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新機動戦記ガンダムW -星間戦争記-

作者:ax
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愛と哀 ~集結編~

 
前書き
前回短めだったんで、今回は長めです。
読みにくい文が連なってますが、どうか最後まで読覇してください。 

 
エルヴが開放されて1ヶ月。
資源衛星に偽装した秘密基地の治療室には、電子音と寝息だけが周期的に聞こえるだけだった。
ベッドには未だ意識不明のサユイラが横になっていた。
そのサユイラの胸に倒れこむようにしてエルヴが眠っていた。
「………」
サユイラの目がゆっくりと開いた。
「うっ」
右足の痛みですぐに意識はハッキリした。
「ここは…」

治療室の様子を別室で見ていたクアトロが声を上げた。
「皆!!兄さんが!!」
その声に反応して、デュアル、トリントン、五神(ウーシェン)はモニターを覗き込む。
「目覚めた…」
フアラは兄弟より先に通路に飛び出し、治療室へ向かった。
フアラは慣れた手つきで扉のロックを解除し、扉を開けた。
扉が開き、中に入ろうとしたが、目に入ってきた光景が引き止めた。
1ヶ月の寝たきりで弱った身体を起こし、笑顔でエルヴと会話するサユイラ。
そこには、ウィンクラフト兄弟の誰にも無い輝きがあった。
滅多に笑わないフアラの口元には笑みがこぼれていた。
そこに、兄弟たちが追いつき、サユイラの方へ飛びついた。
久しぶりの対面を兄弟たちは心から喜んだ。

「全員そろっているね」
そこに、扉の方から若々しい声が聞こえた。
振り向くと、そこには3人の老人が立っていた。
中央の声をかけた老人は、まだ若々しく、優しい印象の、アラブ系の男だった。
「俺たちの事はまだ話していないようだな」
落ち着いた低い声で声を発したのは、前髪が顔の右半分を隠した、細身で学者タイプの男だった。
そして、もう1人。艶のある黒髪で、堂々とした立ち居振る舞いの、中国系の男がいた。
「おっと、自己紹介しなきゃね、僕はW教授」
「名前など無い、どうしても呼びたいのなら、ドクトルTだ」
「老師・(チャン)
3人が自己紹介をし、老師・張がサユイラに言った。
「サユイラ・ウィンクラフト、付いて来い」
「あ、あぁ」
サユイラはエルヴの手を借り、立ち上がると、サユイラを待たずに行った老師・張を追いかけた。
「今からお前のMSまで案内する」
「弟たちが開発したと聞いたが」
「あぁ」
通路の突き当たりの扉のロックを解除し、扉を開くと、そこには、青と白で彩られたオリジナルのエピオンが立っていた。
「これは…オリジナルのエピオン!?…否」
「これまでの全てのエピオンシリーズをベースにした、最後にして最強のガンダムの1機」
老師・張はエピオンを見上げ、ゆっくりと機体名(なまえ)を口にした。
「ガンダムエピオンX、細かい事はマニュアルを読め」
「エピオン…X…」
見上げるサユイラに、老師・張はマニュアルを手渡しながら今後の予定を説明した。
「2時間後に作戦会議がある、それまでに読んでおけ」
「了解した」
サユイラが受け取ったのを確認すると、一息おいて、口を開いた。
「哪吒を…託すぞ」
そう、言って老師・張は、ワイヤーをたどって格納庫を立ち去った。
「私の…」

数分後、基地内に爆音と衝撃が走った。
「何だ!?」
デュアルがバランスを立て直しながら呟く。
『警告・BFからの攻撃を確認』
基地内に若い男の声が響いた。
「皆、出るぞ」
フアラが兄弟に声をかけ、格納庫へと走った。

フアラたちが発進準備を進めているころ、外では既に戦闘が始まっていた。
敵機は3機。
それぞれ、青、赤、緑のカラーのMS、オルシリーズ。
一方こちら側は、青、黄色、赤、白のカラーリングで、手に、巨大な斧を持ったMS、1機のみ。
「待ちくたびれたぜ」
「ガンダム…!!」
「……」
ガンダムキラーパイロットの3人は以前とは性格が変わっていた。
馬鹿にしたような口調だったジョニーは、静かで、殺意に満ちた目をしていた。デイノは、その明るさこそ変わっていないが、少年らしかった口調が大人びていた。フィニチアは、物静か、と言うより、完全に無口で、表情ひとつ変えない、まるで空っぽの人形のようになっていた。
「行くぜぇ!ガンダムゥ!!!」
デイノは前方のMSに突っ込んでいった。
「んじゃ、おっ始めますかぁ、行くぜ、相棒(ニコラ)
ニコラと呼ばれたMSのコックピットには茶色の三つ編みが特徴的な青年、デュオが乗っていた。
ニコラの斧、ニコラアックスがオルシリーズから放たれるビームの弾幕を切り裂き、ベテルギウスに襲い掛かった。
「そんな攻撃!!」
ベテルギウスはニコラアックスをかわし、距離を詰めた。
「もらったぁぁあ!!!」
「まだまだだな!!!」
ベテルギウスのニードルを華麗にかわし、ニコラは後退した。
「ガンダムは…敵!」
フィニチアの声と共に、プロキオンとシリウスがニコラに殴りかかった。
「っと」
デュオは、左右からの同時攻撃にひるまず、ニコラアックスでシリウスを押さえ、プロキオンの拳を右手で掴んだ。
「あらよっと!!」
そのままプロキオンの拳の慣性を残したまま、シリウスに投げつけた。
「くッ…!」
「おのれ…!」
「「「うおぉぉおぉぉおおぉおぉおぉ!!!!!!」」」
3機が同時に、最大出力でビームを放った。
一見、闇雲に見える発射だが、その弾幕には逃げ場が無かった。
「こいつ等、なかなかやるな!!」
デュオは、器用にニコラを操縦し、機体への被弾は免れた、が、主力武装のニコラアックスが、その大きさ故に、被弾し、破壊された。
「チッ…」
回避行動からの立て直しで、一瞬の隙ができた。デイノはそれを見逃さなかった。
「そっこぉぉお!!!」
ベテルギウスの手から、ニードルが発射された。
「クソッ!!」
ニコラに向かって真っ直ぐ飛んでくるニードルがニコラの少し手前で爆発した。
「新手…?」
フィニチアがモニターに目をやるが、見えるのはレーダーに映った4つの光点と、何処からか飛んでくるビームの光線だけだった。
「レーダーの射程外からの攻撃…最新のデータバンクにそれが可能な機種はない…」
ジョニーが、確認するまでもない事を呟くと、ようやくレーダーに5つ目の光点が映し出された。
「すまない、遅くなった」
ニコラのコックピット内に落ち着いた声が響いた。
「遅いぞトロワ」
デュオは、ニコラの装備をビームサーベルの双剣に切り替え、声に答えた。
新たに現れた機体、ガンダムリラは、右手にガトリングとヒートナイフ、左手にビームライフルとビームサーベルを連結した超汎用武装を装備し、額にあたる部分には、ビーム発射口があった。
「デュオ!連携パターン、『自由と正義』だ」
「分かってるっての」
2機のガンダムが左右に分かれ、3機を同時に相手する。
3機の連携と2機の連携がぶつかり合い、互いに1歩も退かないように見えた。が、オルシリーズは、ガンダムの巧みな連携により、徐々に損傷箇所を増やしていった。
その後、オルシリーズは損傷により戦闘継続不可、撤退していった。
一方、ガンダムは、ほぼ無傷で戦闘を終えていた。さらに驚くことに、戦闘はたったの15分で終わっていたのだ。

火星・BF宇宙戦艦ミーティア。
ネオ・バルジと互角の大きさを誇るこの戦艦は、ヒイロ・ユイが今回の戦争のために設計・開発した戦艦で、本体の左右に、可動式の腕のようなものが付いていて、先端には、巨大な砲台があった。
「エル、ワイヤーで固定しました」
ミーティアのブリッジに、紫がかった髪の女が報告に来た。
「発進」
ブリッジの中央奥の指令席にすわっていたヒイロは、ニヤリとして、言った。
「これより、地球攻略、否、地球殲滅を開始する」
その声と共に、ミーティアの各システムが動きだした。
「本当によろしいのですか…閣下」
「あぁ、私の道に間違いはないよ、ナナ…」
ナナと呼ばれた女は涙を流した。
「はい…オペレーション・ビックバン、全ては閣下のシナリオ通りに」

偽装基地の作戦会議室の最前列の席に、サユイラは目を閉じ、座っていた。
そこに、ドクトルTがやってきた。
「早いな」
「ドクトルTか」
ドクトルTはサユイラと通路をはさんで反対側の席についた。
「お前は自分の正体を知っているか?」
「何故それを…?」
ドクトルTはうつむいたまま答えようとはしなかった。
「弟たちは知らないらしい、お前だけだ、兄弟で知っているのは」
ドクトルTは目を閉じて、話を続けた。
「まさかサンクキングダムが、俺たちのコピーを作っていたとはな……」
「言わないでくれ、弟たちには」
「いや、この後全員に言う」

30分後。作戦会議室に計14人が集まった。
ウィンクラフト兄弟6人、エルヴ、デュオ、トロワ、W教授、ドクトルT、老師・張、以前ウイングΩを製造したドレッド、そしてもう一人は。
「作戦会議を開始する」
作戦会議室のモニター前に立っている男。顔には痛々しい深い傷跡に、左目を隠す眼帯、右目は白黒逆転している。
「私はミシェル・クシュリナーダ、この組織の作戦担当だ」
この男は、1ヶ月前のBFとOZ火星軍の激突で、戦死したと思われていたミシェルだった。
「ドレッド、現状の説明を頼む」
「はい、今BFは宇宙戦艦ミーティアで地球に向かって進行中です」
「ご苦労、では、この組織、『アダムス』の最終目的から説明しよう」
と、モニターに無数の文字列が表示された。
「要約すれば、地球防衛だ」
「防衛って何からだよ?」
デュオが質問した。
「デュオ君…だったかな?まぁ落ち着け…BFが今実行中の作戦は住人類惑星粛清作戦…『オペレーション・ビックバン』だ」
その一言で、9人のパイロットたちは目を丸くした。
「オペレーション・ビックバン……」
何か思い当たる節があるのか、エルヴが呟いた。
「うっ…」
エルヴが頭を抱え込んでその場で意識を失った。
「エルヴ!!」
隣に座っていたサユイラがエルヴの身体を揺らし、声をかける。
「ドレッド、エルヴ君を治療室へ」
「はい!」
ミシェルの指示で、ドレッドがエルヴを運び出そうとした。
「私が一緒に行く」
「いや、サユイラはここにいてくれ」
ミシェルはサユイラを引き止め、話を再開した。
「B作戦の首謀者であるヒイロ・ユイはもはや人ではない」
「どういうことだ?」
元BFのフアラが質問した。
「奴は、いわば強化人間のようなものだ、ウィンクラフト、君たちと同じ…な」
「どういう事だそれ!!」
デュアルが立ち上がり、声をあげた。
「サンクキングダムは知っているね、君たちはその王国で創られたんだよ」
「そんなの―」
「デュアル!!真実だ!!!」
サユイラがデュアルの言葉を遮って告げた。
「兄…さん…?」
クアトロがサユイラの顔色を伺いながら声をかけた。
「サユイラ……」
サユイラのよき理解者だった(今は違うであろう)ミシェルが表情をゆがませる。
「私たち兄弟は、AC195年に既に存在していた…」
サユイラの声色は悲しげだった。
「当時、最も優秀な人間、つまり、ガンダムのパイロットである、ヒイロ・ユイ、デュオ・マックスウェル、トロワ・バートン、カトル・ラバーバ・ウィナー、張・五飛、ミリアルド・ピースクラフト、のクローンをベースに、ZEROシステムとの無線接続、身体能力の限界突破を可能にした強化人間だ」
「待て、それとヒイロと俺たちが同じというのがつながらないぞ、創られたのは6人だと言ったな」
フアラが冷静に質問した。
「あぁ、ヒイロ・ユイ、ベースの人間の名前を名乗っている通り、奴はお前の失敗作だ、否、試作っと言った方がいいな」
「俺の…」
「奴は私のベース、ミリアルド・ピースクラフトの息子である、ミル・ピースクラフトのクローンの遺伝子を組み替えてヒイロ・ユイにしようとしたのだ」
「それ故、今回のような作戦を…」
「それは否定する、ヒイロ・ユイ、否、ビリオ・ピースクラフトは失敗作だ、だからビリオは、独自の思想を持っている」
「しかし、AC195に既に存在していたと…」
「あぁ、ビリオも存在していた」
「だが、ミル・ピースクラフトはMCの人間だ」
「ビリオは意識端末と生態端末に分けられる、つまりは不死身、意識端末のビリオはAC195より存在していた、だが、当時、生態端末は存在していなかった、そこで、ビリオの意識は、長い間チャンスをうかがい、サンクキングダムのデータを盗み、自身の身体を作り出したのだ…自分を捨てた人類を殺すために」
「いろいろと引っかかる」
五神が呟く。
「まず、俺たちはAC195より存在していたのに今15歳だ、そして、ビリオは意識と生態に分けられるが俺たちはどうなんだ?」
「私たちは眠っていた、あのリリーナ・ピースクラフトや、2人目のヒイロ・ユイと同じようにな、なぜ眠っていたかというと、当時は理論上、意識と生態を分けるのは可能だったが、生態に意識を埋め込む技術が無かった」
「なるほど…では、奴は殺せない」
「方法が1つだけある、奴は意識自体がZEROシステムになっている、それを利用して、ZERO同士の戦いでシステムダウンさせる」
「意識を殺すしかないということか」
トリントンが自分の考察を述べた。
「それで、僕たちの力が必要なんだね」
クアトロが話しをまとめた。
「お前たち、自分の正体の事…」
サユイラが予想外の反応に困惑しながら聞いた。
「自分が何者だろうと、関係ねぇだろ?」
「俺たちは強化人間である前に兄弟だ」
「今どうしようと目の前の敵に立ち向かわなければならないことに変わりはないしね」
「このまま道化らしく生きるのも悪くない」
「俺たちは勝つべき存在だ」
兄弟たちは明るかった。
「お前たち……」
「兄さん、戦おう、俺たち以外に奴は倒せない、そして、奴がやろうとしてる事は絶対阻止しなければならない」
ウィンクラフト兄弟は新たな決意と共に戦いに挑むのであった。
 
 

 
後書き
―予告―
地球と火星、両方を手に入れたヒイロ・ユイ
かつてのガンダムパイロット3人はかつての自分を見る
再び戦場に飛び出すミシェル・クシュリナーダ
ついに戦場に現れたカゲロウ
発動する『オペレーション・ビックバン』
それは決してまともなものではなかった
絡み合う時代
9つの(ガンダム)がひとつになる時何かが終わる
次回:永遠と一瞬
君はその先に何を見る… 
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