ソードアートオンライン VIRUS
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ニープスのボス
あの後は一度も戦闘もなく難なく洞窟の前に辿り着くことが出来た。
「ここが洞窟の入り口かー、遠くから見たよりも結構でかいな」
目の前にある洞窟の入り口は遠くから見たらどのくらいかわかりにくかったが近くまで来ると自分の身長の五倍近くある。
「当たり前だろ、遠くから見たんだ。って言うか、ゲツガあの距離から見ても大体の大きさは把握できただろ」
「まあ思ったよりもでかかっただけだからそこら辺は気にすんな」
「それよりもこの中に何かあるの?」
「うーん、特にこのあたりで目立ったものがここしかなかったから来たんだけど、とりあえず入ってみようぜ」
「そうだね。ここまで来たんだし入ってみよう」
メルムがそういいながらすでにメルムは入っていった。
「確かに、もうここまで来たんなら入ったほうがいいだろ。入ろうぜ、ゲツガ」
フブキがそう言ってメルムの後について行く。確かにこんなところにいるのもなんだし入ったほうがいいだろう。特に罠があるわけでもなさそうだしな、そう思い、ゲツガも二人の後を追った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
中に入ると意外にも神秘的な光景が広がっていた。たくさんの大きな氷が天井から吊り下がっていて少しの光が入って七色に光っている。どうやらあれのおかげで洞窟内が明るいらしい。
「わー、何か神秘的な場所だね~」
メルムは上のプリズムのような役割をしている氷を見上げながら言った。確かにこのような場所はSAOの中を探しても少ないだろう。
ゲツガも見いていると上のほうで何かがうごめいているのが見えた。それをなんなのかよく見るために目を細めると大きなムカデのようなものがいた。しかしそれは背景オブジェクトのようなものでHPすら表示されていない。
「こんな綺麗な場所にあんなの似合わねえだろ……」
さすがにこんな神秘的な場所にあんなのがいたら何か嫌だし、普通に台無しになる。フブキもそいつを見た瞬間、溜め息を吐いていた。
「確かにな。でも姉さんはまだあれに気付いてないみたいだし先に進もうぜ」
「そうだな」
「姉さん、そろそろ奥に進もう。もうちょっと行ったらこれ以上にすごいもんとかありそうだし」
「そうね、それに早くこんなところから帰りたいしね」
そう言ってメルムはさらに奥に進む。フブキとゲツガはメルムがあんなものを見なくてよかったと心底安心してから着いていく。
しばらくは氷の神秘的な風景を楽しみながら進んでいるとようやく本番となったのか薄暗い通路の前に着いた。その奥からは異様なほどの力を肌で感じ取ることが出来る。
「たぶんこの奥に目的のボスモンスターがいる……思う」
ゲツガはそう言った。そしてその言葉にメルムは何か引っかかったのか聞いた。
「何でそんなことがわかるの。まあ、そんな感じがするのはわかるけどそれだけじゃ本当にいるかよく分からないじゃない」
「まあそう言ってるものの、姉さんもこの中にボスがいることぐらいはわかってるだろ」
「そうだけど、何か違う感じがするのよね」
「まあなんにせよ、この中に入って見ればわかるだろ」
そう言ってフブキは洞窟に奥に潜っていく。
「たしかにね。それじゃあ、行きましょうか」
「ったく、少しは不安という気持ちとか持とうぜお二人さん」
ゲツガは溜め息を吐きながら二人の後を追った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その奥には先ほどのモンスター、ループス・ニーキャスがたくさんいた。そしてよく見るとその奥にループスニーキャスよりも三倍ほどの大きさを持つ狼が身体を丸めている。
「あいつがボスか」
「どうやらそうみたいだな。名前は……《ループス・ニーキャス・ザ・デモーネム・ラテナス》か……意味は英語じゃないからよく分からん」
「私もそういうのはよく分からないから意味がどうとかは考えたことはないわ」
三人は奥にいるニーキャス・デモーネムを見る。その視線に気付いたのか、ニーキャス・ザ・デモーネムは丸めていた体を起こして三人の方を見る。そして、三人を見た瞬間に、大きな咆哮をあげる。
咆哮は部屋中を木霊してぴりぴりと空気を振るわせる。そしてそれに応じるように周りのニープスたちも鳴きはじめる。
「よっしゃ、こいつらを全滅させるとしますか!」
フブキはそう言って剣を抜いた。その時に若干この空間とは別に寒いものが出てきた気がする。それはフブキから出てきたので聞いた。
「フブキ、さっきも何かおかしなことになってたんだが……それ、お前のスキルのせいか?」
「スキル詮索はマナー違反だぜ、ゲツガ。まあ、でもお前は俺らのとこに関係ないから教えとく。俺のユニークスキル《氷結剣》って言うもんのせいだな」
「氷結剣ね……つまりさっきの戦いの時に出ていたあの氷柱はお前のスキルのせいってことだな?」
「ああ」
「ちょっと二人とも、話してないで早く構えてよ。もう、狼たちが攻めてきたわよ」
そう言って見もせずに撃退するメルム。それを見て苦笑するとゲツガも背中から両手剣を抜いて逆手に持ち返ると近づいてきていた五体のニープスを一撃で屠った。
「すまんすまん、ちょっと気になってたでね。今からはちゃんと戦うって」
「じゃあ、こいつらをとっとと片付けてここから帰るぞ!!」
フブキを先頭に戦いを開始した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
まず、フブキが目の前にいるニープスを剣で弾き飛ばすといきなりニーキャス・ザ・デモーネムに攻撃を開始し始める。
しかし、その周りにいた取り巻きのニープスが壁となってフブキの進行を邪魔する。だが、フブキはその壁をものともせずに薙ぎ倒すとすぐにニーキャス・ザ・デモーネムの前に辿り着く。
「食らいやがれ!!」
叫んで氷結剣重撃スキル《テラエ・フリゴレ》を発動させる。氷がまとわりついた剣を振り下ろす。ニーキャス・ザ・デモーネムは素早く飛びのいてかわすがフブキはそれを予想していたため、このスキルを選んだのだ。叩きつけられた剣の先から岩肌が露出した床、フブキの半径十メートル以内が急に凍った。それに気付いたニーキャス・ザ・デモーネムは近くにいたニープスの数体の群れにたってそのスキルを回避した。
足元にいたニープスは凍った床に接触した部分から凍り始め、やがて体全体が凍りついた。
「あーあ、気付いたのかよ。まあ、こんな物に気付けなくて終わったらボスとして失格だしな」
そう呟きニーキャス・ザ・デモーネムはグルルと唸りながら自分を睨んできている。
しかし、それにまったく怯えることなく、フブキは直剣から短剣へとクイックチェンジで入れ替える。
「まだまだ行くぜぇ!!」
再びフブキはニーキャス・ザ・でもーネムに突っ込む。今度は氷結剣短剣三連撃スキル《アイスメテオ・バレッジ》を使用する。一撃目を斬り上げる。しかし軽がると避けられる。
その後の追撃は腕を一度戻して突く。しかし、それは後方に飛んで避けられる。だが、この短剣スキルはこれで終わりじゃない。
「後ろに飛んだのが過ちだったな、狼!!」
そう言ってフブキは手に持っていた短剣を全力で投げつけた。それを避けようとするが後ろはすでに壁で後ろには飛べない。ニーキャス・ザ・デモーネムは横に飛んで避けた。その直後に短剣は壁に突き刺さった。それを見たフブキは笑みを浮かべて叫ぶ。
「突き穿て!!」
叫ぶと同時に短剣から突き刺さった場所を中心に大きな氷柱が生えてニーキャス・ザ・デモーネムの体を貫いた。
「ぐるおおああああああ!!」
身体に氷が突き刺さったことにより悲鳴を上げるニーキャス・ザ・デモーネム。しかし、その攻撃で怒り状態になり、攻撃を開始する。
「ぐおらあぁぁぁぁ!!」
ニーキャス・ザ・デモーネムはフブキに噛み付こうとする。フブキはそれを軽く避けてからクイックチェンジで武器を直剣に持ち替えて首に向けて振り下ろす。しかし、剣を前足の爪で防いだ。そして、逆の前足で薙ぎ払うように攻撃をしてくる。それをギリギリでかわす。
「そろそろ終わったんだろ?二人ともこいつ早く倒して元の場所に戻ろうぜ」
「そうね。早くゲツガにアイスを作ってもらいたいし」
「メルム、それなんだがこいつ倒したら、俺はそのまま帰るかもしれないから後でアイスの作り方の書かれた紙渡すから料理スキルの高い奴に作ってもらってくれ」
「ちょっとゲツガ!話が違うじゃない!」
「そん時の話だって。まあそうだったらドンマイな」
「二人ともいい加減に戦いに入ろうぜ。早く終わって帰りたい」
「わかったよ。こいつを倒して帰ろうか」
そして最後の一頭となったニーキャス・ザ・デモーネムに三人は一気に突撃を開始した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
メルムとともにニープスを全て屠ったゲツガとメルムはフブキが戦っているニーキャス・ザ・デモーネムとのにらみ合いに参加した。三人は軽い会話をするがニーキャス・ザ・デモーネムからは目を離さない。そして最初に動き始めたのはニーキャス・ザ・デモーネムだった。胸が大きく膨らんだと想うと、口から氷のブレスを吐く。
ゲツガ達はそれを避けると素早く攻撃に移った。まずはメルムが両手剣重撃スキル《バスタードグランド》を使用する。これは相手の大きさが大きければ連続ヒットする回数が上がる、優秀なスキルだ。
「よいしょぉ!!」
メルムはニーキャス・ザ・デモーネムをそのまま叩き斬る。五連撃以上の攻撃を当てることに成功する。それを食らったニーキャス・ザ・デモーネムのHPバーを減らす。しかしそれでも倒すまでの決定的なダメージを食らわせることは出来ない。
「姉さん、次は俺が行く!」
そう叫んだフブキがメルムの硬直時間中の穴埋めのスイッチを行う。フブキは片手剣を取り出し、ニーキャス・ザ・デモーネムを斬りつける。しかし、今度は逆に牙で剣をガードする。フブキはそれを舌打ちすると同時にブレスを吐こうとしている。
「させるかよ!!」
そこにゲツガが下から剣を突き立てて口を無理やり塞いだ。そのことによりブレスが口の中で暴発し口から僅かな氷の粒が吹き出る。ゲツガは剣を放してそのまま地面に降り立つとフブキとメルムに叫ぶ。
「フブキ、メルム、一気にやろうぜ!」
「確かにな!俺もデカイの決めるぜ」
「二人とも何か性格が変わったような気がするよ、まあ私もこんな寒いところにいるのももう耐えられないし、私もやるわ!!」
三人はニーキャス・ザ・デモーネムに向けてそれぞれのスキルを発動する。まずメルムが先に両手剣最上位スキル《カラミティーディザスター》を使用する。ニーキャス・ザ・デモーネムそれを避けようとするが足に何か引っ付いたように動かなかった。足をよく見ると四本の短槍が足を縫い付けていた。これは先ほどメルムとフブキが攻撃している隙にゲツガが全ての足に打ちつけたものである。
「やあああああ!!」
「ぐるああああ!!」
ニーキャス・ザ・デモーネムは動くことが出来ず全ての攻撃を食らう。
「フブキ、ゲツガ!後まだ結構あるけど二人でいける!?」
メルムが硬直時間で動けない状態からゲツガとフブキに向かって叫ぶ。
「問題ないね!」
「このぐらいなら余裕だって!」
フブキとゲツガは問題ないと叫んでからともにニーキャス・ザ・デモーネム突っ込んだ。
フブキは《氷結剣》の片手剣最上位スキル《エターナル・ブラスト》を使用。瞬時に周りの空気が凍りつく。そしてニーキャス・ザ・デモーネム足元も凍りつきに動きを封じる。
フブキは動けないニーキャス・ザ・デモーネムに向けて周りに出現した氷と同時に斬りつける。
「うらぁあああ!!」
「ぐらああああ!!」
その中をゲツガは浮かんでいる氷を跳ねながら移動する。そしてその中で一番長い氷を手に取るとそのままニーキャス・ザ・デモーネムの額に叩きつけるように刺した。その時、フブキの連撃も始まる。
ゲツガも体術で応戦する。そしてフブキが最後の斬り上げるのと同時にゲツガは頭から降りて顎に突き刺してある剣の柄を握った。
「「うおおおおお!!」」
二人は同時に片手剣を斬り上げ、両手剣を振り下ろした。
「ぐるあああああ!!」
ニーキャス・ザ・デモーネムはそれでHPを空にすると、大きな音を立ててポリゴン片に変わっていった。
「うっし、終了」
フブキはそう呟いてガッツポーズをとる。ゲツガもそれにつられてガッツポーズをとる。メルムは両手剣を床に刺して喜んでいた。
「お疲れ様、二人とも」
「ありがとう、ゲツガ。この戦いでお前が結構やることがわかったぜ」
「ああ、俺もフブキの力をしっかりと見れてよかったぜ。それにメルム。お前の両手剣の腕は俺が見た中で結構上位に入る使い手だったぜ」
「そういうゲツガこそ、同じ両手剣使いなのに奇抜な持ち方でそれでもってあの強さを見たのはあなたぐらいよ」
「その台詞はよく言われるな」
ゲツガは頭をかきながら答える。そしてしばらくすると上から一枚の紙がゆっくりと降りてくる。それを掴み確認すると、今までと同じチケットであった。メルムとフブキにもゲツガとは違ったチケットが手に握られていた。
「どうやらここまで見たいらしいな」
「そうだな」
フブキはそう言ってゲツガに言った。
「お前を見たときは怪しい奴だと思ったけど一緒に戦ってるとスゲェやつってことがよくわかった」
「私も、最初は外で飯を作って食ってるどこかの貧乏人と思ったら案外強くていい奴だったわ」
「……何かそういわれると褒められた気がしなねえな……まあ、俺は二人とあえてよかったぜ。色々な戦いが出来たしな。っとそういえば、これじゃあ、メルムにアイス作ってやれねえな……ほれ、これアイスの作り方の書いた紙だ」
そう言って紙をメルムに渡す。メルムはそれを受け取ると言った。
「作ってもらう約束だったけどこれは仕方ないわね。まあ、知り合いに料理スキルの高い人がいるから頼んでみるわ」
「おう。じゃあそろそろ俺行くわ」
「ああ。じゃあな、ゲツガ。お前とはまた会いたいもんだぜ」
「うん。今度はちゃんとアイス作ってよ」
「ああ。これたらな」
そしてゲツガは手にあるチケットを離す。チケットは今度はゲツガの足元に吸い込まれる。ゲツガもその中に沈んでいくように入っていく。
「じゃあな。二人とも」
二人もゲツガと同様にチケットが光って体が少しずつ薄くなっていっている。
「ああ、ゲツガも元気でな」
「あなたも元気でね」
三人はそれぞれの場所に送られた。
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