| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

遊戯王GX-音速の機械戦士-

作者:蓮夜
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
 

―最後のジェネックス―

 
前書き
二年生編、完結です。 

 
 斎王とのデュエルは決着したものの、エドに敗北してメダルを失った俺にはもう、ジェネックスに参加資格は既に無い。
そしてジェネックス最終日、壮絶な戦いを生き残ったデュエリストたちの頂点を決める、決勝トーナメントが開かれることとなった。

 その参加資格は、ジェネックスのメダルを50個以上持っていること――デュエルせずに逃げ延びた者も多いため――となり、デュエル・アカデミアのデュエル場でトーナメントが開かれた。
そのトーナメントは始まる前の観客勢の予想を裏切り、デュエル・アカデミアの生徒が大多数を占めるという結果になった。

 万丈目準、ティラノ剣山、早乙女レイ……多くの知り合いの名前が流れていくのを、俺は三沢と明日香と共にテレビ画面で見ていた。

「二人とも出なくて良かったのか?」

「俺はあのままだと斎王に負けていたからな。参加する資格は無いよ」

「私なんて、何にも覚えていないのに参加出来ないわよ」

 三沢も明日香も真面目というか……それに加えて流れる名簿には、十代に亮、吹雪さんの名前が流れることはなかった。
亮と吹雪さんはあの時のデュエルで引き分けになったらしく、十代はプロデュエリストの大物狙いだったため、メダルを集めきれなかったというのが実情だが。

 エドと斎王は、斎王の治療の為にひとまず先にデュエル・アカデミアから離れているし、彼らに参加する気はもう無いだろう。

「それより三沢……本当に行くのか?」

「……ああ。ジェネックスを見届けられないのは残念だが、俺の夢と言っても良いからな」

 俺たち三人は廊下のテレビでトーナメントを見つつ、ヘリポートへと向かっていた。

 三沢はジェネックス中にデュエルした、ツバインシュタイン博士に研究所に誘われ、三沢はそれに快く承諾したらしい。
ヘリコプターで帰るツバインシュタイン博士について行き、そのまま助手として活動することを、学園側にも了承させて休学となった。

「そうか……」

「三沢くんなら大丈夫、頑張ってね……それじゃ遊矢、三沢くん」

 親友が休学扱いとなって残念がる俺の隣で、明日香が俺と三沢の二人の肩を叩いた。

「記念に、ね。二人でデュエルすれば良いんじゃない?」

「……もちろんそのつもりさ、明日香くん」

 ヘリポートへと続く長い廊下を抜けた後に、もう発進準備が完了しているヘリコプターが一台ある、ヘリポートへとたどり着いた。
しかし、そのパイロットは未だ発進する気はないようで、ツバインシュタイン博士とともにジェネックスの中継を眺めていた。

「こっちも決勝戦といくか、三沢!」

 ヘリポートは当然のことながら広く、俺と三沢がデュエルするスペースぐらいならば、容易くその場所を確保してくれる。

「見物客が明日香くんしかいない、というのは不満だけどな」

 双方ともにデュエル出来る場所まで離れ、デュエルディスクの準備を完了する。
……このデュエルで三沢はアカデミアを離れていく、そうなってしまえば、こうして気軽にデュエルをする機会は無くなってしまうだろう。

 そうなるのならば、このデュエルを贈り物として三沢に送らせてもらおう……!

『デュエル!』

遊矢LP4000
三沢LP4000

「楽しんで勝たせてもらうぜ! 俺の先攻、ドロー!」

 デュエルディスクは俺に先攻を指し示し、機械戦士たちは俺の手札に集まっていく。

「俺は《ガントレット・ウォリアー》を守備表示で召喚!」

ガントレット・ウォリアー
ATK500
DEF1600

 守りの要たる腕甲の機械戦士が召喚され、守備表示で俺の前に立ちふさがる。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 そのまま何も動かず三沢のターンとなり、三沢は最後のデュエルだと感じさせず、いつも通りにカードを引いた。

 ただ俺は時期の関係上、三沢のライトロードが加わった新デッキとは、未だにまともに戦ったことは無い。
三沢が新デッキを組んだ時には、俺は光の結社に入ってしまって――俺を脱退させる為に組んだのだから当然だが――おり、その後にはすぐジェネックスが始まってしまったからだ。

「俺はモンスターとカードを一枚ずつセットし、ターンエンド」

 三沢も俺と同等……いや、それ以上に守備を固めて俺にターンを譲り渡し、何も行動を起こさなかった。

「俺のターン、ドロー!」

 両者ともに守備表示の我慢比べは苦手だ、ならば俺から攻めさせてもらう……そうする為にも、機械戦士のアタッカーを召喚した。

「《マックス・ウォリアー》を召喚!」

マックス・ウォリアー
ATK1800
DEF800

 三つ叉の槍を振り回しながらマックス・ウォリアーが飛び出し、正体が解らないセットモンスターへと振りかざした。

「バトル! マックス・ウォリアーでセットモンスターに攻撃! スイフト・ラッシュ!」

 マックス・ウォリアーがセットモンスターに近づくと、三沢の前にいるセットモンスターが姿を現し、そのままマックス・ウォリアーに刺し貫かれた。

「セットモンスターは《ライトロード・ハンター ライコウ》! お前のリバースカードを破壊し、デッキからカードを三枚墓地に送る!」

 マックス・ウォリアーに貫かれたのは白い光を放つ犬のモンスターで、その今輪の際に放った光が俺のフィールドにセットしてあった《くず鉄のかかし》が破壊された。

「マックス・ウォリアーは相手モンスターを戦闘破壊した時、攻撃力・守備力は半分になる……ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー! ……リバースカード《リビングデッドの呼び声》を発動し、墓地から蘇れ! 《カラス天狗》!」

カラス天狗
ATK1400
DEF1200

 墓地から蘇る三沢の主力モンスターに顔をしかめるが、そんなことには構わずに三沢は効果の発動の宣言を行った。

「効果の説明をする必要はないだろうが、一応しておこう。カラス天狗が墓地から蘇った時、相手モンスターを破壊する! ガントレット・ウォリアーを破壊せよ、悪霊退治!」

 カラス天狗が扇を振り上げて破壊するのは、攻撃の態勢を取っているマックス・ウォリアーではなく、守備表示のガントレット・ウォリアーを標的とした。

「だったらガントレット・ウォリアーの効果を発動! このカードをリリースし、マックス・ウォリアーの攻撃力を500ポイントアップ!」

 ただではガントレット・ウォリアーは破壊されず、マックス・ウォリアーにその腕甲を繋げた後に、カラス天狗によって墓地へと送られてしまう。

「そしてカラス天狗をリリースし、《竜骨鬼》をアドバンス召喚!」

竜骨鬼
ATK2400
DEF2000

 カラス天狗が立っている地面から炎の陣が立ち、そのまま骨となった後に巨大化して龍の形をかたどっていく。
そのまま竜骨鬼がアドバンス召喚され、攻撃力と守備力が半分になったマックス・ウォリアーを蹴散らさんとした。

「バトル! 竜骨鬼でマックス・ウォリアーに攻撃!」

 その巨体を活かした踏み潰し攻撃に、マックス・ウォリアーはそのまま破壊されてしまうが、その場には代わりに他のモンスターが現れていた。

「リバースカード《死力のタッグ・チェンジ》を発動! 戦闘ダメージを0にし、手札から戦士族モンスターを特殊召喚する! 《チューン・ウォリアー》を特殊召喚!」

チューン・ウォリアー
ATK1600
DEF200

 マックス・ウォリアーの代わりに登場したのは、真紅のボディを持ったチューナーモンスター、チューン・ウォリアー。

「カードを一枚伏せて、ターンを終了する」

「俺のターン、ドロー!」

 俺のフィールドにはチューン・ウォリアーて死力のタッグ・チェンジ、三沢のフィールドには竜骨鬼とリバースカードが一枚となった。

「俺は《チューニング・サポーター》を召喚し、《機械複製術》を発動! 増殖せよ、チューニング・サポーター!」

チューニング・サポーター
ATK100
DEF300

 チューン・ウォリアーとチューニング・サポーターが三体、そのどちらもシンクロ召喚に関わっているモンスターなのだ、やるべきことはただ一つ。

「自身の効果でレベル2としたチューニング・サポーターと、レベル1のチューニング・サポーター二体に、レベル3のチューン・ウォリアーをチューニング!」

 チューニング・サポーター一体を自身の効果でレベル2としたため、そのシンクロ素材となったモンスターたちのレベルの合計は、7。

「集いし願いが新たに輝く星となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《パワー・ツール・ドラゴン》!」

パワー・ツール・ドラゴン
ATK2300
DEF2500

 シンクロモンスターのラッキーカード、《パワー・ツール・ドラゴン》がシンクロ召喚をされ、その黄色の鋼鉄のボディを見せた。

 竜骨鬼の戦士族を破壊する効果は、戦士族モンスターが多い【機械戦士】デッキには相性が悪いが、機械族であるパワー・ツール・ドラゴンには関係ない。

「チューニング・サポーターがシンクロ素材になった時、一枚ドロー出来る。よって三枚ドロー! ……そして、パワー・ツール・ドラゴンの効果を発動! デッキから装備魔法カードを三枚選び、相手が選んだカードを手札に加える! パワー・サーチ!」

 俺が選んだ三枚の魔法カードは、《団結の力》・《魔界の足枷》・《ダブルツール D&C》というカード達が三沢の前に裏側で表示されていく。

「……真ん中だ!」

「……お前が選んだのはこいつだ! 装備魔法《ダブルツール D&C》を装備し、バトル! パワー・ツール・ドラゴンで竜骨鬼に攻撃! クラフティ・ブレイク!」

 パワー・ツール・ドラゴンに装備されたドリルが回転し、竜骨鬼の身体に風穴を開けていく。
ダブルツール D&Cは俺のターンの場合のみ、攻撃力は1000ポイントアップし、上昇値を足してパワー・ツール・ドラゴンの攻撃力は3300。

三沢LP4000→3100

「このくらいのダメージは……」

「必要経費、だろ?」

 三沢の口癖のようなものを真似てみせると、三沢は若干不機嫌そうに眉をひそませた。

「ターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 ただのポーズだったらしく、すぐに三沢はその不機嫌そうな表情を止めてカードをドローした。

「俺は伏せてあった《妖魔の援軍》を発動! 1000ポイントのライフを払うことで、二体の妖怪を特殊召喚する! 蘇れ、《カラス天狗》! 《陰魔羅鬼》!」

陰魔羅鬼
ATK1100
DEF1000

三沢LP3100→2100

 再び現れる炎の陣から墓地から二体の妖怪が蘇り、それぞれその効果を発動して俺へと襲いかかって来た。

「陰魔羅鬼の効果で一枚ドロー。そして、カラス天狗の効果でパワー・ツール・ドラゴンを破壊する! 悪霊退治!」

「悪霊はお前だ!」

 常々思ったことがようやく口から出て来たが、カラス天狗の効果がツッコミで止まるわけもなく、扇による妖術のようなものがパワー・ツール・ドラゴンを襲った。

「パワー・ツール・ドラゴンの効果発動! 装備魔法カードを墓地に送ることで破壊を免れる! アーマード・イクイップ!」

 ドリルとカッターを犠牲にすることで妖術から耐え、パワー・ツール・ドラゴンは何とかフィールドに維持された。
カラス天狗も陰魔羅鬼も下級モンスター、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力には遠く及ばないが、三沢のフィールドに妖怪が二体というのは嫌な予感しかしない。

「陰魔羅鬼とカラス天狗の二体をリリースすることで、閻魔の使者《赤鬼》をアドバンス召喚する!」

赤鬼
ATK2800
DEF2100

 嫌な予感第一の通り、三沢のエースカードたる閻魔の使者《赤鬼》がアドバンス召喚され、パワー・ツール・ドラゴンの攻撃力を超えるとともに効果が発動する。

「赤鬼がアドバンス召喚に成功した時、手札を捨てた分相手のカードを手札に戻す! パワー・ツール・ドラゴンをバウンスせよ、地獄の業火!」

「やらせるか! 手札から《エフェクト・ヴェーラー》を発動! 赤鬼の効果を無効にする!」

 その口から発射された地獄の業火を、俺の手札から発動したラッキーカード、《エフェクト・ヴェーラー》が包み込む形で沈下する。
その代償にエフェクト・ヴェーラーは墓地に送られたが、パワー・ツール・ドラゴンはバウンスされることなくフィールドへ残る。

「ならば赤鬼でパワー・ツール・ドラゴンに攻撃! 鬼火!」

 効果破壊にもバウンスにも耐えたパワー・ツール・ドラゴンだったが、戦闘破壊は耐えることは出来ずに赤鬼に焼き尽くされた。
だがパワー・ツール・ドラゴンの焼き尽くされた炎から、一体の小さな戦士の影が飛び出した。

「《死力のタッグ・チェンジ》の効果を発動! 戦闘ダメージを0にし、マイフェイバリットカードを特殊召喚する! 来い、《スピード・ウォリアー》!」

『トアアアアアッ!』

スピード・ウォリアー
ATK900
DEF400

 《死力のタッグ・チェンジ》の効果が再び発動し、シンクロモンスターのラッキーカードの代わりに、マイフェイバリットカードが赤鬼の前に立ちはだかった。

「来たか、スピード・ウォリアー……カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー! ……速攻魔法《手札断殺》を発動し、お互いに二枚捨てて二枚ドロー!」

 ライフポイントこそ俺のほうが二倍近く上だが、赤鬼がいる三沢にはその程度の差は瞬時に縮まってしまう。

「……よし。スピード・ウォリアーをリリースし、《サルベージ・ウォリアー》をアドバンス召喚!」

サルベージ・ウォリアー
ATK1500
DEF800

 スピード・ウォリアーと赤鬼が戦う時はまだまだ後、今のところはサルベージ・ウォリアーへとマイフェイバリットカードは後を託し、サルベージ・ウォリアーは墓地へと網を伸ばす。

「サルベージ・ウォリアーがアドバンス召喚された時、墓地からチューナーモンスターを特殊召喚出来る! 来い、《ニトロ・シンクロン》!」

ニトロ・シンクロン
ATK600
DEF800

 消火器のようなボディをしたチューナーモンスター、ニトロ・シンクロンを効果により引き上げ、フィールドの来るや否や二つの星となった。

「レベル5の《サルベージ・ウォリアー》と、レベル2の《ニトロ・シンクロン》をチューニング!」

 その二つの星は光の輪となっていき、サルベージ・ウォリアーを包んで一際輝く光を俺に浴びせた。

「集いし思いがここに新たな力となる。光さす道となれ! シンクロ召喚! 燃え上がれ、《ニトロ・ウォリアー》!」

ニトロ・ウォリアー
ATK2800
DEF1000

 緑色で悪魔のような形相をしたシンクロモンスター、ニトロ・ウォリアーがシンクロ召喚され、その背後で口上通りに炎が燃え上がった。

「更に魔法カード《マジック・プランター》を発動し、《死力のタッグ・チェンジ》を墓地に送って二枚ドロー!」

 二回に渡り俺のライフポイントを守ってくれた《死力のタッグ・チェンジ》を墓地に送って二枚ドローするとともに、これでニトロ・ウォリアーの効果を発動するきっかけとなる。

「バトル! ニトロ・ウォリアーで赤鬼に攻撃! ダイナマイト・ナックル!」

 魔法カードを使ったターンの為にニトロ・ウォリアーの効果が発動し、攻撃力が1000ポイントアップして3800、赤鬼の攻撃力を遥かに超える。
ニトロ・ウォリアーの炎を伴ったラッシュは赤鬼を捉え、そのまま連撃を叩き込んだ。

「ぐああっ……」

三沢LP2100→1100

 これで三沢のライフポイントは、俺が未だに初期ライフなのに対して、1100という四分の一程度のライフとなった。

「……ターンエンドだ!」

「俺のターン、ドロー! 《ソーラー・エクスチェンジ》を発動し、ライトロードを捨てて二枚ドローし、デッキから二枚墓地に送る」

 ライトロードシリーズの特権とも言える、高速のデッキ圧縮魔法が発動され、三沢のデッキが二枚も墓地へと送られていく。
さっきの《手札断殺》の時も入れて、三沢の墓地に着々と墓地にカードが貯まっていく。

「墓地の《スリーピー・ビューティー》の効果! 手札のアンデット族モンスターのレベルを1下げる。それが墓地に二体! よって、このモンスターをリリース無しど通常召喚出来る! 出でよ、《砂塵の悪霊》!」

砂塵の悪霊
ATK2200
DEF1800

 砂を手足のように自由自在に操る妖怪、砂塵の悪霊がフィールドに現れるとともに、どこからともなく砂塵が舞い散ってきた。

「砂塵の悪霊が召喚に成功した時、相手のフィールド場のモンスターを破壊する!」

 空を漂っていた砂がニトロ・ウォリアー目掛けて向かっていき、砂嵐が収まる時にはもうニトロ・ウォリアーの姿はそこには無かった。

「そしてバトルだ! 砂塵の悪霊でダイレクトアタック!」

「《速攻のかかし》を捨ててバトルを無効にする!」

 丸太のような形となった砂を手札から飛び出したかかしが全て防ぎきり、俺には一発も攻撃が届くことはなく、バトルフェイズが終了する。

「やはりあったか。砂塵の悪霊を手札に戻し、ターンを終了する!」

「俺のターン、ドロー!」

 俺のフィールドにも何もないが、三沢のフィールドにもモンスターはおらずリバースカードが一枚だけ。
砂塵の悪霊のスピリット故のデメリット効果によって砂塵の悪霊は手札に戻ってしまったが、墓地の《スリーピー・ビューティー》がある今では、ただ手札へと緊急避難をしたにすぎないように見える。

「魔法カード《貪欲な壺》を発動し、デッキから五枚のモンスターを墓地に戻し、二枚ドロー!」

 汎用ドローカードによって二枚ドローし、今ドローしたカードも併せて次なる手を考え、一枚のカードをデュエルディスクにセットした。

「俺は《レスキュー・ウォリアー》を召喚!」

レスキュー・ウォリアー
ATK1600
DEF1700

 レスキュー隊の格好をした機械戦士が召喚され、そのままがら空きの三沢にポンプを向けた。
三沢自身からフィールドを空けたのだから、あのリバースカードは十中八九こちらの攻撃を防ぐカードだろうが、それでも攻撃をしない訳にはいかないだろう。

「バトル! レスキュー・ウォリアーで三沢にダイレクトアタック!」

「リバースカード、《レインボー・ライフ》を発動する!」

 《ガード・ブロック》やら《攻撃の無力化》だったら良かったものを、手札を一枚捨てて、攻撃力分のライフを回復する罠カード《レインボー・ライフ》。
その効果によってレスキュー・ウォリアーの放った水流は、そのまま三沢のライフポイントへと変換される。

三沢LP1100→2700

「ならばメインフェイズ2、カードを一枚伏せてターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 ライフが回復されることは想定外だったが、このターンの三沢への攻撃は防がれることは前提なのだ、いつまでも後悔してはいられない。

「もちろん俺は、《砂塵の悪霊》を召喚!」

 砂塵の悪霊が召喚されると共に再び砂が舞い上がるが、その召喚を俺は止める術は持ち合わせていない。

「砂塵の悪霊の効果により……」

「《エフェクト・ヴェーラー》を発動!」

 先程のターンで赤鬼の効果を無効にしたエフェクト・ヴェーラーが、再び手札から飛びだして砂塵の悪霊を包み込み、その砂を操る効果のほとんどを奪った。

「もう使ったからって油断してたか? 《貪欲な壺》で回収させてもらった」

「くっ……ならば砂塵の悪霊でレスキュー・ウォリアーに攻撃!」

 エフェクト・ヴェーラーがその効果を奪ったとはいえ、その砂を操る能力を全ては奪えず、砂の弾丸をレスキュー・ウォリアーに発射して来た。

「リバースカード《攻撃の無力化》を発動!」

 もはや効果を説明するまでもない罠カードに、砂塵の弾丸はそのまま時空の穴に吸い込まれた。

「……カードを一枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 砂塵の悪霊は、《エフェクト・ヴェーラー》に効果を無効にされたせいで手札に帰還できず、そのままフィールドに残って砂を舞い上がらせ続けていく。

「俺は《ロード・シンクロン》を召喚!」

ロード・シンクロン
ATK1600
DEF800

 金色のロードローラーを模したチューナーモンスターが召喚され、レスキュー・ウォリアーを包み込む光の輪となるべく、その車輪を限界まで回し始める。

「レベル4の《レスキュー・ウォリアー》に、自身の効果でレベル2となった《ロード・シンクロン》をチューニング!」

 ロード・シンクロンの車輪が限界以上の速度で回転すると、その身体が光の輪となってレスキュー・ウォリアーを包み込んでいった。

「集いし事象から、重力の闘士が推参する。光差す道となれ! シンクロ召喚! 《グラヴィティ・ウォリアー》!」

グラヴィティ・ウォリアー
ATK2100
DEF400

 シンクロ召喚されて空中から出現し、大地に伏すようにして重力の闘士《グラヴィティ・ウォリアー》が着地した。

「グラヴィティ・ウォリアーは、お前のフィールドのモンスターの数×300ポイント攻撃力がアップする! パワー・グラヴィテーション!」

 三沢のフィールドには《砂塵の悪霊》が一体しかいないため、攻撃力は僅かに300ポイントでしか無いが、砂塵の悪霊を破壊するにはこれで充分だ。

「バトル! グラヴィティ・ウォリアーで砂塵の悪霊を攻撃! グランド・クロス!」

 グラヴィティ・ウォリアーが重力を増した鋼鉄の爪を砂塵の悪霊へと振り下ろし、その身体を引き裂いて砂塵の悪霊を破壊した。

三沢LP2700→2500

 三沢のライフポイントへは大したダメージはないが、特殊召喚が出来ないスピリットなのだから、手札に戻されない限りはもう再利用は不可能だ。

「ターンエンドだ!」

「俺のターン、ドロー!」

 だが《砂塵の悪霊》は三沢の【妖怪】デッキにおいて、まだまだ序の口というべきか、切り札とも言える存在ではない。

「俺はリバースカード《もののけの巣くう祠》を発動し、墓地の《カラス天狗》を蘇生する!」

 自分のフィールド場にモンスターがいない時、墓地からアンデット族モンスターを完全蘇生する罠によって蘇生されるのは、相も変わらず三沢の主力モンスター《カラス天狗》。

「墓地から蘇った時、相手モンスターを破壊する! 悪霊退治!」

 カラス天狗が振りかざした扇はグラヴィティ・ウォリアーを破壊し、俺のフィールドを空にしてみせる。

「更に《牛頭鬼》を召喚し、効果発動! デッキからアンデット族モンスターを墓地に送る」

 俺のフィールドに残る一枚のリバースカードならば、カラス天狗の攻撃を防ぐことは出来たものの、更に召喚された牛頭鬼には顔をしかめるしか無かった。

「バトル! カラス天狗でダイレクトアタック!」

「くっ……」

遊矢LP4000→2600

 俺のモンスターを何体も葬ってきたその扇で、身体を切り裂かれて初のライフポイントへのダメージを受けた。

「続いて牛頭鬼で攻撃!」

「そっちは通さない! 《ガード・ブロック》を発動し、戦闘ダメージを0にする!」

 しかし、牛頭鬼の巨大な鎚による攻撃は伏せてあった《ガード・ブロック》により防御し、更にカードを一枚ドローする。

「ターンを終了する!」

「俺のターン、ドロー!」

 戦闘ダメージは受けだが、この程度ならば気にすることなど全くある筈がない。
どちらかといえば問題は、三沢のフィールドにいる妖怪たちの方で、牛頭鬼もカラス天狗も厄介なことこの上ない。

「俺は《スピード・ウォリアー》を召喚!」

『トアアアアッ!』

 《死力のタッグ・チェンジ》によって特殊召喚されたのとは、また別のスピード・ウォリアーが召喚され、その手には徐々に二本の剣が浮かび上がってきた。

「装備魔法《ダブル・バスターソード》を発動! 装備した戦士族モンスターに、二回攻撃と貫通ダメージを付加する!」

 代償として、エンドフェイズ時には装備したモンスターは破壊されてしまうものの、そのデメリット効果を補って余りあるメリット効果。

「バトルフェイズ、スピード・ウォリアーはその攻撃力を倍にする! カラス天狗に攻撃だ、ソニック・エッジ!」

 スピード・ウォリアーがその攻撃力を効果によって倍にまで上昇させ、普段の回し蹴りではなく右手に持ったバスターソードにて、カラス天狗を一閃のもとに切り裂いた。

三沢LP2500→2100

「更に《牛頭鬼》に攻撃! ダブル・ソニック・エッジ!」

 カラス天狗を切り裂いた足でそのまま牛頭鬼に向かっていき、牛頭鬼が返り討ちにしようと振り上げたその鎚ごと、牛頭鬼を一刀両断にした。

「いきなり二体とも倒すか……!」

三沢LP2100→2000

 カラス天狗と牛頭鬼をその二刀で斬り伏せたものの、スピード・ウォリアーはそれでもう力尽きてしまい、倒れて破壊されてしまった。
ダブル・バスターソードを装備したモンスターは、バトルフェイズ終了後に破壊されてしまうのだから。

 心の中でマイフェイバリットカードにお礼を言うと、スピード・ウォリアーのカードを墓地へと送り、代わりにカードを一枚デュエルディスクに入れた。

「俺はカードを二枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 これで俺のフィールドにはリバースカードが二枚だけで、ライフポイントは残り2600ポイント。
対する三沢のフィールドには何もなく、ライフポイントも2000ポイントと俺より少ない。

 三沢の方が劣勢のように見えるかもしれないが、この程度で終わるようなデュエリストが、アカデミアのナンバーワンになる訳がない。

「俺は通常魔法《光の援軍》を発動! 俺はデッキからカードを三枚墓地に送り、《ライトロード・マジシャン ライラ》を手札に加える!」

 手札交換と墓地肥やしを兼ねるシリーズ、ライトロードのサポートカードが発動し、《ライトロード・マジシャン ライラ》というカードが手札に加えられる。

「更にデッキから墓地に送られた《ライトロード・ビースト ウォルフ》の効果を発動! このカードがデッキから墓地に送られた時、墓地からこのカードを特殊召喚する! 蘇れ、《ライトロード・ビースト ウォルフ》!」

ライトロード・ビースト ウォルフ
ATK2100
DEF300

「なっ……!?」

 不意打ち気味に特殊召喚された《サイバー・ドラゴン》クラスのモンスターに、ついつい驚いた声を出してしまうが、それよりも怖いのは《光の援軍》によって手札に来たライトロードの方だ。

「そして《ライトロード・マジシャン ライラ》を召喚する!」

ライトロード・マジシャン ライラ
ATK1700
DEF200

 援軍に来て早速召喚されるライラ……確かジェネックスの時に、オベリスク・ブルーの友人である取巻が使っていたカード。
その効果は、自身を表側守備表示にすることで相手のリバースカードを破壊する効果……!

「そのリバースカード、破壊させてもらうぞ! ライラの効果を発動し、右のリバースカードを破壊する!」

「ならばチェーンして《シンクロコール》を発動! 墓地のモンスター同士でシンクロ召喚する!」

 俺と三沢の前に墓地から半透明ながらも一時蘇ったのは、パワー・ツール・ドラゴンとエフェクト・ヴェーラー、二体のラッキーカード達がチューニングの態勢に入った。

「集いし命の奔流が、絆の奇跡を照らしだす。光差す道となれ! シンクロ召喚! 現れろ、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

ライフ・ストリーム・ドラゴン
ATK2900
DEF2400

 パワー・ツール・ドラゴンを炎が包み込み、エフェクト・ヴェーラーも手伝ってその装甲版が外れていき、神話の竜が姿を現し飛翔する。

「ライフ・ストリーム・ドラゴンがシンクロ召喚に成功した時、俺のライフを4000に出来る! ゲイン・ウィータ!」

遊矢LP2600→4000

 そのドラゴンが放つ光を浴びてライフポイントが初期ライフへと回復し、ライフ・ストリーム・ドラゴンは三沢のフィールドにいるライトロード達の攻撃力を大幅に超え、このフィールドを制圧する。

「ライフ・ストリーム・ドラゴン……ライラの効果でデッキからカードを三枚墓地に送り、ターンを終了する」

「俺のターン、ドロー!」

 ライフ・ストリーム・ドラゴンがシンクロ召喚されたことで、ライトロード・ビースト ウォルフは攻撃出来ず、しかも特殊召喚したターンなのでそのままの表示形式。
ならばそこを狙わない手はなく、ライフ・ストリーム・ドラゴンの標的は決まった。

「バトル! ライフ・ストリーム・ドラゴンで、ライトロード・ビースト ウォルフに攻撃! ライフ・イズ・ビューティーホール!」

「墓地から《タスケルトン》を除外し、バトルを無効にする!」
 ライフ・ストリーム・ドラゴンの光弾はウォルフに届くことはなく、《馬頭鬼》か《光の援軍》かどっちかは知らないが送られていた、《タスケルトン》によって防がれてしまう。

「……ふう。君に《ネクロ・ガードナー》系統を使うと心臓に悪いな」

 俺がバトルフェイズからエンドフェイズに行ったことを、三沢はデュエルディスクで確認したらしく、少々安心したように息を吐いた。

「残念ながら、《ダブル・アップ・チャンス》は品切れだ。このままターンエンド」

「それは良かった。俺のターン、ドロー!」

 だが俺の手札に《ダブル・アップ・チャンス》が無くとも、三沢の今フィールドにいるライトロードたちでは、ライフ・ストリーム・ドラゴンに適わないのは確かだ。
二体のモンスターが並んでいるという点では不安だが、ライトロードはアンデット族モンスターではないので、三沢の切り札が降臨する心配は無い。

「ならばライトロード・ビースト ウォルフに装備魔法《団結の力》を発動! 俺のフィールドにモンスターは二体、よって攻撃力は1600ポイントアップ!」

 俺がいつだかトレードして斎王戦の時に危機を救ってくれたカードであるが、今回のデュエルでは三沢に力を貸している……本当に、何があるか解らないものだ。

「バトル! ウォルフでライフ・ストリーム・ドラゴンに攻撃!」

「ライフ・ストリーム・ドラゴンの効果を発動! 墓地の装備魔法《ダブル・バスターソード》を除外し、破壊を無効にする!」

 墓地の装備魔法カードを除外することで、破壊を免れる効果を使ってライフ・ストリーム・ドラゴンはフィールドへと残る。
だが当然ながら、その効果ではダメージまでは防げないが。

遊矢LP4000→3200

「カードを一枚伏せ、ライフの効果で三枚墓地に送りターンエンドだ」

「俺のターン、ドロー!」

 《団結の力》のような、単純に攻撃力を上げる装備魔法カードを期待していたのだが、そうそう上手くはいかないようだ。

「俺は装備魔法《サイクロン・ウィング》をライフ・ストリーム・ドラゴンに装備!」

 攻撃宣言を行った時に相手の魔法・罠カードを破壊する装備魔法、《サイクロン・ウィング》がライフ・ストリーム・ドラゴンに装備される。

「バトル! ライフ・ストリーム・ドラゴンでライラに攻撃! ライフ・イズ・ビューティーホール!」

 ライフ・ストリーム・ドラゴンの背中についた機械の翼が轟き、攻撃目標はウォルフではなく、厄介な効果を持ったライラの方だ。
そして攻撃宣言とともに背中の《サイクロン・ウィング》が起動し、ウォルフに装備されている団結の力を破壊し、ライラを光弾が貫いた。

 これで次なるターンにウォルフに攻撃されることはなく、ライラで俺のフィールドにあるリバースカードを破壊されることはない。

「ターンエンド」

 これで三沢のフィールドにはウォルフとリバースカードが一枚で、俺のフィールドには《サイクロン・ウィング》を装備した《ライフ・ストリーム・ドラゴン》とリバースカードが一枚。

「俺は速攻魔法《手札断殺》を発動し、二枚捨てて二枚ドロー! ……《酒呑童子》を召喚!」

酒呑童子
ATK1500
DEF800

 俺も愛用している速攻魔法《手札断殺》によって手札を交換した後に、妖怪達を除外することで一枚ドロー出来る妖怪、《酒呑童子》が召喚される。

「そして、酒呑童子の効果で墓地のアンデット族モンスターを除外し一枚ドロー! 更に墓地の《馬頭鬼》を除外して《陰魔羅鬼》を特殊召喚!」

 《酒呑童子》で一枚ドローした後に、墓地から特殊召喚された時に一枚ドローする妖怪《陰魔羅鬼》の登場し、俺は急速に嫌な気配が漂って来ることを感じた。

 下級アンデット族モンスターが二体、そのどちらもライフ・ストリーム・ドラゴンには適わない……これは、三沢の切り札が召喚される……!

「行くぞ遊矢! 妖怪が二体いることで《火車》は特殊召喚出来る! 招来せよ、火車!」

火車
ATK?
DEF0

 妖怪達をその身に宿して移動する巨大な妖怪、火炎車という異名を持った三沢の切り札が炎を纏いながら登場し、その冥界へと通じる入り口を開けた。

「火車が特殊召喚された時、全てのモンスターをデッキに戻す! 冥界入口!」

 火車の冥界へと通じる入口に吸い込まれ、破壊耐性を持っているライフ・ストリーム・ドラゴンだろうと、デッキに戻されては何の抵抗も出来はしない。

「悪いが墓地には送らせてもらう! リバースカード《神秘の中華鍋》を発動し、ライフ・ストリーム・ドラゴンを墓地に送り、攻撃力分ライフを回復する!」

遊矢LP3200→6100

 だがそれもライフ・ストリーム・ドラゴンの効果では、対抗出来ないという話だ、他のカードの力を借りれば墓地に送るぐらいは何とかなる。

「火車の攻撃力はデッキに戻した妖怪×1000ポイント……よって攻撃力は2000ポイント! 火車で遊矢にダイレクトアタックだ!」

「ぐあっ……」

遊矢LP6100→4100

 対抗策は無くダイレクトアタックを受けてしまうが、《神秘の中華鍋》のおかげで未だに初期ライフは盤石だった。

「これでターンエンドだ!」

「俺のターン、ドロー!」

 ライフ・ストリーム・ドラゴンをデッキに戻すのを妨害した理由、三沢も解っているだろうが、その魔法カードは既にこの手の中にある……!

「魔法カード《ミラクルシンクロフュージョン》! 墓地のライフ・ストリーム・ドラゴン、スピード・ウォリアー、お前たちの力を一つに! 融合召喚、《波動竜騎士 ドラゴエクティス》!」

波動竜騎士 ドラゴエクティス
ATK3200
DEF2400

 マイフェイバリットカードとライフ・ストリーム・ドラゴンの力が一つとなり、融合召喚されて舞い降りる紫色の竜騎士。
その翼で飛翔しながら槍を振りかざすその姿は、相手の火車の姿もあいまって、妖怪を倒す勇者のように感じられる。

「バトル! ドラゴエクティスで火車に攻撃! スパイラル・ジャベリン!」

「つっ……」

三沢LP2000→800

 今回の火車自体の攻撃力が高くないのも手伝って、ドラゴエクティスが投げた槍に火車は木っ端微塵に破壊されていた。

「よし! カードを一枚伏せてターンエンドだ!」

「俺のターン、ドロー! 《貪欲な壺》を発動して二枚ドロー!」

 汎用ドローカードを使用してドローする枚数を増やすと、三沢はドローしたカードではなく、自身の墓地へと視線を向けた。

「俺は墓地にいるモンスター《ゾンビキャリア》の効果を発動! 手札を一枚デッキの一番上に置くことで、このカードを特殊召喚する! 蘇れ、チューナーモンスター《ゾンビキャリア》!」

ゾンビキャリア
ATK400
DEF200

「チューナーモンスターだと!?」

 墓地からコスト一枚で特殊召喚というのも驚いたが、それ以上に驚いたのは三沢の言った『チューナーモンスター』という点。
まさかここに来て、三沢はシンクロ召喚という、新たな力を使い始めたというのか……!

「シンクロ召喚か……!」

「遊矢。チューナーモンスターの使い方はシンクロ召喚だけじゃない。魔法カード《ミニマム・ガッツ》の効果を発動! ゾンビキャリアをリリースし、ドラゴエクティスの攻撃力を0にする!」

 あっさりとゾンビキャリアは、ドラゴエクティスの攻撃力を0にする為に《ミニマム・ガッツ》のコストにされた……どうやら、三沢はその特殊召喚効果に目を付けただけのようだ。

 いや、そんなのん気にゾンビキャリアのことを考えている場合ではなく、《ミニマム・ガッツ》の効果によってドラゴエクティスの攻撃力は0……!

「そして《聖者の書-禁断の呪術》を発動し、お前の墓地の《シールド・ウォリアー》を除外して、閻魔の使者《赤鬼》を特殊召喚する!」

 そしてこんな絶妙に最悪のタイミングで赤鬼が特殊召喚され、墓地に残していた《シールド・ウォリアー》も除外されてしまう。

「バトル! 赤鬼でドラゴエクティスに攻撃! 鬼火!」

 赤鬼からこれまでにないぐらいの火力の炎がドラゴエクティスに吐かれ、ドラゴエクティスの全身に炎が回るとそのまま竜騎士は崩れ落ちた。

「ドラゴエクティス……リバースカード《ダメージ・ダイエット》! 全てのダメージを半分にする!」

 ドラゴエクティスに対して祈りを捧げるよりも早く、まずはリバースカードの発動を優先すると、薄い半透明のバリアが俺を覆った。

遊矢LP4100→2700

 俺のデッキのモンスターで最強を誇るドラゴエクティスは破壊され、しかも《ミニマム・ガッツ》の恐ろしいところはこれからだ。

「《ミニマム・ガッツ》が適用されたモンスターが破壊された時、そのモンスターの攻撃力分のダメージを与える!」

「ぐあああっ……!」

遊矢LP2700→1100

 《ダメージ・ダイエット》によって半透明のバリアが張られているとはいえ、それでもまだ痛いダメージが俺を襲い、ライフポイントを危険域まで落としていく。

「カードを二枚伏せ、ターンエンド」

「俺のターン、ドロー!」

 三沢のフィールドには閻魔の使者《赤鬼》が一体にリバースカードが二枚、ライフポイントが残り800ポイント。
俺にはフィールドも何もなく、ライフポイントは残り1100。

「……三沢。このターンで決着をつける!」

「確かに、そろそろヘリの発進時間だからな。俺の次のターンで終わらせよう」

 どちらももう今までのターンで余力はなく、残りの力を使いきろうとしているのだ。

「まずは速攻魔法《異次元からの埋葬》を発動し、除外ゾーンから墓地に三枚カードを送る」

 まずは手始めの速攻魔法を使うと、このターンで決着をつけるべく、二枚のカードをデュエルディスクにセットした。

「カードをセットし、魔法カード《ブラスティック・ヴェイン》を発動! セットカードを破壊し、二枚のカードをドローする!」

 一見ただの手札の補強ではあるけれど、むしろこのセットカードの破壊がメインというのは……なに、三沢は俺以上に解っていることだろう。

「破壊したカードは解ってるだろうが《リミッター・ブレイク》! よって墓地から、《スピード・ウォリアー》を特殊召喚する! 現れろ、マイフェイバリットカード!」

『トアアアアッ!』

 マイフェイバリットカードが颯爽と登場すると、その前に突如として暗雲が立ち込み始めた。
そしてその暗雲の中には、三沢のエースカードの主たる、閻魔大王の姿……!

「やはりスピード・ウォリアーを出して来たな、遊矢。リバースカード《閻魔の裁き》! 妖怪を五種類墓地から除外することで、特殊召喚したモンスターを破壊してデッキから《赤鬼》を特殊召喚する!」

 《リミッター・ブレイク》で蘇生されたスピード・ウォリアーは、閻魔大王が発した業火にその身を焼かれてしまい、その後には赤鬼が一体増えているのだった。
マイフェイバリットカードの特殊召喚は止められ、三沢のエースカードが一体増えるという最悪の状況……!

「どうだ遊矢、スピード・ウォリアーの召喚を防がれてしまっては、さしものお前でもどうしようもないだろう?」

「確かにな……だが、スピード・ウォリアーの特殊召喚の方法は山ほどある! 通常魔法《狂った召喚歯車》を発動! 墓地にいる攻撃力1500以下のモンスターと、その同名モンスターを特殊召喚する! 来い、スピード・ウォリアー!」

『トアアアアッ!』

 新たに特殊召喚される三体のスピード・ウォリアーに、今度は閻魔大王様の裁きが来る様子はなく、フィールドに特殊召喚することに成功する。

「くっ、召喚させてしまったか……!」

「スピード・ウォリアーは、俺のデッキの中核だからな。……お前も良く知ってるだろう?」

 さて、スピード・ウォリアーが三体特殊召喚出来たとなれば、こちらの思う通りの行動が出来る。
手札にある装備魔法カードは《団結の力》――特殊召喚した方法こそ違うが、この学園に入学してきた時と同じような状況だと思いだした。

「俺は装備魔法《団結の力》を装備。そして、墓地の《神剣-フェニックスブレード》も効果によりサルベージして装備し、バトル! スピード・ウォリアーで赤鬼に攻撃!」

 俺のフィールドにいるモンスターはスピード・ウォリアーが三体――よって、装備されたスピード・ウォリアーの攻撃力は、《神剣-フェニックスブレード》も入れて3600と、優に赤鬼の攻撃力を超えて三沢のライフポイントを0に出来る。

「終わりだ三沢! ソニック・エッジ!」

「……いや、お前が終わりだ! 速攻魔法《聖水の弊害》を発動!」

 神剣-フェニックスブレードを振り上げて、赤鬼に斬りかかろうとしていたスピード・ウォリアーに聖水がかかると、突如として神剣-フェニックスブレードが破壊された。
いや、神剣-フェニックスブレードではなくスピード・ウォリアーを包んでいた、《団結の力》までもがスピード・ウォリアーから消えている……!

「今発動した速攻魔法《聖水の弊害》は、フィールドのモンスターの攻撃力を全て元に戻し、装備魔法カードを破壊するカード! これにより、スピード・ウォリアーの攻撃力は元々の900!」

 三沢の最後のリバースカード《聖水の弊害》は、まさに起死回生の一手というのに相応しく、今まさに赤鬼に攻撃しようとしているスピード・ウォリアーの攻撃力は僅か900。
今更攻撃をストップするなど出来るはずもなく、赤鬼の反撃を喰らったら俺のライフポイントは0となる。

「反撃だ赤鬼! 鬼火!」

 このデュエル・アカデミアでの最後のデュエルは三沢の勝利に終わり、三沢は勝利とともにこの学園を去ることになる……筈がない!

「手札から速攻魔法《イージーチューニング》を発動! 墓地のチューナーモンスターを除外し、その除外したモンスターの攻撃力分、指定したモンスターの攻撃力をアップする!」

「なに、まだ策があったか……だが、どのチューナーモンスターだろうと赤鬼と俺のライフは突破出来ないぞ、遊矢!」

 確かにチューナーモンスターとは平均すると攻撃力が低く、レベル1のチューナーに至っては攻撃力が0という、この場合問題外の数値だ。
だが俺は、この状況を逆転し得るモンスターを墓地から三沢に見せるため、ひとまず手に持って掲げてみせた。

「俺が除外するのはチューナーモンスター、《ライフ・ストリーム・ドラゴン》!」

 《波動竜騎士 ドラゴエクティス》の融合召喚の為に除外されていた《スピード・ウォリアー》を回収した《異次元からの埋葬》だったが、その時に同時に墓地に送ったカードが、この《ライフ・ストリーム・ドラゴン》。
シンクロモンスターではあるがれっきとしたチューナーモンスターで、チューナーモンスターとしては破格の2900という攻撃力を持ったライフ・ストリーム・ドラゴン。

 つまりスピード・ウォリアーの攻撃力は、3800……!

「ライフ・ストリーム・ドラゴン、とは……やられたな」

「閻魔の使者を蹴散らせ! ソニック・エッジ!」

三沢LP800→0

 ファイナルターンは小さいながらも逆転劇の様相を呈し、スピード・ウォリアーが赤鬼を突破して三沢のライフポイントを0にした。

「よっしゃあ! ……楽しいデュエルだったぜ!」

「……結局最後まで、お前には適わなかったか」

 そう言って心なしか寂しそうにデュエルディスクをしまう三沢に、近づいていって声をかけた。

「だったらちょっと待ってろよ。……お前が一足早く行こうが、俺は絶対に追いつくからな」

 親友は一足先にデュエル・アカデミアから去ってしまうが、いつかは絶対に俺も追いついてみせる……だからその時は、またデュエルしようという約束を。

「これで学園に帰りにくくなったな。……早く来いよ、遊矢」

「心配はいらないさ、三沢」

 最後に一回力強く握手をすると、三沢はそのまま博士が待つヘリコプターへと乗り込み、発進準備が出来ていたヘリコプターはすぐに学園から飛び上がってしまう。

 俺と明日香は、ヘリコプターが見えなくなるまでその場で見送って、しばらく経つと三沢の乗ったヘリコプターは消えていった。

「……行っちゃったわね」

「……ああ」

 俺のことを影で支えてくれた親友はデュエル・アカデミアを離れていき、生徒全員よりひとまず早く自立することとなった。

 三沢、エド、斎王、吹雪さん、亮――デュエルでも人間としてでも、未だに適わないデュエリスト達はたくさんいるのだと、この一年間は特に思い知らされた。

「……強くならなきゃな、明日香を守れるぐらい……」

「何か言った、遊矢?」

 決意表明も限界まで小声で言ったおかげで、隣にいた明日香にも聞こえずに済んだようで、若干照れ隠しの意味も兼ねて校舎へと歩きだした。

「何でもないさ。それより、ジェネックス見に行こうぜ!」

「あっ、ちょっと待ちなさい遊矢!」



―二年生、了― 
 

 
後書き
前書きに書いた通り、二年生編の完結となりました。

こういう時はいつも感無量なわけなのですけれど、色々まだ課題が多くて困っております……

まだまだ未熟な拙作ですが、あの悪名高き(?)異世界編も頑張っていきますので、どうかよろしくお願いします。

感想・アドバイス待っています。 
ページ上へ戻る
ツイートする
 

感想を書く

この話の感想を書きましょう!




 
 
全て感想を見る:感想一覧