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我が剣は愛する者の為に

作者:wawa
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彼が辿る道の先

 
前書き
ようやっと、執筆できる時間ができました。
何で最近忙しくなってきているのですかね、申し訳ないです。
追記、タイトルを変え話を追加しました。読んでて納得できなかったので 

 
苑意が引き起こしていた騒動を華琳の部下である(一時的だが)、俺が解決したと言う結果は人から人へ伝わりすぐに広まっていった。
部下の成果はそれに仕える主へと繋がる。
今までの功績に加えて苑意が中心となって騒がせていた賊の騒動の解決。
この騒動により苑意は州牧を失脚と重なり、華琳は陳留の刺氏から州牧へと昇進。
かなり急な事でもあり慌しく引き継ぎや手続きをこなし、ようやく落ち着いたのが先日。
苑意が治めていた街や村に根深く広がっていた弱肉強食の制度。
人々にその認識を解くのに時間がかかった。
決して弱肉強食は間違っていないと思う。
実際、雲流のような人間が居て、この制度で生き残る事ができた人がいるのだから。
でも、協力し合える人を利用して蹴落とすのは悲しいし、そこから出てくるのは憎悪などの負の感情だ。
だからこそ、何とかしてその認識を改めさせる必要があった。
そんなこんながあり、一週間くらい真面に寝てない俺だが、別段問題はない。
三十分も仮眠とれば何とかなる。
そして、今日。
午後に中庭に集合と華琳に呼ばれ、俺と一刀は中庭で待っていた。
午後に集合と漠然とした集合時間なので、全員が全員一緒に集まる事は滅多にない。
必然と俺と一刀だけになると転生前の世界の知識が所々入ったりする。

「縁、最近寝ているか?」

「一週間くらいろくに睡眠取ってねぇな。
 仮眠で三十分くらい。」

「うへぇ・・・俺は三徹で厳しかったぞ。」

「まぁ、慣れだ慣れ。
 本を読むことに集中してたら、いつの間にか大学のレポートやら試験やらに追われてな。
 一週間くらい真面に寝た事がない時とかあった。」

「地獄じゃね?」

「地獄だな。
 しかも、季節は夏。
 陽射しが殺しにかかってきてたよほんと。」

と、二人で会話していると。

「何だ、早いな二人とも。」

俺達の次にやってきたのは春蘭と桂花。
仲が悪い二人にしては珍しく一緒に来ている。

「珍しいな、二人が一緒とか。」

一刀も同じように考えていたのか二人に質問すると、桂花が険しい顔を浮かべる。

「何でこんな脳筋女と一緒に来ないといけないのよ。
 たまたまそこで出会っただけ、それだけよ。」

「何を!
 貴様、私が単純作業しかできない猪頭と言いたいのか!!」

「あら、よく分かっているじゃない。」

自分から言い出したのに、なぜか怒り始める春蘭。
放っておくと喧嘩に発展するので、間に入り話題を変える。

「どうどう。」

「私は馬じゃない!」

「それで華琳と秋蘭と華憐は?
 一緒じゃないのか?」

「無視するな!」

後ろで春蘭がぎゃあぎゃあ騒いでいるが無視する。
しかし、桂花は俺の言葉を聞いた瞬間、嫌悪感を剥き出しにして、三歩くらい下がる。
本当に嫌われているよな、俺。

「何であんたに言わないといけないのよ。
 まさか華琳様を襲いに行くつもりなのね!?」

いきなり馬鹿な事を言い出し始めた。
華琳の言葉が出てきたのだからこいつが反応しない訳がない。

「縁、貴様華琳様を襲うとは無礼千万!!
 叩き切ってくれるわ!!」

「だぁぁ!
 何でこんな事になるんだよ!!」

ともかく剣を抜いた春蘭を落ち着かせようと、素手で構えようとした時だった。

「貴方達、中庭で何を騒いでいるの?」

俺にはこの面倒事を解決してくれる声を聞いて、ほっと胸を撫で下ろす。
華琳の姿を見た、春蘭は剣を収め、小さくだが桂花は舌打ちを吐いた。
おそらく春蘭に襲わせるためにわざと言ったのだろう。

「か、華琳達は遅いなって話をしていたんだよ。」

華琳の質問に一刀が答える。
確実に嘘だとばれているが、追求するつもりはないのかそう、と一言だけ言ってこの会話を終える。
最後に星と月火がやってきて、これで華琳に呼ばれた人が全員揃った。

「そういや、何で遅かったんだ?」

何気に気になっていた俺は今回の集まり、街の視察なんだが、それが始まる前に聞いた。

「髪の纏まりが悪かったのよ、どう貴方から見て変な所はない?」

「うん、いつも通り綺麗な髪だよ。」

笑顔を浮かべて言うと、華琳は一瞬だけ眼をパチクリさせ少しだけ顔を赤くする。

「こりゃ女泣かせだわ。」

「ですな。」

星と月火が二人で俺に視線を向けながら頷き合っている。
何かしたか、俺?

「いつもと変わらない気がするけどな?」

「一刀殿、女と言うのは髪や服に時間をかける生き物なのですよ。」

「それに州牧になったのだから、周りの視線を気にしないといけないしね。
 無様な格好をするだけでどれだけ周りに影響与えるか分からない。」

「そういうこと。
 一刀も服とか身嗜みは最低限、保っとけよ。
 いくら上がしっかりしていても、部下がだらしなかったら意味ないからな。」

星と月火と俺に諭されふむふむ、と頷く。
こいつの真面目な所が長所の一つだな。

「桂花の手回しもおかげで何とか州牧になれた事だし、一度街に行って様子を確かめに行きましょうか。」

「えっ?桂花、コネ使ったのか?」

「こね?」

思わずあの世界の言葉を使った一刀は理解しやすいように言い直す。

「えっと、知り合いとか手回しして華琳を州牧にするようにお願いしたって意味。」

「袁紹の所は扱い悪かったけど、中央との繋がりはたくさん作れたのよね。」

「いいの?正攻法じゃないけど?」

「今の私達の状況を考えるになりふり構っていられるほど、余裕はないわ。
 使えるものは何でも使うわよ。」

話を聞いていて思ったんだが、桂花は男嫌いだ。
でも、一刀や豪鬼に対しては多少不快感を露わにするが俺ほどではない。
改めて嫌われている事が分かったから少し悲しい。
あれが駄目だったんだな、反省。
ちなみにだが、季衣はここにいない。
山賊のアジトが見つかったと報告があり、それを討伐する為に兵を率いて朝に出発している。
苑意の騒動が治まったとはいえ、賊の被害は無くならない。
他の村が自分の村のように賊に苦しめられていると感じているのか、最近季衣はがむしゃらに働き討伐に向かっている。
いくら体力があると言ってもあれではそう遠くない内に倒れてしまう。
それは華琳も分かっている筈だ。
近々、季衣には無理矢理にでも休ませるだろう。

「では、桂花。
 留守の間、頼むわね。」

「私もついて行っては駄目なのですか?」

この場に集まっている桂花だが、彼女は今回の視察にはついて来ない。
なのにこの場に居るのは少しでも華琳の姿を見ておきたかったからだろう。

「一応、豪鬼達もいるけど一番信用できる部下を置いておきたいのよ。」

むっ。
それでは豪鬼達を信用していないと言う事になる。

「それって豪鬼達を信用していないのか?」

「しているけど、いつかは私の元から離れるのでしょう?
 だから、私の部下を置いておく必要がある。
 信頼して欲しかったら私の部下になる事ね、客将ではなく剣を預ける部下として。」

華琳は豪鬼達を信頼はしている。
もし信頼していないのなら、桂花だけを置いて行く訳がない。
豪鬼一人いれば桂花を拘束する事なんて簡単だからだ。
わざと挑発するような言い方をしたのは、からかいもあるが本当に俺達の戦力を求めているからだ。
確かに傍から見れば俺達は喉から手が出るほどの猛者達である。
ちょっとだけ緊迫した空気が流れるが、華琳がくすり、と小さく笑い。

「さぁ、行くわよ。
 夜までには戻ってくる予定だから。」

そう言って踵を返し、歩き始める。
後に春蘭、秋蘭、華憐がついて行く。
今は華琳の客将として雇って貰っているが、時期に俺達も独立を視野に入れていかないといけない。
三国全土に広がる、この賊の乱。
いずれは鎮圧化され、中央の王政も一度は完全に崩れる。
俺は賊の乱に合わせて独立を考えているので、近い内にここを離れる事になるだろう。
それを華琳は分かっているから、あんな言葉を言ってきたかもしれない。

「うん?縁殿、行きますよ。」

考え事に夢中で足が止まっていたらしく、気になった星が声をかけ意識を戻す。
今は視察の事だけを考えよう。
俺の中で答えは既に出ているのだから。
街を視察していると、見覚えのある旅芸人を見つけた。
とある街で歌を芸にしている旅芸人だ。
確か、数え役萬☆姉妹って名前だったかな?

「旅芸人まで来ているのか。」

「それだけこの地域が安定しつつあるということですね。」

「でも、賊による被害の報告は耳にするわ。
 油断しないようにね。」

秋蘭と華憐と華琳の会話を聞く限り、あの歌は南方の歌らしい。
あの時、街で聞いた時と変わらないが人だかりはできていない。
どうも受けが悪いようだ。
おそらく、あの街では歌というのが珍しかったからあそこまで盛り上がったが、この街ではそれほど歌は珍しくないようだ。
俺はあの娘達の歌は好きだけどな。
華琳はああ言っているが、実際街道などの安全が安定しているからこうして旅芸人が来るのだろう。
出来れば声を掛けたい所だが、仕事中でもあるので諦める。

「さて、広くない街だし手分けして視察するか?」

「そうね・・・私と北郷。
 春蘭と星。
 秋蘭と月火。
 華憐と縁でそれぞれ分かれて視察しましょうか。」

組み合わせについては誰も異論を述べない。
それぞれ手分けして、歩き一通り見て回ったら突き当りの一番大きな門の所に集まるということになった。

「んじゃあ、行くか。」

「はい。」

俺の声に華憐は小さく頷いて、街を見ていく。
今歩いている通りはフリーマーケットのようにこの街に来た行商人達が、自分の商品を広げて見せ大きな声で宣伝している。
商品は様々で、絹や剣、防具から雑貨類など。
珍しい商品などが並んでいたりと飽きさせない。
故に人の数も多く、大通りに負けないくらい活気に満ちている。

「ふむ、活気には満ちているが少し往来が多いな。
 これだけ多いと盗みを働く奴も出てくるだろうし、喧嘩も発生しやすい。
 兵や巡回する道を改めないといけないな。」

「・・・・・・」

率直に思った事を簡単にメモしながら華憐に話しかけるが、返事が返ってこない。

「華憐?」

立ち止まって振り返ると俯き加減に立っている華憐。
気になったのでもう一度声を掛けようとして。

「縁さん。」

彼女の方から声をかけてきた。

「何だ?」

「縁さんは、本当に此処を出て行くのですか?」

「・・・・・・」

悲しみに満ちた目を俺に向ける。
問いに俺は答えずにいると、華憐は言葉を続ける。

「姉さんは縁さん達が来てから、本当に楽しそうに政務を行っていました。
 特に貴方と一緒に仕事している時が一番。
 あんな笑顔を見たのは久しぶりです。
 頭痛に悩まされながら疲れを溜めながらも、仕事をこなしていた前の時とは全然違います。
 縁さん達が居れば、姐さんの負担も軽くなって笑顔が増えるんです。
 ですから・・・・」

「ありがとう・・・・でも、その願いを応えてあげる事はできない。」

この答えが分かっていたのか、さほど驚かず黙って聞く。

「どうして、ですか?」

「俺はこの手で何人もの人を殺めてきた。
 誓ったんだ。
 幾つもの命を俺の勝手で奪っていったのだから、せめて死んだ彼らが許してくれるような世界を作るって。
 華琳も俺も、進む道の過程は違えど到達する地点は一緒だ。
 だからと言って、この責任から逃げて良いわけじゃない。
 これは俺自身で成し遂げないと意味がないんだ。
 誰かに任せて、自分は引き下がっていたら駄目なんだ。」

真っ直ぐに華憐の眼を見つめて、あの時に誓った事を話す。
数十秒くらい二人の間に沈黙が流れるが、華憐は小さく笑みを浮かべた。

「それだけの決意を持っているのなら、私の説得では揺るぎませんね。
 すみません、こんな事で足を止めてしまって。
 視察を再開しましょう。」

そう言って、彼女は俺の隣を通り過ぎ、街を観察し気になった事をメモしていく。
俺もこの事については何も言わず、華憐と話し合いながら待ち合わせ場所に向かう。
どうも俺達が最後の様で、着いた時には皆集まっていた。
三組とも同じ様な竹籠を抱えて。
春蘭だけやたら荷物が入っているが。

「どうしてお前達は同じ竹籠を持っているんだ?」

「知らないわよ。
 私達は北郷が露商人の絡繰を壊したから、その侘びとして買ったのよ。」

「絡繰?」

この時代にはあまり馴染みのない単語を聞いて、思わず首を傾げた。

「ああ、木製の歯車を使っていてな。
 かなり出来は良かったぞ・・・壊したけど。」

歯車なんて物もあるんだな。
まぁ、刀が存在するのだからあってもおかしくはない。

「私はちょうど城で使う竹籠の底が抜けていたのを思い出してな。
 それで買ったという訳だ。」

「竹籠を売っている女の子ね、物凄く寡黙な子でね。
 秋蘭もずっと竹籠を見つめたまんま黙り込むし、何だか空気が重くて重くて。」

月火は軽くげんなりしたような顔を浮かべている。
あまり騒がしいタイプではないが、重い空気は好きでないのだろう。

「わ、私は季衣のおみやげを入れる籠が欲しかったので、ちょうどそこに手ごろな竹籠が。」

「おや、そうであったか?
 実は・・・・」

「うわぁ!!」

星が何かを言おうとする前に春蘭が急いで手で口を塞ぐ。

(あ、あとで何か奢ってやるから黙ってくれ。)

(ふふふ、では最近良さそうな酒とメンマを見つけてな。)

(分かった、買うから黙ってくれ。)

何やらコソコソしながら小声で話している。
話し終えたのか、春蘭はぎこちない笑みを浮かべ、星は星で怪しい笑みを浮かべている。

「さっき、何を言おうとしたんだ?」

「ふふふ、はてさて何のことやら。」

どうも真面に答えるつもりはないらしい。
それほど気になる事でもないので、追及はしない。

「さて、視察の方は充分に出来ているでしょうね?
 帰ったら報告書をあげて貰うつもりだから。」

皆に声をかけた時、長屋と長屋の狭い路地の間に座り込んでいるローブの人物が声をかけてきた。

「そこの若いの。」

「誰?」

声を掛けられ、華琳はその人物に視線を向ける。
フードを眼深く被り表情が見えない。
低くしわがれた声だが、若い人が無理矢理創ったようにも聞こえる。
見た目からして占い師に見えるが。

「占い師か?」

「そのようですね。」

「ふん、華琳様は占いなど信じぬ。
 さっさと立ち去れ!」

「春蘭、秋蘭、華憐、少し下がって貰えるかしら。」

この人物から並々ならぬ気配を感じ取ったのか、三人を下がらせ一歩占い師に近づく。
占い師は少しだけ顔を上げて、華琳の顔を観察しているようだ。
そして。

「強い、強い相が見える。
 希にすら見た事のない強い相じゃ。」

「一体、何が見える?」

「力のある相じゃ。
 兵を従え、知を尊び、この国の器を満たし、繁栄させる事ができる強い相じゃ。
 しかし・・・・」

「しかし?」

「お主の力は今の弱い国の器には収まらぬ。
 その野心、留まる事を知れず。
 あふれた野心は、国を犯し、野を侵し、いずれはこの国の歴史に類い希なる奸雄となるじゃろう。」

「貴様!
 華琳様を愚弄する気か!」

殺気を立たせながら秋蘭は占い師に組み付こうとする。
当然だろう。
奸雄とは簡単に言えば、 悪知恵を働かせて英雄となった人の事を指す。
文字通り侮辱されているのだから、怒らない訳がない。
一方、侮辱されたのなら春蘭が黙っていないはずだが、彼女は黙って聞いている。
多分だが、 奸雄の意味が分かっていないんだろうな。
分かってたら問答無用で斬りかかるだろうし。
対する華琳は怒りもせず笑みを浮かべている。

「落ち着きなさい、秋蘭。」

「ですが・・・・」

「この時代の奸雄となると?」

「そうじゃあ・・・・だが。」

震える腕をゆっくり伸ばし、俺を指さした。

「俺?」

「その男が生き続ける限り、お主の目指す道は決して終わりを迎えない。」

占い師の言葉にその場にいる全員が息を呑んだ。

「縁が私の部下になれば解決するのかしら?」

「違う、生きていればお主の道は決して終わりを迎えぬ。
 もしその道を完遂したいのなら、今すぐ命を奪うがよい。」

「何とも、危うい事を言う奴だな。」

「お主。」

まだ何か言う事があるようだ。

「お主が進む道。
 厳しく辛い道のりじゃ。
 じゃが、それを完遂する事ができればお主の守りたい者は必ず生き延びる。
 しかし、それはお主の死を意味する。」

一瞬だが呼吸するのを忘れた。
黙って占い師の言葉を聞く。

「道を進めば進むだけ命を縮め、最後には守る者の為に死ぬ。
 それがお主が歩いている道じゃ。」

「そうか、それは大いに結構。」

俺は財布からいくらかお金を出し、茶碗に入れる。

「元よりそのつもりだ。
 俺は守る者の為に命を賭けているんだからな。」

占いの内容はこれで終わりなのか、占い師はそれ以降口を閉ざしたままだ。
華琳も内容は気にいったのか、茶碗にお金を入れて街を後にする。
皆が街を出る前に俺は振りかえる。
先程、占い師が居た場所には誰もいなかった。
少しだけ眉をひそめた。
あの人物、もしかしたら俺の正体を知っている人物かもしれないと思った。
後ろから俺を呼ぶ声が聞こえ、疑問に思いながらも華琳達の所まで走る。



彼は気づいていない。
守りたい者を守る事はできても、そこに彼女達の幸せがあるかどうかということを。
彼はそんな当たり前で、一番大事な事に気づいてない。 
 

 
後書き
話を追加しました。
これで満足です。 
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