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久遠の神話

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第四十九話 スペンサーの剣その八

「そのせいかだ」
「候補生はか」
「そうだ。入隊してからの扱いも違うが」
 海上自衛隊では制服までもが違う程だ。
 海上自衛隊では士、兵隊の制服はセーラー服だが候補生は予科練のものだった七つボタンになる、帽子も下士官のものだ。
 そこまで違いがありさらになのだ。
「どうも考えることや知識がそもそも違う」
「候補生と一般じゃ」
「そうしたところまで見られているのかもな」
「ですか」
「あくまで俺個人の見たところだが」
 その候補生出身の工藤の見たものである。
「そうした感じだな」
「ううん、自衛隊員って一口に言っても」
「色々な人間がいる」
「それでなんですね」
「入り口も違えばだ」
「何かそう言うレベルがあるんですね」
「そのせいか教育隊では候補生と補士、一般の仲はよくはない」
 教育隊の時点でそうだというのだ。
「教育課程も全然違うからな」
「ですか」
「俺達候補生はとにかくあらゆることで別だった」 
 補士、一般とはというのだ。
「何しろ制服まで違うからな」
「そういえば工藤さんはセーラー服は」
「着たことがない」
 工藤は高橋にはっきりと言い切った。
「一度もな」
「ですか」
「陸自さんや空自さんは制服は同じだが」
 海は違う、これは文化とさえ言ってもいいものだった。
「海はそこからが違う」
「なんですね」
「その候補生の中の同期から聞いた話だ」
「竜っていっても色々ですか」
「西洋の竜も翼があり足が四本ばかりのものとは限らない」
 その竜の話に具体的になっていく。
「目の前にいる様なものもいる」
「それでこいつの力は」
「確か毒があった」 
 これも工藤が同期から聞いた話だ。
「炎は吐かないがな」
「毒ですか」
「その牙に毒がある」
 禍々しく伸びたその何十本もある牙にだというのだ。
「しかも猛毒だ」
「そのまま大蛇ですね」
「だから蛇と竜の区別は曖昧だ」
「そうですか」
「だから毒には注意しろ」
「噛まれるなっていうんですね」
「毒を吐いてくる可能性もある」
 高橋は竜のその口を見た。そこからは何かが滴り落ちているがそれが何かというのは言うまでもなかった。
「それもな」
「じゃあこいつの倒し方は」
「顔の前に出るな」
 毒を吐かれる場合も噛まれる場合も考えてのことだ。
「絶対にな」
「わかりました。毒ですね」
「カドモスの従者は泉で水を飲むところでこいつに会い」
 そしてだというのだ。
「皆殺しにされたからな」
「一人残らずですか」
「何人かいたが全員殺された」  
 これは神話にある通りだ。 
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