久遠の神話
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第四十九話 スペンサーの剣その七
「蛇にしか見えないですけれど」
「ワームという種類になるか」
「ワーム?」
「そうだ、ドラゴンといっても色々でだ」
「そのワームってのもあるんですか」
「直訳すると虫だな」
「はい」
高橋も答える。
「そのままですよね」
「そうだ、虫だ」
「手足のない虫っていうと」
「いも虫だ」
「ああ、だからワームなんですか」
ここで高橋も納得した顔になり頷いた。
「そういうことですね」
「その通りだ。そしてだ」
「このワームもまた竜なんですか」
「大蛇と蛇の間だ」
「?そういえばヒュドラーも」
高橋はギリシア神話で有名なこの怪物のことを思い出した。
「手足がないですね」
「そして竜と思われているな」
「大蛇って説もありますけれど」
「しかし竜に思われているな」
「そうですね」
高橋も納得した顔で頷く。
「ヒュドラーも」
「ラドンもだな」
「どっちも首が多いせいか」
ヒュドラーは九、ラドンは百だ。尚ヒュドラーは恐ろしい猛毒を持っていることでもよく知られている怪物だ。
「蛇のイメージがないですね」
「竜に思ってしまうな」
「はい、どうしても」
「竜にも色々な種類がいてだ」
「その中には蛇に近いのもいるんですね」
「特に古代ギリシアではそうだ」
彼等が戦う怪物がその背景となっている世界ではそうだというのだ。
「竜が手足と翼があり炎を吹くという姿になったのはキリスト教からだ」
「何か詳しいですね」
「同期に教えてもらった」
工藤はその知識の源も話した。
「そうした話に詳しい同期がいてな」
「面白い同期の方ですね」
「曹候補学生から上はそれなりの知識なり頭の回転を求められる」
二年で下士官になり将来は幹部自衛官を念頭に置いて採用されている、だからそうしたことも考慮されて採用されるのだ。
「だからだ」
「そうした人もいるんですね」
「そいつは今幹部をやっている」
「工藤さんと同じですね」
「階級は三尉だがな」
工藤は一尉だ、階級は工藤の方が上ではある。
「中々色々な知識を知っていた」
「それでその人に教えてもらって」
「俺もそうした話を知った」
「ですか」
「本当に自衛官、海上自衛隊は特にそうかも知れないが」
工藤はそのカドモスの竜を見据えながら高橋に話していく。
「幹部候補生、曹候補学生、曹候補士、一般と入隊コースがある」
「四つですか」
「防衛大学もあるがな。俺が入隊した頃はこうなっていた」
今は候補学生と候補士が一緒になっていてそこが違っている。
「航空学生や少年自衛官もあるがな」
「おおむねその四つですね」
「候補学生から全然違う」
本当にそうだというのだ。
「試験もかなり難しくなる」
「ですか」
「実は自衛隊は入り口社会でもある」
自衛隊もお役所でありそうなっていることが現実なのだ。
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