| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?

作者:あさつき
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

一部:超絶美少女幼年期
  四十三話:六歳の決意

 
前書き
 シリアス注意報、継続中。
 嫌いな方はご注意ください。 

 
 どこまでも楽しそうに、歌でも歌うような調子で、ゲマが喋る。

「この子供の命が惜しくなければ、どうぞ存分に、戦いなさい。この死神の鎌に首を刎ねられて、この子供の魂は、永遠に地獄を彷徨うことになるでしょうけれどね?いいですねえ、それも。楽しいですねえ!ほっほっほっ!」

 高笑いするゲマを、いや、ゲマに命を握られる私を。
 静かな瞳で、見詰めるパパン。

 何か言おうとするのに言葉にならず、呻くだけの私。

 パパンが、剣を遠くに放る。

「……う……!!う、う……!!」

 やめて、おとうさん。

 こうなると知ってたのに、喉が、口が勝手に動くのに。
 言葉には、ならない。

 ゲマがジャミとゴンズを回復し、高慢な馬面と下卑た猪顔が、パパンに勿体ぶった足取りで歩み寄る。
 蹄が、剣が、振り下ろされる。

 鍛え抜かれた身体は、格下の攻撃を容易には通さないが、余裕の笑みを以て始められた一方的な暴行は、なんとか相手を痛め付けてやろうと、躍起になって続き。
 その身体を、誇りまでも、なんとしても打ち砕き踏み躙ってやるとの意地に変わり、何度も何度も、執拗に繰り返されて。
 ただじっと黙って耐えるパパンの身体は、やがて悲鳴を上げはじめる。
 骨が砕け、肉が裂かれ、血が流れる。
 息を切らしながら攻撃を続ける魔物たちの顔が、悦楽に歪む。

 それでもパパンは、ただじっと耐える。


 こんな、馬鹿な娘の。
 父親の言うことを聞かず、危険に首を突っ込んだ、馬鹿な娘のために。
 文句も言わずに、あなたは黙って、死んでいくの?
 偽物の、娘なんかのために。

 あなたの命は、こんな偽物のためなんかじゃなくて。
 愛するマーサさんを探すための、大切な命なのに。

 ……私の、せいだ。
 私が、可愛い娘を、上手く演じたりしたから。
 綺麗な器に入り込んだ、汚い偽物のくせに、可愛い娘に、成り済ましたりしたから。
 この人は、受け容れるべきでは無い運命を、あっさり受け容れて。
 後悔もせずに、死んでいく。

「……う……お、……おとう、さん……」

 偽物のくせに、そう呼ぶ資格なんて無いのに。
 あなたが(ドーラ)に注いだ愛を、自分のものだと勘違いして。
 頭では違うと解ってるのに、私の心が、叫ぶ。

「……おとうさん……お父さん……!」

 真実を知ったあなたが、どう思うとしても。
 私は、勝手に、あなたを父と、思ってしまってる。

「……ドーラ!気が付いて、いるんだな……!」
「お父……さん……!」

 ごめんなさい、ウソをついて、ごめんなさい。
 でも、きっと、きっと助けるから。
 今はダメでも、最後にはきっと、助けるから。

「ドーラ……!生きろ……!生き、延びろ……!そして、幸せに……なって、くれ……!」
「!!」

 助けろって、言ってよ。
 マーサさんを、お母さんを。
 まだ、生きてるって。助けろって、言ってよ。
 絶対に、助けるから。
 あなたの言葉を糧に、頑張るから。

「いいか、父は、……母も……!幸せ、だった……!短くとも、お前と、ドーラと、過ごせて。幸せ、だった……!」
「お父さん……お父さん……」

 違うんだよ、(ドーラ)じゃ無いんだよ。
 偽物だったんだよ、全部。
 そんなので、満足しないで。
 もっと、求めてよ。
 (マーサ)より、偽物(ドーラ)を選ぶなんて。
 そんなの、ダメだよ。

 ゲマが、笑う。

「ほっほっほっ!いいですねえ!美しいじゃ、ないですか!美しい、親子愛ですよ!その美しさに免じて、(とど)めは、私自ら!刺してあげましょう!」

 ゲマの指先に小さな火球が生まれ、みるみる大きく育っていく。

「……お父さん!私!諦めませんから!絶対に、諦めません!!」

 あなたが、諦めても。
 教えても、くれなくても。
 (マーサ)を助けることも、(パパス)を助けることも。
 絶対に、諦めない。

 パパスが、微笑む。
 巨大な火球が、ゆっくりと放たれる。

 骨の折れた足で、それでもしっかりと立ち上がり、まっすぐに火球を受け止める。

「ドーラ!!愛して」

 炎に焼かれて、最後まで言い切ることは出来なくて。

「お父さん……!!」

 それが、私に向けられた言葉ではなくても。
 私も、あなたを。
 お父さんを、そしてお母さんを。
 愛して、ます。

 いつか、ちゃんと。
 真実と共に、伝えます。


 ゲマの高笑いが、響き渡る。

「ほっほっほっ!おっほっほっほっほっ!美しい!本当に、美しいですねえ!!ご安心なさい、あなたの大切な娘は、我が教祖様の奴隷として!一生、幸せに暮らすのですから!!」

 甲高い、耳障りな笑い声はしばらく続き、やがてピタリと止まる。

「ジャミ。ゴンズ。この子供たちを、運び出しなさい」
「はっ!」
「このキラーパンサーの仔は、いかがいたしましょう」
「捨て置きなさい。野に返ればやがてその魔性を取り戻し、少しは教祖様のお役に立つでしょう」
「畏まりました」
「……ん?少し、待ちなさい。その、娘のほう」

 不快な指が、私の道具袋を探る。

「この宝石は……。いや……。……どちらにしても、こうしておきましょう」

 金色に光る宝玉が、砕け散る。

「不快な光で、手が汚れてしまいました。さ、行きますよ」

 空間がぶれて、景色が失われる。
 満ち足りた顔の魔物たちに、荷物のように運ばれる。


 ……今は、そうやって。
 災いの芽を、摘んだつもりで。
 勝ったつもりで、いればいい。

 その行動が、傲慢が。
 全てが、自分たちを破滅に導いたと。
 いずれ、知るのだから。

 覚えてろ、いや、覚えてなくても、どっちでもいい。
 どちらにしても私は忘れないし、諦めない。

 生きることも、助けることも、お前たちを滅ぼすことも。
 どれも、きっと、諦めない!


 最後に笑うのは、私たちだ!! 
 

 
後書き
 シリアスな場面なので突っ走りましたが、路線変更というわけではありません。
 この作品は、基本コメディです。
 そのはずです。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧