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ニュルンベルグのマイスタージンガー

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第一幕その二


第一幕その二

「それだけを。是非」
「それではです」
「はい」
 少女の言葉を待って若者の喉がごくり、と鳴った。
「それでは」
「お待ち下さい」
 またしてもであった。マグダレーネが戻って来た。しかも今度は若者に対して声をかけてきたのだった。
「騎士殿とお見受けしますが」
「その通りです」
 若者はここでマグダレーネに対しても一礼してから答えた。
「ヴァルター=フォン=シュトルツィングです」
「フォン=シュトルツィング様ですね」
「そうです」
 マグダレーネの言葉に対して頷いてもみせる。
「それが私の名です」
「ではフォン=シュトルツィング様」
 彼女の言葉はここでは真面目なものであった。
「まずはここでは」
「話すべきではないというのですね」
「あまり長くはよくないと思いますので」
 畏まったうえでまたヴァルターに対して述べた。
「場所を変えられては如何かと」
「まって、レーネ」
 しかしここで少女が言うのだった。
「そんな話ではないのです」
「そうなのですか?エヴァ」
 マグダレーネもここで彼女の名を呼んだ。
「そうよ。私は何とお答えしていいかわからないの」
 その背の高いヴァルターの顔をうっとりと見上げての言葉だった。
「夢の中にいるような気持ちだから」
「それはまた」
「今は。どうするべきか」
「だからこそなのですよ」
 ここでまたマグダレーネはエヴァに対して告げた。
「ですから。場所をお変えになられて」
「いえ、まずはです」
 しかしここでまたヴァルターが言うのだった。
「御返事を」
「その御返事を」
 エヴァもまた言おうとする。しかしここでマグダレーネは聖堂の中に一人の若者が入ってくるのを認めた。茶色のズボンに青と白のストライブのシャツを着ている。茶色の髪を粋に撫でつけ目は黒い。そしてその表情はとても明るく愛想のよいものだった。よく見れば背も高い。マグダレーネは彼の姿を認めて言うのだった。
「ダーヴィットじゃない」
「言えないわ」
 そのマグダレーネの横で困った顔になって俯いているエヴァだった。
「レーネ、御願いだから」
「わかっていますよ。騎士様」
「はい」
 マグダレーネがエヴァに代わって言うのだった。
「エヴァ=ポーグナーは婚約しています」
「それでは」
 それを聞いたヴァルターの顔が一気に曇り絶望のものになる。しかしここでエヴァがすぐに言ってきた。
「けれど相手は決まっていません」
「!?」
 ヴァルターは今のエヴァの言葉に思わずその整った目を顰めさせた。そしてすぐに問わずにはいられなくなった。
「それは一体どういう意味ですか?」
「それは明日決まるのです」
「明日と」
「はい。この街に来られて間もないようですが」
「ええ、それは」
 マグダレーネの今の言葉に対して素直に頷いた。
「その通りです」
「では明日のことも御存知ないですね」
「お祭があるとは聞いています」
「それです。そのお祭の場で素晴らしい歌を歌い」
「その方がですか」
「そうです。その審判でそのマイスタージンガーがお嬢様の花婿となるのです」
 こう彼に教えるマグダレーネだった。
「そういう意味なのです」
「そしてです」
 エヴァもヴァルターに対して告げる。
 
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