ソードアートオンライン VIRUS
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城内部
城の目の前まで来ると、あまりの大きさに唖然とする。しかし、よく考えるとこのようなダンジョンを見るのはかなりあるはずなのだが、この城は雰囲気がどことなくやばそうな感じの空気をまいている。
「ここ、前来たときはこんな感じじゃなくて、どことなく雰囲気が違う」
「そうなのか?でも、ここは初めてみる場所だがこんな雰囲気の場所は少なからず見てきたからそういう感じは分かる」
ゲツガとミナトは城を見上げて互いの感想を述べる。しかし、こんな場所はこっちになかったので少し好奇心がくすぐられる。
「ここに何かあるってのは間違いなさそうだし、入ろうぜ」
「別にいいけど、ゲツガ、私の間合いが少しやりにくいからバトルのときは交互にやるしかないと思うけどそれでもいいか?」
「あ~、確かに鎌は何かと間合いがやりにくいしな。それならどうすっかな……」
ゲツガは考え始める。鎌は間合いが分かりにくいし扱いにくいが使用者が慣れるとやりにくさはなくなるが逆にコンビやタッグなどがやりづらくなる。投剣などの投擲武器のスキルがあれば別だがスキルは持っていない。
「あ、あれがあったな」
ゲツガは思い出したようにウィンドウを開く。そして、ストレージの武器の一覧からあれを選んで取り出した。
「ん、それって弓か?」
「ああ、ミナトの言う通りと見たまんま弓だ」
弓を見たミナトは少し不思議と言った感じでゲツガの手にある弓を見始める。
「珍しいを通り越してありえないな。この世界での飛び道具なんて投剣とかチャクラムとか以外は絶対にないはずだし、エクストラスキルにも存在しなかったはず」
「ああ、これはスキルなんて物はない。お前の言うとおり、俺の世界でも飛び道具はそれぐらいしかなかった。けど、これがあるのは俺が自分で創ったんだよ。簡単に言えばシステム外武器?だな」
「なるほど、スキルもないなら自作か。だけど、よく弓に出来る武器を作れたな。相当な鍛冶職人のプレイヤーに頼んだんだろ?」
「ああ、ちょっと知り合いのマスタースミスにな」
「ふうん」
ミナトはそこまで気にする様子はなかった。
「それで、その弓は飾りじゃないのか?持ってるだけで実際使ったことないとかはないよな?」
「そんなわけないだろ。結構使ってるし、命中率もそこそこある」
「じゃあ試しにやってもらおうかな」
「ちょっと待ってくれ。弓はあるとしても矢がないんだからな。変わりに短槍を使ってるんだがこれは数が限りがあって無駄撃ちはしたくない」
そう言うとミナトは面白くないと言った風に溜め息を吐いた。しかし、本当に無駄撃ちが出来ないのだ。短槍を無駄遣いしては本当に使うべきときに使えなくなる。
「どうせ、この中はダンジョンになってるんだろ?それだったらこの中にいるモンスターのときに使ってやるよ」
「まあ、破壊不可オブジェクトに向けてやるよりもそのほうがいい気もするが、早く見たいからな」
「それだったら早く行こうぜ。この城の中に」
「OK、手っ取り早くクリアしますか」
二人はそう言って、城の入り口へと向かう。と、到着したのはいいが、城とその前を繋ぐ橋が降りていなかった。頑張れば跳んでいける距離かもしれないが、それだとミナトはどうすればいいかわからない。
「ちょうどいいもんをこっちは持ってるじゃん」
ミナトが不意にそう呟いた。一瞬、その意味が分からなかったがすぐに理解する。橋を向こう側で止めているのは鎖だ。その鎖は見た感じでは破壊不能オブジェクトだが、その付け根に至ってはそうではないようだ。
「ああ、確かにちょうどいいな。実力を見せるのにもちょうどいいしな」
ゲツガは二本の短槍を取り出すと片方を地面に刺して片方だけを番える。そして最大まで引き絞ると放つ。短槍は空気を切り裂きながら進んで鎖を繋いでいる付け根の部分に見事に当たった。もう一つの槍も地面から抜くと素早く番え、もう一方の付け根に向かって放つ。それも寸分違わず当たり鎖が消える。
「は~、うまいもんだな」
ミナトは感心したようで声を洩らしていた。
「まあ、ざっとこんなもんよ」
そして支えを失った橋はそのままゲツガ達の方に加速しながら倒れてくる。
「……とにかく離れるか」
「そうだな」
ミナトとゲツガは加速しながら倒れてくる橋に危機感を覚えたのかすぐに離れる。危険域じゃないところまで来ると同時に後ろでものすごい音とともに衝撃と砂埃が発生する。それが徐々に晴れてくるとようやく自分たちの目的の前に橋が出来た。
「少しは後先のことを考えてやるべきだったな……」
「そうだな……」
さすがにあのでかいものが落ちてくることは考えていたがここまではならないと思っていたのだがさすがにそんなことはなく、かなりの衝撃があった。後ろにいるミナトの使い魔たちも顔が真っ青に見える。
「まあ、無事だったんだし中に入ろうぜ」
「そうだな」
二人はそう言って城の中に入った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
城の中に入るとまずエントランスが出迎える。綺麗な装飾がされているが灯りが薄暗いし人がいないためどこかさびしさを感じる。それと思う一つ、不気味な点がある。
臭いだ。
その臭いは鼻を突く、鉄のような臭い。しかし、鉄のような臭いだが若干違う。それは現実で自分達が一度は見たことあるものの臭いだ。
血だ。
「何でこんな臭いがするんだ……」
「まったくだ。正直、きついぜ……」
ゲツガとミナトは顔をしかめる。
「だけど、若干内装が変わってる。前に来た時はこんな感じじゃなかったはずだし、こんな暗さじゃなかった」
「やっぱ、何かあったんだろうな」
そう言ってあたりを警戒する。何人かの気配を感じるし、こちらを確実に見ている。すぐにその相手が出てきた。
「……トランプの兵士か?」
出てきたのはトランプの兵士。全員同じかと思っていたが、それぞれ武器が違う。剣に槍、刀に鎌、いろいろな武器を持った奴らが出てきた。
「ここからがどうやら戦いらしいな」
ゲツガはそう言って短槍を十本ほど取り出すと一本だけとって他全部は地面に突き立てた。ミナトも鎌と鎖を取り出す。
「私も行くか」
そう言うと後ろにいたアリスと他三体の使い魔はある程度ミナトから離れる。
「ゲツガ、一応遠距離からの援後を頼むけど、私が忙しくて近く行けない時に敵が来た時は自分でどうにかしてくれよな」
「問題ないね。俺はどっちかっていうと遠距離武器の弓よりも素手のほうが使えるからな」
「そうか。じゃあ、援護は頼むよ。もちろんあなたたちも」
ミナトはゲツガと使い魔にそう言ってトランプの兵士たちに突っ込んで言った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「はあ!!」
ミナトは持っている大鎌を振るいトランプの兵士【ダイヤのエース】の首を刈り取った。トランプの兵士は最初は何をされたかも分からなかったのか体が動いていたが数秒後、音もなく崩れ落ち、ポリゴン片に変わった。
それと同時に後ろから突撃してくるトランプの兵士【スペードのエース】が見える。素早く鎖を使って体を巻きつけるとそれを力いっぱい横にふるって固まっていたトランプの兵士【クローバ、ハートのエース】にぶち当てた。
そしてその攻撃で倒れた三体のトランプの兵士に向けて鎌を振り下ろす。三体の兵士は首を刈り取られて一瞬でポリゴン片に変わった。そして不意に後ろで何かが飛んでくるのを感じたため振り向きざまに大鎌でそれを弾く。それは投擲用の槍でトランプの兵士の残り五体が一斉に投げようとしている。
しかし、その五体は投げることすら出来なかった。壁側にいるその五体の腕に空気を切り裂いた音とともに短槍が突き刺さっていた。
「ミナトがやるせいで俺の出番とこいつらの出番ないじゃないか」
「悪いけど出番とか関係ないし、そんなに出番が欲しければ自分で作るしかないだろ」
「まあ、そうは思うけど少しは俺たちの出番をまたは見せ場をくれたっていいんじゃないか?」
「まあゲツガはともかく、この子達の出番は作ってあげるぐらいならいい」
「うわ、ひでぇ」
ゲツガはそれを聞いて苦笑するがまだ倒されてない五体のトランプの兵士は短槍を頑張って引っ張り、抜こうとするがまったく抜ける気配がない。
「じゃあ、止めを刺しますかな」
ゲツガはそう言って弓に短槍を五つを同時に番える。縦では全員に当てることは無理なためもちろん横に構えている。そしてゲツガは極限まで引き絞り放った。
再び空気を切り裂く音とともに五体のトランプの兵士の眉間に当たりポリゴン片に変わった。そしてモンスターがいなくなくなったのを確認すると武器をしまう。
「特にここは危険はないけど奥のほうからはまだ何か感じるな……奥に進むか」
「ああ、城の中がこんだけ変わってるんだったらアイテムがあったりするかもしれないしな。それに、ゲツガの言うとおり何か奥に確実にいる」
そう言ってからミナトとゲツガは城の奥に歩き始めた。
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