少年は魔人になるようです
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第34話 日常に事件の影は潜むようです
Side エヴァ
「あぁあーー、怖かった……。」
「ね、ねえ。ネギ君大丈夫かなぁ……?」
「あははは……ま、まだ十歳なんだし、しゅーま先生も、そこ、まで…。」
「「「やるよねー……。」」」
小僧が兄さまに連行されてからは自習となり、15分。
何故か用意されてあったプリントをやりながら話している辺り、
奴等も成長していると言う事が窺える。
「チャオー。ネギ坊主、何で連れて行かれたアルか?」
「十中八九、先程の神楽坂をダメ言った事ネ。」
「あー、そうか、そうアルね~。師が弟子を諦める事は許されないアルからね!」
「……まぁ、概ね合ってるかラ問題ないネ。」
さて、あちらは新任の小僧が気になるようだが、
こちらは大事な案件を抱えているのだ。・・・そう、私の隣の、こいつに。
「朱里とやら……貴様、何者だ?」
「えー、何者って言われてもなー。んーっと、魔王!」
「……ふざけているのか、貴様。細切れにするぞ。(ガッ)……何だ、真名。」
「君も感じているだろう、エヴァ。この濃く黒い、尋常じゃない量の魔力。
……加えて、私には見えている。」
・・・真名の魔眼は非物理――つまり霊体を見る事ができ、魔の者の質を見分ける事が出来る。
吸血鬼なら赤、狼男なら銀、魔族・悪魔は紫。そして―――
「こいつは、漆黒だ。間違いなく…魔王だよ。」
「・・・・・関係、無い・・・。ママだって、魔王・・・。
・・答えて。パパと、どう言う関係なの・・・・・・?」
何時の間にか、見ているだけで霊体すら断ち切りそうな雰囲気のアリアが、
朱里の後ろに立っていた。・・・こいつ、そう言えば天使だったな。
「えへへ~♪愁磨とボクは契約したんだよ~。ボクが奴隷で、愁磨がご主人様なんだよー!」
「……もう少し、要領を得た説明をしろ。
兄さまと何処でどうなったかを、事細かにだ!!」
「めんどくさいけど……分かったよー♪あのね―――」
チッ、掴みにくい奴だ。
――――――――――――――――――――――――――――――
数十分前――
subSide 近右衛門
「と言う事で文句はあるまい。」
「う、うむ……。」
な、なぜじゃああああああああ!?なぜこうも面倒事が舞い込むのじゃ!?
愁磨殿達とネギ君の件が片付いたと思うたら、今度は!!
「では、私はこれで失礼する。
…アスモデウス、今度会う時は敵と見なせるくらいに強くなっていろよ。」
「分かってるって、レヴィ!ありがとね!」
「フン、貴様はそうだから――いや、いいか。ではな。」
ズルリ、と影――いや、あれは闇かの――にレヴィアタンが沈んでいき、
完全に気配が無くなった。ふぅ・・・老体には、あの魔力は堪えるわい。
「ねー、おじーちゃん。ボクは何時までここに居ればいいのぉー?」
「フォ、フォッフォッフォ。少々待ってくれんかの?もうすぐ―――」
バァン!!
「ジジイ、今度は何の用だ!?何度も何度も呼び出しやがって!
くっだらねぇ用事な、ら……………。」
「やっほー、愁磨!元気だったーー!?」(ピョーーン!
ガッ! ギリギリギリギリギリギリギリギリギリ
「なんでテメェがここに居る、アスモデウス!!?
あん時地獄に追い返しただろうが!!どうやって命令無視したんだ!?」
「痛い痛いいたーーい!!
だって、あんな無理矢理されたからちゃんと出来て無かったしぃー!!
ボクと愁磨の相性が良かったし、愁磨のがおっきいからボクが出て来るには
十分だったんだよーー!!」
「意味分からんわーーーーーー!!!」
・・・・・何を言っているかはようわからんが、一つだけは分かったぞい・・・・。
また愁磨殿絡みの面倒事じゃあああああああああ!!
Side out
subSide 愁磨
「……つまり、契約が滅茶苦茶だった上に、俺が下手に魔適正が高かったせいで?
更に、俺がお前を召喚できる魔力量だったせいで、呼び出せる状態だったから、と……。」
「そうーー!でね、地獄の王になる為には魔王をみんな倒せばいいんだけど、
ボクじゃ全然無理なの!
でも、契約とか結婚してる相手が倒してくれれば、自動的に王になれるの!」
「……要するに、俺を利用する為に結婚してくれって事か。
クハハハハハハハハ!!……いくら美少女でも許さんぞ?」
とりあえず救世主形態を発動して、『アトロポスの剣』を出す。
さて、なます切りにするか存在をぶっ飛ばすか――
「待って!それは違うよ!!た、確かに利用するみたいにはなってるけど!
ボク本気だもん!愁磨と結婚したいのも王になりたいのも本気だもん!!
あと、今は女だから、そんな事言われるとうれしい、かな~。えへへ♪」
「チッ。……本気なのは分かった。意味分からんフラグが立っているのも分かった。
………今は女って、どう言う意味だ?」
「ん?ほら、ボクって色欲を司る魔王な訳でしょ?
つ、つまり、そのー……両方とえっちな事する為にね、男女両方に体を変えられるの。」
と言うと、アスモデウスが一瞬光り、収まった時には……成る程。
確かに、大きくは無いが女性的な胸が平らになっている。
しかし妙だな。なにか既知感、が――――!!!!
「アスモデウス!お、お前、村に居た時は、どっちだったんだ!?」
「う、うん。男だった、よ?しゅ、愁磨って両方イケる人なんだって、ちょっと安心したんだ。
性別変えられるって、気味悪がられて――――」
つ、つまり、あれか・・・・俺は、俺はあああああああああああああああああああ!!?!?
・・・・・・・・・・・・・・・・・・過ぎた事だ!忘れよう!!
そんな過去はどうでも良い!今はこいつの扱いを考えるんだ!!
「ハァ、分かった。とりあえずこいつはウチのクラスに入れるんだろ、ジジイ。」
「フォッフォッフォ、無論じゃ。」
「・・・・何が無論なのかは聞かないでおこう。
で、アスモデウス。お前のこっちでの名前ってなんだ?」
「もみじ・A・朱里!レヴィが考えてくれたの!!」
レヴィ・・・レヴィアタンか?
確かに、瞳も髪も真っ赤だからな。紅葉ってのは合ってるだろう。
だがしかし!
「いいか、アス……朱里。
自己紹介の時は『アスモデウス』じゃなくて、『エー』にしろ、分かったな?」
「ハーイ!あと、もみじって呼んでね!そっちが名前なんだって!」
「生徒の居ない所では、そう呼ぶ事にしよう。
っと。じゃあ、HRの時間だから俺は行くぞ。ついてこい、朱里。」
あれ?そう言えばネギが居な―――
「うわああああああああああ!!?!?寝過ごしちゃったよーーー!!」
・・・・・また遅刻か。たるんでやがるな。
Side out
――――――――――――――――――――――――――――――
Side ネギ
うぅぅぅぅ・・・・ボク、ダメダメな先生だ・・・・。
明日菜さんに酷い事言っちゃうし、愁磨さんと新田先生には毎日怒られるし・・・。
あ、また愁磨さんって言っちゃった。
「公私混同するなって言われても、そんな急には無理だよーー!!
僕十歳だし!!割り切れって言われても無理だよーー!!」
荷物を振りまわしていると、コロンと何かが――
って、ああ!これは!!『魔法の素丸薬七色セット(大人用)』!!
おじいちゃんが昔くれたの、ネカネおねえちゃんが入れてくれたんだ!
「よーーし!これを使って、二人にお詫びのもの作れば!!」
許して貰えるとは思えないケド・・・でも、今よりは良くなるよね!
薬学は学校で一位だったし!それじゃ、明日菜さんには―――
Side out
Side エヴァ
「スゥ……スゥ……。ん~……。」
サラ サラ
「フフ、兄さまも、眠っていると可愛いものだな……。」
私達は今、屋上に来ていて、実は憧れの一つであった膝枕を兄さまにしてやっている。
させて貰ったとも言うが。
「ん、エ、ヴァ………。」
サラ サラ
「ぬ……?な、なんだ、寝言か。フフン、夢の中にまで私が出て来るとはな。
兄さまは本当に私の事を――」
「アリア、と……仲良くしてくれ……ってばーー……。
ああぅ…『神虎』は出すな………すぅ…。」
・・・・・・すまない。しかし、波長が同じすぎるのだ。
過去とか、想いとか・・・・身長とか。
サラ サラ
「大体、兄さまが悪いのだ……。こんなに綺麗で、カッコイイから。」
かれこれ二時間は撫でているが、全く飽きてこない真っ白でさらさらの髪。
御伽噺に出て来る姫の様な寝顔。
眠っている時はふにゃっとしていて・・・・可愛い!!
ゴホン。でも、起きている時は吸い込まれる程カッコイイ笑い顔。
・・・・兄さまの事を好きだから、そう思うだけかも知れんな。
「ネギくーーーーーーーーん!!」 「ネギせんせーーーーーー!!」
「うわああああああ!!助けてーーーーーーーーーー!!」
ええい、無粋な!!またあの小僧か!!
天才と言われていようが、所詮は十歳。教師の見えない仕事までは出来る筈も無く、
そのしわ寄せの仕事はほぼ全て兄さまに来ている。
それだけでなく日々心労を与えて居るというのに、束の間の休息まで奪う気か!!
「うぅぅぅ……野菜、野菜がぁぁぁ………。」
サラ サラ
「大丈夫だ、兄さま。兄さまは休んで居ていい。」
いらん雑音を結界で防御し、苦悩している兄さまの頭を撫でる。
・・・・少しでも、私は癒しになれているのだろうか?
Side out
Side ノワール
「うわあああああああああああああ!!!」
さっきから五月蠅いわね。一体何をしているのかしら、あの子は。
せっかくエヴァがシュウを労っているというのに、原因の子は騒いでいるだけ・・・。
学園長もそうだけれど、シュウも暇潰しにしては苦労しすぎな気もするのよね~。
「まぁ、それをフォローするのが私達の役目なんだけれどね。」
保健室の外に出て少し歩くと、見えてきたのは・・・・・
若干脱げ掛けたスーツのネギ君と、追いかけている生徒達。
「………この匂いと、あの子を見た感じ。ホレ薬かしら?
全く、あれを作るのは法律で禁止されているのに。メルディアナは何を教えているのかしら。」
簡単に作れる上に、他人をある程度自分の意のままに操れる魔法薬はそれなりに存在するわ。
中でもホレ薬は厄介だけれど・・・・シュウを愛している以上、あんな小物に抱く心は
持ち合わせていないわ。
「ええっと、こうだったわね。『掃え』!」
シュウに教えて貰った業、言霊。
神力を使って言葉のままに事象を操る事が出来るそうだけれど・・・、
生憎、私はそこまで詳しくないから、自分が理解できる範囲内でしか使えない。
「あ、あれ?私達、一体なにしてたんだっけ?」
「うわ、やば!部活始まってんじゃん!」(バタバタバタ!
「あ、あれ?」
「助かってよかったわね、スプリングフィールド先生。」
「あ、ノワールさ「先生よ。」あぅぅ、スミマセン……。
「愁磨先生に散々言われているのにまだ理解出来ないようね?」
ナギとエルザさんの子供なのだから、学習能力は高いものだと思っていたけれど・・・。
いい加減諦めたわ。真逆ね。勉強だけできて、本質的な事は全く理解できない。
突然変異かしら?
「とりあえず、この件は愁磨先生に報告しておくわ。」
「えぇぇええぇえ!?そんなーー!!」
「学園長に報告しないだけ有難いと思いなさい、犯罪者さん。
知らないの?ホレ薬作るのって法律違反よ?」
「えぇぇええ!!そんな事、学校じゃ~~。」
知った事ではないわ。それより、シュウの事愁磨って呼ぶの違和感あるわね。
・・・・・エヴァとちょっとだけ代わって貰いに行こうかしら。
落ち込んでいるおこちゃまを放って、私は屋上に歩いて行くのだった。
Side out
Side 近右衛門
『それで、ネギ君の修業状況はどうなっているのですか?』
「それが困った事になっておりましての。
あの実力では警備に就かせるわけにもいきませんのでな……。」
『英雄の子、と甘やかすからそう言う事になる……。
"白帝"か"闇の福音"に弟子入りさせる件は?』
「……残念ながら。」
無理に決まっておるじゃろう!?
仕事を押し付けて、面倒事ばかり起こす相手を愁磨殿が自分の弟子になぞ取るものか!
エヴァンジェリンの方も同様じゃ!最愛の者の心労を増やす訳が無い。
『仕方ありませんね……。ああ、そう言えば!
そちらに、魔王が居るそうではないですか。しかも、ネギ君の村を襲った悪魔達の頭が!』
「な!…もしや、それにネギ君をけしかけろと言うつもりですかの?」
『そのつもりですよ。なに、相手は地獄でも落ちこぼれと聞いていますので、大丈夫でしょう。』
一度だけ来たレヴィアタンの説明から窺えたのじゃが・・・・確信は無い。
ともあれ、落ちこぼれと言っても魔王。何かしらの実力は持っている筈なのじゃ。
『なに、魔法先生を総動員すれば大丈夫でしょう。
こちらからも300人ほど兵を出しますので。では。』
むぅぅぅ、確かに教師陣からは討伐の動きが出ているのじゃ。
魔王と言う事が、唯一尻ごみさせている要因なのじゃが。そこに英雄の子が入るとなると、のう。
「……ワシも、久々に出る事になるかのう。
しかし、流石にネギ君には試験を受けて貰わんとの。」
Side out
Side 亜子
「ねー、ネギ君来て一週間くらいだけどさー。どう思う?」
校庭でバレーをしとると、まき絵がふと聞いて来た。
「ん、いいんじゃないかな?頑張っては居ると思うし。」
「教育実習生だっけ?授業はちゃんと出来てるし、いーんじゃない?」
せやねー。来年受験やけど、高畑先生と愁磨先生もおるし。
かわえーし、問題はあれへんよねー。
「確かに頼りないとは思うケドねー♪」
「それはしゃーないやんかー。ネギ君まだ10歳やで?」
「アハハハハ、勉強以外は教師と生徒交代で教えるとかー?経験豊富なお姉サマとして。」
「っとと、ゆーなってば。ちゃんとトス上げてよねー。」
転がって行ったボールを追いかけると、誰かの足に当たって、先に拾われてもうた。
「あ、すいませ――「誰が経験豊富なお姉サマですって?笑わせてくれるわね。」」
「あ、あなた達はーーー!!」
Side out
Side ネギ
「ネギ先生。いかがですか?研修の様子は。」
「あ、ハイ……。うぅ、愁磨さ…先生にいっつも怒られてばっかりで.....。
クラスのみなさんも、僕よりはタカミ…高畑先生か愁磨先生の所に相談に行きますし。」
「あらあら……でも、それは気に病む事ではありませんよ。
高畑先生はあの子達と長いですし、愁磨先生はあの通りですし。」
父さんの知り合いっては聞いてたから、強いとは思っていたけど、
町の不良さんをデコピンで倒しちゃうくらい強いとは思って無かったし、
勉強も実際に見て来たんじゃないかってくらい物知りだし・・・・・。
「うぅぅ、僕ってダメ先生だ……。」
「あ、あらあら……。」
「「うわーーーーん!!たすけてーーーせんせーーーーー!!」」
僕が落ち込んでると、職員室に飛び込んできたのは・・・
えーっと、和泉亜子さんと佐々木まき絵さんだった。って、ケガしてる!?
「どどどど、どーしたんですか!?」
「あ、ネギせんせー!高等部の人たちがーー!!」
亜子さん達に言われた場所に行くと、そこで口論してたのは
高等部の人たちと明日菜さんといいんちょさんだった。
「今時先輩風吹かすとか頭悪いでしょ!おばさま!!」
「なんですって、ミルク臭いガキが!!中等部のくせにでしゃばって!」
「出しゃばって何が悪いのよ年増!!」
あ、あわわわわ!?とっ掴み合いになってる!!
と、止めないと!!
「み、みなさーーーん!!喧嘩はやめてくださーーーいい!!」
「なによ、ネギ!邪魔しないで!!」
「あら、これが例の子供先生?カワイーじゃない!
そうね、私達にゆずってくれたらこの場所ゆずってあげ――ぶ!?(ボム!」
「誰が譲るものですか。少し頭をおひねりなさいな!!」
「やったわねーーーーー!!!」
うわあああああああああああん!!さらに収集着かなくなっちゃったーーーー!!
「やれやれ、相変らず元気だね、二人は。」
ヒョイッ、と突然明日菜さんといいんちょさんを掴み上げたのは・・・
た、タカミチーーーー!!!
「久しぶりの教師の仕事が喧嘩の仲裁とはね。
女の子が取っ組み合いの喧嘩なんてみっともないぞ。」
「あ、た、高畑先生!?」
「君達も。僕の生徒が手を出したようですまなかったね。
――でも、中学生相手にちょっと大人げなかったかな?」
「あ、ハイ……すみませんでした………。」
ゾロゾロ去って行く高等部の人達。
すごいなぁ、タカミチは。あっという間に治めちゃうなんて!!
「た、高畑先生ぃーーー!!先にやってきたのはあっちですよーー!!」
「それでも、それに油を注いじゃいけないよ。
こう言う時は、聞き分けの無い方に華を持たせてあげないと。
って、これも愁磨さんの教えなんだけどね。」
タカミチもすごいけど、愁磨さんって一体何者なんだろう?
・・・・・父さんの知り合い、かぁ~・・・。
Side out
Side 愁磨
「愁磨先生、次の体育は自習だそうですので。」
「ああ、しずな先生。ありがとうございます。と言う事は屋上だな。
そうだ、しずなさん。今夜どうですか?」
「今夜も、の間違いですわね。構いませんけれど。刀子さんはどういたしますの?」
「刀子は警備の方ですので、残念ながら。」
刀子には昔、詠春の所に居た時に刹那と一緒に稽古を付けてやったから、
酒を飲む程度の仲だ。俗に言う師弟ってやつで――って、これに関しては追々。
「おっと、もう行かないと間に合わないな。では、また今夜。」
「…愁磨先生、職務中はそう言う話を慎んでくれませんかな?」
「アハハ、すみません新田先生。お詫びに御馳走しますよ。
漸く自作酒が完成しましてね。それに、三種肉の唐揚げ串も大量に作りますから。」
「ハッハッハ!あれを引き合いに出されては、引き下がりたくなりますな。」
「では、授業もありますのでまた今夜。」
うん、新田先生も仕事をキチンとやっている分には大らかな人で良かった。
ってか、普通にいい人なんだよな。・・・ネギ以外の教師陣には。
あれの場合、教師って言うより生徒って言った方がしっくりくるから仕方ないけどさ。
「おろ?アリア、こんな所で何やってるんだ?授業始まっちゃうぞ。」
「・・・・・屋上、高等部の人達。」
「あー、さっきタカミチから来たやつか。確かドッヂ部の連中だったな。
体育、出来ると――いや、生きて帰れるといいなぁ?」
「・・・ん、去年・・・の?」
「そうそう。今年もまたやりたいなー。」
アリアと話しながら階段を上り、屋上の扉を開けると――
「あんた達はまたーーーー!!高等部の屋上行きなさいよ!開いてんでしょ!!」
「今度は言いがかりかしら?お子ちゃまねー。」
「言いがかりでは無いな、近江。既に高等部の先生に確認は取れているぞ。」
「な、なんです、っ、て、てて、で、で、でたああああああああああああああああ!!!」
「よ、久しぶり。」
「しゅ、愁磨先生!知り合いなんですか!?」
「ん?俺、去年までは高等部の担当だったからな。その時開いた、
『第一回!全運動部合同☆夏合宿』ってのでな。よもや、忘れたわけではあるまい。」
「「「「「「すいませんでしたあああああああああああああああ!!
あれだけは勘弁してくださいいいいいいいいいいいいい!!!」」」」」」
「何をすればこんな風になりますの……?」
詳しくは言わないが、地区大会でどう転ぼうと一回戦負けのチームを、
そこそこ上手い事やれば全国大会出場まで行けるようにした合宿、とだけ言っておく。
「さっさと立ってください、スプリングフィールド先生。
自習授業くらいは完璧に仕切って見せてください。」
それだけ言うと、隅の方に固まっている最強中学生集団の方に行く。
うん、改めて見るとすげぇ面子だよなー。
強い方から順に天使、吸血鬼、悪魔、烏族、魔王って。
「一番後ろに魔王が来る面子って、一体どんなだよ……。」
魔王より強いのが問題なのか、魔王が弱いのが問題なのか・・・両方か。
「フッ、その一団を瞬殺出来る人が何を言っているのかな?」
「・・・・パパは、そんなこと・・・・絶対しない。」
「確かに、愁磨さんは私達の事を大切にしてくれていますからね。」
「ハッハッハ、良いじゃないか桜咲刹那!!照れが完全に無くなってきたな。」
「この一団に入っていれば、嫌でもこうなりますよ。」
「惜しいね。照れた刹那は可愛いのに。」
特異な者たちではあるけれど、皆の問題はそれなりに解決して順風満帆。
さてさて、そんな時に新入りさんはどうして膨れているのでしょうか?
「愁磨、ボクの事はたたいたじゃんかーーー!!ベシンって!」
「……あー、六年前のウェールズの時のか。だってほら、お前敵だったし?」
「にゃーー!!じゃー、お詫びにキスしてくれたら許してあげてもいーよ!」
「なんで兄さまが貴様とキスしなければならんのだ!出来そこない魔王が!!」
「おこちゃま吸血鬼は黙ってて!!隙ありぃーー!(ガッ!)ぃぃぃいーー!」
「隙なんてねーよ。俺とキスしたかったら、少なくとも女になってからにしろ。」
一人増えただけなのに、随分姦しくなったもんだ。まぁ、楽しいからいいけどな。
Side out
――――――――――――――――――――――――――――――
「ウェールズ………?六年前、って…。」
愁磨が常時張っている認識阻害とは、基本的に『意味の分かる者にしか通じない』というもの。
日常の何気ない一幕でしか無かった故に、会話を聞いていた少年の呟きは、
騒がしくなった一行の耳に届く事は無かった。
Side out
後書き
愁磨組は何かと迂闊。ノリと力で大抵捻じ伏せますが。
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