう、妖怪さん達もね」
 彼等も止めようとするというのだ。
「ちゃんとね」
「悪い妖怪だとこれが、ですか」
「煽るんですね」
「そうよ、そうしてくるからね」
 だからだというのだ。
「注意してね」
「それって悪い人もですね」
「煽りますよね」
「だから注意してね、人間そういう奴もいるから」
 世の中悪人もいる、人の不幸を楽しむ輩もだ。
 そしてそういう輩にはだというのだ、茉莉也は二人にこのことも注意した。
「近寄らないことよ、そういう奴って大体目とか人相に出るから」
「目が汚れている奴はですか」
「絶対にですね」
「そう、近寄らないことよ」
 そうした人間にもだというのだ。
「まあドス黒い顔の奴もいるからね」
「ヤクザ屋さんとかですね」
「そういう人にいますよね」
 店の客として見てきたのだ、二人はそうした立場の人間については見てきたので知っていた。
「嫌な感じの目や顔の人」
「そういう人にはですね」
「お客さんで来ても近寄らないでしょ」
「はい、無意識のうちに」
「そうしています」
 身の安全の為にだ、二人はこれまでそうしてきた。 
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