魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~
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Chapter1「ミッドチルダ」
「うっ・・・・・・」
眩しさ感じたルドガーは目を開ける。目を開けたら白い天井が視界に入った。時歪の因子化して自分は消滅したはずだ。生きていられる訳がない。ルドガーは今の自分の状況が信じられず額を押さえる。
(わからない・・・見た感じ病院みたいだが、何故だ?・・・まさか時歪の因子化を失敗したかのか!?じゃあエルは・・・!!)
混乱しベッドから落ちるルドガー。苦悶の声をあげ間違いなく自分が生きている事を自覚する。そんな時ドアから1人の白衣を来た薄いショートカットの金髪の女性が入ってきて、ベッドから落ちたルドガーに駆け寄る。
「だ、大丈夫ですか!?」
女性はルドガーに肩を貸しベッドへと運ぼうとする。ベッドに掛けたルドガーは今は取り乱している場合ではないと思いとりあえず目の前の女性に礼を言う。
「いえいえ、当然の事をしたまでです。えっと私は時空管理局機動六課所属のシャマルといいます。貴方は?」
ルドガーは自分の名前を名乗っていなかった事を思い出し口を開く。
「手を貸してくれてありがとうございます。俺はルドガー・ウィル・クルスニク」
「そっか、ルドガー君か。でもビックリしたわよ。今朝なのはちゃん達がルドガー君をここに運びこんできた時は何事かと思ったわ」
どうやらルドガーは機動六課という組織の敷地内に倒れていたらしが、それをここの人間がみつけこの医務室まで連れてきてくれたらしい。しかも笑える事にルドガーは六課が出来てからの初の患者とかなんとか。シャマルの話とその笑顔に釣られルドガーも先程までとは違い軽く笑みを浮かべていた。ある程度話すと自分が今何処にいるかをシャマルに尋ねた。
「あのシャマルさん、ここはエレンピオスですか?それともリーゼ・マクシアの方?」
「エレンピオス?リーゼマクシア?その2つが何なのかわからないけど、ここはミッドチルダってところよ」
「は?」
聞いた事のない地名に目が点になる。少なくともエレンピオスにもリーゼ・マクシアにもミッドチルダという地名の街やダンジョンはルドガーの知るかぎりではない。まさか分史世界に飛ばされたのかとも考えたが、それはまずあり得ない。全ての分史世界はカナンの地でオリジンの審判で自分が全ての分史世界の消滅を願ったため存在しないはずだ。ならシャマルが嘘をついている?いや、この状況で嘘なんてついてもなんの特もない。
「おーシャマル、例の男の人の容態はどうや・・ってもう目覚ましたんか」
また扉が開き今度は茶髪のショートカットに何やら不思議な口調で話す女性が入ってきた。
「ルドガー君って名前みたです」
「ルドガー君って言うんやね。じゃあ私も自己紹介せなあかんな。私はここの部隊長しとる八神はやて言います。よろしくなルドガー君」
「ルドガー・ウィル・クルスニクです。よろしくはやてさん」
「はやてでええよ」
シャマルからの紹介があったとはいえ一応ルドガーも名乗り返す。とても元気な人だなと思う。見た感じでは自分と同じくらいの年齢だろう。何となくだがはやての雰囲気は幼なじみでもあるノヴァを思い浮かべてしまう。いやノヴァの方がはやて以上にはっちゃけていたな・・・おまけに空気が全く読めない・・・・・それはともかく
「聞きたい事があるんだ。あんた達は本当にエレンピオスもリーゼ・マクシアも知らないのか?」
「エレ・・どういう事や?」
「ルドガー君が今までいた場所みたいです」
シャマルの説明ではやての目が先程までのお気楽な感じから少し考えるような表情へと変わる。暫くすると結論が出たようで自分の立てた仮説を語りだす。
「ルドガー君落ち着いて聞いてや?ルドガー君はルドガー君が今までいた世界とはまた違う世界に飛ばされたんや」
「違う・・世界?」
突拍子のない話がまた飛び込んできたなと思いながらもルドガーは黙ってはやての説明に耳を傾ける。はやてはルドガーに分かりやすく次元世界についてと時空管理局、魔法、ルドガーが異世界渡航者など次元世界の人間なら誰でも知っているような事を説明した。ルドガーもまた自分のいた世界について語りだす。彼女達からしたら世界が2つある事事態はあまり驚きがなかったようだが、精霊については驚いたようだった。話を聞いたルドガーは分史世界とは全く違いそれぞれの世界が独立して存在している上に互いに自由に接する事ができる事に驚いてしまう。
(分史世界も次元世界と同じ理屈の存在だったら、ミラみたいな事にもならなかったんだろうな・・・・)
ルドガーは次元世界の成り立ちを知り自分の世界も同じようなものだったら良かったなとifを思い浮かべてしまう。だが直ぐにその思いを頭から捨てる。自分はそのifである分史世界を骸殻の力を使い破壊し続けた人間だ。そんな男がそんな幻想を考えるだけで矛盾している。
「それでこの次元世界の中には管理外世界を含めた世界にもエレンピオスもリーゼ・マクシアもないのか?」
「んー局のデータベースにアクセスしても全くそのキーワードが引っ掛からへん・・・こんなの初めてだわ」
「そうか・・・」
普通ならここは落ち込むところなのだろう。だがルドガーは違った。彼は自分の世界では時歪の因子として消滅=死亡している。そんな人間が仮に元の世界が見つかっても帰れるのだろうか?それにあの世界でルドガーは時歪の因子・・・もしルドガーが再び足を踏み入れたら何が起こるかわからないのだ。ならこの世界に永遠にいた方が安心なのだ。
「ルドガー君の世界は見つかるか見つからないかは別として管理局が捜索する事になると思うよ。それとルドガー君の事は私らが責任を持って保護させてもらうから、衣食住の点は心配いらへんよ?」
「頼むよ。次元世界の話を聞いてからそれが一番心配だったんだ」
「よかったなぁ、飛ばされた場所が管理局の施設内で」
全くだ。異世界にたどり着いてそこがこの世界で言う管理外世界で誰にも発見されずにのたれ死ぬなんてごめんだ。そんな自分をミュゼがみたらどう言うだろうか?
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「あら~?ルドガーったらこんな“ステキ”な場所でキャンプなんてしてたのね。遭難でもしたのかと
思ってたけど違ったのね。え?本当に遭難してた?うふふ、嘘が下手よねルドガーって♪ミラ達にはルドガーは楽しくキャンプしてたって伝えておくわ♪じゃまたね~」
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(・・・なんて事言いそうで本当に怖い。というか何故俺はミュゼを選択した?)
「ルドガー君?おーい、聞こえとるかー?」
耳元ではやてに話掛けられ現実に戻る。今はここで今後を考えなくてはならない。
「わ、悪いボッーとしてた」
「もうちゃんと聞いてなかあかんよ?自分の事なんやから」
「まぁまぁはやてちゃん。ルドガー君はまだきっと本調子じゃないんですよ」
「それもそうやね・・・・まぁとりあえず今はこれくらにしとこか」
席を立つはやて。まだ聞きたい事があったようだがルドガーの体調を気遣い話はまた後日する事になった。
「あっ、そだルドガー君」
「 ? 」
扉から出ようしたはやてはその場に立ち止まりルドガーの方へ振り替える。
「一応ルドガー君は六課が保護しとる事になるから外には出れへんけどこの六課隊舍内と敷地内なら自由に動いてもええからな」
「ああ、ご丁寧にどうも」
「・・・なんかいきなりワケわからん所に飛ばされて混乱しとるかもしれんけど、私らができる事なら何でも協力させてもらう・・・だから元気出してな?」
わざわざ立ち止まって何を言うかと思えば・・・・思わない気遣いの言葉で軽く笑ってしまう。このはやての言葉は管理局員としての台詞ではないと知り合ったばかりのルドガーですらわかってしまう。それだけを話はやてはルドガーが喋る前に医務室を後にした。
「シャマルさん」
「何ルドガー君?」
「はやてってもしかして・・・おっせかい焼くのが好きだったりする?」
「まぁ確かに・・・でもそこがはやてちゃんのいいところなのよ」
「納得・・かな」
「うふふ、もしかしてはやてちゃんに惚れちゃったのかな?」
「まさか・・・」
ルドガーの否定の言葉でなーんだと詰まらなさそうにルドガーの座るベッドの横に座るシャマル。どんだけLOVE方面に話をでっち上げたかったんだか・・・
「それともう1つ聞きたい事があったんだ」
「ん?」
声の波長が変わって為シャマルは声の主であるルドガーの顔を見る。さっきまでと違い真剣な表情となっており、思わずシャマルまで釣られて表情を引き締めてしまった。だが次のルドガーの口から出た言葉でその表情は崩れる事になりはやてではないが思わずツッコミを入れてしまう。
「・・・・治療費って二千万ぐいかかったりします?」
「私はどこぞのブラック・ジャックですかっ!?」
そうツッコまれルドガーは今までの中で一番嬉しそうな表情を見せる。シャマルにとってはツッコミ処満載な言葉だがルドガーにとって『治療費』とは死活問題なのだ・・・どうやらリドウの悪徳な治療費の請求でルドガーの中では軽くトラウマになってしまっているようだった。
そんな歳でそんな事を考えるルドガーっていったいどれだけ苦労したのか・・・きっと彼を知る者ならこう言うだろう。
ホントよく頑張ったよルドガー(涙)・・・・と・・・・・・
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シャマルが席を外して一人なった。一人になると次々とわからない事が頭に浮かんでくる。何故自分はここにいるのか?エルはどうなった?分史世界は消えたのか?そして・・・自分は何故生きているのか・・・と。
「・・・ミラ・・・俺はまだ生きているみたいだ。何でこんな事になったのかはわからないけど、暫く君の傍には行けないみたいだ」
この場で自ら命を断てば直ぐに彼女と会えるだろうが、そんな事をしたらきっとルドガーはミラに殴られるだろう。彼女に殴られた事があるルドガーから言わせてもらえばあの一撃はけっこう痛かった。
特に二度目のミラの胸を揉・・・・いや何でもない。
「だから待っててくれ。そして必ず君が作ったスープを・・・」
靴を履き、机の上に置かれていた自分のワイシャツとネクタイを着て医務室を出る。まだわからない事だらけだが落ち込んでなどいられない。こんな姿を自分の決心を見届けてくれたジュード達とエルに見られたくはない。
(・・・だから俺は)
止まる訳にはいかない。
自分が消してしまった分史世界の人間の為にも・・・
それがルドガー・ウィル・クルスニクが異世界で新たに選択した答えだった。
後書き
・エレンピオス
ルドガーの故郷であり、衰退が著しい世界。
GHS(携帯電話)の普及や鉄道網など文明が発達しているが、黒匣に依存した社会構造である。
現在は断界殻から開放された膨大なマナのおかげで、黒匣使用で精霊が死ぬことはなくなったが、
自然回復までにはいたってはいたない。また断界殻開放以降、テロ組織アルクノアのリーゼ・マクシアとの融和を快く思っていない過激派の存在もある。
・リーゼ・マクシア
精霊の主マクスウェルが創造した世界。
1年前まではア・ジュールとラ・シュガルという二国が存在していたが、アジュール王ガイアスが統一し、初代リーゼ・マクシア王となった。自然に恵まれた世界であり、自然が死滅しつつあるエレンピオスとは逆であり、国土や文明でエレンピオスに劣るリーゼ・マクシアは自然資源や農作物を巧く利用し貿易を保っている。
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