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遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
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―デス・デュエル―

 ネオスペーシアンと宝玉獣という伝説のデュエルとともに始業式が終わりを告げると、全ての生徒にデュエルエナジー観測装置《デスベルト》が配られ、機械的なデザインのそれを腕に装着することを強要された。

 プロフェッサー・コブラがウェスト校で実績を残した授業方法らしく、このデスベルトから発せられたエナジーによってデュエルへの熱意や実力を判断し、その結果で寮の昇格や降格が決定されるらしい。熱意や実力が他の者に劣っているとは思わないが、座学を疎かにされたようで、あまり良い気はしていない。

 こうして、四人の留学生とプロフェッサー・コブラ、そしてディスクロージャー・デュエル――略して《デスデュエル》――を含みながら、俺たちの最後の年が始まったのだった。

 ……俺はその前に、クロノス教諭とナポレオン教頭の二人がかりの説教を喰らうことになるのだが、それは割愛させてもらう。……アモンは特にお咎め無しのようで、なんとも理不尽な話だが。



「デスデュエルにデスベルト、ねぇ……」

 それからしばらくたった後、俺は腕に装着された《デスベルト》を見ながらポツリと呟き、もう一度デスベルトを外そうと試みた。やはりどんな力を入れようともデスベルトは取れず、機械には詳しい自分でもデスベルトはどんなものかは解らなかったが。

 デュエルをするとここからデュエルエナジーというものが吸われ、専門の機械でエナジーの計測を行う、ということだ、……ウェスト校で成果を出しているのは確からしいが、何とも怪しいものだ。

 まあ、デスデュエルのことはこれ以上考えても仕方がないだろう。

 今俺がやらなければいけないことは、先日の始業式をジムとデュエルしたせいで遅刻し、晴れ舞台を見ることが出来なかった妹分への謝罪。要するに、レイのところにちょっと謝りに行くついでに、高等部へと馴染めているか見に行くということだ。

 我ながら過保護だとは思うけれど、デスデュエルについてこれ以上考えても無駄なことと、同じぐらい仕方がないことなのである。こればかりは兄貴分たる自分としては。

 そういうことで、レイが今ラー・イエロー寮にいると聞いた俺は、久しぶりにラー・イエロー寮へと赴いた。そこで見たものは……何故かラー・イエローの生徒を追いかけ回す、元気な妹分の姿だった。

「待ってよマルっち! ……あ、遊矢様!」

 俺がラー・イエロー寮内に入るなり、レイは即座に俺の姿を見つけると、急激に彼女はそのスピードを増す。そして、容易く追いかけ回していた生徒をつかまえると、こちらに笑顔で寄ってきた。

「……様は止めろ、レイ。見ない顔だけど、そっちの生徒は?」

 いつも通りの会話を繰り広げた後、レイが捕まえたラー・イエローの生徒の顔を見た。見ない顔で身長も低く、どうやらレイと同じく一年生のようだ。

「私と同じ一年生の、加納マルタンくん。マルっち、前話した遊矢先輩だよ!」

「あ……どうも……」

 小柄な見た目通りに性格も気弱なのか、マルタンはか細い声で挨拶すると、レイに「もっと元気!」という感じで怒られた。……兄貴分としては、妹分の成長を喜ぶべきなのだろうか?

「で、何でお前マルタンを追いかけてたんだ?」

「始業式で仲良くなっただけだからデュエルしてなくて……せっかくだからデスデュエルをやってみよう、と思ったんだけど……」

 ……逃げられたから追いかけ回してたのか、お前は。レイにそう言ってやりたかったが、彼女もそのことを反省しているのか、どことなくシュンとしているので止めておこう……マルタンの気持ちも、解らない訳ではないし。

 飛び級とはいえ年下の女子とデュエルして負けるのは、男子としてプライドに関わるだろうし、見るからに気弱なマルタンはそれ以上のことを考えてしまうだろう。というかレイと絡むマルタンを見て、リア充爆発しろ的な視線を向ける男子もチラホラいるので、妙な逆恨みも怖そうだ。

「じゃ、俺とデュエルしないか?」

「え、先輩とですか……」

 突如として提案された俺の発言に、マルタン案の定嫌そうに顔をしかめるが、レイに聞こえないようにマルタンの耳元に口を近づけた。

「……レイは絶対に諦めない。俺とデュエルして、デュエルで疲れたとか言うことをお勧めする」

「うう……」

 それは早くも解っているのだろうマルタンは、しばし迷った後にデュエルディスクを構えた。デスデュエル期間中はいつでもデュエル出来るように、プロフェッサー・コブラから出来るだけ付けることを推奨されている。

「何で私とデュエルするのはダメで、遊矢様とは良いの……」

 俺たちがデュエルするために準備していると、何故ハブられたか解らないレイは一人で不思議そうにしていたが、すぐさまいつもの明るい笑顔となった。

「でも、見てても楽しいから良いかな! 二人とも頑張ってね!」

 ……まあ妹分が見ている前で、下級生に負けるわけにはいかないな。デスデュエルとやらがどんなものかも、ついでに体験させてもらうとしよう。

『デュエル!』

遊矢LP4000
マルタンLP4000

「僕のターン、ドロー」

 先攻は後輩に譲るなどと言ったつもりはないが、デュエルディスクはマルタンを先攻に選び、マルタンはカードを一枚ドローした。

「僕は……《トロイホース》を召喚」

トロイホース
ATK1600
DEF1200

 木で作られたトロイの馬こと《トロイホース》。地属性の上級モンスター専用のダブルコストモンスターで、マルタンのデッキは【地属性】寄りのデッキなのだろうか。

「更に永続魔法《トイ・ボックス》を発動。モンスターを一枚除外し、ターンエンド」

「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺のターン、ドロー!」

 マルタンのフィールドに発動された永続魔法は、《トイ・ボックス》という名前の通り、そのままおもちゃ箱のような外見だ。その効果もおもちゃ箱の名を裏切らず、『トイ』と名の付くモンスターを除外し、好きなタイミングでフィールドに特殊召喚できるという効果。

「俺は《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

 いつでも好きなタイミングで帰還出来るというのは厄介だが、『トイモンスター』は一種類を除いて全て下級モンスター。今のところは度外視しても良いだろう。

「バトル! マックス・ウォリアーでトロイホースに攻撃! マックス・ウォリアーはモンスターへの攻撃時、400ポイント攻撃力がアップする! スイフト・ラッシュ!」

 ダブルコストモンスターを防ぐ手段は特になかったようで、機械戦士のアタッカーたるマックス・ウォリアーに破壊され、その破片はマルタンに飛来する。

マルタンLP4000→3400

「相手モンスターを戦闘破壊した時、マックス・ウォリアーの攻撃力・守備力は半分になる……カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「僕のターン、ドロー!」

 マルタンがドローした後のスタンバイフェイズ時、マルタンのフィールドにある《トイ・ボックス》がもぞもぞと動き出した。

「……スタンバイフェイズ、《トイ・ボックス》の効果を発動! 除外してたトイモンスターを特殊召喚します。来てくれ、《トイ・ソルジャー》!」

トイ・ソルジャー
ATK800
DEF300

 《トイ・ボックス》の中から出て来たのは、銃を持ったクルミ割り人形……とでも言えば良いのか。例えるならばそんな外見をした、おもちゃのようなモンスターだった。

 ナポレオン教頭の主力モンスターであり、スタンバイフェイズにその効果を発揮する。

「トイ・ソルジャーの効果発動! スタンバイフェイズ、デッキから二体の《トイ・ソルジャー》を特殊召喚!」

 これこそが《トイ・ソルジャー》の効果であり、そのステータスは低いもののデッキからの特殊召喚は脅威であり、マルタンのフィールドに三体の《トイ・ソルジャー》が揃った。

「装備魔法《団結の力》を装備して、バトル! トイ・ソルジャーでマックス・ウォリアーに攻撃!」

 大量展開をした後の《団結の力》。単純な作戦ではあるが効果的で、トイ・ソルジャーの攻撃力は3200となった。

「リバースカード、オープン! 《くず鉄のかかし》! 攻撃を無効にし、再びセットする」

 トイ・ソルジャーから放たれた弾丸は、マックス・ウォリアーを護るように前に出た《くず鉄のかかし》に防がれ、《くず鉄のかかし》は再びセットされた。

「ああ……カードを一枚伏せてターンエンド」

 マックス・ウォリアーの攻撃力・守備力は半減しているため、今ならば《トイ・ソルジャー》と同じ攻撃力なのだが、相討ちを狙ってはこないようだ。

「俺のターン、ドロー!」

 攻撃が失敗して残念そうにしているマルタンのフィールドは、トイ・ソルジャーが三体――一体は《団結の力》を装備している――に《トイ・ボックス》にリバースカード。

「俺は《マックス・ウォリアー》を守備表示にし、《ガンドレット・ウォリアー》を守備表示で召喚!」

ガンドレット・ウォリアー
ATK400
DEF1600

 アタッカーを守備表示にするとともに、腕甲の機械戦士を守備表示で召喚したため、マルタンは俺が守備に回ったのだと安心したようだ。……後輩に教えてあげよう、この条件でのみ特殊召喚出来るモンスターがいることを。

「俺のフィールドには守備表示モンスターが二体。よって、《バックアップ・ウォリアー》を特殊召喚!」

バックアップ・ウォリアー
ATK2100
DEF0

 守備表示となっている二体の機械戦士の間から、重火器で武装している機械戦士《バックアップ・ウォリアー》が特殊召喚される。

「更に速攻魔法《移り気な仕立て屋》を発動し、トイ・ソルジャーに装備されている《団結の力》をバックアップ・ウォリアーに装備する!」

「えっ!?」

 トイ・ソルジャーに流れていた《団結の力》がバックアップ・ウォリアーに流れていき、その攻撃力をトイ・ソルジャーに装備していた時と同じ、つまりは2400ポイントアップさせる。上昇値は確かに同じであるものの、《トイ・ソルジャー》と《バックアップ・ウォリアー》では元々のステータスが違う。

「バトル! バックアップ・ウォリアーで《トイ・ソルジャー》を攻撃! サポート・アタック!」

 トイ・ソルジャーのライフルとは、比べ物にならない火力を持ったバズーカがバックアップ・ウォリアーから放たれ、マルタンの《トイ・ソルジャー》へと向かっていく。

「リバースカード《強制終了》を発動します! 《団結の力》を墓地に送って、バトルを終了!」

 バックアップ・ウォリアーは攻撃を無理やり止められた上に、流れてきていた《団結の力》を失うという散々な結果に終わってしまう。まあ、マルタンの《団結の力》を処理出来ただけでも良しとしよう。

「このままターンエンドだ」

「僕のターン、ドロー!」

 《トイ・ソルジャー》の効果が発動するスタンバイフェイズになったが、マルタンの《トイ・ソルジャー》は全てフィールドにいるので、その効果は不発となって終わった。

 しかしデュエルはまだまだ序盤だが、未だにマルタンのデッキが解らない。そのデッキの方向性というか、テーマ性というのか、デッキが何を目指しているか解らないのだ。

 俺のデッキであるならば、《機械戦士》たちを活躍させられるデッキというように、どんなデッキだろうとテーマはある筈なのに。

「僕は……《トイ・ソルジャー》二体をリリースし、《パペット・キング》をアドバンス召喚!」

パペット・キング
ATK2800
DEF2600

 兵隊人形二体をリリースしてアドバンス召喚されたのは、その操り人形たちの王様――《パペット・キング》。その効果は手札でしか使えない効果なので、フィールドに出た今はただのバニラだ。

 しかし、今までマルタンが使ってきたモンスターカード……《トロイホース》に《トイ・ソルジャー》、そして《パペット・キング》となると、まさか玩具関係のモンスターのファンデッキ……?

「そして速攻魔法《ダブル・サイクロン》を発動し、《トイ・ボックス》を破壊して《くず鉄のかかし》を破壊!」

 二つの旋風が俺とマルタンのフィールドに起きると、マルタンのフィールドの《トイ・ボックス》と《くず鉄のかかし》を破壊する。

「バトル! パペット・キングでバックアップ・ウォリアーに攻撃!」

「くっ……!」

遊矢LP4000→3300

 バックアップ・ウォリアーは破壊されてしまったものの、まだまだライフポイントはかすり傷を負った程度。さして気にすることはないだろう。

「カードを二枚伏せてターンを終了します」

「俺のターン、ドロー!」

 俺のフィールドには、マックス・ウォリアーとガンドレット・ウォリアーのみで、ライフポイントは3300。対するマルタンはパペット・キングにトイ・ソルジャー、そして《強制終了》でライフポイントは3400。

 後輩と現段階で同等というのは、正直先輩としてどうかと思うところなので、少しばかりやらせてもらおう。

「俺はチューナーモンスター《ロード・シンクロン》を召喚!」

ロード・シンクロン
ATK1600
DEF800

 金色のロードローラーを模したチューナーモンスターが登場し、守備の態勢をとっていたマックス・ウォリアーが、ロード・シンクロンと並んだ。

「自身の効果でレベル2となった《ロード・シンクロン》と、レベル4の《マックス・ウォリアー》をチューニング!」

 光の輪となったロード・シンクロンがマックス・ウォリアーを包み込み、このデュエル初のシンクロ召喚となり、目の前のマルタンが気を引き締めた。

「集いし事象から、重力の闘士が推参する。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《グラヴィティ・ウォリアー》!」

グラヴィティ・ウォリアー
ATK2100
DEF400

 ロード・シンクロンとマックス・ウォリアーがチューニングし、シンクロ召喚されたのは獣型の機械戦士である、重力の闘士《グラヴィティ・ウォリアー》。

「グラヴィティ・ウォリアーがシンクロ召喚に成功した時、相手モンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする! パワー・グラヴィテーション!」

 グラヴィティ・ウォリアーは、マルタンのフィールドにいたモンスターを睨みつけると、その鋼鉄の爪を鋭くさせた。マルタンのフィールドにいるのは、《パペット・キング》と《トイ・ソルジャー》の二体なので、その攻撃力を2700ポイントとする。

「パペット・キングの攻撃力の方が……」

「いや、まだだ。ガンドレット・ウォリアーをリリースすることで、俺のフィールドの戦士族モンスターの攻撃力を、500ポイントアップさせる!」

 ガンドレット・ウォリアーがリリースされた代わりに、グラヴィティ・ウォリアーの腕にガンドレット・ウォリアーの腕甲が付き、さらにその攻撃力を上げていく。

「速攻魔法《サイクロン》を発動して《強制終了》を破壊し、バトル! グラヴィティ・ウォリアーでパペット・キングに攻撃! グランド・クロス!」

「ううっ……!」

マルタンLP3400→2800

 グラヴィティ・ウォリアーの腕甲が付いた鋼鉄の腕から放たれる、強靭な爪の一撃にパペット・キングは切り裂かれ、その玩具で出来た身体はバラバラとなった。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド!」

「ぼ、僕のターン、ドロー!」

 パペット・キングが破壊されてしまったため、マルタンのフィールドにはもう《トイ・ソルジャー》しかおらず、その効果を発動しようにも、残り二体の《トイ・ソルジャー》は墓地にいる。従って、デッキから特殊召喚する効果は発動出来ない、と思ったのだが……

「伏せてあった《転生の予言》を発動! トイ・ソルジャー二体を墓地に戻して、フィールドの《トイ・ソルジャー》の効果でデッキから特殊召喚!」

 少々甘く見ていたようだ、とマルタンのフィールドに再び揃った《トイ・ソルジャー》を見て思うと、マルタンは伏せてあったもう一枚のリバースカードを発動した。

「リバースカード、《ハイレート・ドロー》を発動! 僕のフィールドの機械族モンスターを破壊し、破壊した数だけカードをドローする」

 特殊召喚されたや否やトイ・ソルジャーは破壊され、その代償としてマルタンは三枚のカードをドローする。三体に増える《トイ・ソルジャー》をコストに使うとは、こちらとしてはたまったものではないが、マルタンはあまり良いカードを引けなかったようだ。

「……《ブロックマン》を守備表示で召喚」

ブロックマン
ATK1000
DEF1500

 玩具で言ったところの『ジェンガ』であろうか、ブロックで構成された人型が守備の態勢をとる。あまり守備力は高くないが、フィールドに残しておくと厄介なモンスターだ。

 ……強いて言えばマルタンのデッキには、フィールドに残しておくと厄介なモンスターしかいないのか。ダブルコストモンスターといい、《トイ・ソルジャー》といい《ブロックマン》といい、《強制終了》といい。

「カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 俺のフィールドには、攻撃力が2700ポイントと戻った《グラヴィティ・ウォリアー》と、リバースカードが一枚しかない。だがなかなかこの状況には、良い装備魔法を引くことは出来た。

「装備魔法《メテオ・ストライク》をグラヴィティ・ウォリアーに装備し、グラヴィティ・ウォリアーは貫通効果を得る! バトルだ!」

 マルタンのライフポイントは2900なので、まだトドメを刺すには至らないものの、有効打を与えることが出来るはずだ。

「グラヴィティ・ウォリアーでブロックマンに攻撃! グランド・クロス!」

「リバースカード、オープン! 《攻撃の無力化》!」

 グラヴィティ・ウォリアーの攻撃は、マルタンのフィールドに現れた時空の穴に吸い込まれてしまい、その鋼鉄の爪はブロックマンに届かない。グラヴィティ・ウォリアーは鼻息をならしながら、残念そうに俺のフィールドに帰ってきた。

「……こっちもカードを一枚伏せ、ターンエンド」

「僕のターン、ドロー……《貪欲な壺》を発動して、二枚ドロー!」

 汎用ドローカードによって二枚のドローを果たし、マルタンはデュエルディスクから《ブロックマン》を取り出し、そのままそのカードを墓地に送った。

「ブロックマンの効果を発動。ブロックマンをリリースして、二体の《ブロックマントークン》を特殊召喚!」

 《ブロックマン》のカードが墓地に送られると、ブロックマンがバラバラになっていき、そのまま二体の小さいブロックマンとなった。だが、そのステータスは変わらないというのは、どういうことなのか。

 ブロックマンはフィールドにいたターン数、リリースした際にトークンを特殊召喚する効果を持っている。よって《攻撃の無力化》に守られたので、二体のモンスタートークンとなったのだ。

「更に通常魔法《トークン復活祭》を発動! 僕のフィールドのモンスタートークンをリリースすることで、リリースした数だけ相手のカードを破壊する。ブロックマントークンを二体リリースして、グラヴィティ・ウォリアーとリバースカードを破壊!」

 ブロックマントークンが二体、こちらに向かって突撃してくると、グラヴィティ・ウォリアーとリバースカードを巻き込んで爆発した。だが、爆発したリバースカードが墓地で光り出し、フィールドに旋風を巻き起こした。

 グラヴィティ・ウォリアーとリバースカードを破壊し、俺のフィールドをがら空きにするという目論見だったのだろうが、その目論見は成就しない。

「破壊された《リミッター・ブレイク》の効果を発動! 破壊された時、デッキ・手札・墓地から《スピード・ウォリアー》を特殊召喚出来る! 守備表示で現れろ、マイフェイバリットカード!」

『トアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 デッキからマイフェイバリットカードが飛び出し、がら空きとなっていた俺の前に、守備の態勢を取りながら駆けつけてきた。グラヴィティ・ウォリアーを破壊したことはマルタンの目論見通りだが、マイフェイバリットカードは俺にとって頼りとなることこの上ない。

「なら《トイ・ソルジャー》を召喚して、《皇帝の戴冠式》を発動! トイ・ソルジャーをリリースして、デッキから《トイ・エンペラー》を特殊召喚!」

トイ・エンペラー
ATK2300
DEF800

 玩具の兵隊がリリースされると、玩具の馬を連れてデッキから戻って来た。《トイ・ソルジャー》から昇格したのか、《トイ・エンペラー》となって。

 そのステータスは上級モンスタークラスとなり、その効果も《トイ・ソルジャー》から大きく変貌しているとともに、マイフェイバリットカードを特殊召喚しない方が良かった、と俺に思わせた。

「バトルだ、トイ・エンペラーでスピード・ウォリアーに攻撃!」

 トイ・エンペラーは馬に乗って駆けると、スピード・ウォリアーを玩具の剣で切り裂くと、マルタンのフィールドに戻っていった。スピード・ウォリアーは守備表示の為、俺のライフポイントにダメージは無いものの、《トイ・エンペラー》の効果が発動する。

「トイ・エンペラーが戦闘破壊した時、デッキから罠カードを手札に加えられる」

 相手モンスターを戦闘破壊した時、自分のデッキから罠カードを手札に加えられる、という強力な効果。惜しむらくは、上級モンスターにしてはステータスが中途半端なことだが、それはいくらでも補いようがある。

「カードを一枚伏せて、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 デッキから罠カードを手札に加えた後、一枚だけしかカードを伏せないとは、アレが《トイ・エンペラー》で手札に加えたカードだろう。マルタンの性格からして、あのカードがハッタリとはとても思えない。

「俺は《戦士の生還》を発動し、《スピード・ウォリアー》を手札に加え、そのまま召喚する!」

『トアアアアッ!』
 《トイ・エンペラー》に破壊されていたが、墓地から復活したスピード・ウォリアーがフィールドに現れ、《トイ・エンペラー》を破壊せんと意志を示した。

「このターンで終わらせるぞ! バトル! スピード・ウォリアーの攻撃力は、召喚したターンのバトルフェイズでのみ、攻撃力が倍になる!」

「このターンで……?」

 マルタンのフィールドには《トイ・エンペラー》と、その効果で手札に加えたリバースカード、そして2900のライフポイント。対する俺のフィールドには《スピード・ウォリアー》とリバースカードが一枚のみなので、マルタンがその発言に疑問を持つのは当然だろう。

 だが俺とマイフェイバリットカードは、それだけの条件でも相手を打ち破る……!

「スピード・ウォリアーでトイ・エンペラーを攻撃! ソニック・エッジ!」

「何をしてくるのか解らないけど……リバースカード、《聖なるバリア-ミラーフォース》を発動!」

 マルタンの伏せてあった罠カードは、最強の攻撃反応カード《聖なるバリア-ミラーフォース》であり、その名前に恥じぬ効果でスピード・ウォリアーの攻撃を弾き返した。

 ……だが、スピード・ウォリアーはそんなことに構わず、トイ・エンペラーに向かって突撃していく。

「……え!?」

「こっちも伏せてあった《一筋の希望》を発動! こちらのモンスターが全て効果破壊される時、モンスター一体を守り抜く! 更に速攻魔法《ウィーク・アンガー》を発動!」

 手札から発動された速攻魔法《ウィーク・アンガー》は、レベル2以下という縛りはあるものの、指定モンスターの攻撃力を1000ポイントアップさせるコンバットトリック。

 スピード・ウォリアーの攻撃力は2800となり、トイ・エンペラーの攻撃力を超えると、ソニック・エッジにより玩具の皇帝を破壊した。

マルタンLP2800→2300

「さらに、《ウィーク・アンガー》の効果を発動! 攻撃力をアップさせたモンスターが相手モンスターを破壊した時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

 スピード・ウォリアーの攻撃力は、自身の効果と併せて2800てなっており、ダイレクトアタックに等しいダメージがマルタンを襲う……!
「うわああっ!」

マルタンLP2300→0

 スピード・ウォリアーのソニック・エッジがマルタンに対して炸裂し、マルタンのライフポイントを全て削り取ると、スピード・ウォリアーは役目を終えてその姿を消した。

 そしてデュエルが終わった瞬間に、身体から少し力が抜けた気がしたが、これがデス・デュエルのデュエルエナジーの吸収なのだろう。これだけの腕輪でそんなことが出来るとは、なんとも素晴らしい技術力だが、それよりはマルタンの方が先だ。

「楽しいデュエルだったぜ、マルタン」

「は、はい。ありがとうございました」

 スピード・ウォリアーの一撃で倒れたマルタンを起こすと、レイも一緒に駆け寄って来て、マルタンの手を取って笑顔を見せた。

「良いデュエルだったよマルっち! ……だけど、マルっちのデッキって何なの?」

「……お父さんのカードを使って組んだデッキなんだ。だから、ちょっと弱いかもしれない」

 マルタンが少し言い辛そうにデッキの秘密を言ってくれて、俺はマルタンの不可思議なデッキ構成に納得がいった。しかし、《トイ・ソルジャー》や《トイ・エンペラー》はナポレオン教頭のカードだが……まさかな。

「じゃ、今から一緒にデッキ作らない? ほら、遊矢様も!」

「……様は止めろ」

 特に用事があった訳でもないので、マルタンのデッキ構築を手伝っても全く構わないので、手伝うことにしよう。……【機械戦士】の参考になるかもしれない。

 長年連れ添ってきた仲間のようなデッキ、【機械戦士】。コイツにも、新しいギミックを取り入れる必要があるのではないかと、最近俺はそう思っていた。

 【妖怪】にライトロードを取り入れた三沢のように、ネオスペーシアンが加わった十代のように。進化を続けるだろう彼らに対し、俺と【機械戦士】はこのままで勝てるのか……?

 答えが出るはずもないことを考えながら、マルタンのデッキ構築を手伝うため、二人とともにラー・イエロー寮へと入っていくのだった。

 
 

 
後書き
誰得デュエルと【機械戦士】強化フラグ。

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