魔法少女リリカルなのはStrikerS ~賢者の槍を持ちし者~
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Chapter3「初仕事」
前書き
批判ではありませが、ハーメルンより暁の方が使いやすいですね。
暁の方がよりにじふぁんの面影を思い出します。
ちなみに、にじファンで私は現在もゼロ・スパークとして
アカウントを残しています。
ハーメルンもですが、にじふぁんで私と絡みがあった方はぜひ声をかけてください。
「はぁー疲れたー」
「アンタねーこの前はこれくらいへっちゃらなんて、ドヤ顔で言ってたクセに情けないわよ」
時刻は午後19時47分。
六課の食堂に4人の少年、少女が入ってくる。
通常勤務の隊員なら既に夕食は終えているはずだ。ならこの4人は必然的にそれ以外の役職という事になる。
そう彼女達がこの機動六課の前線部隊「フォワード」部隊であり、今はまだ力を持たないが無限の可能性を秘めた期待のルーキーである。
そして今食堂に入ってきたメンバーで一番最初に口を開いた青髪の少女の名はスバル・ナカジマ。
階級は二等陸士で六課スターズ分隊のフロントアタッカーでいわゆるムードメーカー。
そのスバルに呆れ顔で接する朱色の髪の少女はティアナ・ランスター二等陸士。
スバルと同じくスターズ分隊に所属しセンターガードを勤めると共にフォワード隊の頭脳でもある。
「まぁまぁティアさん。実際にやってみるのとやらないとで違う事が見つかると思いますし……」
「わ、私もそう思います」
呆れ顔なティアナを諭す彼女達より更に年下の少年少女。
一見六課の見学者とでも思う人間もいるだろうがこの2人は立派な六課の隊員であり、フォワード隊
ライトニング分隊のメンバー。
赤髪の少年の名はエリオ・モンディアルで桃色の髪の少女の方はキャロ・ル・ルシエ。
階級は2人とも三等陸士でポジションはそれぞれガードウイングとフルバック。
幼くはあるが、そこらの魔導師より力があり舐めてかかると痛い目を見る事となるだろう。
「それはそうね…」
「ほら!エリオ達だってこう言って---」
「でも年下のエリオとキャロにフォローしてもらうアンタってホント立つ瀬ないわね」
「うぅ…ティアがイジメる~!」
「何言ってるのよ?今更でしょこんなの」
さも当然のように言い放つティアナにスバルは目に涙を浮かべティアがひどすぎるよー!などと叫び、そこにティアナがバカスバル言い頭部に手刀を入れ黙らせ、スバルは頭を押さえうずくまる。
「「あ、ははは」」
「キュクー」
それを笑ってもいいのかと思いながらも最後は苦笑してしまうエリオとキャロ。まだ六課が設立されてから1週間も経っていないはずだが、期間の短さを考えさせないほどに4人は気を許しているようだった。因みに今キャロの頭の上に止まっている生き物は正真正銘の竜であり、名をフリードという。
キャロに取っては家族同然の存在だ。
「ティア、痛いよ~……って何だろう、この美味しそうな匂い?」
頭を押さえていたスバルは鼻腔に入ってきた匂いで痛みよりそっちに興味が移る。
「ホントアンタって現金よね…と言いたい所だけど確かにいい匂い……」
「この匂いって…トマトでしょうか?」
表情を変えティアも匂いの正体を探ろうと匂いを嗅ぎ、エリオが匂いの元がトマトである事に気付く。六課に来る以前に何度かトマト系の料理を食べた事があるが、ここまで鮮烈にトマトの匂いを感じた事はない。おそらく訓練で限界まで研ぎ澄まされた五感と空腹感が交ざり合った事で普段より感じやすくなったのだろう。
その証拠だろうか。
誰かのお腹が鳴ってしまう。
「あー!ティア、今お腹なったよー!」
「て、ティアさんだったんですか今のお腹の音?」
キャロが腹の虫の音を発した人物を知り信じられないという顔をしてしまい、それが引き金となりティアナの顔は見る見る赤く染まり……
「う、うるさい!!」
「アイタっ!」
照れ隠しに再びスバルの頭頂に手刀を当てる。スバル…黙っていれば良かったものを……
「皆ー!!何しとるん?」
「「「「八神部隊長!」」」」
騒いでいた為気づいていなかったが、食堂にはこの六課の部隊長である八神はやてが、彼女の家族の
リインフォースⅡと一緒にテーブルを使っていた。はやてを見て4人は彼女の方へと足を運ぶ。
「皆さんお疲れさまですぅー」
「あ、えっと、はいリイン曹長…」
ティアナが戸惑いがちにリインに応える。
「にしても皆待っとったでー」
「何かあったんですか?」
「いや別に面倒事やないんよ。なぁリイン?」
「はーいですぅ!」
「「「「????」」」」
「キュク?」
ますますワケがわからなくなる4人と一匹。
そんな時食堂に新たに2人の人間が入る。
「ごめんはやてちゃん、待たせちゃって!」
「ごめん、約束の時間からちょっと時間すぎちゃったね・・・」
駆け足ではやての元に来たのは。はやての幼なじみであり、この六課のスターズとライトニング分隊の隊長でもある高町なのはとフェイト・T・ハラオウンだった。
「事情はわかっとるよ。むしろこっちが2人に気を使わせたみたいで申し訳ないわぁ」
「にゃはは…いいよ、いいよ。それに私達もはやてちゃんに聞きたい事があったし」
「何なん?」
「ほら、あの人だよ。訓練場に倒れてた男の人。はやてなら知ってるでしょ?」
それは知っているだろう。逆に部隊長であるはやてがそんな重要事項を知ってなかったら部隊としてちゃんと機能してるか六課を疑ってしまう。
「あールドガーの事言ってるん?」
「「「「「「ルドガー?」」」」」」
なのは達が聞いた事のない名前を聞き全員?を頭に浮かべる。
「もしかして、あの男の人の名前かな?」
「正解やなのはちゃん」
「で、そのルドガーさんはどこに?」
「まぁまぁ、フェイトちゃんそんなに焦らなくても時期に会えるから」
「 ? 」
はやての何かお楽しみはこれからだと言う話し方にフェイトはそのルドガーと言う人物とは信じられない方法で出会うのではないかと思いはじめてしまう。まぁあながち間違ってはいない。
「ルドガーの事は今は置いておいて---」
「いや今はルドガーさんの事の方が……ううん、はやての話したい事の方が先でいいよ」
結局折れてしまった。
こういう時のはやてには何を言っても無駄なのは幼なじみのフェイトにとってはわかりきった事。
故にはやての用件を優先させる。フェイトの気持ちがわかったのかなのはが何とも言えないという感じの笑顔を彼女へ送る。そんな中フェイトが折れた事を確認するとはやては自分の用件を話しはじめる。
「本当はヴィータとシグナムとザフィーラがいる時に言いたかったんやけど、あいにく本局の方に行っておらへんから、とりあえずここにいるメンバーだけに言おうか。六課を設立してから間もない中よう皆働いてくれたな。ありがとうな」
はやての思いがけない賛辞の言葉に全員目を丸くする。まさかいきなり褒められるとは思ってなかったのだろう。
「てな訳で今日の夕食は日頃頑張ってる前線メンバーに向けてのエールを込めた最高の一品を用意させてもらいましたー!」
「ぱちぱちですぅ!」
「ほ、本当ですか八神部隊長!?」
「本当やよ♪勿論質より量派のスバルの為にもありったけの量を用意しとるからなぁ」
「ありがとうございます!!」
感激のあまり涙とヨダレが止まらないスバル。
横からキャロがテーブルに置いてあったナプキンでそのヨダレを拭き取る。
(いやスバル、アンタ軽く馬鹿にされてるわよ?)
と心の中でツッコミを入れるティアナ。確かにはやての今の発言はそう取られても不思議ではないが、ここははやての名誉の為にあえて言うがはやてには一切そんな気持ちはなく、スバルを思っての言葉だと言う事をわかってほしい。
「カモン、ホールスタッフぅー!」
指をぱちんと鳴らし、厨房からシャマルと六課のデバイスマイスターのシャリオ・フィニーノことシャーリーがワゴンを押して現れる。
「シャーリーまで!」
「あ、はい。八神部隊長に呼ばれて手伝う事になっちゃいました♪」
まさか自分の副官が今回のサプライズに一枚咬んでいたいたとは思ってなかったようで驚きの表情を見せるフェイト。そんな様子を見ているはやては思惑通りに皆を驚かせられた事に満足気な顔だ。
気のせいか、顔がテカっと光って見える。
そんな中でテーブルの上にシャマルとシャーリーか次々に料理を置いていく。
「はーい♪ついさっき六課食堂に正式にメニューに追加される事になったトマトソースパスタですよー」
「そしてこっちはトマトスープ!どちらもトマトをふんだんに使った最高の一品です!」
「因みに作ったのは私じゃありませんから、間違ってもロシアンルーレットなんてもんするじゃねー俺は生きる!とか言ったらダメですからねー」
シャマルとシャーリーの説明でテンションが上がるフォワード一同。(最後のシャマルの言った事はフォワード達にはわからないようで、意味のわかった隊長2人は困った笑いを浮かべいた。)
あのティアナも目の前の二つの品を見て思わず息を呑んでいる。
「さぁ皆、たんとお食べ!」
『いただきます!!』
それぞれ目の前にある料理を口にする。
口にした品はそれぞれ違うが、誰もが開口一番・・・
『美味しい!!』
と言ってしまう。
「凄い美味しいです八神部隊長!」
「こんなに美味しいパスタは初めてかも……!」
「トマトはそこまで好きじゃありませんけど、これ食べたらトマトが好きになってしまいますね!」
「スープも何だか飲んだけなのに、落ち着いたというかなんというか……安心します!」
「キュクー!」
フォワード4人と+一匹はあまりの美味しさに感嘆すら覚えている。
「凄いね、はやて。また料理の腕上がったみたいだからちょっと悔しいかな……」
「うん、本当に美味しいけど私も嫉妬しちゃうかなぁー」
美味しいと隊長2人も思ってはいるが、やはり隊長といえど2人も女の子。
同じ女性としてここまで美味しい料理を作れるはやてに軽い嫉妬心を抱いてしまう。
「ふっふふん……」
「ふっふっふんですぅ……」
「「「「「「????」」」」」」
突然顔を下に向け顔に影が現れたはやてとリインの姿を見て料理を食べていた一同はやてを見る。
「にぉうちたむでしゅか、うぉがみぶにぁいちょお?」
「アンタは口に入れた物を飲み込んでから話しなさい」
ありったけのパスタを口に含んで喋っていたスバルに冷静にツッコミを入れるティアナ。
スバルは「どうしたんですか、八神部隊長?」と言っていたのだろう。
「ふふ・・計画通り!」
「やりましたね夜神ら……いえ、はやてちゃん!」
「はやてちゃんなら新世界の神になるのも夢じゃないですぅ!」
「僕が新世界の神や!ふっははっはっはっはっ!」
「あのぉーもしもしー?はやてちゃん?夜・・八神部隊長ぉー?」
乗りが良すぎるというのもどうかと思いながらも、なのはの遠慮がちな横入りでようやく八神家だけの世界から抜け出しなのは達を見るはやて達。というか今のネタはどうかと思うが……
「あースバルのトマトソースパスタがなくなっとるやないかー(棒読み)」
「本当ですーいけませんーこのままではスバルがお腹を空かせて死んでしまうですー(棒読み)」
「えっ?あ、あの八神部隊長?リ、リイン曹長?」
確かにスバルのパスタ皿には一麺も残っておらず、作った人も大喜びなくらい綺麗になくなっていた。スバルとしても今盛られて量では満足がいかず、はやてがたくさん量なら作っていると言っていたから遠慮なくご馳走になるつもりだったが、今のはやてとリインの棒読みとオーバーリアクションで流石に考えてしまう。
「あーそれは大変ですねーけど安心してリインちゃんーちゃんといっぱいパスタもスープもあるから厨房の人に持って来てもらいましょーシャーリー(棒読み)」
「えっ?これ作ったのはやてちゃんじゃないの?」
「……ニヤリ」
「はーい!シャマル先生ー!それじゃあ元気に呼んでみましょうかー!」
シャーリーは八神家の3人と違い棒読みではないが、どこぞのヒーローショーのお姉さん口調で元気よく叫んでいる。
「「「「せーの……厨房のお兄さーん!!」」」」
はやて達は厨房の出入口の方へ元気よく声を送る。
すると中から人が現れる。
「あれ、あの人……ティア?」
「今朝訓練場に倒れていた人よね?」
「あーえっと……どうも」
現れたのは件の話しのルドガーだったが何故か顔を赤くしていた。
「なんやルドガー、全然イメージしてた通りにやってあらへんがなぁ」
「あのな……あんな痛すぎる演技と紹介で登場する立場の俺の身にもなれよ」
「酷いですルドガーさん!リイン達一生懸命やったんですよー!」
「いや別に攻めているワケじゃ……」
はぁっと溜め息を吐き、腰に着けていたエプロンを外しごめんと謝る。
ぶっちゃけ何故自分が謝っているか疑問を持っているのは秘密だ。
「はやて…その人って今朝訓練場で倒れていた人だよね?」
「せや、ほな自己紹介と行こか。ルドガー」
「あぁ」
はやてに促され、なのは達が使っているテーブルとフォワード達のテーブルの前に出るルドガー。
「まずは初めましてだな。俺の名前はルドガー・ウィル・クルスニク。今朝この機動六課の敷地で倒れていた人間です。えー・・はやてから聞かされたんですが俺は異世界渡航者という者みたいで、本当さっきこの次元世界について知りました。あっ、フォワード隊の皆と隊長さんが俺を助けてくれたんでしたね。礼を言わせてもらいます。ありがとう」
「あっ、いや大したことはしてないし……」
「それが私達の仕事だけど、改めて面と向かって言われたらなんか照れるな」
礼を言われて照れ臭いなのはとフェイトは笑みを浮かべるが、まんざらでもない様子。
感謝される事に嫌悪感を抱く者などいるはずもない。
「あの、これ作ったのってルドガーさん何ですよね!?」
「あぁ…えっと君は…」
拳手してきたスバルの問いに答えたが、スバルを含めたフォワード達の名前を知らない事に気付くルドガー。それに気付きスバルを始めに座っていたフォワード達は起立し自己紹介を始める。
「申し遅れました!私はスバル・ナカジマです!気軽にスバルって呼んでください!あっ、ルドガーさんの作ってくれた食事、とっても美味しいですよ!」
「あ、あぁそうか」
スバルのあまりの元気の良さに少し押されしまうルドガー。
「私はティアナ・ランスターです。お食事美味しかったですクルスニクさん」
「よろしく。それと俺の呼び方はルドガーでいいから」
「そうですか。じゃあ…ルドガーさん、私の事もティアナでいいですよ」
スバルと違い何処かティアナに対して壁を感じてしまう。
特別ルドガーが嫌という訳ではないだろうが・・・
(何だかな…ティアナからはミラと同じ感覚を覚えるんだけど…)
それがツンデレとはわかっているが、ミラの前では口が裂けても言えないし、ティアナにもティアナはツンデレかとは言える訳がないが、名前で呼んでくれと本人が言った事を思い、壁は自分が思っているよりかは小さいと思う事にした。
「自分はエリオ・モンディアルであります!」
「わ、私はキャロ・ル・ルシエです!」
「いや2人とも俺、管理局員じゃないから敬礼とかいらないし、それにそんなに緊張しなくてもいいよ」
「「あっ、はい!」」
(見事にハモったなぁ……)
あまりに2人の緊張っぷり2人には悪いが思わず苦笑してしまう。
見た感じエルと歳が近いエリオとキャロ。エルよりずっと大人っぽく見えるが、やはりルドガーからすれば「大人に合わせようとする子供」にしか見えず、同じようで違う事を目指していたエリーゼの事も思いだす。
「ははっ!そうか。じゃあよろしくな?エリオ、キャロ」
しゃがみ目線をエリオ達と同じにする。
こう言う子供相手には無理に気張るなと言っても逆に気張ってしまう。
エルがそうであったように、その経験を生かしルドガーは2人のその心意気に特に何も言わないようにする。両手を差し出されそれが握手を求めている事に気付くエリオとキャロは一瞬ルドガーの顔を見るが、直ぐにその手を取る……嬉しそうに。
「よろしくお願いします、ルドガーさん!」
「私も!よろしくお願いします!」
「キュク~!」
「ん?」
頭の上に謎の鳴き声が聞こえそちらを見る。そこにはティポと同じくらいの大きさの白い竜---フリードがいた。
(ま、魔物・・なのか?)
フリードを見て魔物と思うルドガーの考えは仕方ないのかもしれない。
実際にルドガーは竜を相手に戦った事もあるのだから。
フリードはルドガーの頭の上を飛んでいたが、暫くするとルドガーの肩に止まる。
「!?」
「ルドガーさんフリードに気に入られたみたいですね」
「そ、そうなのか?」
「よかったですね、ルドガーさん!」
キャロとエリオにそう言われ、最初は驚いたが直ぐにこのフリードが優しい竜なのだと思い、愛猫であるルルに接する感じで肩にいるフリードを左手に乗るよう促しその頭を撫でる。
「お前もよろしくな、フリード」
「キュクぅー!」
「(ねぇ、ティア)」
念話でスバルはティアナに話しかける。
「(何よ?)」
「(何だかルドガーさんって優しそうな人だよね!)」
「(そうね…)」
そう素直に思う。最初ルドガーと話した時は何か裏があるのではないかと思ったが、今のやり取りを見たらそんな事を考えていた自分が恥ずかしく思えてくる。
「(雰囲気も何だかギン姉と似てるし、優しいし、おまけにご飯も美味しい!凄いよねこの三拍子!!)」
「(はぁ…ホントお気楽よねアンタ)」
とはいえそこがスバルのいいところでもある。型に捉われない考え方に、誰とでも別け隔て無く接するこの『相棒』の柔軟さ自分に無い物だし、正直憧れてはいるが、認めると何か負けた気がするので決して口にはしない。言えば絶対調子こくはずだからだこのバカは。
「ルドガー君。私は高町なのは。よろしくね」
「私はフェイト・T・ハラオウン。よろしくルドガー」
「ああ、こちらこそ。なのはさんにフェイトさん」
ルドガーにさん付けをされてしまい面食らってしまうなのはとフェイト。
何故2人をさん付けで呼んだかは簡単だ。
何というかはやてと同い年のはずなのに2人の落ち着いた雰囲気を感じ、ナチュラルに言ってしまったのだ。
「ルドガー何2人にさん付けで呼んでるん?ルドガーの方が歳上って言ったやろ?」
「そうだな…多分2人のお淑やかな雰囲気で自然に言ったんだろうな」
「へぇーそれは私が2人よりぶっ飛んだ女やと言ってんの?」
「……多分」
「そかそか……ふんっ!」
「ぐェ!!?」
まさかのみぞおちにその場でうずくまるルドガー。
そんな2人のやり取りを見て呆気に取られるなのはとフェイト。
「何だか2人とも凄い仲がいいね」
「う、うん。こんなはやて始めて見たかも……」
ルドガーとはやては今日出会ったの間違いないが、2人のやり取りを見ていると長年共に一緒にいた友人どうしに見えないもない。しかも異性に、おまけはみぞおち。
何があったらこの短時間ここまで仲良くなるんだろうか?
「ほら、ルドガー!スバルとエリオの皿にパスタとスープ盛ってやるんや」
「あ、あぁ……うぐっ」
ダメージが回復しないまま立ち上がるルドガー。
まるで生まれたての子馬みたいで、子馬に失礼だが滑稽である。
「ねぇはやて、ルドガーって異世界渡航者なんだよね?」
「そうやよ?」
「それにしては凄い前向きというか……」
フェイトの疑問は最もである。
執務官という役職であるフェイトはルドガー以外でも異世界渡航者を見た事があれば保護した事もある。管理世界の者なら執務官としてのフェイトの言葉で自分の状況を把握するが、管理外世界の人間ならそうではなく、大抵が信じられないやらフェイトの頭が可笑しいのではないかと疑う者、最悪錯乱し暴れ出す者すらいた。
その為フェイトから見たルドガーは次元世界の存在を知った管理外世界の人間の反応だと到底思えないのだ。
「うーん、ルドガーの世界も私らと同じような感じみたいやからあんな落ち着いてるて思うんよ」
「同じって?」
はやての言葉になのはが疑問を持つ。
「ルドガーの世界はなエレンピオスっていう世界とリーゼ・マクシアって言う2つの世界が存在してみたいでなぁ」
「2つの世界が!?」
「そんな世界が・・・でもエレンピオスもリーゼ・マクシアなんて名前聞いた事もないよ?」
執務官として管理外世界を含めた次元世界の名称を知っておくのは必須だ。
なのでどんなに記憶を探ってもルドガーのいたという世界については全く心当たりがない。
それもそのはず・・・・
「今のところでは未発見の管理外世界が考えられるんやけど、私は違う線だと思うんよ」
「次元世界とは別にある世界……だね?」
ルドガーのような事は前例がない訳ではない。
今から10年前、闇の書の闇が生み出した公式では一時期秘匿扱いだった為知らない者が多いがされているが『闇の書事件』の事後処理として『砕けえぬ闇事件』というものがあった。
事件の詳しい内容は今回は省くが、この時なのは達と闇の書の闇をめぐる戦いに『マテリアル』達とは別に第三勢力として異世界『エルトリア』から『ギアーズ』と呼ばれる2人の姉妹が来訪した。
もしエルトリア以外にも異世界が存在するならそれがおそらくエレンピオスやリーゼ・マクシアなのかもしれない。
「それにルドガーは違うみたいやけど、リーゼ・マクシア人限定で、精霊術って言う精霊と契約して行使できる魔法に近いもんなんてものがあるとか言っとったなぁ」
「じゃあルドガー君から言わせて見ればあまりこの世界に飛ばされた事に大して驚きがなかったのかな?」
「確かに大して驚いてはなかった…かな。まぁ私は違う事で驚かなかったと思うんよね」
「違う事って?」
「単純に場慣れしてるんよ。元の世界ではクランスピア社言う企業で戦闘専門のエージェントなんていう大層な役職みたいやったんだって」
そのルドガーの素性を知り納得してしまう。
フェイトもなのはもルドガーからは何か一般人が持っていない特殊な雰囲気を感じていたのだった。
「けど本人にそこを褒めても大した奴じゃないとか、20歳の若造に言う台詞やないって謙遜してまうんよねー。まぁそんなとこが気に入ったからなのはちゃん達のサポート頼んだんやけど」
「へぇールドガー君って私達と一つしかかわらないんだね……って今私達のサポートをお願いするとか言わなかった?」
「そうやけど?」
さも当然とでも言うはやての態度にさすがのなのはとフェイトも呆れてしまう。
「言いたい事はわかるよ。別に2人が不甲斐ないからルドガーに2人のサポートと新人達の模擬戦の相手を頼んだ訳やないよ?けどな何事も最初が肝心なんよ。家も土台がしっかりできてなかったら地震がきたら大崩壊」
「確かに……けどやっぱりきたばかりの人にお願いするのはちょっと……」
「そうだよ、はやて。それにルドガーって厨房の仕事も入ってるんだよね?それ以前にルドガーってリンカーコアが……」
正論の中の正論。普通なら何もいい返せないがここで大人しく下がるほどはやては人間ができていない。
「厨房の方と訓練の方はちゃんと本人に厳しくないスケジュールで組むきや。それにまだルドガーの実力を見た訳やないからいきなり新人達の相手はさせへんよ。模擬戦やらなんやらしてから判断するよ勿論。まぁその辺は全然心配いらへんと私は思うんよね」
「けど……」
それでも下がらないフェイト。そんなフェイトにはやては話しかける。
「ほーっておけないんよ……」
「え?」
そう言いながらルドガーの方を見る。
フォワード達に囲まれ楽しそうに話しをしている。
「局員としての立場で言ってる訳ない……一個人としての言葉なんや」
「………」
「勿論私情を挟むんは部隊長としてダメなんはわかってる。けどな思ったんや……ルドガーは私と同じなんやないかと思ったんや」
「はやてちゃんと……同じ?」
「せや。けど正確には私やない……アインスと同じような物を私はルドガーと話して感じた」
「リインフォースさんと同じ物?」
自分の話し方が抽象的なのはわかっているが、今のはやてにはルドガーから感じた事をこんな言い方でしか上手く話せない。
「私はそれが何のか知りたい……もし私の感じた事が本当やったら力になってあげたい……いや私は何もできへんかもしれんなぁ……」
「はやてちゃん……」
それでも何かをしたい。
はやては不十分だと思っていたようだがなのは達には彼女の想いが十分伝わったようだった。
「わかったよ、はやて。けどルドガーの事に関しては私となのはも協力させてもらう事が条件だよ?」
「フェイトちゃん、なのはちゃん……ありがとうな」
本当に自分は最高の親友達を持っていると染々そう思える。
だからいつかルドガーにも自分達が彼にとってそのかけがえのない存在になってほしいなと切に想ったのであった。
「はやて!悪いがちょっと注ぐの手伝ってくれないか?」
「うん、今行くわぁー」
後書き
・オリジンの審判
2000年前、人が精霊を殺す黒匣を発明したことにより、「原初の三霊」マクスウェル、クロノス、オリジンによって発案された、人が欲望を制御できるかどうか測るためのもので、一種の精霊術でもある。
クロノスがクルスニク一族に骸殻を与え、分史世界に侵入し「カナンの道標」を集めカナンの地を出現させ、オリジンの前にたどり着けば審判を超えたことなる。ただし骸殻を使い続ければ時歪の因子化が進行し分史世界を生む事になり、百万に値が到達する前にオリジンの前にたどりつかなければ人間は失格となる。これが満たされなければ、精霊は人間を見限り、オリジンは魂の浄化をやめる、という内容だ。しかし逆に人間が審判を達成すればオリジンは「初めてその前に立った者の願いを1つ叶える」という報償を用意したことから、クルスニク一族は骨肉の争いを始め、終いには骸殻能力まで使用し、
加速度的に分史世界を増やしていった。
・正史世界
本来の歴史が流れる世界。
カナンの地が存在する唯一の世界であり、数ある分史世界の元となる世界でもある。
正史世界では同じモノは存在できず、正史のモノが分史のモノが正史世界で遭遇すると、分史のモノは消滅してしまう。ちなみに正史のモノが分史世界に出ている際、分史のモノが正史世界に侵入した場合、正史のモノは正史世界に戻る事はできない。
・分史世界
本来の歴史が流れる正史世界から分岐したパラレルワールド。
正史世界と似ているが、大きく異なる点もある。
その中で、もっとも正史世界と異なるモノに時歪の因子が憑依、または擬態している。
時歪の因子が破壊されればその分史世界は消滅し、そこに生きる人や物は全て失われる。
正史、分史含めて魂の総量が決まっており、分史世界が増えすぎると、各世界に渡る魂が減少し、様々な弊害が発生する。また、正史世界と異なるほど、カナンの道標が出現しやすい傾向がある。
今話はハーメルン時代、ギャグ要素に非常に悩みました。
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