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我が剣は愛する者の為に

作者:wawa
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守るべき者

早朝。
朝日が出た頃、俺は自分の家のすぐ横で斧を使い薪を割っていた。

「これで、最後だな。」

最後の薪を割り終わった俺は額に流れた汗を拭く。
最初の頃は一度目の人生でも薪を割った事なかったので、慣れるのに時間がかかった。
まさか、薪を割るのにコツがいるなんて知らなかった。

「しかし、薪割りも修行の一部だ、って母さんは言ってたけどただ雑用を押し付けているだけだな。」

けど、言う事聞かないと修行つけてもらえないし、これじゃあ使い勝手のいい雑用係じゃないか・・・
愚痴りながらも割った薪を家に運ぶ俺。
完全にしつけられているな。

「母さん。薪はどこに置けばいい?」

俺は入り口に顔を出して、中にいる母さんに話しかける。

「ご苦労さん、縁。そこに置いてといて。」

朝ごはんを作りながら、母さんは答える。
俺は言われた所に薪を置く。

「お疲れさん。
 まだ朝ご飯食べてなかったわよね?
 準備出来ているから早く食べなさい。」

器にご飯を盛りつけながら、言う。

「うん、分かった。」

俺は座り、箸を持っていただきます、と合掌し食べ始める。
家には俺と母さんしかいない。
父さんは用事で隣の家に行っている。
何でも、隣の子供に勉強を教えているみたいだ。

「ご飯食べて少し休憩したらいつものように修行するからね。」

母さんはご飯を食べ終えると、俺にそう言った。

「了解。」

その言葉を聞いて頷く。
しかし、いつ食べても母さんのご飯はうまい。
毎日食べているけど全く飽きてこない。

「そういえば、愛紗は?」

我が最愛の妹、愛紗は朝から見ていない。
まぁ、薪割りは朝早いからまだ寝ているのだろうか?

「ああ、愛紗なら・・・・」

「兄様!!」

突然俺の後ろから最愛の妹、愛紗が抱きついて来た。

「兄様!!
 薪割りする時は私を起こしてくださいって言ったではありませんか!!」

朝初めて会ったのにいきなり叱られた。
俺は後ろに振り返り、しゃがんで愛紗の目線に合わせる。

「でも、薪割りは近くで見てたら危ないし愛紗が怪我したらどうするんだ?」

「そうだぞ、愛紗。
 あまり緑を困らせるな。」

母さんは俺の器を洗面台に持っていき、洗いながら言う。
愛紗は俺の傍にいるのが一番良いのか、どんな時でも俺の傍にいようとする。
ご飯の時も寝る時も、様々だ。
しかし、修行の時や薪割りなどは危険なので離れるように言っているのだが、中々いう事を聞いてくれない。
さすがに母さんから言われればいう事を聞くと思ったが、納得していないのかうう~、と愛紗が不満そうな顔をして、頬を膨らませた。
か、可愛い。

「ほら、愛紗も朝ご飯を早く食べなさい。
 片づけられないでしょ。」

「分かりました。」

諦めたのかしぶしぶ俺の隣に座る愛紗。
ちなみに俺はご飯を食べ終わったが、愛紗が俺の袖を掴んで離さないので、仕方なく隣に座る。
しかし、こんな可愛い妹があの関羽雲長って聞いた時は信じられなかった。
と言うより、俺自身が関羽雲長の兄になるなんて思わなかった。
義理の兄だが。




あの悲劇の後、俺は今の母さんと父さんに育てられた。
あの時、真名は聞いたが姓・名・字は聞く事が出来なかった。
だったら、私達の姓を授けようと言う事になったらしい。
実際に俺も自分の真名でしか呼ばれていないから分からなかった。
真名とは本人を表す名前で本人の許可なく、その名前を口にすれば首を斬られても文句は言えないくらい神聖な物らしい。
姓は関・名は忠・字は統・真名は縁。
これが俺の今の名だ。
もう一つの親の愛と絆を忘れないために真名は変えなかった。
最初の方は戸惑ってしまった。
成長して言葉を喋れるようになってからが一番大変だった。
どんな風に話をしたらいいのか全く分からない。
母さんや父さんと呼ぼうとしたが、何だか歯切れが悪くなったりと大変だった。
赤ん坊の時の記憶はあの悲劇以来あやふやで覚えていない。
あの時の記憶があったから、最初はどうやって接すればよく分からなかった。
俺と少ししか歳が変わらない愛紗ともどうすれば良いか迷っていたくらいだ。
それでも、今の父さんと母さんは優しく声をかけてくれた。
愛紗も俺の事を兄様、と呼んで慕ってくれた。
そして、父さんが俺に言ってくれた。

「確かに縁は私達と血は繋がっていない。
 けど、それが何だ。
 お前の本当の母親に託されたというのもある。
 でも、お前は赤ん坊の頃から育てたんだ。
 誰が何と言おうとお前は私達の息子だ。」

そう言われて俺は泣いた。
ものすごく泣いた。
俺はこんなにも愛されている事に気が付いた。
愛紗には俺が泣いているのを見て泣いている意味は分からなかったが愛紗も貰い泣きした。
しかし、姓を聞いてまさかと思ったが、本当にあの関羽とは信じられなかった。
だって、女の子だぞ!!
誰が聞いたって最初は絶対疑うぞ。
真名の事や関羽が女の子。
これが麻奈が言っていた俺が暮らしていた三国志との違いか。
こうなると有名な武将や軍師は女の子である可能性が高そうだな。
そんな事があり今に到る。
そして、俺は家の近くのお墓の前で祈っている。
前の父さんと母さんのお墓だ。
あの後、母さんと村人の人達が協力して、ここに埋めてお墓を作ってくれた。
毎朝欠かさず祈っている。
祈りが終わると母さんと武術の修行している。
今度は俺の手で大切な人を守るためだ。
何でも母さんは昔、名のある武人で父さんは文官、つまり頭で仕事をする人だったらしい。
特に母さんが凄かったらしい。
だけど、王様やその側近の考えの違いから、国を出る事に決めたらしい。
そして、この村に来て、静かに暮らす事にしたらしい。
俺は今、ボロ雑巾みたいにボロボロになって地面に大の字で倒れている。

「ほら、どうしたの?
 早く立ちなさい。」

木で出来た薙刀を軽く振り回しながら、母さんは俺に言う。
いや、無理っす。
前の世界では剣道部に入っていて、全国で優勝した事がある俺でも一本も取れない。
はっきり言って格が違う。
一応俺の中には呂布を超える才能が眠っているはずなんだけどな・・・・

「兄様、頑張ってください!!」

愛紗は俺達より少し離れた所で応援してくれていた。
近くでは父さんや他の村人の人達も見ていた。
俺と母さんの修行はもはやこの村では当たり前になっている。
村人の人達も応援してくれている。
俺は全身に力を入れて立ち上がる。
何より、妹に無様な姿を見せたくない。

「まだまだ!!」

俺は力を振り絞って木刀を持ち直し、母さんに面を打つ。
しかし、あっさり受け止められてしまう。
母さんは笑顔を浮かべて言う。

「気迫は認めるがまだまだ甘い!!!!」

そう言って俺の木刀を上に打ち上げ、渾身の一撃が俺の脇腹にヒットする。
俺はそのまま横に吹き飛び、意識を失った。




「う・・・・・・ん」

俺はゆっくりと目蓋を開ける。
その瞬間、脇腹に激痛が走る。
痛い、めっちゃ痛い。
これ絶対に折れているだろ。
俺の傍には愛紗がいて、目を覚ましたのに気がつくと声をあげる。

「あっ!
 母様、兄様が目を覚ましました!!!」

「おっ、起きたか。
 脇腹、大丈夫?」

あはは、と頭をかきながら苦笑いを浮かべて言ってきた。
俺は軽く睨みながら言う。

「めっちゃ痛いよ。」

「ごめんね。
 つい興奮して力加減を誤ってしまった。」

やばい、一気に母さんと修行したく無くなってきた。
こんなのが続くんなら命が幾つあっても足りない。
あんまり反省していないのを見た父さんは、軽く母さんの頭を殴る。

「お前はもうちょっと反省しなさい。」

「だ、だって、村の人も結構盛り上がってたし・・・・」

「母様!!
 兄様が死んだらどうするつもりですか!!」

「愛紗。
 お前は何かと兄様、兄様ってそんなに縁が好きなのかい?」

母さんがいきなり爆弾を投げてきた。

「ちょ、母さん!
 何言っているんだよ!?」

「当たり前です。
 私は兄様が大好きです。」

「「へっ?」」

思わず母さんと同じ事を言ってしまった。
愛紗はさも当たり前の様な顔をしている。
まじ?
これはLikeなのか?
それともLoveなのか?
どっちなんだ?

「そうか。
 愛紗は縁が大好きなんだな。」

「はい、大好きです!!」

愛紗は満面の笑みを浮かべて言う。
最初は驚いていた母さんだがすぐに対応した。
未だに若干放心状態である俺。
一体どっち何だ?
その夜、愛紗が寝た後に父さんと母さんが言ってきた。

「で?どうなんだ?」

「何が?」

「愛紗だよ。
 あの子完全に縁の事好きだぞ。」

母さんの突然の発言に俺は飲んでいたお茶が気管に入り、思わずむせる。
何とか呼吸を整えながら、答えた。

「違うよ。
 愛紗の好きは家族としてだよ。
 男として見てないよきっと。」

無難に答えて否定してみる。
もし、愛紗が家族の好きではなかったらいろいろまずいだろ。
一応兄妹だぞ、血は繋がってないけど。

「いや、あの愛紗の目は完全に恋する女の目だ。
 女の私が言うだから間違いない。」

断言したよ、この人。

「だったら、尚更駄目だよ。
 俺と愛紗は兄妹だ。」

「けど、血は繋がっていない。
 何も問題はないぞ。」

「大有りだよ!!
 あんた本当に俺の母親か!?
 普通なら絶対に止めるだろ!?」

「私もいいと思うがな。
 お似合いだと思うぞ。」

どうした事か、父さんまで母さんの言葉に同意し始めた。
なにこれ、三国志の時代では近親婚ありなの?
俺がまだ納得していない顔を見て母さんは言う。

「じゃあ、聞くが縁。
 お前は愛紗をどう思う?
 もちろん女の子としてだぞ。」

「それは・・・・・」

それは愛紗はとても可愛い。
いつも俺のそばに居てくれる大事な妹だ。
けどそれは妹としてであって一人の女性とは見ていないだろう。
何より、まだ幼い。

「まだ、分からないよ。
 年齢的な事もあるし、家族としてなら好きだけど。」

「そうか・・・・まぁゆっくり考えなさい。」

えっ?
これって、ゆっくり考える事なのか?

「そうね。
 焦る必要はない。
 けどね、縁。
 これだけは知っておいて。」

思い悩んでいると母さんはこう言った。

「父さんと私はねあなたには幸せになってほしい。
 あなたが愛紗を好きになっても私達は貴方達を祝福するわ。」

母さんの言葉に父さんも頷いた。
何だか話がよく分からない状況に進んでいる。
でも、もし、愛紗が大人になって俺の事を男として好きなら、俺はどうすればいいのだろう。
父さんと母さんは話を終えた後、器などを片付けて布団に入り寝始めた。
依然と俺は愛紗について夜通しで考えるのだった。 
 

 
後書き
誤字が結構多い(笑)

誤字脱字、意見や感想などを募集しています。  
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