八条学園怪異譚
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第三十四話 眼鏡とヘッドホンその十一
「それじゃ」
「視ることと聴くことですか」
「その通りじゃ、つまり眼鏡とヘッドホンじゃ」
「ああ、そういうのですか」
「そうじゃ、わかったな」
「はい」
「では早速出そう」
言ったすぐにだった、博士は今自分が座っている机にあるものを出してきた。それは眼鏡とヘッドホン、それだった。
その二つを見てだ、茉莉也が博士に尋ねた。
「この二つを着ければなんですね」
「座敷わらしが視えるしその声が聴こえるぞ」
「そうなるんですね」
「座敷わらしは身体的に大人になれば見えなくなるのじゃ」
そして声や出す音も聴こえなくなるというのだ。
「そうなるからのう」
「あっ、それって私達の予想通りなんですけれど」
「実は」
愛実と聖花は博士の今の話にこう突っ込みを入れた。
「お赤飯を食べてからですよね」
「それから」
「わしも実は考えていたのじゃ」
座敷わらしが何故見えなくなってしまうのか、そのことをだというのだ。
「子供には見えて一緒に遊べる」
「けれど大人になったら何故見えないのか」
「そのことですね」
「そうじゃ、妖怪の謎の一つじゃ」
妖怪そのものが謎と言っていいがその中でも特にだというのだ。
「座敷わらしもその一つじゃ、子供と大人でどう違うのか」
「心じゃないんですね」
茉莉也は今は真剣な顔で博士に尋ねた。
「そうなんですね」
「そうじゃ、心は成長するが徐々に進むものじゃ」
「確かに。言われてみれば」
「そうじゃな、しかし身体はそうしたことは急に変わる」
表に出るのは、というのだ。背丈や体重は徐々にだがそうしたことはというのだ。
「ある日急にじゃな、出て来るな」
「私もそうでした」
「茉莉也嬢ちゃんもじゃな」
「小学五年の頃」
中々赤裸々な話になる、茉莉也自身話していてそのことに気付いている。
「気分が悪くなって」
「おっと、そこでストップじゃ」
「止めるんですか?」
「プライベートの話を聞くつもりはないからのう」
だからいいというのだ。
「今はな」
「そうですか」
「うむ、それだけで充分じゃ」
「じゃあここで止めますね」
「それでな、まあとにかくじゃ」
博士はさらに言う。
「座敷わらしが見えなくなるのはな」
「急に身体が変わって」
「大人になる、それでじゃ」
「座敷わらしが見えなくなるんですね」
茉莉也も話を聞いていて自分達の予想が正しかったとわかった、これは身体の問題だったのだ。
「身体ですか」
「そういうことだとわかったのじゃ」
「それでその眼鏡とヘッドホンを」
「これは科学を使ったものではない」
博士の専門分野の一つだがそれを応用したものではないというのだ。
「また別のものじゃ」
「魔術ですか?」
「仙術じゃ」
茉莉也は魔術かと尋ねたがそれも否定した。
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