IS ~インフィニット・ストラトス~ 日常を奪い去られた少年
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第01話
前書き
とりあえず、01話目の更新。
頑張って書きためをしたいところです。
最初は特にアクションらしいアクションはないですね。
あ、あと時系列は鈴とクラスリーグマッチをしてシャルロット達が入学してくる前という中途半端な時系列です。
分かりにくいですけど、お願いします。
では、01話をどうぞ。
「はぁ……どうしてこうなった…………」
廊下に立ちながら少年は呟いた。正直、今直ぐにこの場から逃げ出したい。少年はそう思っていた。どうやってこの場逃げ出そうか考えていると
「それでは入ってきてください」
と、教室の中から言われ半ば半強制的に教室に入った。
中に入ると教室中から視線を感じる。物珍しさと物珍しさと物珍しさで視線が統一されていた。教室の中も中々に物珍しいと思うが……。
いやまぁ、俺が珍しいのは当たり前なんだけどさ。やっぱり、心地いいものではないな。
「それじゃあ、自己紹介、お願いします」
「ええと、大海俊吾です。よろしくお願いします」
少年―――もとい俊吾がそう言うと、「普通だ」「普通だね」「普通だわ」と教室中から聞こえてきた。
おいこら、普通の何が悪い。普通良いだろうが!そもそも、普通こそが善し悪しがなく至高だろう!
なんて、下らないことを考えていると、教室の後ろから怖い視線を感じた。
あれ、何で下らないこと考えてるのバレた?クソ、奴は心が読めるというのか!
そんな事を思っていると更に視線がきつくなった。
あ、はい、すいません、真面目にやります。真面目にやるので視線緩めて!
「…………はぁ」
俊吾は誰にも聞こえないように、溜め息をついた。
そして、この全校生徒のほとんど(男子俊吾含め2名の)『IS学園』に入学した経緯を思い出した。
◇ ◆ ◇ ◆
「はぁ、やっぱりリヴァイブかっこいいなぁ」
俊吾は自宅の自室でISの雑誌を見ていた。内容は、各国を代表するISと代表のISの解説などが乗っている雑誌だ。各国代表のISについては、詳しい事については禁則事項なので名前と特性について書いてある程度で、あまり載っていない。代表候補生等になると、全くと言っていいほど載っていない。
だが、ISの基本的な知識やフォルムについての解説はたくさん載ってある。いわば、ちょっとしたマニア向けの雑誌である。
俊吾は、ISが好きで将来はISの開発スタッフかメカニックになりたいと思っている。本当はパイロットになりたいが、ISは女性にしか扱えないのでどうしても無理だ。だからこそ、こういった雑誌で知識をつけている。大学からはISについて学べたりするが、高校はどうしてもISが学べる学校となると『IS学園』しかない。だが、あそこはISのパイロット養成所なので俊吾には一切関係ない。
そんなことを物思いにふけっていると、雑誌の隅に『IS展示会開催!』と書いてあった。といっても、原寸大の模型などが主なのでそういったイベントはいつも無視してきた。だが、今回は『デュノア社のラファールリヴァイブ展示!!(本物だよ!)』と書いてあった。
「うわぁ、何か胡散臭い……。けど、こういう雑誌だから本当だろうな…………。よし、行ってみるか」
開催場所は、電車を乗り継げば一時間弱で行ける。親に金を貰っていこう。そう考えながら、俊吾はウキウキしていた。
ちなみに、俊吾はISの中でラファールリヴァイブが一番好きだった。独創的なフォルム、容量の大きい拡張領域、何事もそつなくこなせる起用さ。全てをとって、一番格好良い!と、俊吾は思っている。なので、今回のイベントはかなり楽しみである。
◇ ◆ ◇ ◆
「予想はしてたけど、かなりの人だな……」
展示会の会場の某ドームに到着した、俊吾は人の多さにびっくりしていた。東京ディ〇ニーランドと同じくらいの人がいる。そして、7割くらいが男である。やはり、ISのような機械は男心をくすぐるらしい。
「さて、こんなところで立ってるのも邪魔だし、お目当ての物でも見に行きましょうか……」
俊吾はラファールリヴァイブの展示場に向かった。
展示場に着くと、一際人が沢山いた。物珍しいのと、みんなやっぱり本物を見たいのだろう。
「よし、特攻だ!」
俊吾は人ごみの中に割って入っていった。
「うぐ……せまっ…………だけど、まけるかぁ…………!」
文字どうり揉みくちゃにされた俊吾だったが、何とか最前列に到着した。
「うわぁ……すげ…………」
それ以上の言葉が出てこなかった。目の前のラファールリヴァイブは、圧倒的存在感と見るものを魅了するオーラを放っていた。
俊吾は何も話さず、何も考えず、ただただリヴァイブを見つめ続けた。感無量とはこのことだろう。
どのくらい見つめ続けていただろうか。ふと、意識が元に戻った時には人ごみの中にいることを思い出し、後ろからも押されていることを思い出した。
「そろそろ、戻ろうか……」
そう呟いた時、急に後ろから強く押された。
「うわっ!」
目の前には、リヴァイブしかないのでバランスを取るためリヴァイブに触れてしまった。
「やべ……はやく逃げないと…………」
勝手に展示物に触れたとなれば、スタッフにどやされる。そう思い、俊吾は早くその場から逃げようと思った。
―――キュゥゥゥゥゥン
突然、機械音が鳴り響いた。
「何だ、この音?」
次の瞬間、頭の中にとてつもない情報が流れ込んできた。
シールドエネルギ―――ok
ブースター出力―――ok
拡張領域内の武器―――ok
出力―――ok
システム―――オールグリーン
一体、何が起きたのか分からなかったが、次第に何が起きたのか分かってきた。
「…………もしかしなくても、ISが反応した…………?」
頭の中に流れてくる情報は、どれもISに関することばかり。しかも、システムチェックが主となっている。
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!それは無いだろう!!!だって、何でISが反応したって分かる!?一回も操縦したことないし、しかも男だから反応する事ないし…………って、あれ、もしかすると俺って……女だったりするの?いやでも、俺ちゃんと付いてるし……みんなからも男だって認識されてるし、そもそもこんなことはおかs(省略)」
何て、現実逃避をしていると騒ぎを聞きつけスタッフが駆けつけてきた。
「はいはい、道開けて~」
そう言って、俊吾の近くまで来た。
「君、ISから離れようね。そして、ちょっとこっち来てね」
俊吾の手を取りながらそう言うと、スタッフは驚いたようだった。
「あれ…………君、男?」
「いやまぁ………………はい」
一時間後、政府に身柄を拘束され、一週間は自由が無かったです。
4月20日土曜日 高宮高等学校1年5組 大海 俊吾
以上、回想終わり。
◇ ◆ ◇ ◆
というか、何だこの小学生並みの作文の終わりみたいなの……。
「それでは、大海君。空いている席に座ってください」
そう言われ、空いている席を探すと、最前列の中心の隣。ちなみに、最前列の中心には別な男子生徒が座っている。
「それでは、朝のSHRを終わります。皆さん、一時間目の準備をしてくださいね」
そう言って、先生は出ていった。つか、あの先生、名前何ていうんだろう?聞きそびれたな……。
「俺、織斑一夏。よろしくな」
突然、隣の男子から声をかけられた。声のした方向を向くと、顔立ちの整った顔をした男子、織斑一夏がいた。
「あ、ああ、よろしく。俺、大海 俊吾……って、さっき名前言ったか。なぁ、織斑……」
「ああ、俺の事は一夏でいいぞ」
「あ、そう?だったら、俺も俊吾でいいよ」
「わかった。それで、どうした俊吾?」
「あ、そうだ。あの、前にいた先生の名前って何て言うんだ?聞きそびれちゃってさ」
「ああ、あの先生は山田麻耶って言うんだ。ちなみに、もう一人のスーツ着てるのが……」
「織斑千冬、だろ?」
「ああ、知ってたか」
「まぁ、有名人だしな。一夏の姉になるのか、あの人?」
一夏は一瞬、考えるような仕草をしたが言葉を繋いだ。
「まあ、そうだな。自慢の姉だよ」
「確かに、そうだな」
そう言いながら、笑っていると周りに女子2人が集まっていた。え、何で集まってんの?俺、これからカツアゲされるの?
「大海さん、ですわね?私はセシリア・オルコット。イギリスの代表候補生です。よろしくお願いたします」
と言ってきたのは金髪の綺麗なロールをしている髪の女子だった。出身国はさっき言ったとおり、イギリスらしい。
まぁ、この学園国家組織に属するらしく、生徒は日本だけでなく世界各国から(ISを持っている国限定)集まっているいるから、驚くことはないんだよな。というか、あの髪セット大変だろうな。
「私は篠ノ之箒だ。よろしく」
今度は黒髪のポニーテールの女子が話しかけてくる。
あれか、転校生だから品定めとかそんな感じか?『お?ここは女子の花園なんだから調子乗ったら分かってるよな?お?』って感じか……。うわ、怖い。IS学園、怖いよ。つか、女子校の女子、怖っ!
ここは無難に返しとくか……。怖いし。
「こちらこそよろしくね」
ニコッ、という効果音が付くくらい綺麗な笑顔を付けて返事をした。
営業スマイル付きで返せば何とかなるだろ、うん。
―――キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、みんな席に戻っていった。
「話はまた後で」
オルコットさんはそう言って席に戻っていった。うーん、しばらくこんな感じで絡まれるのかな……。
そう考えると、ちょっと欝だな、と思った俊吾だった。
◇ ◆ ◇ ◆
「え~、では、今日はISでの移動についての応用について説明しますね」
チャイムが鳴ってから少したってから来た山田先生はそんな事を言い始めた。って、いきなりの応用ですか……。って、当たり前っちゃ当たり前か。
現在、4月末。初旬から基本事項を(今回は移動について)学んでいたら、そろそろ応用に入っても問題はない。
「移動の応用と言っても、実践は出来ないので今回は軽く教えるくらいですけどね」
そう言いながら、黒板を操作して何かの動画を再生した。
「これは、瞬間加速(イグニッション・ブースト)と言って、シールドエネルギーを消費してIS自体の運動性能を上げる操作です。これは、織斑くんが鳳さんとのクラスマッチで使いましたね」
へ~、これを織斑が……。不器用そうに見えて意外とそうでもないのか。
そこで、山田先生と俊吾の目があった。
「あれ……もしかして、大海君分からなかったりするかな……?いやでも、織斑君が分からなかっただけで普通は分かるよね?大海君は分かっててくれるよね?」
何か後半は全然何を言っているのか分からなかったが、分からないか心配してくれてるのか。まぁ、この人はいい先生か……。
「いえ、大丈夫ですよ、先生」
「本当?嘘じゃないよね?見栄張ってたりしないよね?」
何故こうも疑り深いのか……。面倒だけど、理由話しといたほうがいいか……。
心の中で溜息を付きながら俊吾は答えた。
「はい。そもそも俺、元からISの開発部かメカニックになろうと思っていたので、これくらいは勉強しました。それに、編入前に渡された参考書読みましたし、大丈夫ですよ」
何故か、タウンページくらいの厚さの本が二冊(入門編と応用編と書いてあった)あったのは黙っておこう。しかし、あれを一週間(身柄を拘束されている途中に読んだので実質4日)で読み切るのは難しかったな。必読と書いてあったせいで、読み切るために寝不足になったのもいい思い出……な訳はない。
それを言うと、山田先生は嬉しそうに
「そ、そうですか!大海くんは凄いですね!」
と何故かベタ褒めだった。何か、教室の後ろの方から「ほう……」と言った声を聞こえたが無視した。
あと、隣で織斑が何故かショックを受けていた。
「じゃあ、このまま授業を進めますね」
その後、午前の授業を楽しそうに行う山田先生であった。
◇ ◆ ◇ ◆
「そういえば、俊吾って専用機あるのか?」
みんな(一夏、俊吾、セシリア、箒の四人)でお昼を食べていると、ふと一夏がそんなことを言い出した。みんな食堂で好きなものを食べている。俊吾は無難にラーメンを食べていた。
「専用機ねぇ……。まだ無いけど」
「まぁ、そのうち支給されるでしょうね。」
「そういうもんか?」
「ええ、俊吾さんは一夏さんに次いで世界でISを使える男なんですから」
何か、一夏に次いでって所が変に力入っていたような……。まぁ、どうでもいいか。つか、いつの間にか俺のこと名前呼びになってるし。これも、気にしたら負けか……。
「支給されるなら支給されるで、拡張領域が広い方がいいな」
「何でだ?」
「いや、使えるなら色々な武器使えたほうがいいだろ。戦況っていうか状況に合わせた武器を使う、みたいな感じでさ」
「ああ、確かにいいな、それ」
「だが、一夏はそんなことは出来ないだろ」
と、篠ノ之さん。
「どういうこと?」
「ああ、その俺のISって特殊で拡張領域のほとんどがワンオフアビリティに使われてて、実質武装が剣しかないんだよ」
「あらら、何というか随分極端な話だな」
「まぁ、そうなんだけど、俺自身結構気に入ってるんだ。ひとつの事に集中したほうがやりやすいし」
ふむ、勝手に渡されるとそんなこともあるのか……。何とか要望みたいなものを通せないものか。放課後、先生に言ってみよう。
◇ ◆ ◇ ◆
「あの、山田先生。ちょっと、話があるんですけど」
放課後、俊吾はお昼のことを山田先生に話そうとしていた。
「あら、どうしたんですか、大海君?」
「あの、俺の専用機って作られてるんですか?それを聞きたくて」
「ああ、それは……」
「それについては、私が説明しよう」
そう言ってきたのは、一夏の姉の織斑千冬だった。
「山田君、君は私の代わりに会議に出てくれ。大海に話すことが多いのでな」
「わ、わかりました」
そう言って、山田先生は急いで教室の外に出ていった。そして、放課後の教室に残っているのは俊吾と千冬だけになった。
あれ、何か変に緊張してきた。つか、怒られるのかな、俺。何かやらかしたっけ……?
「なに、そんなに緊張するな。楽にしたまえ。座ったらどうだ?」
千冬は微笑みながらそういった。俊吾は言われた通り、自分の席に座った。
「それで、この学校はどうだ?」
千冬は机に座りながら質問を投げかけた。
「どうと言われましても、窮屈としか言えませんね。女子しかいませんし」
「それを逆に捉えることは出来ないか?文字どうりここの女子は選り取りみどりだろう」
「……先生、それはわざと言ってますか?」
「さぁ、何のことかな?」
千冬は不敵な笑みを浮かべながらそう言った。
この人、絶対分かってて言ってるな……。だからといって、何か反撃できるわけでもないけどさ。
「さて、本題に入ろうか」
千冬は一息入れ、そういった。あくまで、砕けた感じは壊していない。
「専用機、だったな。お前のものは確かに作っている。それが、どうした?」
「いえ、その専用機に俺の要望って通ったりしますか?」
「内容にもよるだろうが……言ってみろ」
「拡張領域を大きくしてもらいたんです」
「具体的にはどのくらいだ?」
「ラファールリヴァイブの2割増くらいですかね」
「ふむ…………」
少し熟考してから、千冬は答えた。
「……今、お前に作っているISの拡張領域は丁度そのくらいだ」
「あれ、そうなんですか?」
「ああ。一夏のISについては聞いたか?」
「ええ、まあ」
あれだろ、ワンオフアビリティに拡張領域のほとんどを持って行かれているってやつだろ?
「なら話は早い。端的に言うと、日本政府はお前と一夏のISは正反対なものにしようとしている。一夏が一つを極めるの『達人タイプ』に対して、お前――俊吾は『何事もそつなくこなすオールラウンダー』に育てる方針が固まったところだ。お前の個人情報を見てその方針がたったわけだが……何か質問はあるか?」
「無いと言ったら嘘になりますが、ISについて何も不満がないので質問はありません」
「そうか……」
「あ、やっぱりひとつだけ。専用機を貰ったら自分で微調整とかメンテナンスはしても大丈夫ですかね?」
「それに関しては問題なかろう、お前の専用機だ。まぁ、大きな調整は一度研究所に持っていかないとどうしようもないが、それ以内で行えるのだったら好きにしていい」
「それで十分です」
「他に何か質問があるなら、今ここで聞くがどうする?」
「……何でこの学園に俺は入れられたんですか?って質問はありですか?」
「答えるとなると、事務上の答えになるが、それでいいなら質問すればいいさ」
悪戯な笑みを浮かべながら千冬は言った。
うわ、この人絶対この質問の意図わかってて言ってるよ。もうやだ…………。
「……日本政府も意地が悪いですね」
「そう言ってやるな。あれはあれで、何かと大変なんだ」
日本政府をあれ呼ばわりって……。まぁ、俺も小馬鹿にした感じで言ったんだけどさ。
「在学中にその苦手を克服すれば問題は無いだろう?どちらにせよ、お前の進路では障害になるだろ?」
「いやまぁ、そうなんですけど、そう簡単に行けば苦労はしないんですよ」
「なに、時間はたっぷりある。苦労したまえ、若人よ」
そう言って千冬は机から立ち、教室から出ていった。外を確認すると暗くなっていた。
「……部屋に行くか」
俊吾も教室を出た。
◇ ◆ ◇ ◆
「ええと、俺の部屋は……っと、ここか」
紙に書かれている番号『1025室』。目の前の部屋の番号プレート『1025室』。よし、間違ってない。
俊吾はドアノブに手を掛け、ドアを開く。
「お、俊吾やっと来たか」
一瞬、声にびっくりしたが声の主を確認して安堵した。
「一夏か……。いやまぁ、そうだよな」
男子が二人しかいないのだから必然的に一夏と一緒の部屋になるに決まっているじゃないか。変に緊張して損した。いや、別に女子と一緒の部屋になるとかは思ってないよ?ほ、ホントだよ?
「実は今まで女子と同室だったから、結構嬉しかったりするんだよな」
へぇ、それは大変だな……。ってあれ、今変なこと言われた気がするんだけど……。
「なぁ、一夏。今、お前女子と同室って言ったか?」
「ん?ああ。今日話してた、篠ノ之箒と同室だったぞ」
「…………お前、良く女子と同室で暮らしてたな。尊敬するわ」
「そうか?別に普通だろ、幼馴染だし」
おおう、そんな理由で女子と同じ部屋で寝れるなんてお前くらいだろ……。
「そういえば、こんな時間まで何してたんだ?」
「ん?お前の姉さんと話してた」
「何を?」
「まぁ、色々だ」
「ふ~ん、そうか。じゃ、飯食いにいこうぜ」
「ま、いい時間だし、行くか」
◇ ◆ ◇ ◆
夕食後、部屋に戻ってきた二人はシャワーを浴び終わりベットに座ってくつろいでいた。
「何か、この学校来てから色々驚きっぱなしだなぁ」
俊吾がふと呟いた。
「例えば?」
「食堂のメニューの多さ」
「あぁ、それは俺も思った」
「まぁ、色々な国の人間が集まるから色々なメニューを取り揃えてるんだろうけど、中々だよなぁ、あれ」
ざっと200種類くらいあるこの学校の食堂のメニュー。しかも、日替わり和食セットと洋食セットがあって何種類かのローテーションになっているみたいだが、それも十種類以上あって、総メニュー数は250を超えるのではないのだろうか。
「あとは、教室の綺麗さとか広さとか机とか廊下とか敷地の広さとか綺麗さとか」
「って、ほとんど全部じゃないか」
「はは、確かに、全部に驚いたかも」
どこか乾いた笑いをしながら俊吾はそういった。
「一番は本当に女子しかいないことかな……おかげで、息苦しくて仕方ない」
「……なぁ、俊吾って女子が苦手なのか?」
一瞬、俊吾はその質問に驚いたが
「ああ、苦手だ」
と返した。
「何で……って聞いたら変かもしれないけど、どうしてだ?」
少し俊吾は考えたが、別にいいかと思って言った。
「……小学生の頃に女子からいじめられててな、それからどうも苦手になってさ。トラウマとまではいかないけど、苦手なのは確かだな」
「…………きっかけは何だったんだ?」
「分からん。いじめなんてそんなもんだし、今はもう忘れた。って、忘れてないから女子が苦手なんだったな」
「じゃあ、この学校にいるのも嫌なんじゃないのか?」
「ま、確かに苦痛でしかないけど、意外とみんな優しいしな。今までみたいに、ビクビクはしないよ」
少し沈黙が訪れる。仕方もない。そういった話をしていたのだから。俊吾は空気を変えるために一夏に話しかける。
「それはそうと、一夏。良く、俺が女子が苦手って気づいたな」
「ん?ああ、それは俊吾がセシリアとかと話す時と俺の時とじゃ、何か少し違って感じたからさ」
あぁ、あの二人は確かに話しにくかった。主に一夏のせいで。え?その理由?一夏に向ける視線と俺に向ける視線が違うんだ。まぁ、おそらくあの二人は一夏に惚れてるだろうから、変に意識したってのはある。それのせいなんだろうが。そこらへんは修正していこう。
「あれで気づいたか。意外と観察してるんだな、一夏は」
「そうでもないけんだけど……。そもそも俊吾、二人のこと名前で呼んでなかったしな」
あ、確かに名前で読んでなかった。まぁ、名前で呼ぶのに慣れてないってのと苦手ってのでダブルパンチだからな……。まぁ、頑張ろう。
「確かにそうだったな、忘れてたよ」
「やっぱ、名前呼ぶのにも抵抗あるのか?」
「ま、あるっちゃあるな。どっちかって言うと、何て呼べばいいかわからないから苗字呼びなんだけどさ」
「多分、あの二人はその内名前で呼べって言ってくると思うぞ」
「ま、あの二人は気さくだしな……。って、そろそろ就寝時間か。一夏のベットってどっちだ?」
「シャワー側だぞ」
「と、なると必然的に俺は窓側か……。ま、いっか」
寝る前に少し荷物を整理してから俊吾は
「電気消すぞ」
と言った。
二人とも、布団に潜ったが俊吾は一人考え事をしていた。これからのこと、学校のこと、ISのこと。慣れない環境のせいか目が冴えて変に意識してしまい、しばらく寝れなかった。
そして、もしかしたら自分のベットに箒が寝ていたのではないのかと変に意識して寝れなくなるのは、また別のお話。
後書き
次の更新は明日か明後日に出来そうです。
楽しみにしていてください。
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