久遠の神話
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第四十九話 スペンサーの剣その六
「軍隊でそれをやればその指揮官の話は誰も聞かなくなります」
「自衛隊もです。体育会系と言えばいいですが」
「それでもですね」
「これは悪しき体育会系です」
工藤もこう忌々しげに切り捨てた。
「自分に甘く他人に厳しい輩の典型的な例です」
「日本にはそうした教師が実際にいるのですね」
「残念ですが多いです」
これが日本の教育の実体である。
「そしてそうした輩が日本の教育を腐敗させています」
「そうした教師が多ければ確かに腐敗しますね」
「人にそれを強いるのなら自分もしなければならない」
さもなければ人としてしめしがつかないからである。
「そのことに気付きもしない輩でも教師になれるのです」
「それが日本ですね」
「そうです」
「日本は素晴らしい国と思っていますが」
「光があれば必ず闇もあります」
「ですか」
「こうした教師が暴力事件やセクハラ事件を起こします」
教師がこうした犯罪を犯すことは実は何も不思議ではないのだ。こうした輩、一般社会では絶対に通用しない輩が大手を振って何人も歩ける世界ならそうした事件が頻発するのも道理なのだ。
「そしていじめを放置するどころか」
「自らが問題を起こすのですね」
「その通りです」
「そういえば日本での我が軍への抗議活動は教師が多く入っているそうですが」
「自衛隊に対してもです」
工藤はこの現実にも答えた。
「常に抗議をしてきますが」
「そうした教師が多く入っているのですね」
「その通りです」
「おかしな抗議だとは思っていますが」
「日本では教師の質は悪いです」
工藤も言い切る。
「深刻な社会問題です」
「我が国も社会問題は多いですが」
よく病んでいると言われている、アメリカの社会問題は多岐に渡りその一つ一つが極めて深刻な深さに達している。
「日本もそうなのですね」
「どの国でも問題はありますよね」
高橋も少し残念そうな笑顔で話す。
「アメリカでも日本でも同じです」
「そういうことですね」
「はい、そうなります」
こうスペンサーに話す。
「わかりやすく言えば」
「そうですね。合衆国でも日本でも」
「どんな国、どんな社会でも問題がありまして」
「それを少しずつでも解決するのが人間ですね」
「警察官としてそう思います」
高橋は己の仕事も話に出した。
「人間は問題を解決出来る叡智も持っていますから」
「叡智ですね」
「はい、そうです」
「人は少しずつ確実に進歩していく」
スペンサーはこう言った。
「そういうものだからですね」
「そうです。では」
「それでは」
「今度茶道も紹介します」
その正座のだというのだ。
「宜しくお願いします」
「楽しみにしています」
スペンサーは微笑んで高橋に応えた。彼等は幸せな楽しい時間を過ごせた。
だが数日後工藤と高橋は戦いの中にあった。巨大な、鉄の如き鱗に覆われた禍々しい無数の牙を持つ蛇と駐車場で対峙していた。
工藤は目の前にとぐろを巻く蛇を見てこう高橋に言った。
「カドモスの竜だな」
「あのカドモスの従者を全部食ったっていう」
「その竜だな」
「これ竜なんですか」
高橋は己の剣を手に出しながら工藤に問うた。工藤も自身の剣を出していた。
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