ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
三十八話:敵情視察は大切です
ラインハットの城下町に、着きました!
都会です!賑わってます!華やかです!
前世での文明の発達した大都会を知ってる者としては、気後れするほどでも無いんですが。
今生で、この世界で、これほど栄えてる町を見るのは、初めてですからね!
文明が前世ほど発達してないというのも、また味ですしね!
ウキウキしますね!
時間があれば観光とかしたいところですが、さすがに王様にパパンが呼び出し食らってる状況で、そんな場合では無いので。
まっすぐにお城に向かうパパンについて、大人しくお城に向かいます。
この後もたぶんそんな場合では無いし、十年後は寂れてるし。おあずけ期間長いな、これも!まあいいか!大した問題では無い!とか自分に言い聞かせつつ。
今さらながら魔物とか連れて城に入って大丈夫なんだろうか、なんか聞かれたらネコだと言い張ろう、とドキドキしながら、城の正面玄関に入り。
見慣れない子連れ(かつ魔物連れ)の旅人が、堂々と踏み込んでくるのに警戒も顕に立ち塞がる衛兵に、パパンが動じずに名乗りを上げて王の招きである旨を伝えると、あっさり警戒を解いて態度も改め、子供と魔物の件にも特につっこまれずに、丁重に奥へと通され。
やはりパパンの威容の前には、少々の不審な点など物の数にも入らないのね!きゃー!パパ、かっこいー!
などと内心盛り上がりつつ、玉座の間へと案内されます。
「おお!待ちかねたぞ!パパスとやら、其方の勇猛さ、この儂も聞き及んでおる!その腕を見込んで、ちと頼みがあるのだが。……パパス、もう少し、側に!皆の者は、下がって良いぞ!」
初対面ぽいことを言いながら、旧友に会ったかのように(『私』によれば友人関係らしいので、実際そうなんだろう)嬉しそうにパパンに呼び掛け、人払いをする王様。
そして王様とパパンに勧められて、話し込むふたりから離れ、お城の探検を開始する私。
うむうむ、男同士、積もる話もあるでしょうからね!邪魔なんか、しませんとも!
わざわざパパンを呼んでヘンリーのお守り、っていうか教育?をさせる理由はちょっと気になるが、どうせ私がいるところでは話してくれないだろうしね!
それに敵を知るために、情報収集はきっちりしとかないといけないし!
ということで、意気込んで城内を歩き始める私。
兵士Aの証言。
「ヘンリー様は物静かというか、大人しくてお優しいのは良いんだが。次の王としては、今ひとつ覇気に欠けるというか。もう少し、やんちゃなくらいでもいいと思うんだがなあ」
……はい?
誰の話ですか?
デール王子とかじゃ、なくて?
……これだけじゃ、わからん。
次、いってみよう!
兵士Bの証言。
「次の王は、ヘンリー様か、デール様か。よほどのことが無い限り、長男のヘンリー様なんだろうが。肝心のご本人に、やる気がなあ」
これはまあ、わからんでは無い。
ゲームでも、お世辞にもやる気があったようには見えなかったし。
……なのに、何?
この、漂う違和感は?
厨房の女性の証言。
「みんな、ヘンリー様を大人しすぎるだの、やる気が無いだのって言うけど。あたしは、そうは思わないね。小さいときお母上を亡くして、王様は新しい王妃様をもらって。その王妃様と、その息子で弟君のデール様を立てて、一歩引いて振る舞うだなんて、なんとも健気じゃないかい。あの聡明さは、まさしく次の王様に相応しいと、あたしは思うね!」
だから、誰だそれは!!
なんなの?このヘンリーは。
誰か、誰か!
私の知ってるヘンリーを、知ってる人は、いないの!?
厨房の男の証言。
「わっ!!……ああ、びっくりした。てっきり、ヘンリー王子かと。……いえね、あの大人しくてお優しいヘンリー様が、おかしな話なんだけど。俺がカエルをキライなのを知ってて、背中にカエルを入れてくるんだよ。俺だけ嫌われてるのかと思えば、それ以外はそうでも無いし。構ってほしくてそうしてるのかと思うと、強くも言えなくてね。でもあれだけは本当に、勘弁してほしいなあ」
あ、ちょっと正しいヘンリー成分が出てきた。
でも、足りない!
これだけじゃ、全然足りないよ!
どうなってんの、本当に!
厨房の女の子の証言。
「あら。あなた、ヘンリー様の遊び相手として、呼ばれた子?……ふ、ふーん……そう、なんだー……」
……今のは!
わかる!わかるよ!
競争相手として認識した上に、一瞬にして敗北を悟ってしまった、女の目!
ちょ、ま!
ドーラちゃん相手では、女として完全に負けた感を、感じてしまうのはわかるけれども!
勝手に恋敵認定した上に、あっさり諦めて、譲らないで!
いらないから!
本命のマリアさんが控えているとはいえ、変に外堀を埋めるようなことは、本当にやめて欲しい!!
ていうか、マジでなんなの?このヘンリー。
女の敵なの?
モテモテイケメン(美女)ライフを目指す上ですら、私の敵なの!?
……負けない!
モテモテイケメン主人公の座は、性別の違いという障害を抱えていても、譲らぬ!!
ということで、どうやら想定以上の強敵であるらしいヘンリーの情報を集め終え、頭の中で対ヘンリールート回避プランを練り直し、さらにイケメン主人公ポジ死守プランも新たに組み込みつつ、宿敵の部屋に向かう……前に、念のため王妃様とデール王子の部屋に向かう私。
王妃様の証言。
「なんじゃ、其方は?我が子デールに、挨拶に来たのですか?おほほほほ。其方は幼いのに、なかなか目先が利くと見える。兄のヘンリーより、このデールのほうが、よほど次の王に相応しいと。そう、思ったのですね?おほほほほ。……陛下も、早くお諦めになれば宜しいのに。肝心の当人に、その気が無いものを。無理強いしても、誰も、幸せにはなれぬものを……」
前半はゲームまんまでしたが、後半の独り言的なそれは、なんでしょうか?
なんか王妃様も若干、キャラ違くね?
「……其方は、美しい子供じゃの。身分さえ釣り合えば、デールの妃にしても良さそうじゃ。どうかえ?」
いや、そういうのは、結構です。
「おうひさまは、えらいおうちのこじゃないと、ダメなんですよね?わたしは、ただの、むらのこどもですから。おうじさまとは、つりあいません。」
「そうかえ。惜しいの。……いや、いっそ、何処ぞの養女にでもしてしまえば……」
断ったのに、具体的なプランが進行し始めた。
デール王子の話聞いて、さっさと逃げよう。
デール王子の証言。
「ぼく、おうさまなんか、なりたくないけど……。それで、あにうえが、よろこぶなら……」
このヘンリー、手回し良すぎである。
何?
自分が王様やりたくないからって、幼い弟を洗脳済み!?
鬼じゃね?
弟に王位押し付けて、自分は悠々、王族ライフ?
……ちょっと、新しいヘンリー像も、混乱してきた。
ちょっと、かなり。
キャラが、一定してない。
……もう、会わないとわかんないね!
人の言葉を当てにするより、自分の目で、きちんと確認するべき!
もとより、鵜呑みにするつもりは無かったけれども!
と、いよいよ宿敵に挑む決意を固めて王妃様の部屋を出て、王妃様の部屋とヘンリーの部屋、玉座の間へとそれぞれ通じているホールに戻ると。
各通路を守る衛兵さんの他に、パパンもそこにいました。
王様とのお話は、終わったんですね!
……遠くね?居場所が。
ヘンリーのとこから。
ゲームだと、人目に触れない、ヘンリーのプライベートエリア的な、扉の先の廊下に、パパンはいましたけれども。
「おとうさん。おはなしは、おわったんですか?」
そんなことが聞きたいんじゃ無いけど、とりあえずその辺から攻めてみます。
「ああ、ドーラ。ヘンリー王子のお守りを頼まれてな。本当は王子の側にいたいのだが、どうやら嫌われてしまったようでな。間違っても部屋に入って来ないように、兵士が見張れるこの場所にいるようにと、言われてしまったのだ」
なに、その念の入れよう。
周りの衛兵さんが、苦笑しながら話に混ざってきます。
「ヘンリー様は大人しくてお優しいですが、人見知りなところがありますからね。慣れれば、平気になるでしょう。むさ苦しくて申し訳ありませんが、今しばらく、我々と一緒で、ご辛抱ください」
「仕事の邪魔をして、済まないな」
「とんでもない!気分も変わるし、珍しいお話も聞けますし。有り難いくらいですよ!」
談笑する、大人のみなさん。
和やかで大変よろしいんですが、話を進めても良いでしょうか。
「わたしも、ここにいれば、いいですか?」
もう行ってきますでもいい気もするが、あんまり乗り気な感じを醸し出して、間違って外堀とか埋められちゃうと、本当に困るので。
「いや。ドーラなら子供同士で、王子とも仲良くなれるかもしれない。良ければ、頑張ってみてくれないか?」
「そうですね!こんな可愛らしいお嬢さんなら、ヘンリー王子も大喜びですよ!」
……衛兵さん、余計なことは言わんでよろしい!
喜ばれても、困るから!
パパンからも、冷気が流れ出してるし!!
衛兵さんが何かを察知して冷や汗を流し、慌てた感じで言い直します。
「あ、いや、ヘンリー王子が特に、ということでは無く!男なら誰でも、可愛らしい女性には、弱いものでしょう!」
「……ドーラ。なにかあったら、すぐに父さんを呼ぶんだぞ」
心配するような種類のなにかは、さすがに無いと思いますが。
子供だし。お互いに。
めんどくさいので、もう行こう。
「はい!それじゃ、がんばってきますね!おとうさんのために!」
フォローも兼ねて発した私の宣言に、パパンの発する冷気が和らぎ、衛兵さんから感謝の視線が注がれます。
うむ、これに懲りたら、不用意な言動は慎むように!
お互いの、幸せのためにね!
では、本当に!
宿敵退治に、行ってきます!
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