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言われるうちに

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第六章

「高かったでしょう」
「いや、別に」
「だってこんなにいいのよ」
 一目見てわかる、そこまでだというのだ。
「高くない筈ないじゃない」
「それはね」
「気を使わなくてもいいのよ」 
 顔を真っ赤にさせたまま言う。
「ここまで」
「それはね」
「だから、いいから」
 唇を噛み締めての言葉になっていた、眉も自然に顰められている。
「ここまでは」
「僕の気持ちだから」
「大切にしないでいられないから」
 ついついだ、千明はこう漏らしてしまった。
「ここまで心が入ってたら」
「あれっ、今心って言ったけれど」
「まさか」
 クラスメイト達はここで気付いた、だが今はその気付いたことをあえて隠して。
 こっそりとだ、彼女達だけで話した。
「これはいけそうね」
「皆川君の気持ち通じてるわね」
「そうね、あと一歩ね」
「あと一押しで」
 こう話してそしてだった。
 拓也にもだ、こう言うのだった。
「次もあるからね」
「だから頑張ってね」
「応援だけじゃなくてどんどん助けさせてもらうから」
「フォローするから」
「有り難う、いつもね」
 拓也も彼女達に礼を言う、そしてだった。
 千明にブリーチを受け取ってもらった、千明もまんざらではなく。
 そのブリーチをいつも持ち歩いた、しかも。
 流石に学校の制服には着けられないがそれでもだった、鞄に着けていつも持ち歩いた。だがそれでもこう言うのだった。
「貰ったから、折角だから」
「折角だから?」
「そうしていつも持ち歩いているのね」
「鞄に着けて」
「仕方ないじゃない」
 言葉は自己弁護だった、それも完全に。
「渡しブリーチも白い色もエーデルワイスも好きだから」
「しかも皆川君の気持ちも入ってるしね」
「それもかなり」
「いや、それはね」
 何か言おうとした、だが言えなかった。
「その、まあつまりは」
「拓也君の気持ちは知ってるでしょ」
「もう伝わってるわよね」
「それは」
 どうしても口ごもる、中々言えなかった。
「その、つまりは」
「ああ、皆川君またプレゼントしてくるからね」
「もう次の策を授けてあるから」
「それも楽しみにしておいてね」
「今からね」
「ちょっと、それどういうことよ」
 千明は友人達の言葉に唖然となりながら問い返した。
「次って」
「だってねえ、皆川君アルバイトまでしてよ」
「先生から許可を貰ってね」
「それでお金溜めて千明にプレゼントしてるんだから」
「だったらねえ」
「応えてあげないわ、私達も」
「アルバイトまでしてって」
 千明はその話を聞いてすぐに自分の席の横にかけている鞄を見た、そこにブリーチがある。 
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