ドラクエⅤ主人公に転生したのでモテモテ☆イケメンライフを満喫できるかと思ったら女でした。中の人?女ですが、なにか?
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一部:超絶美少女幼年期
三十九話:ヘンリー王子様にお会いします
いよいよ、この扉の、先に!
宿敵が、いる!
第一印象は大事だからね、一目惚れさせちゃうとか以ての外だけど、だからって第一印象最悪っていうのも、悪感情が反転して一気に好意が燃え上がったり、しちゃうからね!
無難に!
当たり障り無い感じで!
まずは、様子見て行こう!
ということで無難に礼儀を守って、まずは扉をノックします。
「はいれ」
宿敵から入室のお許しが出たところで、扉を開いてお部屋に入ります。
「しつれい、します」
声かけも、忘れません。
宿敵らしき子供は窓際に立ち、外の景色を眺めています。
……いきなり顔は見せずに後ろ姿から期待を持たせるとは、やりおる!
やはり、コイツが、宿敵!
ゆっくりと、振り返る宿敵。
……うっ!?
な、なんか、キラキラしてる!?
王子様なんだから、きっと素敵なキラキラ☆オーラを纏ってるはずだよネ☆キャハ☆なんていう乙女チック妄想力は、持ち合わせていない筈なのに!!(別種の妄想力なら色々持ってるけれども)
しかも相手は、宿敵だというのに!!
いやいや、平常心、平常心!
雰囲気に、飲まれるな!!
と、なんとか平静を保って営業スマイルを浮かべる私に、宿敵はこれまたキラキラしい笑顔を見せて。
「やあ!きみが、パパスのむすこかい?はじめまして!ぼくが、このしろの、だいいちおうじ。ヘンリーだ!」
……ハア?
今、なんつった?
パパスの、息子?って、言った?
この可愛らしいドーラちゃんの、どこをどう見たら、男に見えるんだよ!
初めて言われたよ!
女の子に間違われるほど可愛い男の子とかはまあ、あるかもしれないけど!
逆は、無いだろう!!
と、イラッ☆ときて思わず引き攣りそうになる営業スマイルを辛うじて保ち、
「はじめまして、おうじさま!パパスの、むすめの!ドーラ、です!」
と、気持ち娘を強調して自己紹介する私。
「そうか、パパスのむす……むすめ?」
にこやかに応じようとした近視眼が、私の発言を咀嚼して固まり。
この期に及んで疑問形かよ!
と、さらにイラッときつつ、
「はい!むすめ!の、ドーラ!です!」
と、ダメ押しする私。
「……むすめ」
「はい!」
「……ドーラ?」
「はい!」
くどいな!
なんだよ、事前に間違った情報でも与えられてたわけ?
「わたし。おとこのこに、みえますか?」
小首を傾げて可愛らしく問いかけたりしたら惚れられてしまうかもしれないので、あくまで営業スマイルのままで!
事務的に、問いかけます。
「……いや」
ですよね!
ここで肯定しやがったら何したかわかんないけどね!
良かったよ、惨劇を繰り広げずに済んで!
主にパパンの、面子のために!
「……そうか……そうだよな、そんなことも、あるよな……そうか、むすめで、ドーラか……リュカじゃなくてか……」
なんかキラキラオーラも消え失せて、ブツブツ言ってる勘違い野郎。
……って、今。
なにか、聞き捨てならない……。
「……おうじさま。……リュカ、って……?」
ハッとして顔を上げる、うっかり君。
「あ、いや。なんでもないんだ」
……言ったこと自体は、否定しないんですね。
「……おうじさま。わからなかったら、いいんですけど。この、ことばに、おこころあたりは」
「な、なにかな?」
「ドラゴン……」
ビクッとする、元キラキラ。
「……クエスト?」
……うわあ。
「スクエア……」
「……エニックス」
……やっぱりか。
「てんくうの……」
「……はなよめ」
…………ヘンリー!
お前もか!!
この世界に生まれ落ちてからずっと、宿敵的存在として、回避対策を練っていたその相手。
ヘンリーくんは、転生者でした。
と、嫌な事実の確認が取れたところで、お互いに腹を割って話し合うことにします。
色々と思うところはあるけれども、そんなことより今は時間が無いのでね!
「早速だけど。俺、独りで誘拐されるから。放っといてくれ」
「お断りします」
早速、意見の相違がありました。
うんうん、例え転生者であろうとも、宿敵と解り合えるはずが無いよね!
だが、なんとか説き伏せないと!
「……なんでだよ。お前、親父が死んでもいいのか?仮にも、親だろ?」
あ、助けてくれるつもりなんですね。
それなら話は早いかも。
「パパ……スは、助けられません。どうやっても、死ぬ。ヘンリーを見捨てると、もっと余計な人まで、死にます」
危ない、腹割った結果、パパンとか言いそうになった!
そこまでぶっちゃける気は、まだ無い!
「なんで、わかるんだよ」
「ゴールドオーブのイベント。覚えてるでしょ?」
「……それ……!過去は、変えられないんじゃないのか……!?」
「変えてないから。はじめから、そうだっただけだから。知ってるんだし、最初から」
「……ズルくね?それ」
「ズルいと思います。チートです。その議論がしたいなら、後で付き合うから。とにかく、ゲーム通りに、誘拐されたヘンリーをパパ……スと私が追いかけて、私がヘンリーと一緒に奴隷やるのが、一番被害が少ないの」
「……俺は。王妃と組んで、俺の誘拐を仕組んでる。俺は、誘拐された後は、他の国に逃がしてもらえる手筈になってる」
自作自演かよ!
実行するなら、狂言では無いけど!
「……私が教えてもらった内容では、ヘンリーがそんな人生を歩めるルートは、無かった」
「……それを、俺に。信じろと?」
そうだよね。
私からすれば、『私』の言ったことだから。
疑う理由は、無い。
でも、ヘンリーの中の人からすれば。
転生仲間というだけの、初対面の人間だ。
言うことを鵜呑みにするなんて、馬鹿のすることだ。
自分の計画通りに行けば、城を出て自由に暮らせるはずなのに。
私に付き合って、奴隷をやれって、言われてるってことなんだ。
そんなことは出来ないって、私は知ってるけど。
そのつもりで、説得をしないといけないんだ。
「……付き合ってもらえないと、サンタローズの村の人たちが、死にます」
「……元々、死ぬはずの、人たちだろ」
「付き合ってもらえれば、助かるの」
なんでなのか、理由は書いて無かったけど。
きっとヘンリーが転生者だったからだと、今ならわかる。
「……それだって、ウソかもしれないだろ」
「……そうだね」
情報を出すだけじゃ、同じだ。
結局、信じられないっていう話になるんだ。
自分の、言葉で。
ちゃんと、伝えないと。
姿勢を正して、まっすぐヘンリーを見つめて、改めて言います。
「お願い。付き合ってもらっても、返せるものとか、無いけど。あなたからすれば、ただのゲームの中の、モブでも。私には、六年近く一緒にいた、大事な人たちなの。助けたいの。あなたのことも、ウソは言ってない。お願いだから、私を信じて。私に、あなたの人生を、預けて」
ドーラちゃんを演じてるときなら、瞳を潤ませて、上目遣いで、表情も作り込んで。
完全に、落としに行くところだけれども。
それで落とせるなら、泣き落としでもするけれど。
コイツには、たぶんちゃんと言わないと、伝わらない。
ヘンリーが、黙ってこちらを見つめ返します。
……ダメかな?
そういうルートが書いてあったんだから、無理ってことは、無いと思うんだけど。
私が説得の仕方を間違えて、フラグが叩き折れるということは、十分に有り得るので!
お願い!
頼むよ!
いいって、言って!
祈る思いでヘンリーから視線を逸らさずにいた私から、ヘンリーの方が視線を外し、ガシガシと頭を掻きます。
「……あー!もう!わかったよ!」
えっ!いいの!?
「……信じて、くれるの?」
「……別に、そこまで疑ってたわけでも無いしな。奴隷とか、避けられるもんなら避けたかったけど。そのせいで人が死ぬなら、話は別だからな」
そこは完全に同意!
やらなくて済むならやりたくないよね、奴隷とか!
なんだ、いいヤツじゃん、ヘンリー!
「ありがとう!本当に、ありがとう!」
思わずヘンリーの手を取り、ぶんぶんと振り回して喜ぶ私。
ヘンリーが、微妙な顔をします。
……ハッ!
しまった、調子に乗ってしまった!
いくら中の人がいいヤツでも、遺伝子はヘンリーに違い無いのに!
「ご、ごめん」
今さら感漂うが、しないよりマシなので、とりあえず気付いた段階で手を離す私。
赤面とかしてないし、大丈夫だよね!
セーフ!セーーフ!!
「……一応、聞くけど。中の人……女?」
「そうですが、なにか?」
……くっ!
痛いとこ突いてきやがって!
そうだよ、どうせ女だから、こんな肝心なところで女に生まれちゃったんだよ!
くそっ、ちょっとイケメン(予備軍)だと思って!
協力は有り難いけど、負けないんだからね!
「……聞くけど。中の人……男?」
「当たり前だろ!!」
どこの世界の当たり前だよ、転生したのも転生者見るのも初めてなんだから知らないよ、そんなの。
くっ、しかしやはり男か、ただしイケメンに限る!を前世でもきっと経験してきやがったんだコイツ!
ただし、今回のそのポジションは、私がいただくことに決まってますから!
「……そろそろ、時間だ。俺は予定通り、拐われるけど。お前はお前で、勝手にやれよ」
「おうともさ!」
「……え?そんな、キャラ?」
「おおむね」
「……まあ、いいか。じゃ、後でな」
「うん!後でね!」
ていうか、よく考えたら説得しなくても、勝手に追えば良かったんじゃね?
……まあ、いいか!
十年は一緒にいるんだから、無暗に波風立てることも無いよね!
予定とだいぶ違ったが、ひとつの山は越えたし!
こっから、気を引き締めて行こう!
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