ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
四十三話:六歳の決意
前書き
シリアス注意報、継続中。
嫌いな方はご注意ください。
どこまでも楽しそうに、歌でも歌うような調子で、ゲマが喋る。
「この子供の命が惜しくなければ、どうぞ存分に、戦いなさい。この死神の鎌に首を刎ねられて、この子供の魂は、永遠に地獄を彷徨うことになるでしょうけれどね?いいですねえ、それも。楽しいですねえ!ほっほっほっ!」
高笑いするゲマを、いや、ゲマに命を握られる私を。
静かな瞳で、見詰めるパパン。
何か言おうとするのに言葉にならず、呻くだけの私。
パパンが、剣を遠くに放る。
「……う……!!う、う……!!」
やめて、おとうさん。
こうなると知ってたのに、喉が、口が勝手に動くのに。
言葉には、ならない。
ゲマがジャミとゴンズを回復し、高慢な馬面と下卑た猪顔が、パパンに勿体ぶった足取りで歩み寄る。
蹄が、剣が、振り下ろされる。
鍛え抜かれた身体は、格下の攻撃を容易には通さないが、余裕の笑みを以て始められた一方的な暴行は、なんとか相手を痛め付けてやろうと、躍起になって続き。
その身体を、誇りまでも、なんとしても打ち砕き踏み躙ってやるとの意地に変わり、何度も何度も、執拗に繰り返されて。
ただじっと黙って耐えるパパンの身体は、やがて悲鳴を上げはじめる。
骨が砕け、肉が裂かれ、血が流れる。
息を切らしながら攻撃を続ける魔物たちの顔が、悦楽に歪む。
それでもパパンは、ただじっと耐える。
こんな、馬鹿な娘の。
父親の言うことを聞かず、危険に首を突っ込んだ、馬鹿な娘のために。
文句も言わずに、あなたは黙って、死んでいくの?
偽物の、娘なんかのために。
あなたの命は、こんな偽物のためなんかじゃなくて。
愛するマーサさんを探すための、大切な命なのに。
……私の、せいだ。
私が、可愛い娘を、上手く演じたりしたから。
綺麗な器に入り込んだ、汚い偽物のくせに、可愛い娘に、成り済ましたりしたから。
この人は、受け容れるべきでは無い運命を、あっさり受け容れて。
後悔もせずに、死んでいく。
「……う……お、……おとう、さん……」
偽物のくせに、そう呼ぶ資格なんて無いのに。
あなたが娘に注いだ愛を、自分のものだと勘違いして。
頭では違うと解ってるのに、私の心が、叫ぶ。
「……おとうさん……お父さん……!」
真実を知ったあなたが、どう思うとしても。
私は、勝手に、あなたを父と、思ってしまってる。
「……ドーラ!気が付いて、いるんだな……!」
「お父……さん……!」
ごめんなさい、ウソをついて、ごめんなさい。
でも、きっと、きっと助けるから。
今はダメでも、最後にはきっと、助けるから。
「ドーラ……!生きろ……!生き、延びろ……!そして、幸せに……なって、くれ……!」
「!!」
助けろって、言ってよ。
マーサさんを、お母さんを。
まだ、生きてるって。助けろって、言ってよ。
絶対に、助けるから。
あなたの言葉を糧に、頑張るから。
「いいか、父は、……母も……!幸せ、だった……!短くとも、お前と、ドーラと、過ごせて。幸せ、だった……!」
「お父さん……お父さん……」
違うんだよ、娘じゃ無いんだよ。
偽物だったんだよ、全部。
そんなので、満足しないで。
もっと、求めてよ。
妻より、偽物を選ぶなんて。
そんなの、ダメだよ。
ゲマが、笑う。
「ほっほっほっ!いいですねえ!美しいじゃ、ないですか!美しい、親子愛ですよ!その美しさに免じて、止めは、私自ら!刺してあげましょう!」
ゲマの指先に小さな火球が生まれ、みるみる大きく育っていく。
「……お父さん!私!諦めませんから!絶対に、諦めません!!」
あなたが、諦めても。
教えても、くれなくても。
母を助けることも、父を助けることも。
絶対に、諦めない。
パパスが、微笑む。
巨大な火球が、ゆっくりと放たれる。
骨の折れた足で、それでもしっかりと立ち上がり、まっすぐに火球を受け止める。
「ドーラ!!愛して」
炎に焼かれて、最後まで言い切ることは出来なくて。
「お父さん……!!」
それが、私に向けられた言葉ではなくても。
私も、あなたを。
お父さんを、そしてお母さんを。
愛して、ます。
いつか、ちゃんと。
真実と共に、伝えます。
ゲマの高笑いが、響き渡る。
「ほっほっほっ!おっほっほっほっほっ!美しい!本当に、美しいですねえ!!ご安心なさい、あなたの大切な娘は、我が教祖様の奴隷として!一生、幸せに暮らすのですから!!」
甲高い、耳障りな笑い声はしばらく続き、やがてピタリと止まる。
「ジャミ。ゴンズ。この子供たちを、運び出しなさい」
「はっ!」
「このキラーパンサーの仔は、いかがいたしましょう」
「捨て置きなさい。野に返ればやがてその魔性を取り戻し、少しは教祖様のお役に立つでしょう」
「畏まりました」
「……ん?少し、待ちなさい。その、娘のほう」
不快な指が、私の道具袋を探る。
「この宝石は……。いや……。……どちらにしても、こうしておきましょう」
金色に光る宝玉が、砕け散る。
「不快な光で、手が汚れてしまいました。さ、行きますよ」
空間がぶれて、景色が失われる。
満ち足りた顔の魔物たちに、荷物のように運ばれる。
……今は、そうやって。
災いの芽を、摘んだつもりで。
勝ったつもりで、いればいい。
その行動が、傲慢が。
全てが、自分たちを破滅に導いたと。
いずれ、知るのだから。
覚えてろ、いや、覚えてなくても、どっちでもいい。
どちらにしても私は忘れないし、諦めない。
生きることも、助けることも、お前たちを滅ぼすことも。
どれも、きっと、諦めない!
最後に笑うのは、私たちだ!!
後書き
シリアスな場面なので突っ走りましたが、路線変更というわけではありません。
この作品は、基本コメディです。
そのはずです。
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