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ソードアートオンライン VIRUS

作者:暗黒少年
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本戦開始

ゲツガ達がログアウトしている間の選手控え室。その中に一人の男がいる。しかし、その男の様子がおかしい。心臓の部分を押さえて蹲っている。

「クソッ……何とか体に入ることでプレイヤーのアバターを奪うことが出来たが……こいつ自体の適合率がそこまで高くない……体が安定しない……」

そのプレイヤーは何を言ってるのか分からない。しかし、表情はどこか嬉しそうだ。

「だが、この体で、あいつにさえ触れれば俺はもう解放される。まさか、この世界にゲツガ以外にも適合率が高い奴がいるなんて思いもよらなかったぜ……」

適合者、それはVRMMOにおいてNERDLESによってフルダイブが可能にするもの。しかし、このプレイヤーは普通に五感もしっかりとしたプレイヤーだ。

それなのに、自分の適合率が高くないといっている。一体こいつは何者なのだろうか?その疑問は誰も答えない。その正体を知っているのはこのプレイヤーだけなのだろう。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ログインしてへ控え部屋に来て自分の定位置とかした壁に寄りかかりウィンドウを開く。そこにはすでにトーナメントの対戦表が貼られていた。

「もう貼られてるのか。運営も仕事が速いな」

そして自分がまず誰と戦うかを確認する。まず戦うのは奈美と同じ時間に戦っていたプレイヤーだ。そこをタッチすると情報が出てくる。しかし、この書き込みはプレイヤーたちの口コミ等をまとめたもので真偽が気になるところだが今はべつにいいだろう。

「えっと、プレイヤーネームは……黒い刺客?何か変な名前だな。まあ、漢字が使えるからこんなのを付けたがるんだろうけど、別にいいか。えっと、空手とボクシングを複合させた独自の方法か。こりゃ、案外危険かもな。どっちもちゃんと撃てば威力が高いしな」

そんなことを呟きながら、相手のデータを覚えていくが、弱点となる癖などのことなどは一切記載されてなかった。

ウィンドウを閉じて、溜め息を吐く。一応自分の中でイメージは出来てきたがどうやって対処するかまでは実際にやってみないと分からない。どうやって戦うか考えていると、自分の右のほうの壁の隅に蹲るプレイヤーを見つけた。

(確かあいつは、俺が気になってたプレイヤーだったな)

ゲツガは立ち上がり、そいつのほうに向かう。そいつは自分に気付いた様子はなく、ただ蹲っている。もしかして、寝落ちとかしてるんじゃないだろうなと思いながら突付こうとする。

しかし、突付く前にプレイヤーは体を飛び跳ねさせてゲツガの右に飛ぶ。いきなりのことで反応が遅れるが攻撃されるわけでもないので大丈夫であろうがすぐに警戒しながら構えを取る。

そしてそのプレイヤーと目が合う。その目は人ではない眼球に見えた。例えるなら獣の眼球だ。縦に割れた瞳孔、そして、若干光って見える。その光景を目を見張る。そのプレイヤーはすぐに目を逸らしたので一瞬だったが確実に自分の目はそう捉えた。

「おい、お前」

「な、なんですか?」

声をかけてこちらを向かせる。しかし、さっきの目とは違い、普通の人の目になっている。それにさっきのような俊敏動きとは違い、ぎこちない動きだ。

どうなんてるんだ?さっき目が合ったときとはまるで別人だ。

「ど、どうしたんですか?」

「いや、さっき蹲ってたから大丈夫かなって思ってな」

「だ、大丈夫です。さっき、ちょっとそこに座ってたら寝落ちしそうになってただけですから」

本当にそうだろうか?まったくそういう感じではなかったし、それに先ほどまで胸を強く握ってたように服がしわしわになっている。しかし、実際にはまったくわからない。

「そうか。大会の前なんだから気をつけろよな」

「はい、でもさっきので完全に目が覚めたんで大丈夫です」

「それならいいが……」

そいつ自身がそう言ってるなら問題ないだろうが、このプレイヤーはどこか怪しく思った。とにかく大丈夫そうなので、自分の定位置に戻ると再びウィンドウを開いて先ほどのプレイヤーの口コミを確認する。

「戦闘データがほとんどないな……わかるのは名前ぐらいか」

名前は、シュート。先ほどの戦闘履歴も特に目立ったものがなかったため口コミも少なく、ほとんどが謎だ。

しかし、次はこのプレイヤーの戦闘を見たいものだがトーナメントは予選と違ってこちらは見ることが出来ない。そのため、どのような戦いをしたかは口コミで確認するしかない。だが、それでも足りない部分もある。

「ちと、厄介だな……」

「何が厄介なの?」

いきなりの返しに少し驚く。

「どうしたの驚いて?」

「ナナミか、ちょっといきなり離されたから少し驚いただけだから気にすんな。それと厄介なのはこっちの話しだから気にするなよ」

「そう言われると余計に気になるんですけど。どうせ、次の対戦相手のことでしょ?」

そう思ってくれるなら別にいい。

「ま、そんなところだな」

「それで勝てる自身はあるの?」

「五分五分だな。体重の乗った攻撃はほとんど撃っていないけど相当な威力があるってことは口コミでわかったけど、スピードのほうが自信があるとも書いてる。バランスのいいタイプの相手って言うことはわかるんだけどな」

「口コミは結構わかりやすいものが多いからね。えっと、ゲツガ君の相手は結構有名なプレイヤーだよ。前の大会も本戦まで上がってきてたし」

「その情報は助かる」

「でも、後はよく私もわからないよ。実際に戦ったことのないからね。でも、ゲツガ君ならいけるんじゃないの?」

「まあ、頑張ればな」

そしてようやく本戦の開始時間となった。ほとんどが古参のプレイヤーばかりらしく今回は新しいプレイヤーは先ほどの男とゲツガくらいだ。

最初はゲツガの出番ではなく、四人が出て行った。どうやらこのゲームは大会を時間を少なくさせるために試合同時に行うらしい。

「ジュンと知らん奴か、まあどうせあいつのことだろうし勝つだろ。ナナミも出るっぽいな。どっちにしろ二人は勝つだろう」

ゲツガは二人は負けることはないと確信している。ジュンはアイテムの使用もあるし、たぶん勝てるだろう。それに、ナナミも勝てると思う。そういえば、ジュンの対戦相手は見たけど、ナナミのを見ていないな。

ウィンドウを取り出し、ナナミの対戦相手を確認する。

「カイザー……皇帝ね。まあ、ゲーム世界でどんな名前をつけようかは勝ってだからこの辺は気にしないといて、口コミはどんなんだ?」

カイザーの口コミを確認する。すると驚くべきことが書かれていた。

「まじかよ……こいつも、ジュンと同じアイテム持ちかよ……」

カイザーはジュンが来る前の優勝者らしい。しかし、去年はジュンに敗れている。がアイテム持ちっていうことは変わりない。

「こりゃ、ナナミは厳しいだろうな。見るからにカイザーは一撃の威力はそこまで高くなさそうだけどフットワークはかなり良いって書いてあるし、それにヒットアンドアウェイ戦法で確実に体力を減らしていくってかなり厄介だな」

そう呟いてとにかく他のプレイヤーの情報に目を通していく。ジュンとあたりそうなプレイヤーは準決勝で当たるあの違和感のある男ぐらいしかいない。自分の所は、この後当たる男とこの試合で勝ったら勝ちあがるカイザーかナナミだろう。

「まあ、どっちが勝つかは帰ってきてからのお楽しみか」

そして、ゲツガは自分の試合までの間は目を閉じて集中を開始するのであった。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


十分ぐらいたっただろうか、耳にブザーの音が入ってくる。その音で目を開けると中央のフィールドの扉が開き、ナナミが出てきた。どうやら、カイザーを倒したらしい。その後にジュンも出てくる。ジュンはすぐにナナミに抱きつこうとしていたがそれを華麗に避けられて地面と激突していた。

「お疲れ」

「ありがと」

「しかし、ジュンと同じアイテム持ちと戦ってよく勝てたな」

「正直、負けるかと思ったよ。攻撃は重くないけど一撃一撃が正確でHPもかなり減らされたけど、アイテムの効果が切れた隙を狙って攻撃を叩き込んだら怯んでね、その隙に攻撃をたくさん入れられたから勝てたんだよ」

「なるほど、アイテム持ちには持続時間が切れるのを待つのも一つの手だしな」

そして自分の視界の上に赤い点滅ライトが出てくる。どうやら自分の出番が来たみたいだ。

「じゃあ、俺、出番が来たから行って来る」

「うん。負けないでね」

「当たり前だ」

そして、入り口の前にあたりにいたジュンがいた。

「どうしたんだ、お前。ここじゃなくてもっと奥に行かなくていいのか?」

「別に」

そっけない態度でジュンは返事を返す。それを苦笑してから入り口に入ろうとする。その時にボソッとだがジュンの声が聞こえた。

「俺以外に負けるんじゃねえぞ」

それを聞いたゲツガはまた苦笑を浮かべた。そんなのわかってる。こんなところで負けられない。ゲツガはすぐに気持ちを切り替えるために息を大きく吸い込んでゆっくりとはいた。その後、フィールドに足を踏み入れた。

そして、本戦の第一回戦が始まる。 
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