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ハイスクールD×D ~聖人少女と腐った蛇と一途な赤龍帝~

作者:enagon
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第3章 さらば聖剣泥棒コカビエル
  第52話 終わりと始まり

 
前書き


いや~、ついに始まりましたねアニメ2期!
っていうかついにアニメを追い抜かしたと思ったらすぐに追いつかれるどころか追い抜かされちゃいました!
もっと早めに更新したいんですけど、何分研修が忙しくて書く時間がないんですよね。
遅くなって本当に申し訳ありません!
それでもなんとか細々と書いて行きたいと思います!

さて、前回衝撃のラストを迎えましたこの作品!
一体どういうことなのか気になっていた方も多いと思います!
ではどうぞ!


 

 



「にゃ~っはっはっはっは!! 急に2人の気配が消えたから一体どうしたのかと思ったら!」

「ぷぷぷ、姉さま達、グッジョブです」

 黒姉と白音はそう言いつつお腹を抱えて笑ってた。一方他のみんなは目が点になって固まってるわ。そんな中最初に正気になって動き出したのは……

「……っ! 貴様らぁっ!!」

 ゼノヴィアだった。

「やはり堕天使共と繋がっていたな!! 今この場で滅してくれる!!」

 そう言ってゼノヴィアはエクスカリバーを手に私と龍巳に斬りかかって来た。なるほど、そういう解釈になっちゃうか。っていうかやはりって、もしかして最初から私達と堕天使がつながってるとでも思ったのかな? ってそう言えばここにはレイナーレもいるし、そう思われても仕方ない……のかな?

 そんなことを思いつつ私はゼノヴィアが振り下ろしてくるエクスカリバー、破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を私が持ってる天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)で受け止めようとすると

「おっと、そこまでにゃ」

「大人しくしてください」

 一瞬にしてゼノヴィアの背後に回り込んだ黒姉と白音が彼女を床に組敷き、その首元には龍巳が右手に持つ透明の聖剣(エクスカリバー・トランスペアレンシー)を突きつけた。そのあまりの速さにゼノヴィアは目を白黒させて混乱してるわ。一方それを見たイリナは

「ゼノヴィア!」

 と叫びつつ日本刀の形に変えた擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を抜き放ち……そのままどうすればいいか分からないといった感じにオロオロし始めた。……うん、やっぱりイリナはこんな感じのほうがかわいいよね。とそこで正気を取り戻したゼノヴィアが

「くっ! 何をやっているイリナ! こいつらはエクスカリバー強奪の犯人だぞ! 早く斬れ!」

 と言った。それに対してイリナは

「でも、だけど……!」

 そのまま擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の切っ先を私と龍巳の間でウロウロさせて泣きそうになってた。

「イリナ、落ち着いて。私は犯人じゃないし、ちゃんと事情も説明するから。だから今はとりあえずその刀を納めて」

 そう言って私はイリナに歩み寄る。

「でも、でも……」

「耳を貸すなイリナ! 早く斬ってしまえ!」

 私とゼノヴィアの間で板挟みになったのかこれまで以上に混乱するイリナ。そんなイリナに私は歩み寄り、右手に持った天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を左腰に再び下げると、空いた右手でイリナの持つ擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)の刀身を掴んだ。

「っつ……」

 掴んだ瞬間手のひらに鋭い痛みが走り、掴んだ場所から血が滴り落ちる。さすが伝説の聖剣、刃物って本来掴んだ程度じゃ斬れないはずだけど、手のひらがバッチリ斬れてるわ。しかも聖剣の聖なるオーラで傷口が焼かれるオマケ付き。悪魔にとっては天敵だということがよく分かる。

 一方それを見て慌てたのは部員の皆とイリナだった。

「火織!?」

「火織ちゃん!? て、手を離して! このままじゃ火織ちゃんが死んじゃう! そんなの、そんなのだめだよ!!」

 血を見てさらに混乱しだすイリナ。刀身掴んでる状態で刀揺らされるとなおさら手のひら斬れて痛いんだけど……

「イリナ、落ち着いて。私は大丈夫だから。ね?」

「あ……」

 私が安心させるように笑いかけるとイリナはそのまま気が抜けてしまったようにその場にへたり込み、擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)から手を離してしまった。

「龍巳」

「うん」

 私は掴みっぱなしだった擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)をそのまま龍巳に投げ渡す。すると龍巳は左手に持ってた夢幻の聖剣(エクスカリバー・ナイトメア)を右腰に下げると、そのまま擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を掴み取った。それを見てゼノヴィアは殺しそうな勢いで私達を睨んできたわ。

「火織さん! すぐに手の治療を!」

 とそこでアーシアが私に走り寄ってきた。さすがに聖剣の切り傷は痛かったから助かるわ。聖なるものが傷口を通って若干身体の中にも入っちゃったけど、まあこっちはそのうち抜けるでしょ。と、治療を受けているとようやく再起動してきた部長が厳しい表情のまま話しかけてきた。

「火織、私はあなたが堕天使と繋がっていたなんて思ってないわ。だけどこれは一体どういうことなのかちゃんと説明してもらえるかしら?」

「ええ、もちろんです。とりあえず皆ソファーに座ってお茶しながら話しましょうか。せっかく買ってきたおはいお屋のトライデント焼きが冷めちゃいますし、ちょっとだけ疲れてるんで。ほら、イリナも一緒に食べよう? 立てる?」

 私はそう言ってイリナに手を伸ばすと、恐る恐るといった感じにアーシアの治療が済んだ私の手を掴んできた。

「あ~、火織、こいつどうするかにゃ?」

 そこで黒姉が未だに床に取り押さえられてるゼノヴィアについて聞いてきた。

「とりあえず動けないように拘束してイリナと一緒に座らせましょ? また斬りかかってきたら話が進まないし」

「了解。聖剣の方は龍巳が預かってくれるかにゃ?」

「ん、分かった」

 そう言うと黒姉は仙術の霧と魔法陣でゼノヴィアを拘束し、彼女の持っていた破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)は龍巳が回収した。そんな状態のゼノヴィアは更に眼光を鋭くしてこっちを睨んでるわ。







「さて、そろそろどういうことか説明してもらえるかしら?」

 あの後皆で席についてトライデント焼きを食べつつお茶の時間となり、一服つけた所で部長が聞いてきた。ちなみにイリナは私の隣で小さくなりつつもちょびちょびとトライデント焼きを食べてた。なんか可愛かったな。で、ゼノヴィアの方はというと、食べれるように腕の拘束は解いたんだけど一切出されたものに手を付けなかったわね。

 それでまあ、ずっと懸念してた祐斗なんだけど、なんかどうしていいか分からないといった表情で大人しくしてたわ。まあ実際、衝撃的なことがありすぎてどうしていいのか分からないんでしょうね。

「え~と、まず昨日イリナがうちに来た時に今日一緒に昔良く食べたトライデント焼きを食べようって約束したんですよ。で、放課後になってすぐに龍巳と一緒に買いに行ったんです」

「ええ、そこまではイッセーから聞いているわ」

「で、ですね。買いに行ってる途中に………………襲われたんですよ」

「「「「襲われた!?」」」」

 皆一斉に驚いてるけど、その中で一層驚いてたのは

「襲われたって大丈夫だったの火織ちゃん!? 怪我はない!?」

 そう言いながら隣のイリナが私の身体をあっちこっち触ってきた。そんなイリナの姿に私は苦笑する。敵対してもなおこんなに心配してくれるイリナの態度が思いのほか嬉しかった。

「大丈夫だから落ち着いてイリナ。で、襲ってきた相手なんですけど覚えてるかな? なんとあのフリード・セルゼンだったんですよ」

「「「「「っ!?」」」」」

「「「「………………?」」」」

 その言葉に反応したのはイッセー、アーシア、レイナーレ、イリナ、ゼノヴィアだった。一方他の皆は頭の上にはてなマークを浮かべてるわ。やっぱり覚えてなかったか。

「えぇっと、火織? 誰だったかしら?」

 部長が困惑した表情で聞いてくる。それに答えたのは私ではなくレイナーレだった。

「……私が以前あなた達と敵対した時に従えてたはぐれ悪魔祓い(エクソシスト)の1人よ。確かあの時1人だけ逃げられたって聞いてたけど……」

 そこまで聞いて分からなかった皆も「あぁ、あいつか」といった感じに納得してくれた。

「フリード・セルゼン。元ヴァチカン法王庁直属の悪魔祓い(エクソシスト)ね。信仰心なんてものはなく、あったのはバケモノへの敵対意識と殺意、そして異常なまでの戦闘意識のみ。同胞すらも手にかけるようになり、異端の烙印を押された男よ。……火織ちゃん、そんな奴に襲われて良く無事で……」

 そう言いながらイリナが涙目で私を見てきた。

「あ、あはは……。ま、まあ私は以前一度戦ってあいつの太刀筋とかも覚えてたしね。今回はこの天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を持ってたからスピードは上がってたんだけど、それだけだったから簡単に撃退できたわ」

 それを聞くとイリナとゼノヴィアは驚き、グレモリー眷属の皆はなぜか疲れたような顔をしていた。

「いくら格下といえど相手がエクスカリバーならそう簡単に撃退できないと思うのだけれど……。まあそこはいいわ。火織だし」

 って部長、それどういう意味ですか!? なんか皆もうんうんって頷いてるし! 黒姉や白音も笑ってないで反論してよ!

「……で、撃退した後はどうしたのかしら?」

「……フリードは敵わないとみるや閃光弾使って逃げ出したんです。前回戦った時もそうだったんで注意してたのが功を奏しました。かろうじて見失わずに済んだんで、龍巳と一緒にこっそり後をつけたんです」

「……あなた達、なんて危ないことを。いい? そういうことは今後控えなさい? 何かあったら主である私に報告するの。いいわね?」

「あはは、すみません。急いでたもんで。で、その後フリードは町外れの廃屋に入っていったんです。それで私達も後を追って入ると、どうやら尾行がバレてたみたいで待ち伏せされてました」

 そこまで聞いた皆は息を呑んで、私に続きを促した。

「そこにはフリードの他にもう2人、エクスカリバーを持った剣士と、それから彼らにエクスカリバーを使えるようにしたのはこのわしだ! って自慢するおじいさん、……そして羽を10枚持った墮天使がいたんです」

「「「「「「「「っ!?」」」」」」」」

 そこで皆はもう何度目になるか分からない驚きの表情をした。

「羽が……10枚……」

「おそらくそいつが……」

「コカビエル」

「……で、火織。その後一体どうやって……」

「どうってその………………ちょちょいと」

「「「「「「「「ちょちょい!?」」」」」」」」

「龍巳が」

「「「「「「「「龍巳が!?」」」」」」」」

 そこで皆はぐりんと視線の先を私から龍巳に変えた。その龍巳はというと

「ん、コカビエル、我にとっては所詮雑魚。すぐ勝った」

 と、胸を張りつつ自慢気に言った。それを聞きいよいよ訳が分からないといった表情になったイリナとゼノヴィアとは対照的に眷属の皆は何やら悟りきった表情で遠くを見てた。 

「……はぁ、だいたい分かったわ。つまり龍巳があっという間に全員蹴散らして、その後3本のエクスカリバーを回収してここに来たというわけね」

「ん、ちょっと違う。我倒したのコカビエルだけ。はぐれ悪魔祓い(エクソシスト)倒したのは火織お姉ちゃん」

「……そう、まああなた達がありえないと思っていたけれど墮天使と繋がっていなくて安心したわ」

 そう言ってため息を吐く部長。しかし

「……証拠は?」

 さっきの衝撃から立ち直ったゼノヴィアが殺気を放ちつつ言ってきた。

「証拠はあるのか? 貴様達の言っていることは確かに筋が通っている。しかしそこに物的証拠は1つもない。貴様が嘘をついていないと証明できるのか? ……そもそもこんな子供が堕天使の幹部であるコカビエルを倒すなど考えられん」

 その言葉とともに場の空気が再び張り詰める。それにしても証拠か。確かにゼノヴィアからしてみれば私が嘘を付いていると思っても仕方ないのかな? でも証拠……無いことはないんだけど……でもあれは……。

 その時龍巳が隣から私の服の裾をくいくいっと引っ張った。

「火織お姉ちゃん、あれ見せる」

「あれを? でも……」

「火織、何か証拠になるようなものがあるのなら見せてちょうだい。私の可愛い下僕がいつまでも教会の連中に疑われ続けるというのはいい気がしないの」

「……うぅ~ん、分かりました。じゃあその……心臓の悪い人は目をつぶってて下さい」

 その言葉に皆は首を傾げる。

「火織、一体どういうことかしら?」

「いえ、証拠なんですけど、ちょっとショッキングなものでして。少なくともアーシアは見ないことを勧めるわ」

「ふぇっ? 私ですか?」

 それを聞きさらに混乱するアーシアの目を、レイナーレが手で覆った。

「レイナーレさん?」

「アーシア、火織がそう言うんだから多分見ないほうがいいわ。……私もなんだか嫌な予感がするし」

「奇遇だなレイナーレ。俺も激しく目をつぶりたい」

「正直私も今すぐ前言を撤回したいのだけれど……主として見ない訳にはいかないわ。火織、見せてちょうだい」

「……では」

 私は部長の決意した表情を確認すると、つま先でトントンッと床を叩く。すると私の影がいつものように広がりその中から『それ』がせり上がってきた。その瞬間

「「「「ひぃっ!?!?」」」」

 その瞬間それを見た数人が悲鳴を上げた!

「なっ……なっ……」

「いいアーシア!? 絶対に見ちゃダメよ!!」

「ふぇっ!? ふぇぇっ!?」

「あらあら……これは……」

「これは一体……」

 『それ』を見た数人は絶句し、数人は引いたりと反応は様々だった。皆が驚く『それ』とは………………巨大な一つの氷の塊。そしてその氷の中には………………フリードを含めた3人の悪魔祓い(エクソシスト)と彼らに聖剣を使えるようにしたというバルパー・ガリレイ、そして10枚の翼をズタズタに引き裂かれ、手足を引きちぎられた状態で、ありえないものを見たような恐怖で引きつった顔のコカビエルがいた。うん、自分でやっといてなんだけど、これって割とホラーよね。私も見てて気持ち悪くなってきた。

「あ、ちなみに一瞬で凍らせたんでこの人達は死んでませんよ? 解凍すればちゃんと目を覚ますはずです………………多分」

「そ、そう……。ねぇレイナーレ、この堕天使は……」

「えぇ、間違いないわ。お顔を拝見出来たのなんてほんの数回だけれど間違いなくコカビエル様よ」

「……火織、もういいわ。しまってちょうだい」

「はい」

 その言葉とともに私は氷の塊を再び影の中に戻した。それとともに皆はほっと息を吐く。

「(ねぇ、火織)」

「(うん?)」

 と、そこで黒姉が小声で話しかけてきた。

「(戦ってたのは分かってたんだけど、少しの間気配が消えてたのはどういうこと?)」

 ああ、そのことか。更に聞こえてたのか、白音も私に耳を寄せてくる。

「(コカビエルがあまりにも戦争狂だったからさ、戦争がいかに怖いか思い知らせようと思って)」

「(それと気配が消えることとどう関係するんですか?)」

「(龍巳が翼をズタズタにして飛べなくした後、次元の狭間に放り込んだのよ。で、その後なんだけど………………ベータの群れに襲わせてみた)」

「「((……うわぁ))」」

 ちなみにベータとは、とあるアニメに出てくる人食いの化け物どものことである。詳細はちょっと違うんだけど、グロテスクな見た目で人間をバリボリ食べる姿はまさしく人類の天敵である。

「(じゃあコカビエルの手足が引きちぎられてるのは……)」

「(うん、最初はコカビエルも光の槍で蹴散らしてたんだけど、そのうち物量に押し潰されちゃって最後は……。で、両手両足噛み付かれて悲鳴あげたところで、さすがにもう充分かなと思って凍らせて終わりにしてあげたんだ)」

「(さすがにそれは戦争狂でも戦うのが嫌になりそうにゃね)」

 とそこで、紅茶を飲んだりしてようやく落ち着いたのか、部長が話を再開させた。

「さ、さて、これで私達が堕天使と繋がっていないということを信じてもらえるかしら?」

「あ、ああ、まあそうだな。信じてやってもいい」

 ゼノヴィア、さっきまでの威勢はどこへやら、今は顔を青くしてこっちから目をそらせてるわ。

「ではリアス・グレモリー、お前たちの言うことを信じ、お前たちには手を出さないことを約束する。その代わり我々は即座にエクスカリバーを返還することを要求する」

 その言葉に龍巳が首を傾げた。

「ん、どういうこと? これ、我らが堕天使たちから手に入れたもの。こいつらと関係ない」

「あぁ、そういえばあなたも、それに火織にもまだ結局話していなかったわね。つまりね、あなた達が回収してきた3本のエクスカリバーはもともとコカビエルたちが教会から盗み出したものだったのよ。で、こちらの2人がそれを取り戻すために派遣されて来たというわけ」

「ん、なるほど」

 そう納得したようにつぶやいた龍巳は

「つまり2人、完全なる無駄足」

 その瞬間、空気がビシィッ! と固まった。そしてそんな空気をぶち壊すかのように

「にゃ~っはっはっはっはっは!! 死ぬのも覚悟の上だって意気込んで来ておきながらもう全部終わってたとか!!」

 黒姉、腹を抱えて大笑いである。そしてそれを聞いたイリナは顔を赤くして目をそらしたわ。一方ゼノヴィアは

「えぇい! うるさいこの化け猫め! 今すぐ滅してやろうか!」

「ふぅ~ん? あんたなんかにそんなことが出来るのかにゃ? この期に及んでまだそれ振りほどけにゃいのに?」

「くっ! こんなもの、エクスカリバーさえあれば!」

 そう言いながらなんとか魔法陣と霧の拘束から抜けだそうとするゼノヴィア。でもあれじゃあいつまで経っても無理そうね。

「はぁ、黒歌、その辺にしておきなさい。それから火織と龍巳はそれを返してあげなさい。わざわざこれ以上教会と対立する必要はないし、早々にお帰り願いたいわ」

「くっ、まあいい。おい、そういうことだからさっさとエクスカリバーを返せ。それからこの拘束もいい加減解け」

 そう言ってくるゼノヴィアなんだけど……

「うぅ~ん、返すことには問題ないんだけど……」

「火織ちゃん?」

 少し悩む私にイリナが疑問の声を上げた。周りのみんなからも疑問に思ってるような空気が伝わってくる。そしてそんな空気の中私は………………両手をパンッと合わせイリナに頭を下げた。

「お願い! 1ヶ月、うぅん、2週間でいいからこれ貸して!」

「「「「「「「「「………………はぁっ!?」」」」」」」」」

 おっとここでみなさん見事にハモってきた!

「なっ!? き、貴様どういうつもりだ!? やはり貴様らもエクスカリバーを盗むことが目的だったのか!?」

「いや、そうじゃなくて。っていうか貸してって言ってるじゃない。用事が終わったらちゃんと返すわよ」

「だとしても認められるかそんなこと!」

「えぇ~、いいじゃない。もともとあなた達がコカビエルと戦って取り戻すつもりだったんでしょ? はっきり言っとくけどあなた達の実力じゃもし取り戻せたとしても大怪我は免れないわよ? それをほんのちょっと貸してくれるだけで、怪我もせずに取り返せるんだからいいじゃない。ほら、代わりに取り返してあげたお礼だと思って」

「巫山戯るな! そもそも貴様程度に取り返せたのなら我々だって無事に取り返せたはずだ!」

「……どうしてもダメ?」

「当たり前だ!」

「……よし! じゃあこうしましょ? 私と戦って私に勝てたらすぐに返してあげる! その代わり私が勝ったら2週間貸して!」

「だからなぜ私達が貴様の都合に「いいわ、分かった」イリナ!?」

 私がゼノヴィアを説得しつつもやっぱりダメだったかと諦めかけていたところでイリナが割って入ってきた。

「イリナ! お前何を考えて……!」

「いいじゃないゼノヴィア。勝っても負けてもエクスカリバーは私達に返ってくるんだから私達に損はないわ」

「だがこいつは悪魔だ! 信用出来ない!」

「大丈夫。例え悪魔になっても火織ちゃんは嘘なんてつかないから。それにあなたは悪魔に遅れをとるの?」

「うっ……だ、だが……」

 悩むゼノヴィア。一方イリナはそんなゼノヴィアを放っておいて更に私達に条件を突きつけてきた。

「火織ちゃん、それでもこれはあなた達の我儘なんだから、私の方にももう1つ条件を付けさせて」

「いいわよ、何?」

「私達が勝ったらエクスカリバーをすぐに返してもらうのはもちろんだけど……火織ちゃんとイッセーくんも一緒に教会にきて」

 っ! ふ~ん、そうきたか。どういうつもりかは分からないけど今までの言動を見るに、私達が悪魔とともに居るのが心配だからとかそんなところかな? はっきり言ってもう悪魔になっている以上教会に行くほうが危険な気がするんだけど、まあそこはどうにか出来る方法でもあるのかな?

 一方そのイリナの言葉には私以上に部長が反応した。

「なっ!? ダメよそんなこと。この子達は私の眷属よ!? 教会なんぞに渡せるものですか!」

 あ~、まあ部長にしてみればその通りよね。でもこの条件で勝負してくれるっていうのなら

「その条件でいいわ」

「火織!? あなた何勝手に! そもそも一体どういうつもりでエクスカリバーを……!」

 そう言って取り乱しかける部長に私はニコッと安心させるように笑いかける。

「すみません部長、勝手なことをして。でもどうしても必要なことなんです。絶対に悪いようにはしません、いいえ、私がさせませんから少しだけ私に任せてくれませんか?」

「………………はぁ、分かったわよ。今に始まったことでもないしね」

 ……あれ? 今ものすごく不本意な評価を受けたような。

「ただし、やるなら絶対勝ちなさい! 私の眷属を抜けて教会に行くなんて、しかもイッセーまで連れて行かれるなんて私は許さないんだからね!」

「はい!」

 うん! 理由も聞かずに私のことを信じてくれるなんて、この人の眷属で本当に良かった!

「火織、やるならけちょんけちょんにしちゃうにゃ」

「大丈夫だとは思いますが……お別れなんて嫌ですからね」

「火織お姉ちゃん、信じてる」

「火織、俺も信じてるぞ! 俺の命も預けたからな!」

「火織さん! 気を付けてくださいね!」

「負けるなんて許さないわよ!」

「あらあら、私も火織ちゃんとイッセーくんを連れて行かれてしまっては悲しいですわ」

「………………」

 部長の他に、祐斗以外も激励を送ってくれる。うん、こうまで応援されちゃ負けられないね!

 こうして私達は一路、勝負のためにグラウンドへと向かうのであった。







 あの後ゼノヴィアの拘束を解き、エクスカリバーを返してグラウンドへと向かう途中、私達が部室に来る前に何があったかを皆に聞いた。しかし原作でもそうだったと思うけど、やっぱりアーシアにゼノヴィアは手を出そうとしたか。やっぱりこのままはよくなさそうね。特にゼノヴィアにとって。

「そういうことならついでにちょっとお説教でもしようかしらね」

 そう言いながら私は少し前を歩くイリナとゼノヴィアに目を向ける。

「あ、あの火織さん。私は気にしていませんので……」

「……アーシアは強いわね」

 私はそう言いつつアーシアの頭をなでてあげる。でもお説教を止めるつもりはないかな? 原作でも気になってたんだけど、ゼノヴィアがアーシアに歩み寄ったのって神が死んでいるのを知って、アーシアが異端の烙印を押されたのはアーシアのせいだけじゃないって知ったのがきっかけなのよね。もし神が存命なら……まあその場合アーシアが追放されることもなかったでしょうけど、正直この2人が仲良くなれたかどうかわからない。

 つまるところ問題なのはゼノヴィアが、そしてイリナもだけど、全てに関してこれが神の意志だと勝手に決めつけて思考停止しちゃってることなのよね。少なくともゼノヴィアは自分で考えるということを放棄しちゃってるし、イリナもその傾向が見える。後々のためにもこの点はなんとかしておきたいかな?

 さて、そんなことを考えているうちに私達はグラウンドへと到着し、イリナとゼノヴィアはグラウンドの中心でそれぞれのエクスカリバーを開放してこちらを睨んでる。

「じゃあ行ってきます、部長」

「えぇ、気を付けるのよ」

 その言葉とともに私は彼女たちのもとへ行こうとする。しかしここで私を静止する声が

「火織さん」

 目が完全に座っちゃってる祐斗が私の前に立ちはだかった。

「何、祐斗?」

「この勝負、僕に譲ってくれないかい?」

 あぁ、やっぱりか。何となくこうなるような気がしてた。

「ダメよ。これは私の役目」

「……火織さんは知らないかもしれないけどエクスカリバーは「知ってるわよ。部長から聞いた」……なら分かるだろう? これはまたとない好機なんだ。それでもまだダメだって言うなら……」

 そう言って祐斗が手に魔剣を創りだそうとした瞬間、私は瞬時に祐斗の髪の毛を掴み

ズドンッ!!

「ガッ!?」

「祐斗!!」

 私は祐斗の額に思いっきり膝を打ち付けた。祐斗はそのまま地面へと転がり、悲鳴を上げた部長がそんな彼に駆け寄った。

「ギ……き、さま……」

「少しそこで頭を冷やしなさい」

 私はそのまま祐斗を皆に任せ、もう完全に戦闘準備の整っている2人の元へ赴く。

「ふん、味方同士何をやっている、と言いたいところだが、彼は何だ? 雰囲気からして異常だが……」

「ちょっと事情があってね。まあ今は関係ないわ」

「それもそうだな」

 そう言ってゼノヴィアは破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を構えた。

「火織ちゃん。火織ちゃんのためにも手加減はしないから。必ず助けてあげるからね」

 続いてイリナも何やら決意したかの表情で擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を私に向ける。

「悪いけど、今回は私も譲る気はないの。仲間のためにもね」

 そう言って私は左腰に吊るしたままだった天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を抜き放った。

「なっ!? 火織ちゃん、それで戦うの!? 祝福を受けていない火織ちゃんじゃエクスカリバーは扱えないんだよ!?」

「えぇ、知ってるわ。むしろ持ってるだけで悪魔の私は体がダルイもん。でも今回はこれで戦わなきゃならない理由があるの。それに祝福を受けていないから聖剣の能力は全く使えないけど、それでも剣として振るえないわけじゃないんだよ?」

 そう言って私は軽くその場で天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を振ってみる。まあ私が振ったんじゃ切れ味なんてないようなもんだし、むしろ鈍器を振り回してるようなもんだけど。

「貴様、どこまでも我らを愚弄する気か。悪魔がエクスカリバーを振るうなど、あってはならない。この場で滅されても文句はあるまいな!?」

 そう言ってゼノヴィアは私に斬りかかってきた!

「龍巳! この辺りに結界をお願い! ……それじゃあ私も行くわよ!」

 私は龍巳に結界を張って周囲への被害が出ないようにしてもらうと、ゼノヴィアに向かってかけ出した。

「ゼノヴィア! 殺しちゃダメだからね!」

 そう言ってイリナも飛び出してくる。まずはゼノヴィア。彼女は大上段から破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を振り下ろしてきた! 私はそれを身体を回転させつつ避け、彼女の背後を取る。すると

ズドォォオオオン!!

 破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)が打ち付けられた地面が巨大なクレーターと化した! 知ってはいたけど凄まじい破壊力ね!

「これが私のエクスカリバー、破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の力だ! 立ちはだかるものを全て破壊する、その名は伊達ではない!」

 そう言って彼女は背後の私に向け破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を横薙ぎに振るってくる! このタイミングで回避は間に合わない! 私は天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を構えて破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を受けようとする!

「無駄だ! 使い手ならともかく、今の貴様に受けきるすべはない!」

 そのまま破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)が私に振るわれ、天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)に接触する。私はその瞬間天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)の刃を寝かせ、私自身は頭を下げる。その結果、ギャリンッという音とともに破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)の刃は天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)の刃の上を滑り、そのまま空振った!

「なっ!?」

 その私の対応に驚くゼノヴィア。

「確かにあなたの攻撃を受けきるのは今の私には無理に近いけど、受け流せないことはないんだよ?」

 そのまま私は攻撃を流されて隙だらけになっているゼノヴィアに向けて天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を振るおうとした瞬間

「ゼノヴィア!」

 イリナが斬りかかってきたので私は慌ててその場を飛び退る。

「大丈夫、ゼノヴィア?」

「ああ、今のには驚いた。腐っても日本最強の剣士ということか」

 その言葉に何故かイリナがゼノヴィアを睨む。

「もう油断しない。いつも通り行くぞイリナ!」

「あぁもうっ! 分かったわよ!」

 そう言って2人がまたしても斬りかかってくる。ゼノヴィアが大ぶりの一撃を、それを避けて反撃しようとするとイリナが斬りかかってくる。イリナに対処すると、その瞬間またゼノヴィアが大ぶりの一撃を放ってくる。なるほど、これがこの2人の戦い方か。なかなかいい連携が撮れてるわね。







 それから数分間、私はひたすら彼女たちの猛攻に耐えることに専念した。周りには私が防戦一方に見えてたと思う。しかしながら実際は

「「はぁ……はぁ……はぁ……」」

 平然としている私に対して2人はだいぶ息が上がってきていた。

「な、なぜ当たらないんだ……」

 2人は困惑しつつも更に私に斬りかかってくる。しかしながらこの数分で私はだいぶ彼女たちの太刀筋が見えてきた。その証拠に初めの頃は避けられない斬撃を受け流したりしていたけど、今では右手を完全にだらんと下げた状態で、身体を傾けるだけで避けている。その上避ける際にうまくイリナの追撃が届きにくい場所に避けていたこともあって、今ではゼノヴィアの斬撃後の隙を突くことも出来る。こうして

「ぐあっ!?」

「ゼノヴィア!」

 天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を振らずとも、蹴りだけで彼女を吹き飛ばすことだって出来る。

「はぁっ!」

 更にイリナは1人で斬りかかってくるけど、彼女の擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)なら天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)でも充分に受け止められる。それどころか私は擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)を受けた状態から更に天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を振るい、腕力だけでイリナを吹き飛ばした。

「きゃあっ!?」

 ゼノヴィアとは別の方向に吹き飛ぶイリナ。そこで私は体勢を立て直したゼノヴィアに向けて駆け出す。今度はこっちが攻める番!

「くっ!?」

 私の斬撃を受けるゼノヴィア。私の斬撃は決して重いものじゃないから簡単に受け止められた。しかしながら私の持ち味はスピード。そこからさらに連続斬りを見舞う。その結果ゼノヴィアは防戦一方へ。おまけに私の剣ばかりに意識が行っちゃってるもんだから隙だらけ。そんなんだから

「がはぁっ!?」

 同じ場所に2度も蹴りを喰らうのよ。ゼノヴィアはまたしても蹴りを、それも回し蹴りを喰らい、再び吹き飛んでいく。私は更に追撃しようとして……

「お願い火織ちゃん! こんなことやめて!!」

 イリナが叫びつつそんなことを言ってきた。

「なんで!? どうしてこんなことをするの!? 昔は一緒に教会にお祈りに行ったことだってあったのに……なのになんで主に逆らうようなこと…………!!」

その言葉に私は天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を下げ、呆れたようにイリナに言う。

「私からしたら、あなた達の方がよっぽど神に背いてると思うけど……」

 その瞬間、ゼノヴィアの怒気が膨れ上がった。

「貴様、それは一体どういう意味だ」

「言葉通りの意味よ。そこにいるアーシアの件だってそう。 あなた達、ちゃんと自分たちが何をしているか、何をすべきか考えたことある?」

「な、何を言ってるの火織ちゃん? アーシアさんは悪魔を治しちゃったんだから、異端の烙印を押されるのは当然で……」

「そこがおかしいって言ってるのよ。一般の信徒はともかく、裏の事情まで知ってるあなた達はアーシアの力の正体は知ってるわよね?」

「それはもちろん……」

神器(セイクリッドギア)……だろ?」

 怪訝そうに答える2人。はぁ、ここまで言っても気付かないか。

「そう、神器(セイクリッドギア)よ。そして、いい? よく聞きなさい。彼女の持つ神器(セイクリッドギア)聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)。人間のみならず悪魔や堕天使でも癒やすことが出来る力。そしてそれを作ったのはあなた達が崇拝する神なのよ?」

「「っ!?」」

 そこでようやく2人は自体が飲み込めたみたい。

「神は悪魔や堕天使でも癒やすことが出来る神器(セイクリッドギア)を創り、そしてそれを例え敵でも癒やそうとする心優しきアーシアに託した。ねぇ、これって神が例え悪魔や堕天使でも怪我をしているなら救えと言ってるってことじゃないの? 確か神も言ってたはずよね? 汝、汝の敵を愛せって。そしてアーシアはその意思通りに怪我をしていた悪魔を救った。それなのに一方のあなた達はそんなアーシアを教会から追放した。はっきり言って私にはあなた達が神の名を語り好き勝手しているようにしか見えないわ。神の名は免罪符ってわけじゃないのよ?」

「だ、だが! 異端の神器(セイクリッドギア)自体が存在しているのも事実だ!」

「それがおかしいのよ。亜種の禁手(バランス・ブレイカー)に目覚めたものならともかく、神器(セイクリッドギア)自体は全て神が創りだしたものでしょう? なのにその中に異端の、神の意志に背くものがあるの?」

「ぐ、ぐぐ……」

「それとも何? 神はわざと異端の神器(セイクリッドギア)を創り出し、それを人間に、それも生まれたばかりの子供に宿して、生まれた瞬間にその子供を罪人に仕立て上げているの? そんなのがあなた達の信じている神?」

「黙れ……」

「この程度、悪魔の私でも気付くことよ。そんなことにも気付かずにこれまでも神の名を語ってきたの? でもこれではっきりしたわね。あなた達は神の意志、神がどう思っているかなんてどうでもいいのよ。要は自分の思想を相手に押し付けて、少しでも自分の思想と違えば容赦なく斬り捨てる。そうでしょ?」

「黙れ……」

「それに比べてアーシアは私利私欲で神器(セイクリッドギア)を使うこともなく、暴力に訴えることもなく、無償の愛を振りまいているのよ? なにせ例え敵でも救ってしまうほどなんだから。彼女みたいのを本当の信徒と呼ぶのよ」

「黙れぇっ!!」

 その瞬間、ゼノヴィアは絶叫しつつ斬りかかってきた! 

「言葉で言い返せなくなったら今度は暴力!? それがあなたの言う神の教えってわけ!?」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛っ!!!」

 ゼノヴィアはもはや正常に思考ができないのか我武者羅に破壊の聖剣(エクスカリバー・デストラクション)を振り回しつつ突っ込んでくる。そんな彼女に私は……

ズドンッ!!

「かはっ……」

 私は彼女の鳩尾に拳をめり込ませた。ゼノヴィアはうまく呼吸が出来ないのか、そのまま地面に崩れ落ちる。

「ゼノヴィア!! う、うぁぁああああ!!」

 そしてそんな彼女を見て私に斬りかかってくるイリナ。それに対して私は無造作に天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を横薙ぎに振るう。それだけで彼女の持つ擬態の聖剣(エクスカリバー・ミミック)は弾き飛ばされ、彼女の手を離れて地面に突き刺さった。

「意志の乗っていない剣なんて脆いものよ。イリナ、あなたは何を乗せて戦ってたの? この期に及んで神の意志、なんて言わないわよね?」

「わ、私は、私は…………」

 そのまま膝から崩れ落ちるイリナ。もう勝負はついたわね。

「約束通り、こいつは借りるわよ。龍巳! 終わったわ! 結界解いていいわよ!」

 その言葉を聞き、結界が消える。そして消えると同時に彼女、アーシアが私達に駆け寄り、すぐさま跪いてゼノヴィアとイリナの治療を開始したわ。それにはイリナと、そして意識が朦朧としているゼノヴィアも目を見開いて驚いていた。

「な、なぜ……私は、お前を…………」

「私は言いました。誰であろうとも怪我をしていれば私は治療をするだけだと。それが私にこの力を授けてくれた主の意志であり、私の使命であると信じていますから」

 そう言ったアーシアを、2人はまるで信じられないようなものを見るような目で見ていた。

「さて、アーシア。2人の治療が終わったら私のも治してくれる?」

 そう言って私は天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を地面に突き刺し、そのまま右手を彼女へ向ける。

「え? 火織さんもどこかお怪我を…………きゃあ!?」

 アーシアは私の手を見た瞬間悲鳴を上げた。なぜなら私の手のひらは無惨にも焼けただれてしまっていたから。

「ど、どうしたんですか火織さん!? その右手!?」

「どうしたもこうしたもないわよ。私は悪魔で振るっていたのは聖剣よ? そりゃ持ってるだけでダメージ受けるわよ。ましてや祝福受けないと使えない聖剣を無理やり振るってたんだから」

「す、すぐに治します!」

 そう言うとアーシアは涙目になりながら私の手を治療してくれた。

「お願いですからもうこんな無茶はしないでくださいね!?」

「う~ん、それはちょっと難しいかも……」

「え……?」

 私はそう言いつつ皆の待つ方向へと目を向けた。そこには安心したように微笑んでいる皆の中、1人だけ私を殺しそうなほど凄まじい目で睨んでる祐斗がいた。

「祐斗、今どんな気分?」

「最悪の気分だよ。折角のチャンスを君に不意にされた。堕天使勢の聖剣使いはもういないし、教会の聖剣使いも君に倒されてしまった。もうエクスカリバーの使い手はいない。これではエクスカリバーを倒し、同志たちの無念を晴らすことなんて出来はしない!」

 そんな祐斗に私は少し笑いながら答えた。

「ふふ、何言ってるの祐斗。使い手ならあなたの目の前に1人残ってるじゃない。それも教会と堕天使勢の使い手を全員倒した今代最強の使い手が」

 そう言って私はアーシアに治療してもらったばかりの右手で天閃の聖剣(エクスカリバー・ラピッドリィ)を再び掴み、その切っ先を祐斗に向けた。

「……えっ?」

 それに対して祐斗は先程までとは違い目を見開いて呆けているわ。

「祐斗、あなたの過去については悪いんだけど部長から聞かせてもらったわ。正直な話、子供の頃から家族に恵まれて幸せに育ってきた私にはあなたの気持ちは分からないし、分かろうとしていいはずもないと思う。でもね? それと助けたい、力になりたいって思うのは別でしょ?」

 そう言って私は祐斗に語りかける。

「火織、あなたまさか最初から……」

 そこまで来て、部長や他の皆も私がしようとしてたことに察しがついたみたい。

「祐斗、エクスカリバーを倒し、同志たちの無念を晴らしたいのなら今代最強の使い手である私を倒しなさい! あなたの手で、過去に決着を付けてみなさい!」

 そこまで言い切ったところで祐斗は苦笑を漏らした。それは今までの復讐に囚われた祐斗ではなく、いつもの祐斗に近い笑い方だった。

「敵わないなぁ、火織さんには……」

「……で、どうするの?」

「感謝するよ火織さん。ありがたくその申し出、受けさせてもらうよ。僕にとってはこれ以上ないチャンスだ」

 そう言うと祐斗は魔剣を創り出し、構えた。私はそれを見てニヤリと笑い

「来なさい、祐斗!」

「はぁぁぁぁああああっ!!」

 祐斗はこれまで見たこともないほどの気迫を持って私に挑んできた。


 
 

 
後書き


どうでしたでしょうか?
いや~なにぶん間が開いていたせいでなかなかうまく書けず、何度も書きなおす始末。
それで余計に時間を食ってしまいました。

さて、今の私ですが、最後の研修として今神戸に来ております。
このひと月の研修が終わればようやく東京に戻って本配属ですよ。
これでようやくレポート地獄から開放される!
出来れば神戸いる間もう1本くらいは書きたいものです。


さて、実は今悩んでいることがありまして、他にも書きたいものが出来てしまいました!
いやぁ、書く時間はなかったんですけど、考える時間ならいっぱいあって、その結果随分先まで頭のなかでは話が固まったんですよね。
それで考えているうちに他にも色々とアイデアが浮かびまして。
で、皆さんにお尋ねしたいんですけど、とりあえずこの話を終わらせてから書くべきですかね?
それとも同時並行して書いてみるべきでしょうか?
ちなみに今考えているのは次のような感じです。

・ハイスクールD×D ~赤龍帝と闇の福音~

・ハイスクールD×D ~赤龍帝の兄は白龍皇!?~

・IS ~MFS-3~

・ソードアート・オンライン ~黒のビーターと赤のビーター~

・緋弾のアリア ~再び動き出す不吉な黒猫~

・真剣で私に恋しなさい! ~出会ったあいつは神鳴流~

うん、色々と考えちゃいました。
読んでみたいかどうか、出来れば意見をください。
読みたいという意見があれば、このあとがきにお試しという形で一話だけ載せてみようと思います。
その反応を見て、同時並行して書くか決めようかな?
ちなみに上に書いているものほどある程度話が決まっており、なおかつ~赤龍帝の兄は白龍皇!?~以外は全部主人公は女の子です。
この作品の影響受けまくりですね。
みなさんどうかご意見をお願いします。

あ、ちなみにどれかを書くことになってもこの作品をやめてしまうということはないので安心してくださいね?
では次回予告です。



次回予告

「俺の夢は会長とできちゃった結婚をすることだ!」

「よし! 俺も負けてらんねぇっ!!」

「どんな時でも頭は冷静にと言ったはずよ!」

「火織ちゃんの一番弟子として私も黙って見ているなんて出来ないわ!」

「僕に、僕に一体何が足りないんだ!」

 次回、第53話 足りないもの 

「裸エプロン………………だと!?」


 
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