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八条学園怪異譚

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第三十四話 眼鏡とヘッドホンその十二

「そちらじゃ」
「仙術ですか」
「そうじゃ、仙術じゃ」
 それだというのだ。
「今回使ったのはな」
「仙術ですか」
「仙人には童心というものがあってな」
 話はそちらの方面で専門的な話になってきた、博士も自覚しながら話していく。
「簡単に言うと子供のままの心じゃ」
「あれっ、仙人って確か」
「そうよね」
 愛実が聖花の言葉に言う、二人共博士の今の言葉にはそんな筈がないという顔である。
「不老不死で物凄い歳を取っていて」
「何百歳とかいう人ばかりの筈よ」
「それで子供のままの心って」
「おかしいわよね」
「いやいや、人間歳を取ると子供の心に帰るのじゃ」
 博士は自分のことも踏まえていぶかしむ二人に話した。
「これがな」
「そうなんですか?」
「歳を取ると」
「ある民族では六十歳から年齢が戻るのじゃ」
 つまり六十一歳にはならずご十九歳に戻るというのだ。
「そういう考えもある程でな」
「ううん、お年寄りがですか」
「子供に戻るんですか」
「そうじゃ、普通の人でもそうじゃ」
「そして仙人もですか」
「そうした人も」
「うむ、仙人もまた然りじゃ」
 その彼等もだというのだ。
「童心を持っておるのじゃ。気難しい考えではなくな」
「何かイメージ違うわね」
「そうよね」
 二人は博士の話を聞いて怪訝な顔になったまま話していく。
「何かイメージが」
「全然違うけれど」
「仙人は難しい存在でも怖い存在でもない」
 博士がその二人に仙人の詳しいことを話した。
「中々楽しい存在じゃよ」
「楽しいんですか」
「そうした人達なんですか」
「小説によってはヒーローだったりするしな」
 水滸伝や封神演義等だ。特に封神演義では仙人同士の戦いが作品全体でダイナミックに繰り広げられる。
「面白いぞ」
「つまり中華ファンタジーですね」
 茉莉也は博士の話を聞いていてこう述べた。
「そうですね」
「そうじゃ、まあ魔術師や妖術師と大して変わらんわ」
「そうした人達で術が強い人と思えばいいんですね」
「そういうことじゃ。まあ仙術と魔術は似ている部分も多いが違う部分もあるがな」
「成程」
「子供の様な純粋な心がなければ仙術は使えぬ」
 博士は話を戻してきた。
「それでなのじゃよ」
「今回は仙術ですか」
「子供の心がなければ使えない」
「それでやってみたのじゃ」
 座敷わらしが子供には見えないのなら、というのだ。
「もっとも座敷わらしは身体が大人になれば見えなくなるがのう」
「それでもですか?」
「この場合は童心が決め手になったんですか」
「そうじゃ」
 まさにそうだというのだ。
「子供ということでな。子供の目や耳になる術を入れたのじゃ」
「あっ、仙人が子供に近いから」
「仙人の目と耳になるんですね」
「仙人は身体も子供に近くなる」
「えっ、だってお年寄りですよ」
「心はわかりましたけれど」
 二人は博士の今の話にも驚いて返した。 
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