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魔法少女リリカルなのは~その者の行く末は…………~

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Chapter-2 Second Story~sorrowful and graceful……that occurrence~
  number-19 fierce battle

 
前書き



熾烈な戦い。



この場合は、高町なのは。フェイト・テスタロッサ。闇の書の意思。ナハトヴァール。八神はやて。三桜燐夜。


 

 


燐夜と闇の書の意思との戦いには、誰にも介入することが出来なかった。あの二人の一撃一撃の威力が半端ではないほど重すぎるのだ。例えるのであれば、なのはのディバインバスターがちょうど同じぐらいの威力だと思われる。


「くうううっ……」


なのはがあまりの威力に呻き声を上げた。
なのはたちは、時々飛んでくる流れ弾を防いでいたのだ。あの一撃に結界を貫通するほどの威力が込められているため、街のほうに飛んできたものはなるべく防がなくてはならないのだ。
ただその行動もとても力のいるものだった。
そして、流れ弾でさえこの威力。まともに防いだりしている燐夜にはなのはたちに飛んでくる流れ弾の何倍もの威力がこもっている。それを、ほとんど表情を変えないで防いでいく燐夜。底知れぬ強さを窺わせる。


そして、その燐夜と互角以上に戦い、有利に進めている闇の書の意思はやはり強い。今すぐにでも燐夜を助けに行きたいが、自分が言ったら足手まといになってしまう。そうなのはは自分を押し込める。そうして歯痒い思いをしながら流れ弾を黙々と処理していく。――――そんな時であった、燐夜からの念話があったのは。


(なのは、いいか)
(……! どうしたの?)
(いや、さっきから闇の書の意思の中にいるはやてに話しかけているのだが、全く反応しないんだ。多分、意識がないだけだと思うが。――――そこでだ。俺の合図であいつに突撃してほしい。それもただの突撃ではなく、魔力の篭もった重い一撃を。……出来るか?)
(うんっ! やってみる!)


「レイジングハート」
《ACS stand by》


なのはは燐夜に頼られたことに嬉しく思う。
いつもはたった一人で何でも解決してしまう燐夜が、ようやく頼ってくれたことに胸の内がポカポカと温かくなるのを感じながら、いつでもできるようにしておく。


今回は、モードシフトと魔力チャージだけである。


(いつでもいいよっ!!)
(分かった!)


なのはが燐夜に準備が出来たとの旨を伝えた。そんな時であった。――――フェイトが流れ弾を真っ二つにしてそのまま闇の書の意思に突っこんでいった。
そして振り下ろされたフェイトの雷刃は、闇の書の意思の付近で展開されている闇の書に防がれてそのまま中に吸い込まれるようにして消えていった。


「フェイトちゃん!!」
「なのはっ! 動くなぁっ! 大丈夫だ、あいつなら」


今にも飛び掛かりそうななのはを言葉で制した燐夜は、再び闇の書の意思に飛び込んでいく。
フェイトと同じように見えて、やはり違う。
ただ突っ込んでいくわけではない、フェイトも何か考えのあってのことだったのだが、残念ながらそれは他人である燐夜には分からない。少々冷たい言い方ではあるが、人間とはそんなものなのだ。


……燐夜は吸い込まれる前に攻撃を仕掛ける。軟な攻撃では簡単に防がれるため、今の、ある程度リミッターがついた状態での全力で放つ。


「我流、九星四緑(きゅうせいしろく)四線魔戟(しせんまげき)黒天(こくてん)
「我流、九星五黄(きゅうせいごおう)五逆御神火(ごぎゃくごじんか)・煉獄の舞」


ここで燐夜は自分の技を完璧にコピーされ、数字が一つ大きい分攻撃回数が一回多いが、ほぼ同等の威力であった。
四緑の技は、一撃の威力を求めて死線を何度も潜り抜けた先に生み出したもの。黒く見える点を斬るなりすれば、相手を必ず死に至らしめる技。
対して五黄の技は、舞うようにそれでいて御神火――――火山の噴火のように過激に攻め立てる。
五逆とは、仏教においての五つの大罪のこと。その様に、重く強く与える。


二人は燐夜が編み出した技を使ってぶつかり合った。
闇の書の意思が使った技はまだ一回も使っていないもので、どんな付加効果があるのかは燐夜自身分からない。しかも、四緑も相手の黒点が見えなかったため、実際に期待できる威力を生み出すことが出来なかった。


燐夜は自分の技がコピーされ、それが劣化型だとしてもいい気はしなかった。まだ自分でも完成させていない九星九紫の奥義はまだ真似はされないとは思いたいが――――一応あれも形だけはできている。あとは威力付与効果をつければいいのだ。威力付与効果とは、与えた威力によって相手に何かしらの追加ダメージを与えるものだ。


「パターンの変わらない斬撃のみの攻撃。そんなものが通ると思ってか!」
「――――! いけっ! なのはぁっ!!」


闇の書の意思が一つ覚えのワンパターンすぎる攻撃に苛立ちを覚え思わず燐夜に向かってどなった瞬間、先ほどなのはと打ち合わせしたとおりに合図を送った。
そしてなのはは、自身にそして愛機であるレイジングハートに溜め込んだ魔力を一気に解き放った。


「いくよっ! レイジングハート! エクセリオン・バスター、A・C・S!!」


なのはの叫びと共にレイジングハートが形状をカノンモードに切り替えるのと同時に、なのはの魔力光である桃色で形成された翼が展開される。そして、レイジングハートの言葉と共に二つに分かれた杖の間にその隙間を埋めるように桃色よりは暗い色で形成された魔力の刃で加速しながら、闇の書の意思に向かって突撃していく。


近接ということには変わりはなかったが、今まで斬撃――――線で攻撃されていたものが、槍のような形状で点で攻撃され、更には、予想以上の加速で魔力シールドを展開するしかなかった。


けたたましい音と共になのはの突撃に合わせて後退していく闇の書の意思。そして、海面から突き出た巨大な岩石に接触して止まるも、なのははまだ止まろうとはしない。
このまま好きにさせまいと闇の書の意思が叫びをあげて必死にもがく。


「届いてっ!!」


なのはの思いが込められた叫びに呼応してレイジングハートがカートリッチシステムを使い、魔力の出力を上げる。
そしてようやく展開されたバリアを抜いた。


「まさか……!」
「ブレイク……シュートッ!!」


バリアを抜かれて驚きの声を上げた闇の書の意思。しかし、更になのはは叫んでチャージしていた砲撃(バスター)を放った。
それは、闇の書の後退を止めていた巨大な岩石を貫いて粉々に打ち砕き、闇の書の意思自身も吹き飛ばした。バリアを抜いてのゼロ距離からの砲撃(バスター)がノーガードで直撃。疲労が溜まり始めていて動けないことはなかったが、ヴィータとの一戦でも、流れ弾の相殺にも魔力を使っているため限界に近いところまでいっていたが……なのははまだ無理を通す。


だが、それでも闇の書の意思はとどまらず、燐夜に向けていた矛先をなのはに向けて攻撃を始めた。疲れが見え始めて、若干気を抜いていたなのははまともに攻撃を食らう。燐夜は、闇の書の意思が自分の方に飛ばしてくる砲撃を何とかして凌いでいた。


攻撃の手を緩めない闇の書の意思は、束縛(バインド)魔法を使って海面から突き出ていた岩石を使いなのはを捕縛した。
そして、闇の書を傍らに呼び出して、その中にある蒐集された魔法の中から一つを選んで行使する。
その魔法は、なのはの上空に巨大な黒い先端のとがったもので。
闇の書の意思は黒い巨大なものを呼び出し終えると、何ら躊躇いもなくなのはに向けて振り下ろした。勿論、その間にも燐夜に向けての牽制のための砲撃(バスター)は忘れない。


なのはは直撃は免れないと思いつつも、目を瞑ることはしなかった。それどころか、瞳は絶望の色に覆われることなく、諦めることもなく、ただ自分に向かって落ちてくる巨大な黒いものを見ていた。


だが、その巨大な黒いものは突如現れた金色の刃によって一刀両断された。


なのはとフェイトが2人の再会を目を合わせて喜び合う。
しかし、それは闇の書の意思の叫びによって中断を余儀なくされた。牽制のために飛んできていた砲撃(バスター)が飛んでこなくなった燐夜も、二人のもとへと向かう。――――その途中にまだ聞いて日が浅いが、関係はそれなりに深い存在の声が聞こえてきた。


『外で戦っている方、すみません! 協力してください!』
「――――! はやてちゃん!?」
『この子に取り付いている黒い塊を――――』


はやての声は最後まで聞こえなかった。外に出ている闇の書の意思が一段と大きな叫びをあげて、はやての声をかき消したからである。


そんな中、なのはとフェイトの前にモニターが展開されて何か会話を始めた。燐夜のいる位置からでは、闇の書の意思の叫び声が邪魔で全く聞こえない。
モニターを通しての会話が続く。すこしすると、モニターが虚空に消えてなのはとフェイトは見合わせて頷き合うとお互いにデバイスを闇の書の意思に向けた。


「流石、ユーノ」
「分かりやすい! ……燐夜君! あの子を純粋魔力で手加減なしで攻撃してっ!!」
「分かった!」


そしてそのままなのはとフェイトは背中合わせになって、魔法陣を展開。魔力のチャージを開始する。
燐夜はそんな二人の後方、二人よりも上空で魔力を溜めていた。
もう少しでチャージが終わるというところで、闇の書の意思から黒い魔力が放射状に空中に撒かれる。しかし、三人はその場から動くことはなかった。


「N&F中距離殲滅コンビネーション」
「ブラストカラミティ」


なのはは確実に闇の書の意思に標準を合わせて、フェイトもバルディッシュを振り上げた。この間にも闇の書の意思の叫びはとどまることなく、辺りに魔力を放出し続けている。現に、フェイトが振り上げた雷刃に黒い魔力が当たり、霧散していた。
そして、なのははレイジングハートのトリガーを引き、フェイトはバルディッシュを振り下ろした。


「「ファイヤー―――ッ!!!」」


2人から放たれた一筋の大きな魔力砲。桃色と金色が混ざっている。その砲撃が途切れると、今度は二人の周りに展開してあった桃色と金色で構成された光球からレーザーのように闇の書の意思に向かって伸びていく。


「我流、九星六白、集束砲・六花極天星爆砕」


そこに追い打ちをかけるように燐夜から六つに分散した黒い魔力の塊が闇の書の意思へ向かい、命中するとなのはとフェイトの魔力をも飲み込んで爆発を起こした。


しかし、管理者を切り離した今となってはもう、なのはとフェイトの意識は別に向いていた。
醜悪な姿になって再生し始める残骸――――ナハトヴァールに背を向けて、それよりも上空にある白い光を見ていた。


すこしすると、白い光を中心にして周りに逆三角形のそれぞれ色の違う魔法陣が展開されて、そこにナハトヴァールによって強制蒐集されたはずの騎士たちが戻って来ていた。
さらに、白い光は海へ空へまっすぐ伸びる。
そして、その四人の中心に騎士甲冑――――なのはたちでいうバリアジャケット――――を纏ったはやてが白い光の中から一瞬にして出てくる。


「「はやてちゃん!」」


      ◯


ようやく事件は収束に向かい始めた。
まだ、一つの山場を越えただけなのだ。


だが。


なのはたちの心には自然と不安はなかった。解決できる気でいた。
なぜなら――――


       ――――ようやくみんなが揃ったからだ――――。








 
 

 
後書き



 
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