我が剣は愛する者の為に
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欲するは力
母さんに愛紗の事を言われて、俺はう~ん、と唸りながら考えていた。
母さんと父さんは悩んでいる俺の姿を見て、ゆっくりと考えなさい、と言って布団に入り寝始めた。
(確かに愛紗は可愛い。
それは間違いない。
だが、女として見られるかって言われるとな。)
はっきり言って俺の精神年齢は二七くらいだろう。
だとしても、義理とはいえ妹を女として好きになれるかと聞かれれば、分からないという答えしか出ない。
愛紗と話をしていたら少しはドキッ、とする場面もあるのは認めるけど。
あれ?、これってロリコン発言じゃね?
俺ってロリコンだったのか!?、と考えが徐々に逸れながらも俺はひたすら考え続けた。
しばらく考えた後。
(どれだけ考えてもはっきりとした答えは出ないな。
とにかく、夜も遅いし寝るか。)
そうと決まれば、布団に入って寝るかと思い立ち上がって外を見た時だった。
「えっ?」
俺は思わず声を出してしまった。
何故なら、外を見た時ちょうど山の頂上辺りから日の出が見えたからだ。
小鳥の鳴き声を聞いて俺は若干放心状態になる。
(朝まで俺はずっと考えていたのか?
それほど時間が経っていたなんて、全然気がつかなかったぞ。)
太陽が高く昇って行くのを俺は確認していると、後ろから物音が聞こえた。
「あれ、縁。
こんな時間に起きているなんて、珍しいわね。」
俺は後ろを振り向くと母さんが布団から上半身だけ起き上がり、俺の方を見て軽く驚いている。
本来なら俺は母さんより後に起きるのが日常だ。
母さんに続いて隣で寝ていた父さんも目が覚める。
「あ、あはははは・・・・おはよう、母さん、父さん。」
俺は苦笑いを浮かべながらとりあえず挨拶をする。
「おはよう、縁。」
父さんは俺の挨拶に普通に返して、母さんは何か気がついたのかニヤリ、と怪しい笑みを浮かべる。
「もしかして、縁。
私達が昨日の夜に話した事を今まで考えていたんでしょう?
気がついたら朝になっていたとか。」
「・・・・・・・・」
母さんの鋭い指摘に俺は何も答える事ができず、軽く視線を逸らす。
「あはははははははは!!!!!!!」
図星なのに気がついた母さんは大声をあげて笑いだす。
父さんも若干、笑っている。
何か、この二人を見ていると真剣に考えていた自分が馬鹿に見えてきた。
「朝も早いんだから、大声で馬鹿笑いしていると近所迷惑だ。」
俺は不機嫌そうな声をあげながら、斧を持って少し早めの薪割りをしに外に出る。
薪にやつ当たりするように、俺は力一杯に斧を振り下ろす。
(あんなに笑わなくてもいいだろうに。)
ぶつぶつ、と愚痴を言いながら俺は今日の分の薪を割る。
いつもの場所に薪を置いて、家に入ると既に朝食の準備ができていた。
愛紗はまだ寝ているようだ。
家には父さんと母さんがいて、ご飯も皿に盛りつけてあった。
「ほら、ご飯出来たから一緒に食べましょう。」
母さんに言われ、俺は床に座り合掌して食べ始める。
しばらくは沈黙が続いていたが、父さんが口を開く。
「縁、私は正直嬉しかったぞ。」
「えっ?」
突然の父さんの発言に思わず食べるのをやめて、目の前に座っている父さんに視線を向ける。
「愛紗の事をそこまで真剣に考えてくれてな。
まだ、お前も愛紗も幼い。
答えを出すのはもう少し後でも問題ないはずだ。」
「私も父さんと同じ意見だよ。
それとさっきは笑ってごめんね。」
そう言って母さんは頭を下げてくる。
俺は箸と器を置いて、慌てて言う。
「そこまで気にしてないから頭をあげて。」
「そう?
それなら、ご飯を食べたら修業を始めるわよ。」
それだけを言い終えると、再び母さんは食事を再開する。
俺もそれに続いて再開する。
食べ終わり、器を片付けて愛紗が寝ている布団に近づく。
可愛らしい寝顔を浮かべながら、愛紗は眠っていた。
「う・・ん・・・・・・兄様・・・・・」
寝言で俺の名前を呼ぶ。
その事を聞いて俺は改めて決心する。
愛紗は何があっても絶対に守ろうと。
俺は壁に立ててある木刀を手に取って、外で待っている母さんの所に向かう。
(その為にも少しでも強くならないとな。)
決意を新たにして母さんと修行したが、結果は言うまでもなくフルボッコにされた。
俺はいつも通り大の字になって地面に転がっていた。
「う~ん、筋は良いんだけどね。」
母さんは木で出来た薙刀を支えにしながら俺を見下ろしている。
「正直、剣の指導は全くできなからね。
こればっかりは縁が自分で見つける他ないわ。」
「うん、分かっている。」
「てか、大丈夫?」
「全身が痛い。
心配してくれるんなら少し威力を手加減して欲しい。」
「あはは、縁と修行していると気持ちが昂ってね。」
最高にハイってやつなのか。
俺は木刀を支えにしながらゆっくりと立ち上がる。
「兄様、大丈夫ですか?」
修業が一区切りして、愛紗が心配そうな表情を浮かべて俺に近づいてくる。
「大丈夫だ、心配するな。」
本当は全然、大丈夫じゃないけど俺は無理に笑顔を作って愛紗の頭を撫でる。
全身がボロボロなのに気がついている愛紗だが、俺が笑顔を浮かべると愛紗も笑顔を浮かべる。
「無理はしないでくださいね。」
「もちろん。」
母さん次第だけど、と思いながら俺は家に向かう。
時間もちょうどお昼頃。
俺達は家に戻り、母さんのご飯を食べようと思った時だった。
「関流さん!!」
その時、一人の男性の人が俺達に走って近づいてきた。
その表情はただならぬ感じがした。
それを感じ取った母さんの表情も引き締まる。
「何かあったのですか?」
「大人数の賊がこの村に!!」
「「ッ!?」」
俺と母さんは息を呑む。
愛紗はいまいち状況が掴めないのか、首を傾げている。
母さんは急いで家に戻り、青竜偃月刀を手に取る。
「急いで、他の村人を安全な所へ。
戦える人達は子供達の護衛を。」
「わ、分かりました。」
「母さん。」
「縁は父さんと愛紗を連れて避難しなさい。」
「俺も・・・・」
一緒に戦うと言おうとしたが、母さんは俺の言う事に気がついたのか先に言われてしまう。
「駄目。
今の縁じゃ賊一人を倒すのだって厳しい。
それに私との修行で身体がボロボロでしょう。」
確かに全身がボロボロだ。
俺は何も言い返す事ができず、ただ拳を強く握る。
「大丈夫よ。」
母さんはそんな俺に頭を撫でながら言う。
「母さんの強さは縁が一番知っているでしょう。
父さんと愛紗のこと頼むわね。」
そう言って母さんは向かってくるであろう賊達の所に向かう。
俺は木刀を強く握り締めて、愛紗に言う。
「愛紗、父さんはどこ?」
「父様なら・・・・」
「縁、愛紗。」
後ろから父さんの声が聞こえ、俺達は振りかえる。
そこには父さんが勉強を教えている子供達と一緒だった。
「良かった、賊が来ていると聞いてな。
母さんは?」
「賊を倒しに向かった。」
「そうか、なら私達は此処を離れるぞ。
此処にいては邪魔になるかもしれないからな。」
父さんの言葉を聞いて俺は頷く。
愛紗の手を掴み、俺はこの場を離れるのだった。
~interview in~
唯は自分の愛刀を握りながら、村の入り口辺りで威風堂々と構えていた。
少ししてから、およそ数十人の賊がやってくるのが見えた。
賊達は唯の姿を捉えると足を止める。
「此処に何しに来た。」
唯は殺気の籠った声で賊に言い放つ。
「何をしにって決まっているだろう。
この村を襲って金になりそうなものを奪うんだよ。」
「聞くだけ無駄だったな。」
「俺達の中じゃあ、あんたは有名人なんだぜ?」
賊達はニヤニヤ、と笑みを浮かべて言う。
おそらく、この人数差だ。
絶対に勝てる、としか思っていないのだろう。
「あんたのおかげでここら辺で追い剥ぎがしにくくなったてな。
だから、あんたは真っ先に殺す。
そうすれば、村も襲えて、悩みの種は消える。」
その言葉を聞いて唯はため息を吐いた。
「分かっていないな。
たかが、烏合の衆。
何人集まった所で私に勝てる訳がないだろう。」
「んだとこら!!」
唯の言葉が癇に障ったのか、四人の賊が一斉に唯に襲い掛かる。
青竜偃月刀を素早く振り回し、横に並んで襲い掛かってくる賊達の足を斬り裂く。
斬られたことによって、バランスを崩し前のめりに賊達は倒れる。
「あがあああああああ!!!!!」
斬られた賊達が似たような叫び声をあげる。
唯は倒れている賊達にとどめをさして、残りの賊達に近づく。
「私はお前達のような賊が大嫌いだ。
貴様らのせいで何人の人の命が消えて言った事か。」
その頭に過ぎるのは縁の顔とその亡くなった両親の顔だ。
強く青竜偃月刀を握り締め言った。
「貴様らは一人も生きて返さん。
此処に来たことを後悔するがいい!!」
地面を強く蹴り、青竜偃月刀で突きを繰り出す。
先頭にいた賊は全く反応する事ができず、その突きを正面から受ける。
顔を貫かれ、一瞬で絶命する。
青竜偃月刀を引き抜き、そのまま横に振り回し横にいた賊の胴体を斬り裂く。
瞬く間に賊の数が減っていく。
賊達もそれを黙って見過ごしはしない。
剣の抜いて、唯に斬りかかるが簡単に受け止められ、カウンターで一撃で仕留められる。
その光景を見て、数的有利という状況が徐々に覆され、賊達の表情に恐怖の色が見え始める。
逃げようとする賊も一人残らず殺していく。
数分で数十人いた賊は残り一人になった。
「貴様で最後だ。」
そのまま青竜偃月刀を振り下ろそうとした時だった。
「へ、へっへへ。」
最後の賊が何やら笑みを浮かべていた。
その笑みが気になり、振り下ろす直前で唯は手を止めて聞く。
「何がおかしい。」
「あんたは俺達の罠にかかったんだよ。」
「なに?」
賊の言葉に唯は眉をひそめる。
賊は言葉を続ける。
「この村で危険なのはあんただけだ。
強さ俺達とは比べ物にならない。
だから、人質を使ってあんたを殺そうって事になったんだよ。」
「ッ!?
ま、まさか・・・・」
「そうさ。
賊はこれだけじゃない。
これの倍以上の数が回り込んで他の村人を襲う作戦だよ!
俺達はあんたを誘き寄せる餌だったんだよ!!」
唯は息の呑む。
この男の言っている事が本当なら、今から向かっても間に合うかは分からない。
一応、村人も戦えるがこの倍の賊を倒す事はまず不可能だろう。
「はははははは!!!!
もう手遅れだ!
あんたもこの村もな!!」
「黙れ!!」
唯は青竜偃月刀を振り下ろし、賊を絶命させる。
そのまま唯は急いで、村に戻る。
(お願い、無事でいて!!)
そう願いながら全速力で戻るのだった。
後書き
にじファンで読んだ事ある人なら分かると思いますが、本当ならこんな話はありませんでした。
あまりに前の奴を呼んでいると話が飛び過ぎてやばかったので、一から書き直しました。
誤字脱字、意見や感想などを募集しています。
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