我が剣は愛する者の為に
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転生完了そして悲劇の幕開け
目が覚めると知らない天井が見えた。
材質はおそらく木で出来ている。
ゆっくりと周りを見渡すと、物凄く古びた部屋だった。
どうやら無事に転生できたらしい。
「あぶぶぶばぶあぶぶぶ?」
うん?おかしいな。
喋っているつもりなのにうまく喋れない。
そこまで考えようやく思い出した。
俺は赤ちゃんだから喋る事が出来ないのか。
まぁ、赤ちゃんがいきなり喋ったりしたら驚くもんな。
多分、驚くってレベルじゃないと思うけど。
俺はとりあえず周りを見渡して、ここがどこかなのか判断しようとした時だった。
「あら、おはよう、縁。」
一人の女性が俺の名前?を呼んで俺に覗き込むように見てきた。
縁と言うのが俺の名前らしい。
偶然なのかどうかは分からないが前の俺の名前と一緒だ。
そして、目の前にいる女性が俺の母親なのだろう。
黒くて綺麗な髪がとても印象的で美人だ。
俺が息子じゃなくて、同い年ならほぼ間違いなく惚れているかもしれないくらいに美人だ。
「起きたか、縁。」
「おはよう、あなた。」
俺が起きた事に気がついたのか男が母さんの隣で俺を覗き込むように見てくる。
どうやら、この男が父親らしい。
この人もかなりのイケメンだ。
前の世界で暮らしていたら芸能界にスカウトされてもおかしくないくらいイケメンだ。
「しかし、私達の息子はおまえに似てかわいい顔しているじゃないか。」
「いえいえ、あなたに似ているんですよ。」
「そうか?
けど、おまえの綺麗な黒髪もこの子にもちゃんと生えているぞ。」
「あら、本当だわ。
この子には私達の良い所がすべて詰まっているんですね。」
さっきから、お互いを褒めあっているぞこの夫婦。
これがバカップルって奴か初めて見た。
一時間くらいお互いを褒めあった後、父さんは大きな荷物を背負った。
具体的に何を話していたというと、最初は俺の話から徐々にお互いの良い所を褒め合って、と変わってきた。
赤ん坊だが、凄い疎外感を感じた。
「さて、そろそろ出発するか。」
「はい、分かりました。」
出発?
どこかに出かけるのか?
てっきり、この家が父さん達の家だと思ったが違うようだ。
「ばぶぶぶばぶばぶぶあ?」
言い終わって気が付いた。
そうだった喋れないんだった。
意識があるから普通に喋ってしまう。
「よしよし、大丈夫ですよ。」
やっぱり、伝わらないか。
まぁ、伝わったら伝わったで驚くけどな。
そうしていると、父さんと母さんは建物から出てどんどん町から離れていく。
多分だが、あれは旅館、ゲームなどで言えば宿という奴なのだろう。
旅でもしているのか?
「この子も生まれましたし、どこかで腰を落ち着かせないといけませんね。」
「そうだな。
最近は物騒だし旅をやめて、どこかの村に住まわしてもらわないとな。」
どうやら、俺の考えは当たったようだ。
しかし、本当に転生したんだな。
まわりは荒野で道路も無くビルなんて建物も建っていない。
もちろん、車や自転車なども通っていない。
本当に三国志の時代に来たんだな、俺。
「町で聞いた情報じゃもう少し先に村があるらしい。
そこに住まわしてもらおう。」
「はい。
この子を立派な男の子に育てないといけませんね。」
「なるさ。
私とお前の子供なんだからな。」
そう父さんが言うと母さんは顔を赤くして照れていた。
本当に仲がいいんだなこの夫婦。
てか、どうして旅をしているんだ?
ちょっと気になるが、俺はまともに喋る事ができないので聞くに聞けない状況だ。
何日か野宿をしながら村を目指した。
そして今は森の中に居る。
父さんが得た情報の通りならもうすぐ村に着くらしい。
「ばぶばぶぶあぶう。」
あまりの空腹で思わず呟いてしまった。
そういえば朝から何も食べてなかったな。
最近では喋っても伝わらないので、大人しくしている事が多い。
そのせいか、親は俺の事を凄く大人しい子として受け取っているらしい。
これ、成長したらあまりのギャップにびっくりするんじゃないか?
まぁ、それほど馬鹿みたいに騒ぐキャラじゃないけど。
俺の言葉に母さんは気がついたのか、微笑みながら言う。
「あら?お腹が空いたの?」
今回はうまく伝わったらしい。
俺は頷いてみた。
「そういえば、朝から何も食べさせて無かったわね。
ごめんね、すぐにお乳をあげますからね。」
もう最近じゃこの展開にも慣れてきた。
慣れって本当に怖い。
だって、母親とは言え、胸だよ!?胸!!
それを口に近づけられたら誰だって驚くし抵抗するだろう!?
まぁ、そういう経験あるけど、母親からって言うのが結構きつかった。
まぁ、さっきも言ったが慣れたけどな。
「あなた、少しこの子にご飯をあげたいんで少し離れていいですか?」
「かまわないよ、けど早めに戻ってくるんだぞ。」
父さんの了解を得たのか少し離れた茂みで、俺にご飯をあげよう準備をする母さん。
最初の方は焦りまくって散々喚き散らかしたのが遠い昔のように感じる。
「ほら・・・緑。あ~ん。」
はいはい、分かっていますよ。
俺は小さい口を開けて、母さんのモノをくわえようとした時だった。
「その餓鬼が終わったら、次は俺にしてくれないか?」
と、別の声が聞こえた。
声のした方に視線を向けると男が立っていた。
服装はとてもボロボロで腰に剣が付いている。
ヒゲも荒々しく伸びており、はっきり言って柄が悪そうに見える。
もしかして、あれが賊なのか?
「誰ですか?
あなたは?」
さっきまで笑顔だった母さんの顔は真剣な顔になっていた。
「名前なんかどうでもいいだろう。」
「それもそうですね。
それでは失礼します、近くで夫を待たせているので。」
服を戻した母さんは急ぎ足で立ち去ろうとするが・・・・・
「待てよ。餓鬼が終わったんなら次は俺にしてくれよ。」
男は素早く母さんの前に立ち塞がった。
「退いてください。」
「いいじゃねえか・・・少しくらいよ!!!!」
突然、男が母さんの腕を掴んだ。
そのせいで母さんの腕から俺が離れた。
「ばぶぅ!!!」
結構痛かったぞ!!!
そうだ!!
母さんは!?
俺は顔を動かして辺りを見回す。
「へへぇ・・いい女だぜあんた。」
「やめて!!!!離して!!!!」
すぐ横で男は母さんの上に乗っていた。
男は母さんの服を強引に脱がそうとしている。
「ばぶぶぁ!!」
俺は言葉が伝わらないと分かっていても叫ばずにはいられなかった。
俺が叫ぶ声が耳障りなのか、鬱陶しいそうな表情を浮かべて言う。
「うるさい餓鬼だな。
この女を楽しんだら殺してやるからおとなしく待ってろ。」
あれ、これってやばくねぇ?
俺は危機感を覚えるが、所詮赤ん坊。
どうする事もできない。
何とかできないのか、と必死に考えた時だった。
「誰が誰を殺すって?」
「ッ!?」
声が聞こえたと同時だった。
茂みから影が飛び出すと、そのまま一気に母さんの馬乗りしている男に近づいて行く。
「動くな。」
「あなた!!」
そこに駆け付けたのは父さんだった。
腰にある剣を抜いて、後ろから男の首筋に刃を当てている。
「縁の叫び声がしたから様子を見に来たのが正解だったな。
大人しい子だからな、叫ぶほどの何かがあったのだと思って来てみれば。」
俺の声がどうやら、離れている父さんの耳に届いたようだ。
普段の俺の大人しいキャラここで役に立った。
「よくも私の大事な妻と子供を襲ってくれたな。
死ぬ覚悟はできているんだろうな?」
赤子の俺でも分かる位、父さんから殺気が出ていた。
顔もいつになく真剣な表情だった。
そのまま剣を振り被ろうとした。
正直、悪人とは言え人が目の前で死ぬのはちょっと、というかかなり気分が悪くなる。
しかし、麻奈も言ったが此処は三国の世界。
殺らきゃ、殺られる。
父さんが剣を振り抜こうとした時だった。
その後ろから別の賊がゆっくりと足音を忍ばせて近づいていた。
父さんは目の前の賊に注意がいっているのか全く後ろに気がつかない。
その賊の手には剣が持たれていた。
「あなた!!
後ろ!!!」
母さんがその賊の存在に気がついて、叫ぶ。
それに反応してすぐに後ろを振り向く。
しかし、その時には賊は剣を振り被っていた。
そのまま一切の躊躇いもなく、剣が振り下ろされた。
「ッ!?・・・・ぐっ・・かっ・・・・」
刺さっている・・・もう一人の男の剣が父さんの心臓のあたりに・・・・・
父さんは口から血を流し、後ろに倒れる。
死んだのか?父さんが?
嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だうそだぁぁぁぁぁ!!!!!!!
~interview in~
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!」
赤ん坊の母親は目の前の事実が信じられないのか、泣き叫びながら必死に倒れている夫の元に駆け寄ろうとする。
しかし、賊の一人に押えられ駆け寄る事もできない。
「よかったな。
俺が後ろで見張っていてよ。」
「ああ、さすがにひやっとしたぜ。」
賊達は笑いながら、話し合っている。
そのすぐ横で、泣き叫んでいる赤ん坊に視線を向ける。
その顔はとても鬱陶しいそうな顔していた。
「うるさい餓鬼だな。
おいこいつ殺してもいいか?」
その言葉を聞いた母親は息を呑んだ。
父親に続き、子供まで殺されたら、考えるだけで震えが止まらなかった。
「待て、そいつは俺が殺すって決めていたんだ俺がやる。
だから女を抑えてろ」
賊の一人が母親をもう一人の賊に渡し、赤ん坊に近づいて行く。
腰にある剣を抜き、構える。
おそらく、一気に振り下ろして斬り裂くつもりなのだろう。
それを目の前にしているのに、赤ん坊は泣き叫び続ける。
「うるさい、餓鬼だな。
いい加減に泣き止みやがれ!!」
「だめぇぇぇぇぇ!!!!!」
母親は叫びながら、自分の押えている賊の腕を振り払う。
予想外の抵抗に男は簡単に手を離してしまう。
ここまで抵抗するとは思っていなかったのだろう。
母親はそのまま飛び込み、赤ん坊を抱きかかえ、賊の振り下ろす剣を赤ん坊の代わりに受けた。
賊は手を止める事ができず、容赦なくその剣が母親の身体を斬りつけた。
「おい!!!
何で抑えてなかった!!!」
賊は母親を拘束していた賊に叱咤する。
おそらく、稀に見る上玉だったのでこれからの事を色々考えていたのだろう。
対するもう一人の賊も、かなり残念そうな顔をしている。
「悪い、少し油断していた。」
もちろん、この後悔も母親を殺したので後悔しているのではなく、しっかり拘束できなかった事に対する後悔だろう。
賊達がそんな会話をしている時、母親は口から血を流しながらも自分の子供に微笑みながら言う。
「大丈夫だよ・・・・縁。」
その時の赤ん坊は泣き叫んでいたのに、ピタリと泣き止んだ。
代わりにこの光景が信じられない目を見開いている。
母親はいつものように赤ん坊をあやす様に語りかける。
「大丈夫・・・・もうすぐ終わるから泣かないで・・・縁。」
赤ん坊の頭をゆっくりと優しく撫でながら言う。
「せっかくの上玉だったのにもったいねぇ。」
賊の一人がそう言うと、もう一人の賊が必死に謝っている。
「しょうがない。
荷物掻っ攫って逃げるか。」
傷の深さからしてそう長くはない。
そう判断した賊は近くにある荷物だけでも持っていこうしている。
「そうだな。
さっさと逃げ・・・「どこに逃げるのだ?」・・・・何?」
凛とした凛々しい声が聞こえた。
賊達はその方に視線を向ける。
そこには女性が立っていた。
腰まである束ねられた長い黒髪、緑を基調にした服。
左手には木で出来た籠を肩で背負っており、右手には龍を模倣した薙刀が持たれていた。
「何だてめぇは?」
賊の一人が剣を抜きながら、そう言う。
もう一人の賊も警戒しながら剣を抜く。
女性は賊の質問に答える事なく、自分の用件だけを聞く。
「貴様等がここにいる人達を殺したのだな。」
「そうだが。
それがどうかしたのか?」
「そうか・・・・・なら・・・」
肩に背負っている籠を下ろして、地面を強く蹴る。
突然の行動に男達は目を見開くしかできなかった。
女性は一気に接近すると、薙刀を片手に怒りの言葉を投げかける。
「そこの夫婦の仇を取らせてもらう。」
女性の薙刀の刃は二人の賊の首を捉え、切断する。
賊達は叫び声をあげる事無く、首から血を噴き出しながら後ろに倒れる。
地面に転がった顔の表情はまだ死んだことに気がついてないようだ。
女性は母親が必死に赤ん坊をあやしている声が聞こえ、近づいて行く。
「すまない。
もう少し速く気が付いていたらこんな事には・・・・」
女性は自分が一つも悪くないのに、悔やんでいるようだ。
母親は賊をこの女性が殺してくれたのを理解すると、小さく笑みを浮かべる。
「いえ、ありがとうございます。
夫の仇を取ってくれて。
この子に憎しみを持たせたくありませんでしたから。」
そう言って母親は赤ん坊を優しく撫でる。
依然と、赤ん坊は目を見開いている。
「あのお願いがあります。」
「何だ。
言ってくれ。」
母親は赤ん坊を抱きかかえ、震える腕を必死に伸ばして女性に渡す。
「この子をあなたが育ててくれませんか?」
女性はそれを聞いて驚く。
しかし、傷の深さを考えるともう手遅れなのが分かったのか、薙刀を地面に置いて両手で子供を抱きかかえる。
「わかった。
私が責任を持って育てよう。」
力強い言葉で女性は言う。
それを聞いた母親は力のない笑みを浮かべる。
既に地面には大きな血溜りができていた。
仰向けに倒れた女性は必死に手を伸ばす。
「ありがとう。
この子の真名は縁。
よろしくお願いします。」
母親は涙を流しながら、赤ん坊に最後の言葉を告げる。
「ごめんね・・・もっと一緒に居たかったけど・・・お母さんもう駄目みたい。
縁・・・立派に生きて・・・そして幸せになってね。」
そう言うと母親の手が地面に降りていった。
その瞬間、赤ん坊は今までにないくらい泣き叫ぶのだった。
後書き
一話を投稿してみて思ったのが、これはひどい。
半分というか、かなり修正しました。
何せ親が殺された状況なのに冷静に分析する主人公。
コイツの精神はダイヤモンドかって話ですよ(笑)。
なので、第三者の視点で修正させてもらいました。
さすが、処女作品。
見ていると恥ずかしくなります。
こうなると、この諸説の各話を全て修正しないといけないようですね。
誤字脱字、意見や感想などを募集しています。
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