八条学園怪異譚
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第三十七話 テケテケその十四
「普通はね」
「まあ秋刀魚にワインってね」
「白ならまだあるけれど」
白ワインは日本酒の代用だ、日本酒を飲めない人は海のものを肴にする時には白ワインを飲むのである。
「赤はないから」
「欧州の食堂で日本酒も同じよね」
「だからね、そこで飲まない?」
どうせ飲むのならと、愛実はあらためて妖怪達に言った。
「そうしない?」
「そうね、、言われてみればそっちの方がいいわね」
テケテケは愛実の主張に柔軟に応えた。
「鉄道模型動くのを観ながら飲む方がね」
「豪勢な食堂車でのパーティーもいいけれどね」
「それもいいわね」
口裂け女と花子さんも賛成する、これで話は決まった。
そのうえでだった、五人は食堂車ではなくその模型のところに向かった。三人用の席が並べて置かれている、その前に市街地や山地、トンネルや橋が絶妙に組み合わされたディオラマがあった。大きな駅まで忠実に作られている。
そのディオラマを観てだ、愛実はテケテケに尋ねた。
「これが、よね」
「そう、その鉄道模型のディオラマよ」
「動くのよね、模型が」
「今も動かせるわよ」
今もそれが出来るというのだ。
「観てみる?っていうか動くのを観ながらよね」
「そう、飲もうかなって思ってるの」
愛実は自分の横にいるテケテケの問いに答えた。
「それで動かせるの?」
「今すぐにでもね」
テケテケは愛実の問いににこりとして答えた。
「出来るわよ」
「じゃあ御願い出来る?」
「ええ、じゃあちょっと待ってね」
テケテケは車椅子を動かしてディオラマ、ガラスケースで囲まれている十メートル四方のその奥に向かった、そこにあった扉に入って。
暫くして戻って来た、そのうえで愛実と聖花に言う。
「これでね五分したらね」
「動くのね、模型が」
「ええ、何しろここにずっといるからね」
それでだというのだ。
「動かし方もわかってるから」
「じゃあいつも自分で動かしてるとか?」
「ええ、そうよ」
その通りだというのだ。
「夜暇な時とかね」
「そうなのね」
「面白いのよ、何度観ても」
こう笑顔で言う。
「飽きないのよね」
「何か鉄女みたいね」
「実際にそうよ」
テケテケは愛実に自分も鉄女だと答えた。
「私鉄道好きだから」
「それで時間があると観てるのね」
「そうよ、じゃあお酒とおつまみ出してね」
言いながら早速そうしたものを出す。
「観ながら飲もうね」
「ええ、じゃあね」
「飲もう」
愛実だけでなく聖花も応える、そしてだった。
五人は席を動かしてディオラマが動くのが見えしかも互いに話をしながら飲める様な場所にした、そしてだった。
テケテケは動き出した鉄道模型を観ながら酒が入ったコップを片手に言った。
「こうして飲むお酒もいいものね」
「そうよね、とてもね」
「いいわよね」
二人も飲みながらテケテケに応える。
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