ソードアート・オンライン〜Another story〜
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SAO編
第22話 第1層攻略
巨体からは考えられない速度で、跳躍する様に接近してくる。相手ステータス
最終ラウンド・ファーストコンタクトは、リュウキの剣がコボルトの王の野太刀を弾く所から始まった。
リュウキが野太刀を弾き上げると、その背後にピッタリと付いていたレイナが素早く反応する。
「スイッチ!!」
「任せてっ!」
リュウキの言葉に間髪いれずにレイナが飛び出し、腹部へとリニアーを撃ち放つ。間違いなく絶好のタイミングでの一撃だった。だった筈なのだが。
「ッッ!! 不味い、また変わった! レイナっ避けろ!!」
普通であれば、敵の攻撃を、スキルを弾くはスキルだ。故に使用後には硬直時間が発生する。……リュウキは、それを殆ど無視する様に動く事が出来る。不正とも言える力だと思えるが、今、このBOSS相手にはそうは言ってられない。
だが、相手の一撃の攻撃があまりにも重く、普段の様に行かなかった様だ。
相手の攻撃も弾く事は出来た。だが、それは甘く、レイナの早い一撃を喰らいつつも、相手が反撃をしてきたのだ。リニアーによる一点集中の突きもまるで意に返さない。
「レイッ!!!」
そんなレイナを見たアスナが飛び出し、そして横から抱きかかえるように、レイナを庇った。レイナがいた場所に武器が振り下ろされるが、床面に大きな傷を作るだけに留まった。
アスナの咄嗟の判断が功を成し、レイナに直撃する事を避ける事が出来たのだ。
「アスナッ!」
キリトの視点からでは、避けられたかどうかが判らなかった。だが、直ぐに大丈夫だと判断した。2人はしっかりと立っているからだ。アスナとレイナ両名ともダメージは無かったが、防具の1つ、延長上にあるフードが完全に壊れ、素顔に晒された。
アスナとレイナ。
彼女達は、やはり姉妹だった。……それが一目で判る容姿だったからだ。
目や鼻。口など、僅かには違いがあるかもしれないが……それも判らぬ程に似ている。鮮やかなで透き通るような栗色の髪。違うのは髪の長さのみであり、さながら双子のようだった。
そして、キリトが攻撃を受け止めてくれている間に。
「「せやあああ!!!」」
2人の細剣スキル《リニアー》がコボルトの王の胸部を貫いた。その剣先は見る事が出来ずまるで閃光の様な一閃だった。
「ガアアアアアアアア!!!」
だが、コボルトの王は、直撃したと言うのに、殆どHPは減っていない。……呻き声を上げるが、大して衝撃も無いらしく、遅延も発生しない。故にすぐさま反撃が返ってきた!
『逃げ切れない!!』
レイナはそう悟った。そして、相手が狙っているのは自分ではなく、自分の最愛の姉にその凶刃を向けられていたのだ。ディアベルの命を奪った一撃が姉に向けられているのだと言う事も判った。
「……お姉ちゃん!!」
――今度は……今度は……!!
レイナはアスナの前に立った。同じくスキルを使用し 硬直時間が発生しているのにも関わらず、レイナはアスナより、相手よりも早く動けていたのだ。
「なっ!!」
アスナは目を見開いた。妹が、自分を庇おうとしてるのが判ったから。驚き目を見開いた。
――……レイナの想いは一つ。
あの時は、姉に助けられた。だからこそ今度は。
――……今度は私の番だから、お姉ちゃん。
その巨大な野太刀が、……彼の命を奪った凶刃が妹に襲いかかる。それを見たアスナは、半狂乱に成りかねなかった。瞬きすら許されない刹那の時間だったが、確かに叫ぶ事が出来た。
『妹を、助けて』
と。
その、瞬間だった。
人を斬りつける音じゃない。凄まじい金属音がしたかと思えば、コボルトの王の野太刀が跳ね上がったのだ。まるで、鋼鉄の盾か何かに弾かれたかの様に。
「おい」
低く重い声が同時に発せられる。
アスナの前に、レイナが。……そして、レイナに凶刃が振り下ろされる寸前に、止めたのは、弾いたのは彼だった。
「……オレのパートナーに、何してくれてるんだ」
凶刃からレイナを守ったのは、リュウキの一閃だった。
そして、リュウキにもレイナ達同様にフードが無くなっていた。これまでの激闘の最中で、最も耐久値が少なく 大した役割も持っていないフード。故に耐久値が無くなり、布製だと言うのに青い硝子片となって、砕け散っていたのだ。
その鮮やかな銀髪が泳いでいた。
アスナやレイナ達の様な栗色の髪にも負けていないかの様な鮮やかさがそこにはあった。
「グルルル…………」
リュウキに弾かれたその時、コボルトの王は、追撃の構えを取る訳でもなく、ただ弾かれた剣を見ていた。何かを気にするかの様な素振りだ。
「………なんだ??」
キリトはその行動の意味が判らない。全てのモンスターはアルゴリズムで動く。故に大体は決められたパターンで動いている。度々にリュウキが《変わった》と叫ぶのは、恐らくそのパターンが変化した、これから変化する事をさしているのだろう。
何故、そんな事が判るのかは判らない。予備動作を見て判断するならまだしも、見切るのが早すぎるのだ。
だが、今はそれについては構わない。頼りになるからだ。今、重要なのは、あの暴れている王が何故、おとなしくなってしまったのか、なぜ、そんな行動するのか、だ。
「キリト。あの野太刀を弾くする時、……後少し、10cmほど根元にずらせ。もう少しだ」
考えを張り巡らせていたキリトを、戻したのはリュウキは短い説明だった。相手ももうおとなしくはしておらず、次の攻撃の構えを取っていた。
「レイナとアスナは、胸部は胸部でもあのポイントより、まだ若干下だ! アイツの腹、あの模様のど真ん中を狙え! 行くぞ!!」
キリトは勿論、指示を受けたアスナとレイナも、なぜその場所を? 攻撃なんて、防具部分以外だったら、何処をしても同じじゃないのか? と聞こうとしたが。そんな暇は無かった。
相手はもう既に始動しているから。
「わかった!」
「ええ!!」
「うん!!」
3者、全員が頷きながらリュウキに続いた。その巨体がリュウキに迫る。
「……そのパターンは視えてるぞ!」
リュウキは繰り出す斬撃を掻い潜り、丁度下側から、斬り上げを放つ様にスキルを発動。先ほどキリトに説明した野太刀の部分を切りつける。
けたましい金属音が響き渡り、野太刀を弾く事に成功した。
「グルッ!!」
「今だ!! キリト!」
リュウキはキリトに向かい叫んだ。
「任せろッ!!」
その声に反応したキリトは、先ほどリュウキに言われた野太刀の位置。実演もしてくれている部分を正確に斬りつけた。敵の身体に攻撃を当てても良かったのだが、あまりにも体勢を整えるのが早すぎる故に、2度の衝撃を武器に与え、攻撃は彼女達に任せたのだ。
野太刀に直撃した、キリトの一撃で野太刀に僅かながら ひびが入る。
「せいっ!!!」
「やあっ!!!」
更に野太刀を吹き飛ばされてしまい、2人のリニアーを回避する事が出来ないコボルトの王は、まともに胸部付近にある模様のようなものの真ん中を2本の細剣で貫かれてしまった。
「ギュアアアアア!!!」
コボルトの王は、これまでに無い叫びを上げた。叫び、と言うより悲鳴に近いだろう。明らかに苦しんでいる。
「よし……! なッ!!」
リュウキはまた目を見開く。また、変わったのだ。
コボルトの王は、苦しみながらも己の武器である野太刀を素早く左手に持ち替る。
そして、読めなかったのは次の行動だ。 空いた右手をぎゅぅと握り絞り、拳を作ると ボクサーのボディブローいや、ボディアッパーを打つかのようにリュウキの腹部に狙いをつけていた。そして撃ち放たれるのは、まさに一瞬。
その人間を軽く握りつぶせそうな大きさの拳が、リュウキの腹部を穿った。その衝撃が突き抜け、リュウキの身体は九の字に折れる。
「な、ぐっ……!! があっ……!!!」
衝撃を受け流す様な事もできず、防御体制にも取れず、吹き飛ぶリュウキ。それに巻き込まれる形で、キリトも共に吹き飛んだ。
数m吹き飛ばされ、今接近出来ているのは、アスナとレイナの2人だけだった。
「リュウキ君!!!」
「ッ!!!」
レイナは、攻撃されたリュウキを見て、駆け出した。アスナも同様だった。思い返すのはディアベルの事。吹き飛ばされた彼は……あのまま、物言わぬ姿に変えられてしまったから。
「グルルルル……!」
コボルトの王は、決して待ってくれない。それなりに行動制限があるスキルだったのか、或いは、アスナとレイナの攻撃が答えたのか、……若しくは、ただの余裕なのか。判らないが、これまでよりもゆっくりと近づいてきた。
そして、野太刀を高く振り上げる。
「くっ!」
「させないっ!!」
レイナとアスナは細剣を重ね、受け止めようとした。あの武器は受け止める様な武器じゃない。先端が細く、研ぎ澄まされた剣。一点攻撃に優れているものであって、受け止める様な事は難しい。それでも、避けたり、逃げたりはしない。レイナは特にだ。
――……だって 言って、くれたから。
渾身の力を込め、受け止めようとしたその時だ。
「うおおおおおおッ らあぁぁぁっ!!!!」
雄叫びと共に、突然巨体が横切り、コボルトの王の野太刀をかち上げた。野太刀にも負けない迫力で放たれるのは、大斧。
「これ以上ダメージディーラーに壁役をやらせられるか! いってやれ! B隊! HPがグリーンのヤツは来い!」
2人の前に、入ってきたのはエギルという名のプレイヤーだ。そしてエギル声に反応し、B隊が飛び掛る
「すまない……」
「ありがとう」
リュウキとキリトは、エギルが入ってくれた事にもちろん気づいていた。そして。
「レイっ!」
「うんっ!」
アスナとレイナの2人は、すかさず アイテムストレージから、ポーションをオブジェクト化した。それをまるで、細剣の様に構えると、閃光の速度で、更に正確に レイナはリュウキの、アスナはキリトの口に思い切り、刺し込む様に突っ込んだ
「むぐっ!!」
「ぐむっっ!!」
2人は思わずむせてしまった。強引に喉を通るポーション独特の味。お茶にオレンジを交ぜたかの様な風味が口の中に広がる。
「し、しっかり! リュウキ君っ!」
レイナは心配をしていた。でもリュウキは軽く手を叩く。
「大丈夫だ。ありがとう」
その言葉を訊いて、そして彼のHPが回復して言っているのを見て、安心した。
「ちょ……ちょっと 驚いたが」
「贅沢言わない。……危なかったんだから」
「あ、ああ。ありがとな」
キリトも、驚いていたのだが、回復してくれたのは事実だから、礼を言っていた。キリトはただの余波を受けて吹き飛んだだけだったから、そこまでHPは減少していなかった。だから、体勢を整え直すと、直ぐにリュウキの元へと寄った。片手には ポーションを持っている。
レイナの後に、今度はキリトが無理矢理口に突っ込んだ。
「んぐっ!? おいキリト、自分の回復をしろよ」
「馬鹿言え、あの一撃は下手をしたら致命傷だったぞ! HPを誰よりも減らしてる癖に馬鹿を言うんじゃない」
キリトはそう答えると、自身の剣を持ち直した。
まだ休んでいられるような状況じゃないからだ。あの相手には一対多数のスキルを持ち合わせているのだから。
「駄目だッ! アイツを囲むな!!」
キリトの叫び響く!あの刀スキルの中には、周囲を囲う敵を一掃するスキル≪旋車≫があるからだ。
360°の重範囲攻撃。
相手の予備動作から、それを狙うのが見えた。
「レイナ、キリト。回復すまない。 アスナもありがとう。……行くぞ!!」
リュウキはそれを見て、素早く立ち上がった!
「ああ!!」
キリトもリュウキと共に向かった!
「さっき言った場所はあの武器の急所だ! ソードスキルを当てる! 行くぞ!」
「ああ!!!」
2人の剣が交差する。
「「とどけええええええ!!!!!」」
2人の息を合わせるように、ソードスキル《バーチカル・アーク》を放った。
正確に放たれるソードスキルはコボルトの王の野太刀に当たる。丁度、重範囲の攻撃をしようとした事もあり、カウンター気味に直撃したキリトとリュウキの剣。
何より、リュウキが視た武器の位置は武器の急所だ。
その場所に当たったと同時にそれは起こった。
通常なら滅多に起こりえない、極稀とされる現象が起きる。
それがフロアBOSS相手ならほぼ不可能だと言える現象。
巨大なBOSSの野太刀がキリトとリュウキが攻撃を当てた、根本から野太刀がへし折れ 硝子片となって砕け散ったのだ。
「……よし」
「な……! マジか。アレが折れるとは思ってなかった」
リュウキは、狙いが完璧に嵌り敵の武器を無力化できた事の結果を見て軽く拳を握り締めていた。キリトの方は、まさか武器が、それもあの巨大な野太刀が折れるとは思ってなかったようで、驚いていた。
「凄い……」
「うん……」
アスナとレイナの2人も驚いていた。そして、それと同時にリュウキが指示した意味が判った様だ。彼は、見切ったらしいのだ、この短い攻防の間にだ。息を合わせたスキルの交差も凄いと思ったが。
……まだ終わりではない。
「アイツには、エクストラスキルの《体術》もある! 気を抜くな!」
リュウキはキリトにそう言うと、素早く構えた!
「ッ、ああ!!」
キリトも考えるのは止めて、同様に構えた。
「キリト! レイナ! アスナ! 最後は一緒に頼む!!」
リュウキは、走りながら叫ぶ。
「わかった!」
「了解!」
「任せて!」」
それぞれ、力を武器に込める。それは、ただのシステムアシストに過ぎないのかもしれない。だが、自身の持つ力の全てを込める事が無意味だと言うのはこの時、誰一人として思わなかった。
そして最早、武器を持たず、攻撃を防ぐことの叶わない裸の王の身体を斬りつけた。
「まだまだぁぁ!!!」
「せいっ!!!」
「やあっ!!!」
レイナとアスナのの突き、そして、キリトとリュウキの切り裂き。BOSSのHPゲージがドンドン減っていく。
「これは、さっきの礼だ。受け取れ!」
リュウキはBOSSの身体を切り上げた、その巨体が天井高くまで弾き飛ぶ。
「「ああああああああああああ!!!!!!!!」」
リュウキとキリト。
2人は高く飛び上がった。両雄の剣は、コボルトの王の左右の脇腹から切り込み、その太刀筋は 頭部にまで及んだ。丁度剣が、頭に到達したその瞬間。
「ぎゃああああっ!!!」
断末魔の叫び声と共にその身体は光り輝くと。巨体は鮮やかな青い硝子片に変わり、砕け散った。
そして、勝利の演出BGMだろうものが場に鳴り響き。
《Congratulions!!》
その文字が高々と浮かび上がっていた。
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