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魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~

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Chapter2「状況と今後」

 
前書き
ハーメルンで感想を書いてくださった読者様がいましたら、
ぜひ声をかけてください。

待ってます。

 

 
「なるほど…じゃあルドガー君はここに来る前はクランスピアって言う会社でエージェントって役職やったんやな?」

「ああ。一度試験には落ちたんだが、色々あって社長直々にスカウトされたっていうか…」

「マジで?凄いやないルドガー君!てかエージェントっていい響きやなぁ」

医務室から出た後ルドガーははやてに自分がここに飛ばされる前の事を話す為に六課隊員の案内を受けて部隊長室にいる。最初に早速飛ばされた事について話した。
当然ルドガーには何1つ心当たりがない為、気が付いたら医務室にいたと言う嘘をついた。
ついでにいうと分史世界とカナンの地に関するルドガー達の戦いは話してはいない。
いや正確には話したくないのが本音だろう。

移動する際偶然窓から外を見たが、このミッドチルダはエレンピオスよりもリーゼ・マクシアに気候が近いように思えたりした。エレンピオスは黒匣を多様しすぎた為精霊の数が減少し、マナが枯渇し自然が激減し衰退の一方だった。今は断界殻をマクスウェルが解放した為そこに使われていたマナがエレンピオスに流れ込み精霊が死ぬ事はなくなった。
しかしそれは一時的なものだ。断界殻から解放されたマナも膨大とはいえ限られている上、黒匣を使い続けていたら必ずエレンピオスとリーゼ・マクシアは断界殻解放以前に逆戻りだ。おまけに両国民の関係は決して良くはない。

(ジュードとガイアスならきっとやってくれる)

源霊匣が完成していた未来の分史世界を見たからこそルドガーには強い確信がある。
あの意志がジュードの胸にあり続けるなら必ずや彼は遣り遂げる。ガイアスもだ。変り者だが民を思う心は本物であり、だからこそ最後までルドガーの旅に同行し、その選択を見届けてくれたのだ。そんな二人がいたからこそルドガーは最後にあの選択をできたのかもしれない。

「しかも戦闘職かぁ。通りでただ者じゃない雰囲気を出してたんやなぁ」

「ただ者じゃないって…俺は大した奴じゃないぞ。しかも俺はまだ二十歳だ」

「ルドガー君二十歳やったんか?へぇー私やなのはちゃん、フェイトちゃんと1つしか変わらへんかったんかー」

「1つって事は…もしかして19歳か?」

何故19歳と言ったかと言うと、単純に21歳と言ってそれで19歳だった場合間違いなく自分に何らかの肉体的ダメージがくると考えたからだ。
それがはやてとあってからのルドガーの第一印象だ。
そして特にこの場合は年下と口にするのがベストだ。

「当たりや!いやぁ良くわかったなぁ」

「まぁ何となくそんな感じがしたからな」

「部隊長って堅い役職ってイメージがあるみたいやからぶっちゃけ21歳って言うんじゃないかと思ってルドガー君の体がどうなるか心配やったわ」


……今何か物騒な事を言わなかったか?

「因みに俺が21歳って言ってたらどうなった?」

聞きたくないが好奇心に負けてしまう。

「うーん…確実にディアボルってたかなぁー♪」

「………」

(ディアボルって何だよ……)

恐らく彼女が得意とする魔法だろうがこの際それがどんな魔法かは聞かないでおこう。


いや聞きたくないのが本音だ。


「まぁ冗談はさて置き……」

はやての目線がルドガーの両手に移る。正確にはルドガーが握っている物にだ。

「その双剣は頂けんかなぁ」

「……」


今ルドガーの両手には彼がカナンの地に渡る為兄ユリウスの命を魂の橋に使う事を決意し手にかけた時、時計と共に手にしたカストールが握られている。この世界では質量兵器は原則使用禁止という話を医務室で聞かされた。だからルドガーは今はやての前で自分の持っている武器をどうするのかはやてに判断を委ねているのだ。

「てかどうやって剣やら銃やらハンマー出したん?」

「……はやて」

「ん?」

突然ルドガーの雰囲気が変わり不思議に思うはやて。だが直ぐに何か触れてはならない物に触れてしまった事に気づく事になる。

「世の中にはね…決して踏み行ったら帰れない現実があるんだ」

口は笑っているが目は笑っていない。

「そ、そか・・・私今そんなとこに足を入れようとしてたんやなぁ…い、いやー助かったルドガー君」

「本当にな。良かったな、五体満足でいられて」

「……」

遠い目でそんな事を語るルドガーにはやては本気で恐怖を抱いてしまう。

そう世の中には決して追及してはならない現実があるのだ。


もはやこれは暗黙の了解というべきか。


「で、やっぱり俺の武器は没収なのか」

「え?あ、あーえっとな。何も管理局はそこまで質量兵器禁止を徹底しとる訳やないんよ。ちゃんと許可を取れば使えるし」

「そうなのか?」

「うん、実際に局員の中にもデバイスの代わりに使ってる人とかおるし」

その辺は自分達の世界とも同じだ。黒匣は使用する事で精霊を殺してしまう為、リーゼ・マクシア人の中には断界殻が解放され精霊が死ぬ事がなくなったとはいえ、黒匣がマナを使い貴重な資源を浪費していると言う者も少なくはない。だが結局は両国の議会は黒匣を使用禁止にはしなかった。
仮に使用禁止にしてしまえばエレンピオス側の生活はほぼ苦しくなる上に確実に暴動に発展するだろう。そう言った意味で次元世界も完全に質量兵器を使用禁止を徹底していないのかもしれない。

「てなワケでルドガー君の武器も私が許可申請を管理局に申請したら直ぐにでも使えるけど?」

「そうだな……」

悩む所だ。シャマルから聞いた話ではルドガーには魔導師の力の根源であるリンカーコアがない事が判明した。無論はやてもその事を知っているからルドガーに質量兵器使用許可申請を受けるか聞いてきたのだろう。

「一応貰っておくよ。そいつらにはめちゃくちゃ世話になったしさ」

「了解や」

「あとはやて、頼みがあるんだ」

「?なんや?デートのお誘いなら喜んで受けるよ?」

「悪いがそういう話じゃない」

「なーんやルドガー君ほどのイケメンやったらすぐオッケーやのになぁー」

こっちは真面目な話をしたくても向こうがこれでは雰囲気のへったくれもない。
しかし冗談ばかりしていては話が進まないので拗ねた感じのはやてを半ばみなかった事にして自分が尋ねたい用件を話す。

「ここで保護されている間の事なんだが……」

「ん?それなら医務室で言った通り衣食住の事なら心配せーへんでも私らが---」

「それはわかっている。けどやっぱり何もせずずっとここで遊んでいるのはどうも嫌でさ」

流石にこの歳でニートはありえない。
いつかエルにニートと呼ばれ物凄く心に何かがグサってささった音が聞こえた気がしたんだった。

「でさ提案というか、もう頼みなんだけど……」

「????」



-------------------


「わかった、ええよ!困った事があったら相談せーゆうたのは私なんやし」

「ありがとう。あの日できなかった事がようやくできるよ」

「そんな大げさなー。まぁ職場の人には私から言っとくからルドガー君さえよければ今日の夜からでも大丈夫やよ」


大げさ……確かに大げさだが本来ルドガーは今はやてに頼んだ事をあの日からする事になっていたのだ。まぁ後悔はないがやはり複雑なのは仕方ない。


「で、ルドガー君の就職先(仮)が決まった訳なんやけど……」

「(仮)とか付けるなよ」

「まぁまぁ」

「で……もしかしてと思うけど、これから話す内容ってギブアンドテイクだったりするのか?」

「察しがええなぁ、流石は大企業でエージェントなんて大層な役職やってただけはあるなー」

「……で?内容は?」

ジト目でルドガーに見られ肩をすくめ苦笑するはやて。協力すると言ったはずなのに見返りを求めるような事をこれからルドガーに言う為か流石にはやても心苦しいようだ。

「実はな……今この部隊ってできてまだ1週間も経ってないんよ」

「そうだったのか?」

はやての口から出た内容で確かに自分が患者第一号だとシャマルが言っていた事を思い出すがまさかそれだけしか経っていないと流石に思ってはなかった。

「うん…人員とかは全く問題ないんやけど、まだ出来たばっかで上手く機能してない部分もあるんよ……あっルドガー君の就職先(仮)は全然間に合ってるから心配いらへんよ」

「………」



………もう何も言うまい。


「特に前線部隊…フォワード部隊って言うやけど、そこの隊長達以外は全員新人でどうもまだ実戦
で心配な部分もあるし……隊長達も人に物を教える事に関してエキスパートなんやけど、それ以外でも仕事はぎょーさんあるし、皆大丈夫やと言っとるけど部隊長としてはここもやっぱ心配なんや……」

気持ちはわからなくもない。
自分が同じ立場だったらきっと同じ事を考えるかもしれない。


「私としてはできる限りは隊員に負担は掛けとーない。特に……なのはちゃんは……」

「……ん?」

なのは・・・自分を助けた人間の一人だという事はシャマルから聞いて名前だけは知っている。別にここでなのはという人物の名前が出たから疑問に思った訳ではない。この時のはやての顔がまだ出会って半日も経ってないが何処か悲しい影を彼女の顔から読み取れたからだ。

「…大切・・なんだな」

「え?」

「いや、俺もはやての気持ちがわかるよ」

何がはやてやそのなのはという人物にあったかはわからない。
だが彼女達が何か大きな傷を負ったという事だけははやての顔を見てルドガーはわかった。

「前にある人にこう言われたんだ…『大切なら守りぬけ。何にかえても』って」

「……」

「俺には自分の命以上に守りたい者があったんだ。当然何があっても守りぬく気だった……」

はやては黙ってルドガーの話しを聞いている。先ほどまで冗談やら本気なのかわからない発言を連呼していた人物とは思えないほどに・・・・

「でもこれが俺が思っていた以上に大変だったんだ。俺が思っていた以上に・・な」

「…守れたんか?」

「…え?」

「ルドガーの守りたかった物はちゃんと守れたんか?」

思わずはやてのその蒼い瞳に見惚れてしまうルドガー。
夕日がその触れたら崩れそうな表情に更に拍車を掛け美しさを倍増している。
ノヴァよりはっちゃけてない性格とはいえはやてにもこんな表情ができるんだなと彼女の瞳に吸い込まれるかのようにルドガーも見つめ返す。どれくらい時間が経っただろうか。
いや大してそんなに経ってないだろう。

だがそんな短い時間がはやてはどうかわからないが、ルドガーには長く感じられた。

「ああ…ちゃんと守れた。だからここに飛ばされた事に後悔はしていないな」

嘘は言っていない。そう…嘘は何1つ言っていない。ただ自らの命にかえて守ったという部分を抜いただけだ。

「…そか…なら安心やな!」

一瞬でその顔が笑顔へと変わった為ルドガーは目を丸くすし、思わず笑ってしまう。

「な、なんや?」

「いや、はやては子供みたいだなと思って」

「なっ!?」

まさかのルドガーのお子様発言にはやてに頬が赤く染まる。はは、本当に子供だな。

「ちょ、ルドガー!それレディーに対して失礼やで!」

「はははっ!いやゴメン。つい…」

「ついってな、あのなルドガーあんま性もない事を---えっ?」

少しきつめにいってやろうかと思ってルドガーを睨もうとしたが、目の前に笑っていたはずのルドガーの右手が現れ面食らってしまう。

「手伝わせてくれ。君が俺に頼もうとしていた事をやらせてくれよ」

「えっ!?い、いやそれは嬉しいんやけど、まだ私何も内容言っとらんよ?」

「大方俺はそのフォワード部隊の隊長達のサポートをするっ感じだろ?フォワードの方は…実戦の空気に向けての模擬戦の相手ってとこか?」

「せ、正解や…ようわかったな」

これくらいの推測などルドガーに取っては朝飯前だ。何せルドガーに戦いや知識を与えたのはあのクランスピア社でNo.Ⅰエージェントであったユリウス・ウィル・クルスニク、ルドガーの兄なのだから。彼ほど頭は冴えてないがやはり兄弟だけあってこういった事には慣れているようだ。

「一応エージェントだったから頭を使う事が多かったんだ。それより……どうする?」

「ほへぇー……こりゃ私達は大物を拾ったのかもしれんなぁ」

はやてもルドガーの手を握り、これで1つの契約が出来上がった。


「大切なら何にかえても守りぬけ・・か……」

「ん?」

「なんでもない、なんでもない!よし!とにかくまぁこれで結果オーライ!これからよろしくな、ルドガー!」

こんな短い時間でしかも異性相手にここまで心を許せる経験ははやてにもなかった為、さっきとは違う意味で顔が赤い。まだこの気持ちは恋とかそんな立派な物ではないが、何となくだがルドガーからは自分と同じ匂いがした。

だからだろうか…彼を信じたいと。


ルドガーの事をもっと知りたいと思ったのは。

(まだルドガーは何か隠しとる……)

だがそれを今無理矢理はやては聞く気はない。何か話したくない理由があるから話さなかったのだ。
なら彼が話してくれるまで自分は知らない事にすればいい。

「はやてちゃーん。本局からはやてちゃん宛に書類データが届いたですよー」

「うわぁ!?せ、精霊!?小っさ!!」

(またお約束が始まってもうた)

リインが私は精霊ではなくユニゾンデバイスというとっーても希少なデバイスだと自分の事を自画自賛に近い説明で紹介し、ルドガーは苦笑しながらゴメンと誤るが、今度は小さいという一言についてガミガミと話が始まってしまい、ルドガーがはやてに目で救いを求める。


これから面白い日々が始まりそうだと思いながらはやてはリインとルドガーの間に入るのであった。


 
 

 
後書き
・クルスニク
最初に精霊の主マクスウェルを召喚した人間。
マクスウェルと共にリーゼ・マクシアを築いたとされ、伝承で″創世の賢者″と伝えられている。
本名はミラ・クルスニクという女性で、″歌声の巫女″とも呼ばれていた。


・クランスピア社
「創造と破壊」を社訓にする、エレンピオス最大の超巨大企業。
「テッシュから空中戦艦まで」というキャッチコピーのとおり、様々な分野に進出している。
国家予算規模の資金を動かしているとされ、クラン社と取引を行っているというだけで、
一種のステータスとなるほど。
初代クルスニク---ミラ・クルスニクが〝オリジンの審判"達成と分史世界破壊の為興した組織であり、2000年後の世界でも審判達成が至上任務である。

・クルスニク一族
エレンピオスに残った、クルスニクの末裔。
ときおり希少な骸殻能力者とクルスニクの鍵の能力を有する者が生まれる。
オリジンの審判達成を目指し、自らの願いを叶えようとする者どうしで骨肉の争いを続け身内が犠牲になることなど稀ではなかった。
審判の人間代表であり、ある意味人間の本質を示した一族とも言えるだろう。
 
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