新機動戦記ガンダムW -星間戦争記-
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愛と哀 ~再開編~
前書き
前回、次回予告を書き忘れてしまいました、
とりあえず修正はしましたので、まだ読んでない方は是非覗いていってください
太平洋にたたずむ黒い要塞『パンドラ』の内部、そこは、数十人の兵士と死角なく配置された監視カメラが護っていた。
こんな場所に異常が発生するわけも無いとただただ銃を手に立っている兵士の足元から白い煙があがった。
「な…なんだ!?」
兵士は通信機に手をかけたが、通信を入れる前にその場に倒れこんだ。煙はあっという間にフロア全体の兵士を眠らせた。
そこに、ガスマスクを被り、銃を持った男が現れた。
ガスマスクから後方にたれるまとめた金髪を揺らし、奥の扉に向かい走り出した。
「ここか…」
男は呟き、銃を構え、あらかじめセキュリティロックをはずしておいた扉を勢いよく開けた。
「エルヴ!!」
正面に拘束され、弱りきったエルヴを確認し、マスクをはずすと、そこには、整った顔立ちに蒼い瞳の顔、サユイラだ。
「今助ける!!」
サユイラが駆け出し、ちょうど扉とエルヴの中間点辺りで、頬に激痛が走った。
「…ッ!!」
すぐさま振り返り、反撃しようと銃を構えるが、その手から銃が弾けとんだ。
「待っていたよ、星の王子様」
そこにはサーベルを腰に2本携え、銃口をこちらに向けて立つ、ヒイロの姿があった。
「待っていた…だと?」
先ほどまで何も無かった空間から突然現れたヒイロに冷静に質問をする。
「そう…君とは一度話してみたかったからね」
軽い口調で答えたヒイロは銃を後方に投げ捨てた。
「何故、銃を捨てた」
「銃なんかじゃ、君を感じられない」
ヒイロは腰に携えたサーベルを1本取り出し、サユイラに投げ渡した。
「剣で勝負だ、命をかけて…」
「いいだろう」
それを受け取り、サユイラは剣を構えた。
「お前を殺す」
「サ…ユイラ…気…を付け……て…そい…つ………は…」
サユイラの背後から途切れ途切れの声で警告すると、エルヴは気を失った。
(エルヴ…必ず助ける)
それを聞き流し、剣を抜いたヒイロが先手をきった。
「はじめよう」
一体どれほどの時間戦っているだろう。部屋にはサーベルが空を斬る音とぶつかり合う金属音だけがただただ響いていた。
しかし、ヒイロが一瞬の隙を突いて、下方からサユイラを弾いた。
「ぐぅ…ッ」
「もらったよ」
ヒイロが体勢を低くし、サーベルを突き出す。
床に血が飛び散った。血しぶきが壁を赤く染めた。
「な、何!?」
ヒイロは驚いた。
サユイラはヒイロの渾身の一撃を右足で受け止めていたのだ。サーベルはかかとから膝にかけて貫通した。
「うおおぉおぉぉぉおおぉぉォォオォ!!!!!!」
サユイラはヒイロのサーベルを足で固め、自身のサーベルを勢いよくヒイロの頭に突き刺した。
数十秒の沈黙の後、サユイラはその場に倒れこんだ。必死にサーベルを引き抜こうとするが、痛みがそれを妨害する。
「う…ぐぅっ…つッ」
床は出血で赤く染まっていた。
エルヴは意識を取り戻した。
「エル…ヴ」
目の前には血溜りの上に立つサユイラの姿があった。エルヴはサユイラの傷を見て何かを言おうとしたが、声が出なかった。
「大丈夫だ、心配ない」
「……!」
サユイラはエルヴを拘束している器具をすばやく外していった。エルヴの手足には拘束具の痕がくっきり残ってしまっていた。
腕の拘束具を外し終わり、サユイラの方へ倒れこんだ。
「!?」
サユイラの腕がエルヴを受け止めたと思うと、エルヴの唇に経験したことの無い感覚が走った。
サユイラはエルヴの唇に自分の唇を重ねた。
海からは2人の再会を祝福するかのように朝日が降り注ぐ。
エルヴの涙が裸の肩を濡らしていく。
「怖かった…このまま死んじゃうかもって思った」
長時間の監禁によるストレスが一気に開放され、エルヴの目からは大量の涙がこぼれ、声は回復したとはいえ途切れ途切れでかすれていた。
「すまない…遅くなった…」
サユイラはエルヴの冷え切った身体を抱きしめ、慰めるように呟いた。
「怖くて怖くて…私…」
エルヴはサユイラの腕の中で子供のように泣きじゃくった。
「いや~実に見事だ、この私を殺すとは」
扉の方から聞こえた声はサユイラがさきほど殺したはずのヒイロのものだった。
「ヒイロ・ユイ!?」
「貴様は私が…否……ッ!!」
サユイラは身構え銃を構えようとしたが、手元に銃はなかった。
「今から火星軍に攻撃をかける、そして勝つ」
部屋の天井から放たれた立体映像のヒイロは、顔に笑みを浮かべ、そう言った。
「私たちは負けない!!」
「否、私は勝つ…必ずな」
エルヴは反論に即答したヴァーチャルのヒイロに向かって走り出した。
「冷静になれエルヴ!!」
サユイラの声も虚しく、エルヴは床から現れた刺に気づかずに突っこんだ。
エルヴは無数の刺の中央に入った途端、身体が後方に突き飛ばされた。エルヴと入れ替わるように入り込んだサユイラに、刺の先から電撃が放たれた。
電撃は、発生源から最も近いサユイラに集中した。
「…あぁ!!」
「ぬぐ…う…ぐあぁぁぁぁぁ!!!!」
エルヴの目の前で放電の餌食になるサユイラは力なくその場に倒れこんだ。
「死ぬなよ…サユイラ」
立体映像が消えると同時に放電は止んだが、サユイラの目は生命力を失っていた。右足からは大量の血が流れ、服は燃え上がる。
「サユイラァァァァ!!!」
火星圏ネオ・バルジ宙域では、火星軍がブラックファングの攻撃に必死に抵抗していた。
「岩を使って左右から回り込め!!正面は防衛フォーメーションで耐えろ!!」
帰星した直後のビクトゥーリアでは、ミシェルが指揮をとっていた。
「変形必須電力充電完了まであと106!」
「ニル小隊全滅!」
「敵機以前進行中!」
モニターを確認して報告をする管制官の声が飛び交う中、1人の管制官が目を見開き、恐らくこの中で最大であろう声量で報告した。
「MS部隊を突破したのがいます!!データ照合!主モニターに出します!!」
巨大なモニターに映し出されたそれは、全身白の塗装に黄色のラインが入っていて、左肩には、ライフルと連結した大きなシールド、背中には特徴的な巨大なスーパーバーニアが付いている、王者を連想させるMS、トールギスが映っていた。
「ト、トールギスです!!!」
「トールギス…!?」
ミシェルは正面から無防備に突っこんでくるトールギスを前に硬直してしまった。
「閣下!!」
「ご指示を!!」
砲撃担当の乗組員がミシェルの方に振り返り、焦った表情で問う。
「し…主砲準備!電力が足りなくても無理矢理撃て!」
ビクトゥーリアの巨大な砲台がエネルギーをチャージし始めた。
「チャージ完了!いけます!!」
「撃てェ!!」
極太のビームの束がトールギスめがけて直進する。
と、艦内の電力がダウンした。
「電力ダウン!予備に切り替えます」
「モニター回復まで、あと、6…5…4…」
管制官がカウントダウンを始めると、ブリッジに異様な緊張が走った。
「3…2…1…!」
「!?」
「うあぁ!!」
モニターが回復し、そこに映っていた光景に乗組員全員が驚いた。
「て、敵機との距離、0.2!!」
巨大なモニターいっぱいに映し出されたのはトールギスの顔だった。
「直撃だったはずだ…なぜ生きている!?」
「トールギスから通信です!!」
『こちらBFのヒイロ・ユイ』
ブリッジ内に響いたのは間違えようの無いヒイロの声だった。
『覚悟しろ』
ヒイロは静かにそう告げると一方的に通信を切った。
トールギスはバスターライフルを構えていた。
「これが私のトールギス、トールギスゼロだ」
ヒイロは静かにトリガーを引いた。
「君たちの負け」
バスターライフルから最大出力で放たれたビームは、ビクトゥーリアのブリッジを貫通し、メインエンジンを貫いた。
ビクトゥーリアは一瞬にして無残に散った。
「フッフッフッフッ…ハハハハハハ!!」
ヒイロはコントロールパネルを操作し、現宙域内の全てのMSに通信を入れた。
「火星軍諸君、BFはミシェル・クシュリナーダを殺した、よって君達の負けだ、残存兵は直ちに…死ねェ!!!」
火星の空が爆炎で埋め尽くされた。
「はじめよう、救いを…」
後書き
今回はちょっと短めかな?
いよいよ物語は終局に向かっていきます!!(予定では)
今後も期待できますね、ね?w
こんなめんどくさいaxですが、今後ともよろしくおねがいします。
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