ソードアートオンライン VIRUS
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氷結剣
前書き
何か待たせてすみません……
視界がまば視界がまばゆい光によって塞がる。三人は眩しすぎるため目を手で覆ったり目を強く瞑った。しばらくして光が収まったと思うと今度は突き刺すような寒さが襲ってきた。ゲツガは素早く目を開けてあたりを見回した。
「どこだここ!!」
そこはあたり一面が銀世界であった。あたりを見渡すと雪、雪、雪だらけだ。しかし、かなり高い木の森の中のため見通しが悪いのが少し厄介だ。
「うわ~、すごい。いきなり周りが銀世界のとこに来ちゃってる……」
メルムもいきなりのことで少し呆然としている。まあ、いきなりこんなところに飛ばされたなら無理もない。自分も結構驚いている。しかしフブキは驚くどころか笑っていた。
「今日は姉さんにいろいろとやられて厄日思ってたけどこんな面白いことがあるなんてな……」
そう呟いていた。まあ、それよりも今の状況を整理しなくてはならないと思いゲツガは考え始める。ここに来たのはたぶんスイッチのようなものが作動して転移をここにやって来た。しかし、ウィンドウには階層すら記されておらず、ここがどこかすらもわからない。つまり、ここはバグかウィルスの作った世界だろう。前者はほぼないとして、ほぼ確実に後者のほうだろう。ここに来る前に飛ばされたリクヤの世界ではどこかウィルスに似た感じのものをアッシュとルークから感じた。
「まあ、考えても仕方ないか……とりあえずここに留まってても何の意味もないしここを移動したほうがいいな」
「なあ、ゲツガ。ここに来たのはお前を帰すために必要な物をゲットするために来た場所なんだよな?だったらモンスターとかいるのか?」
「ああ、ここに来る前に別のところにいてな、そこでさっき見せたチケットをゲットすればお前らももといた場所に帰れるし、俺も俺のもといた場所に帰れる、かも知れない」
「え、なんで最後はそういう感じなの?」
「何でって俺が帰れずにまた別のところに来たからそう言ったんだろ?まあ、フブキとメルムは確実に帰れるけどな」
「ゲツガはどうなるんだ?もし、また帰れずに別の世界に行ったら?」
「そんときはそんときでまたその世界でのクエストクリアをして何度も試すさ」
そう言って、森を抜け出すために適当な方角に歩き出す。
「ねえ、ゲツガどこ行く気なの?」
「どこってココから出るために探索するに決まってんじゃねえか。こんなとこにもたもたとしてたら何か変なことがおこるかも知れねえだろ」
「変なことって?」
「まあそこら辺はわからないけどこんなとこに長くいたら駄目な気がするんだ」
「姉さん、ここはゲツガの言うとおりに動こう。そのほうが俺もいいと思うし」
フブキもゲツガの言ったことに賛成する。メルムは息をふうと吐いた。
「まあ、確かにこんなところで立ち止まってるわけにも行かないしね。じゃあ、何処行くかわかんの?」
「うーん、とりあえず歩き回ってたらどこかに出るだろ。俺のじゃマップ表示されないからな、お前らのは?」
そう言って二人はウィンドウを開く。二人は首を横に振り、自分のウィンドウのマップもちゃんと表示されないと言った。
「これじゃあ、移動しようにも移動しないほうがいいな。移動して迷ったら元もこうもない」
「だからってこんな場所に留まってるのもどうかと思うんでしょ?何か案はないの?」
三人は唸り、考える。ふと、視界が悪いんだったら視界の悪くない上のほうから見ればいいんじゃね?と言う案を思いついた。ゲツガはその案を二人に提案する。
「確かにそれはいい考えだと思うが誰がそんなことするんだよ。俺はそこまで筋力優先じゃないぞ?」
「その案を出したのはゲツガなんだし、ゲツガが筋力値が高いんでしょ?」
「ああ。高いというより完全に筋力一極のパワーファイターだからな」
「なるほど、それなら安心だな。じゃあ見てきてくれよ」
ゲツガは了解と頷くと足に力を入れて木の枝まで一気に跳んだ。そして枝につかまると腕だけで身体を持ち上げて枝に乗ると再び高く飛び上がって枝につかまった。天辺まで登るとバランスをとって、あたりを見渡す。
「うわ……この森自体結構広いな………」
あたりを見回すとあたりはほとんど高い気だけしか見えない。しかし、よく見ると奥のがけのほうに遠くからなので大きさはよく分からないが空洞が見える。
「あそこになんかあるな……」
ゲツガはそれを確認し終えると一気に地上に飛び降りる。地面についた瞬間足をまげて衝撃を吸収するがそれと同時に雪が舞う。
「わっ!」
「っと」
メルムは軽い悲鳴を上げ、フブキは大きく跳んで舞い上がる雪を避ける。
「ちょっとゲツガ!何すんのよ!」
「いやあ、悪い悪い。いちいち一個一個の枝を掴んで降りたらめんどくさいからさ、一気に降りてきたんだわ」
「もう、少しは下にいる人たちのことも考慮してよね」
「了解」
「それよりも上から見て、何かあったか?」
フブキが聞いてくる。
「ああ、あっちのほうに崖があって、そのそこの部分に遠くからだから大きさはどのくらいかわからんが洞窟があった」
「じゃあ、そこが目的の場所なの?」
「いいや、わかんね。とにかく行ってみて中を確認しなきゃよく分からないからな」
「じゃあ、そこに向かいましょう!」
メルムを先頭にその崖のふもとにある洞窟に向かった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
崖の下のどうくに向かう途中にどこに隠れていたかわからないが大量のモンスターに囲まれた。《ループス・ニーキャス》と言う名の狼型のモンスターだ。
「ちょっとやばいんじゃないの?さすがにこの数になるとモンスターハウスと同じじゃない?」
「いや、まだここのほうがマシだろ。モンスターハウスなんて逃げ場のない状態で20~三十体ぐらいの相手とやらなきゃ行けねぇんだから。木の上に逃げられるだけでもいいほうだろう」
メルムの反応にゲツガは返すが少しの気晴らし程度でしかない。現にニーキャスの数はすでに五十は超えている。しかも、その数はまだどんどん増えていっている。さすがにこれで相当の強さがあったら厄介だ。
「別にたいしたことないだろ?ただこういうタイプのモンスターは一体一体の能力が低いから物量戦で来る奴だろうし」
フブキはそう言って背中から直剣を引き抜く。
「どうせだったら経験値稼ぎになるだろうし狩ろうぜ!」
そう言ってフブキはニープスの群れに飛び込んで行ってしまった。
「はあ、フブキは戦闘になると若干テンションと言うか性格が変わるから困るのよね」
メルムもそういいながらも腰に指していた両手剣を引き抜く。ゲツガも背中にある両手剣を引き抜くと逆手に構える。
「仕方ないし俺らも行くか」
そして二人もニープスの群れに飛び込んだ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
フブキは飛び込んで一気に三体のニープスを切り裂いた。ニープスは一撃でポリゴン片に変わった。そしてそれが開戦の合図のようにニープスはフブキに飛び掛ってきた。
「さあ、どんどん来い!俺がお前らを全滅させてやる!!」
そう叫ぶと同時に氷の剣士と呼ばれる由来のスキル、《氷結剣》を発動させる。発動するとHPバーの下にもう一つバーが現れる。これは氷の能力を使用する時に消費するMPゲージだ。しかし、先ずは普通の片手剣スキル《ホリゾンタル・スクエア》で数体のニープスを倒す。
「まだまだぁ!!」
さらにスキルの発動した硬直の後さらに氷結剣特殊攻撃スキル《アイスブラスト》を使用する。使用するとフブキの剣の周りに小さな氷の粒が現れる。スキルを使用してそのまま突撃する。
「散れぇ!」
剣に切り裂かれてポリゴン片となって消えるニープス五体ほどいたが、それを避けたものも数体いるが氷の結晶が身体に付着する。そのニープスたちはフブキに襲い掛かろうとするが、フブキはただ後ろを向いたまま呟いた。
「爆ぜろ」
そう呟いたと同時に先ほどのニープスの小さな氷の粒がニープスの身体で巨大な氷柱のようになり体を貫いた。
「きゃいん!!」
そして大きな氷柱とともにニープスはポリゴン片になって消えた。それを見たニープスは怯えることもなく再びフブキに突っ込んで来る。
「おいおい、その頭には学習能力ってのがないのかぁ!」
そう言ってフブキは次々とニープスを斬り伏せていった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「フブキって戦闘中にはああなるのかぁ!」
一気に六体のニープスを斬りつけて言った。ゲツガはフブキがさっきまでのおとなしかったのとは違い、若干ハイテンションになっているのを疑問に思い、メルムに聞いている。
「はぁ!!うーんと、フブキは戦闘になると少しハイテンションになるのよね。姉としてああいうのは止めて欲しいんだけどねぇ!!」
メルムは一体のニープスを斬りつけた後、話し始めるが話し途中にもう一度来たのでその相手も斬り伏せた。
「そうなのか?何かそれは姉として複雑だなぁ!!」
「そうでしょ!」
二人はニープスを斬り伏せながら話す。ふと、ゲツガは違和感に気付く。あれほど倒したのにニープスの数が一向に減らない。むしろ、その逆で増える一方だ。あまりにもこれはおかしいと思いニープスの出現する場所を探す。すると、ニープスは周りの雪から出てきていた。いや、よく見ると雪から出てきてるのではなく雪から作られているのであった。おかしい理由はこれか、そう思いフブキに言った。
「おい、フブキ!こいつらは倒したってきりがないぞ!どこかに本体か操っている奴がいるはずだ!そいつを探せ!」
「了解!」
フブキはそう言ってあたりにいるニープスを蹴散らしながら散策し始める。ゲツガもゲツガなりにあたりを見回す。そしてでてくるところに大体の目星がつくようになった。ニープスは木の周辺出ている。その周辺を確認するとたくさんの小さなモンスターが飛び回っていた。
「フブキ、メルム!俺がこいつらどうにかするから木の上を飛び回ってる奴をどうにかしてくれ!」
「「わかった!」」
二人は叫び、走って木を垂直に登り始める。それを邪魔するためにニープスは二人に襲い掛かろうとするがゲツガがそれを許さない。ゲツガは素早く木を蹴って一直線上に切れる部分にある木を把握してその木に跳んで、引っ付くとそのまま弾かれるように跳んだ。
「おらぁ!!」
ゲツガは二人に襲いかかろうとしたニープスを斬り倒すと他のニープスに邪魔されないようにソードスキル《イラトゥス・エスト・ドラコ》を使い、衝撃で全てのニープスを弾き飛ばした。
「邪魔はさせないぜ」
ゲツガはそう言って道を塞いだ。
フブキたちは走り登った木の上に小さなモンスターを見つけた。《ジャックフロスト》と言うモンスターだ。
「お前があいつらを操ってるんだな?」
「貴方があいつを操ってるのね?」
二人は少し離れているところでジャックフロストを挟むような位置に立ち、動きを止める。
「ぎぃいいい!!」
ジャックフロストは大きな声を上げると大柄なサルのようなモンスターを作り上げようとする。しかし、そんなことをさせるほど二人は甘くなく、飛び出してをメルムは両手剣スキル《アンバラッシュ》、フブキは氷結剣重突スキル《アイスストライク》を使用する。二人はジャックフロストを襲い掛かった。
「やあああ!!」
「はあああ!!」
二人の思い一撃はジャックフロストのHPを余すことなく空にした。それと同時にゲツガの周りにいたニープスは雪に戻り、姿を消した。
「お疲れ、二人とも」
下のほうからゲツガが二人に向けていう。
「ああ、お前もさっきの援護サンキュー」
「ほんと、ありがとね」
二人はそう言って木から飛び降りる。
「いやー、まさかあんなモンスターがいるとはな」
「まったくだ。あんなモンスター見たこともない」
「そうだね、分裂するスライムはいたけどモンスターを作り出すモンスターなんてね~」
三人はさっきの戦闘について語りだす。確かにあのようなモンスターはほとんど、いやSAOの中にはいないだろう。モンスターを造るモンスターは見たことも聞いたこともない。
「まあここがとにかく勝てたからいいじゃねえか」
「そうだな。それよりも早く行こうぜ。日が暮れたらめんどくさそうだ」
「うん、早く行きましょう」
そして三人は足を洞窟のほうに向けて歩み始めた。
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