ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
四十四話:奴隷ライフが始まります
空間を移動して運搬されて、馬面と猪顔から、見た目は人間みたいなヤツに引き渡されて。
身ぐるみ剥がされて、ぼろ切れのような申し訳程度の服を着せられて。
薄暗い部屋、いや部屋と呼ぶのもおこがましい、湿っぽい穴蔵に乱暴に投げ込まれる。
「新入りだ。死なない程度に、面倒を見ろ」
言い捨てて去っていく、人間ぽいヤツ(たぶん魔物)。
生かしとく気なら、投げるなよ!
せめて置くくらい、してよ!
投げ込まれた傷だらけの子供ふたりに戸惑いとざわめきが広がるが、近寄る者はいない。
いやいや別に、当てになんかしてませんし?
別に、いいですけどね?
と思いつつ、こういうときは自分よりも相手を心配して回復するのが人の道ってヤツよね!と、とりあえず動こうとするが、もちろん動けるはずも無く。
一応、努力はした!
許せ、ヘンリー!
ということで、仕方なく。あくまで仕方なく、自分に先にベホイミを唱えます。
唱えると言っても、さっき無理矢理振り絞ったせいですっかり声は嗄れて、全く声にはならなかったわけですが。
声が出なくても発動はするんだね、と新たな発見にも特に感動は無く、全快はしないながらも動けるようにはなったので、今度こそヘンリーのところに向かいます。
まだ意識は戻らず、あちこちに火傷がありますが命に別状は無く、火傷以外に目立った外傷はありません。
レベル1なのでホイミでも全快するんじゃなかろうかと思いつつ、ケチる意味もそれほど無いので(実験的な意味なら少しはあるが)ベホイミを唱えます。
さっきのベホイミで嗄声も少しは治って、一応声にはなってます。
当然ながら一発で全快して、ヘンリーが意識を取り戻します。
「う……」
「起きた?大丈夫?」
目を開き、身体を起こすヘンリー。
「……ここは……。助かった、のか」
「命はね」
奴隷に落ちたことを、助かったと言うかは疑問だけど。
「お前……傷だらけじゃないか」
「だらけってほどでも無いよ。一回は治したし」
レベル差と被ダメージの差により、一発で全快はしなかったけどね!
「もっと酷かったのかよ……!俺の心配してる場合じゃ無いだろ、早く治せよ」
「う、うん。まあ、そうだね」
なんで私は怒られてる感じになってるんだ、理不尽だ。
と思いながらも別に逆らう意味も無いので、さっさと治す私。
人を掻き分けて、痩せ細ったじいさんぽい人(もしかしてばあさんかもしれないが、よくわからない)が近寄ってきます。
「ん?怪我人は、何処じゃ?」
きょろきょろと辺りを見回し、私たちに目を留めるじいさん(声で確定)。
なるほど、治せる人を呼んでくれてたのね!
みんな自分のことで精一杯だよね、そうだよねわかりますケッ!とか思ってすみません!
謝罪を込めて笑顔を浮かべ……ようと思ったけどなんか顔が固まってて無理だったので、それは置いといてとにかく愛想良く答えます。
「はい!私たちです!」
子供ぶりっこは、もういいことにした。
プライベートもほぼ皆無な共同生活で、ヘンリーと他の人で切り替えるのもめんどいし。
「……怪我をしとるようには、見えんが」
「治しました!ご心配、ありがとうございます!」
「なんと!かなり酷い怪我であったと聞いたが。その、幼さでか。いやはや、大したものじゃ。それならば、わしは用済みじゃの」
こんな痩せ細った老人が用済みとか、縁起でも無いな!
じいさんの言葉を受けて、年配の女性が進み出ます。
「怪我はもういいんだね?こんな小さいのに、酷い目にあったね。ここは酷いとこだけど、ここにいる仲間は悪いヤツらじゃないから。そこは、安心していいよ。とにかく、まずは休みなさい。さ、こっちだよ」
と、私の失礼な疑いをまたしても否定する発言の後、部屋の隅のほうに誘導してくれるおばちゃん。
真ん中辺りじゃ落ち着かないし、ヘンリーと話もあるし。
隅に引っ込めるならありがたいので、大人しくついていきます。
粗末ながら一応何かしらの敷物がある場所に私たちを導き、近くにいるからなにかあったら呼ぶように言い置いて離れていく気のいいおばちゃんを、お礼を言って見送ります。
声を潜めれば、内緒話も出来そうな環境ですね!
ひとまず、良かった!
二人になったところで、まずはヘンリーにお礼を言います。
「あのさ。ありがとうね」
「は?……なにが?」
「私を、信じてくれたことと。モモを、助けてくれたこと」
「ああ。大したこと、ねえよ」
「労力としたら、そうかもしれないけど。でも助かったし、嬉しかったから」
「……そうか」
暫しの間を置き、ヘンリーが口を開きます。
「……あの、さ。あの、人は」
「うん。死んだ」
「……そうか」
「うん」
「……泣かない、のか」
「うん。泣けない、みたい」
というか、顔が固まってて。
笑顔にも、泣き顔にも、なりそうも無い。
実際に、泣きはしなくても。
もっと、悲しくなると思ってたんだけど。
感情まで固まったみたいに、全く動かない。
「……私って。冷たいのかな」
「違うだろ」
即座に否定されました。
なんだよ、君は私のなにを知ってるんだよ?
「今は、衝撃のほうが大きいだけだろ」
ああ、そういう、一般論ね。
「そっか」
それなら、やっぱり。
『私』が言ったように。
いつか、泣きたくなるんだろうか。
「……あのさ!」
「なに?」
「俺は、断じて、ロリコンでは無いからな!」
「……私も、ショタコンでは無いよ?」
ならお互いに安心という、そういう話?
かと思ったら、頭を抱え込まれるような感じで抱き込まれました。
「……ロリコンじゃ、ないんだよね?」
「……そうだよ」
「なら、これは、一体」
ロリータには興味は無いが、お前自身が……!という話なら、それも遠慮したいんですが。
「今じゃ、なくてもいいけど。泣きたくなったら、我慢するなよ。泣けよ」
ああ、そういう話か。
なるほどこれが、ただしイケメンに限る!ってヤツか。
やっぱコイツ前回からイケメンだったんだなチクショウ。
「……まだ、泣けないみたいだけど。もうちょっと、このままでもいい?」
「……おう」
パパンの温もりを思い出す……にはちょっと若すぎるが、なんかこう、じわじわと。
「……君はさ」
「……それ。」
「ん?」
「なんで、名前。呼ばねえの?」
「そう、それ。自分のこと、ヘンリーだって、思う?」
「……ヘンリーだろ、俺は」
「そっか。じゃあ、いいんだね?そう呼んで」
「いいよ。……聞くか?普通」
「普通じゃ無いでしょ、私たちは」
「……ああ。そういう、話か」
「そう」
察しがいいな。
コレが、イケメンか!
「……ドーラだろ、お前は」
「そうかな」
「俺は、そこにこだわるほど、家族の繋がりが強くなかったから。わかんねえけど。あの人の娘として、ずっと生きてきたのは、お前だろ」
「そうかな」
そんなんで、いいのかな。
「そうだよ」
そうだろうか。
偽ってきたことが多すぎて、そうだとしても、簡単に割り切れそうも無いけど。
パパンと、ママンに、そう言われない限り。
そう思うことは、出来そうも無いけど。
「ありがとう」
「おう」
そう思う人も、いるんだ。
「……ドーラって。呼んでも、いいか?」
可愛いドーラちゃんを演じて無いときにそう呼ばれるのは、慣れないけど。
「うん」
今の私の名前は、それしか無いから。
「たぶん、十年くらい。よろしくね、ヘンリー」
「おう。よろしくな、ドーラ」
それも、慣れていこう。
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