言われるうちに
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第五章
それでも周囲はにこにこと温かい笑顔で彼女ではなく拓也を見ている、そのうえでこんなことも言う始末だった。
「あそこまで一途だと可愛いわね」
「っというかさ、応えてあげないとね」
「何処まで好きなの、って感じだし」
「悪くないんじゃないの?」
女の子はこんな感じで完全に拓也の方についていた、そしてだった。
千明はある日拓也からあるものを受け取った、それはというと。
白いエーデルワイスのブリーチだ、しかもその日はというと。
「確か今日、ええと」
「はい、言って」
「私達がついてるから」
見れば彼の左右には千明のクラスの女の子達がいる、彼女達が顔を真っ赤にして言えなくなりそうになる彼の背を押していた。
「安心してよ、逃がさないから」
「頑張るのよ」
「うん、じゃあ」
拓也は彼女達には普通の応対だった、そして。
彼女達の言葉を受けてだ、千明にこう言った。
「今日中村さんの誕生日だったよね」
「そうだけれど」
「それで」
「聞いたの?」
千明は怪訝な顔で背の高い拓也の顔を見上げて問うた。
「皆から」
「いや、僕は聞いてないから」
「というと」
「そうよ、私達が言ったのよ」
「この人にアドバイスしたのよ」
にこにことしてだ、左右の軍師達が言ってきたのだった。
「誕生日を教えてね」
「プレゼントしたらどうかって」
「そうなの、しかも」
その白いエーデルワイスのブリーチ、それもだった。
「私ブリーチ好きだし」
「色は白が好きだしね」
「お花はエーデルワイスで」
「全部教えたの、この子に」
拓也だけでなくクラスメイト達も見て言うのだった。
「全く、何なのよ」
「だから、ねえ」
「皆川君の助けになればって」
「まさかここまで教えてもらうなんてね」
拓也は感謝している顔で彼女達に言う。
「有り難う、本当に」
「お礼はいいからね」
「はい、プレゼントしてね」
「うん、じゃあ」
あらためてその白いエーデルワイスのブリーチを千明に差し出す、そしてこう言うのだ。
「あの、よかったら」
「ううん、仕方ないわね」
好きなものであるという以上にこの状況ではとても断れなかった、だからだ。
千明はそのブリーチを受け取った、そのうえで言うのだった。
「じゃあね」
「有り難う」
千明がブリーチを受取るのだった、すると。
拓也はその瞬間に満面の笑顔になってこう言って来た、その笑顔を見て。
千明は彼の顔を見上げているその顔が真っ赤になったのがわかった、それでだった。
慌ててその顔を下にやって背けてだ、こう言ったのだった。
「いいわよ、お礼なんて」
「いや、お礼じゃなくて」
「大切に使わせてもらうから」
このことは本当に思っていた、貰ったものだけでなくものは最後まで大事に使うのが千明の性格だからだ。
それで彼にこう返した、それで言ったのである。
「こっちこそ有り難う」
「うん」
「こんなに気を使わなくてもいいのに、しかもこのブリーチって」
見ればだ、そのブリーチはかなりいいものだった。それを見て言うのだ。
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