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ナナミとの勝負
前書き
他の試合は飛ばします
ゲツガはその後は順調に勝ち上がっていった。ナナミもジュンも、そしてあのシュートとか言うウィルス感染者も勝ち上がっている。戦いが実際に見れたならいいが本戦は観客以外観戦が出来ないためどうやって勝ち上がっているかは不明だ。
「少しでも情報があればな。こいつの口コミはあれからまったくといっていいほど更新がない。だけど、これだけの数の目で見られているのに何も書き込まれないんだ」
二試合もあって自分やジュン、ナナミのことはどんどんと書き込まれていくのにシュートだけはまったく書き込まれない。これはあまりにもおかしすぎる。
「ゲツガ君、もうすぐ私との試合だね」
不意に声をかけられ顔を上げる。声からしてナナミとわかっていたが一応顔をあわせなければ失礼だと思い、顔を上げる。
「そうだな」
「うん、ゲツガ君、私、負ける気なんてないからね」
「それはいいことだな。まあ、俺も負ける気なんてないし最初から本気で行かせてもらうぜ」
「そう来なくっちゃ」
そして、ようやく二回戦が全部終わり、先ほどの試合をしていた二人が出てくる。両方とも予想していた通りジュン、そして感染者と思われるシュート、しかし、今はウィルスの感じがまったくなく普通の感じだ。やはり、あれは幻聴なのか?違うと信じたい。この歳で、しかも何の薬物も使ってなくて聞こえるなんて自分いやになってくる。
「あの二人だね。勝ち上がったの。お兄ちゃんならわかるけど、もう一人のどこかぱっとしないほうが勝ちあがってくるとは思わなかったな」
「ああ」
ゲツガはシュートというプレイヤーを観察するがどこもおかしいとところはない。まあ、ウィルスは外面的には変化がなかったのは自分が一番わかっているが実際のところはわからないほうが多いためだ。
ちょうどブザーが鳴る。
「そろそろらしいな」
「そうだね」
ゲツガは立ち上がり扉のほうに向かう。その後に続いてナナミもついてくる。この勝負は負けるわけには行かない。なぜなら、あのシュートとか言うプレイヤーの正体を調べなくてはならないからだ。
そして扉を出ると大きな歓声が二人を迎える。
耳に聞こえる音声に誘導されてきたフィールドは先ほどのフィールドをなくしたため大きなフィールドと化している。そのフィールドを上がり中心へと向かう。
そして中心に来た二人は十メートルほどの距離を開ける。
「勝っても負けても文句なしだぜ。これは勝負なんだからな」
ゲツガはそう言って腰を低くして構える。今回はムエタイの構えではなく動くための構えだ。
対してナナミの構えは空手に近い、いや、空手ではなくあれは家の武術の構えだ。まるで空手のようだが、打ち方だけが少々違う。
「なるほど、そっちはそれか」
ゲツガは少し顔を歪ませる。ゲツガはまだ完全に覚えているが一人一人癖があるので簡単には行かないことがわかる。
そして中心にファイトと大きなホロウィンドウが出現してバトルが始まった。
最初に動いたのはゲツガだった。倒れたような感じの動きをするとすでに半分の距離を詰めた。そして、二歩でナナミとの距離を詰めるとまずは腕を伸ばし服を掴もうとする。
しかし、ナナミは距離を取ってそれをかわし、横から蹴りをしてくる。それを掴んで攻撃しようと思ったが、掴んでいたナナミの足が回転していることに気付いた。
「くッ!」
頭の横にすぐに腕を盾にした瞬間、衝撃が走る。そこには先ほど掴んだ足とは逆の足があった。これはゲツガも現実で、昔通ってた道場の先生に使ったわざと同じだ。
ゲツガはすぐにもう片方の腕を離し、いったん距離を取ろうとする。しかし、ナナミはそれを許さないと言った風にすでに距離を詰めていた。
「クソッ!!」
ゲツガはすぐに拳を放ち、離そうとするがその拳を掴まれて逆に引っ張られる。その引っ張ることによりゲツガの体はナナミに向かう。そして、ゲツガの顔面に前にナナミは肘を置く。ゲツガは当たる前にヘッドスリップで避けると体を捻って無理やりナナミの腕を引き剥がすとそのまま足払いをする。
しかし、ナナミはそれを飛んで避けると、そのまま踵落としをしてくる。それを転がりながら避けてすぐに立ち上がる。
踵落としはダメージは大きいがその分その後の隙が大きい。しかし、ここで突っ込んでいくのも危険だろうと思い、距離を置いた。
「危ないな……まさか、ナナミもそんなに使えるなんて思わなかったぜ」
「私のはまだまだだよ。昔に見ただけしかないよ。しかも、現実ではこんなことはいっさい出来ないよ。ゲームの中だけ」
「それでも、見ただけでここまで出来るなんてすごいぞ。正直油断してた」
「ありがとう。でも、油断してたら私、勝っちゃうよ?」
さすがは兄妹。自信があるところは似ているな。そう思ってゲツガは構える。今度はちゃんとムエタイの構えだ。
「行くよ!!」
そして今度はナナミの方から攻めてくる。先ほど自分のやった縮地法だ。あれを一度見ただけで覚えるなんて、すごい才能だ。
だが慣れていないためか少し幅が小さい。ゲツガは迎撃のためにナナミに向けて拳を振るう。それをかわすどころか逆にそれにあわせてカウンターを入れてくる。かわすことが出来たがナナミは攻撃のラッシュに入る。かわすがどんどん速さが上がっていっている。
「はああああ!!」
そして決定的な一撃が鳩尾に入り、飛ばされた。そのまま地面をすべるように転がる痛みはないが不快な感覚が体に走る。
「かはっ……けほ、けほ……」
さっきの決定的な一撃を食らってHPは注意域の後半まで達している。さすがに次の攻撃を受けきれる自信もない。
体を早く起こしてから立ち上がる。しかし、ナナミはすでに目の前まで来ていた。避けることも受けることも出来ない。避けたとしても確実に次の手でやられるだろうし、受けたとしてもあと何手も受けられる自身も体力もない。それならどうする。
それなら流せばいい。かわすこともできない、受けることも出来ない。それなら、受け流せばいいんだ。剛ではなく柔な考えでいくことも大事だろう。
ゲツガはナナミの拳を掌で受けるとそのまま押されるがままに引いて受け流す。そしてそのままの受け流しの勢いを利用して、そのままエルボーを脇腹に入れる。今度は確実に捉えてナナミの今まで止まることのなかった攻撃が一瞬だが止まった。
「おらぁ!!」
ゲツガはその隙に更なる追撃をしようと拳を振るう。しかし、ダメージのよって少し振るスピードが遅い。そのせいで、ナナミは先に動かれてちゃんと当たらずに掠る程度になってしまった。
「クソッ、若干遅かったか……」
「けほ、けほ!さすが、まさか攻撃を受け流して攻撃するなんてね……」
ダメージを与えることが出来たのだがナナミのHPは注意域にも達していないしそこまで減っていない。
そしてすぐに移動してゲツガの前まで来ると今度は蹴りを入れてくる。拳に対して蹴りは自分にとって受け流しにくい。体を浮かして腕を伸ばして、その蹴りを掴むと押されるがままに腕を引き、そのまま体も押されていく。ダメージが軽減されてそこまで食らわないが、注意域に入っていたHPが更に減る。この感じだといつHPが赤くなる、いやなくなるかがわからない。
「それなら!!」
ゲツガはそのまま手を足に絡ませた。そして、一度足を地面につける。すると足を軸にナナミは足を上げた。その瞬間を利用してゲツガはそのまま掴んでいた足に足に絡ませてそのまま締め技を開始した。
「なっ!?」
いきなり締め技が来ると予想していなかったのかそのまま重力によってナナミの体とゲツガの体は地面に落ちる。そして完全に締め技が決まり、じりじりとナナミのHPを削り始めた。
「離して!!」
ナナミはゲツガの足を無理やり引き剥がそうとするが一向に外れない。ナナミは拳をゲツガの足に向けて振り下ろす。しかし、それを食らったらやばい。ゲツガは一時的に力を緩めた。
「なっ!!」
足を緩めた結果避けることにも成功し、ナナミが自分の足に拳を当ててしまいHPが更に減った。そして再び締め技を開始する。その結果、ナナミのHPがようやく注意域の手前辺りまで減った。時間が終わり、すぐに締め技を解かれた足を抜いて脱出すると距離を取った。ゲツガも素早く体勢を立て直してナナミのほうを向く。
ナナミは先ほどのことを警戒してかまだ、距離を取ったままであった。実際はそのほうがゲツガにはよかった。こうしてる間に次の手を考えることが出来る。
だが、ナナミはそれほど甘くはなかった。考えようとした瞬間に接近してきた。ゲツガはすぐに受け流そうと構える。そしてナナミはそのまま蹴りを拳をゲツガの顔面に突き放つ。それを掌を目の前に置く、しかし、ナナミがこんな単純なことをすると思えずにゲツガは頭を少しずらす。すると、地面についた足がゲツガの体に向けて動いているのが見えた。
ゲツガは素早く体をずらして拳を流しながら体のほうに来ている膝蹴りを避ける。だが、ナナミの顔に余裕の笑みが見えた。その瞬間から頭で考えるのをやめた。今まで考えて攻撃していたが、逆にそれをしていたせいか攻撃を食らっていた。それならどうすればいいんだ。
(ハ………………シ…ケ……コ……)
心の奥底のほうで何かが自分に語りかけてくるように自分の頭にぼっそっと聞こえた。しかし、はっきりと聞き取れないため、何を言っているかが分からない。
だが自分はなぜかその言葉には忌避しているような気がする。それ以上聞きたくない。
そして、頭を振って声を聞こえないようにしようとすると足がすべりそのまま転倒する。その瞬間、自分の顔の横を何かが通過した。これはナナミの放ったもう一つの拳だ。どうやら転倒して運良く避けれたらしい。
素早く地面に手をつけてそのまま、転がるように移動して離れてすぐに立ち上がる。その後を追うようにすぐにナナミが追いかけてきていた。
すぐに避けるとまた顔面に向けて拳を放ってくる。だが、これでまた受け流そうとすれば視界に隠れて先ほどのように攻撃をしてくる。
それなら
「おらぁ!!」
ゲツガはその拳に向けて自分の額を叩きつける。そのせいで完全にHPが危険域であるレッドゾーンに達した。しかし、その攻撃でナナミのHPも減ってようやくイエローゾーンに達した。これが最後のチャンス、先ほどの攻撃で若干だが怯んでいるナナミに全力を叩きつける。
「うおおおおおおお!!」
ゲツガはすぐに腰を回してナナミが見えなくなるまで回転させると体全体のばねを解き放つように拳を回転させながた放った。その瞬間の攻撃はまるで銃弾から放たれた弾丸のような勢いに飛び出し、ナナミの胴体を捕らえた。しかし、ナナミは若干だが、動いていたため完全に捕らえることは出来なかった。それでも、当たったことは事実。着実にナナミのHPを減らしている。ナナミは地面に転がりながらも手で地面を押さえて止まると起き上がる。
HPはまだ減り続けている。そして、ナナミのHPは止まることを知らずにレッドゾーンに突入する。しかし、それでもナナミはまだ倒されていない。そしてまだ動いてゲツガに迫り来る。そして拳をゲツガに向けて放つ。しかし、ゲツガはそれを避けようとしない。そして、その拳が当たる直前にブザーがなる。
「どうやら、私の負けみたいだね……」
「悪いが、俺の勝ちだな」
ナナミのHPはゼロになっていて、そのままゲツガに倒れこんでくる。それを受け止めると言った。
「正直、ナナミがここまで強いなんて思わなかった」
「ううん、私は強くないよ」
「いいや、十分強いって。ここまで追い詰めたんだし。あのときの攻撃で転んでなかったら俺が負けてただろうし」
「運も実力のうちだよ。ゲツガ君」
その言葉に苦笑する。だが実際はあれはあのときに自分の奥底で思ったことを聞きたくないと思ってしたことだから実際は運なのかわからない。だが、勝てたならいいかと思う。
「おめでとう、ゲツガ君」
そして、ナナミはそのまま強制的にテレポートさせられてコロッセウムの前に行ったと思う。負けたらそこに行くらしいが実際負けていないからわからない。
「ようやく決勝か……」
そしてゲツガはそう呟くとフィールドから降りて扉に向かう。扉を通って控え室に入ると同時に二人が出て行った。
「これで最後か」
ゲツガはそう呟いて壁に背を預けた。
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