| 携帯サイト  | 感想  | レビュー  | 縦書きで読む [PDF/明朝]版 / [PDF/ゴシック]版 | 全話表示 | 挿絵表示しない | 誤字脱字報告する | 誤字脱字報告一覧 | 

我が剣は愛する者の為に

作者:wawa
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。 ページ下へ移動
< 前ページ 目次
 

プロローグ

ふと、目が覚めた。

「何だ?
 此処は?」

まわりを見ると一面真っ白な世界だった。人も建物も何も無い。
白い世界だけが広がっていた。
文字通り地平線の先の先まで真っ白だ。
上を見上げても空ではなく白で染まっている。
 
「確か俺は・・・・・」

俺、藤島縁(ふじしまえにし )はさっきまでの事を思い出してみた。






俺は今、すごく気分がよかった。
なぜなら、予約していた小説が買えたからである!!!!!
大学の講義中にメールが来た時は講義中なのに抜け出してまで買いに行ってしまった。
それほどまでに楽しみにしていた物なのだ!!!!!!
俺の手にはさっきの書店が買った本の袋がある。
もちろん、この中には例の小説が入っている。
早く読みたい、読みたくてたまらない。
俺は小説が大好きだ。
子供の時は小説を馬鹿にしていたが、高校生の時に真剣に読んだ所、その魅力に気がついた。
以来、本の虫という訳だ。

「けど、講義中に抜け出したのはまずかったかな。」

俺は携帯を開けて今の時間を確認する。
まだ、授業は続いているので走れば間に合うだろう。
出席の確認も授業の最後に確認するので、それに間に合えば大丈夫だ。
俺はよく寝坊して授業を欠席してしまうので、次に欠席扱いされれば単位が不認定になってしまう。
これが取れないと必要単位を修める事ができないので、留年してしまうのだ。

「とりあえず、急いで教室に戻らないとな・・・・ん?」

単位について考えながら歩いていると、視界の端に車道路に子供が立っているのが見えた。
子供は自分の持っているゴムボールを車道路に落してしまったのだろう。
周りを確認することなく、子供はボールを拾いに行く。
その時だった。
それに合わせるかのように、子供に向かって車が走ってくるのだ。
運転手の方は携帯をいじっているのか子供に全く気が付いていない。
加えて、子供の方は迫ってくる車が怖いのかうずくまって逃げようとはしないらしい。

「まずい!!
 助けないと!!!!」

俺は楽しみにしていた小説を放り投げ、子供に向かって全速力で走った。

「うおおおおおおおお!!!!!!!!!!」

多分俺が生きていた中で一番速く走れたと思う。
車が子供にぶつかる前に俺はヘッドスライディングの要領で飛び込み、子供を歩行者道路に突き飛ばす。
そして、気がついた。
自分は道路にうつ伏せで寝転がっている状況で、すぐ目の前には車が迫っていた。

「あっ・・・・・」

そして、目が覚めるとこの真っ白な世界にいた。

「もしかして、俺死んだのか?」

スピードはおそらく50~60程度は出ていたはず。
それが直撃したら、まず助からないだろう。

「くっそ~、まだ読んでない本がたくさんあるのに。」

死んだかもしれないのにいまだに本の事を考えてしまう俺。
ホント、本の虫だね。
けど、俺が死んだのだとしたら此処は・・・・

「此処が天国か?」

でも、俺が持つ天国のイメージは羽が背中にある人が暖かく迎えに来る・・・・そんなイメージなのだが。

「こんな真っ白な世界を天国とは言えないな。」

かと言って地獄だとも言い切れない。
俺的だが、地獄はもっとこう、鬼やら何やらがいるイメージなのだがそれが全くいない。
もしかしたら今から天国か地獄どちらかに決まるのか?
できれば、天国がいいな。
地獄に行くほどの悪い事はしていないぞ・・・・・・・・・・多分。

「此処は、天国でもなければ地獄でもない。」

ふと、声が聞こえた。
しかし、まわりを見ても俺以外誰もいない。

「気のせいか?
 けど、確かに聞こえたはずだけど・・・」

と思った瞬間だった。

「気のせいではない。」

突然、俺の後ろから声が聞こえた。

「うわぁぁぁぁ!!!!!」

俺は咄嗟に後ろを振り向きながら距離をとった。

「何じゃ、女子(おなご)のみたいな悲鳴を叫びよって。」

いや、突然後ろから話かけられたら誰だって驚く。
後ろを振り返るとそこには女の子が立っていた。
巫女の服を着て歳は同い年に見える。
髪は緑色でツインテールのような髪型だ。
手には二本の木が絡まった杖を持っている。

「此処はお主の思っているような場所ではない。」

何の脈絡もなく、こう言いだした。

「その前にあんた誰?」

「わしの名前は麻奈(まな )じゃ。」

「俺の名前は・・・」

「お主の名前は知っておる。藤島縁じゃろ。」

まだ、名乗っていないのに俺の名前を言い当てやがった。
俺はさらにこの麻奈という女性に警戒を強める。

「なんで知ってるの?
 どこかで会ったけ?」

正直に言うと、見た限り一回でも会えば印象に残りそうなくらいかわいかった。
俺が警戒しているのが分かったのか、小さく笑みを浮かべて言う。

「儂とお主は一度も会ってはおらぬから、警戒するのも無理はない。
 何故、お主の名前を知っているのか教えよう。
 儂は神様だからの、お主の事は知っておる。」

今、聞き逃せない事を言ったぞ。

「神様?」

「そうじゃ、そして死んだお主を此処に連れて来たのはこのわしじゃ。」

「・・・・・・」

俺の予想を遥かに超える答えが返ってきて、言葉を失う。
普段の俺ならこんな事を言っている人はどこかの精神病院に確実に連れて行く。
しかし、俺は死んだかもしれないこの状況なら神様が出てきても不思議じゃない。

「それでさ、此処はどこなの?」

とりあえず、自称神様に聞いてみる。

「ここは、あの世とこの世の境界みたいな所じゃ。」

「それって三途の川みたいなもの?」

「まぁ、少し違うが概ね合っておる。」

「じゃあ、やっぱり俺は・・・・・」

「そうじゃ、お主は子供を庇って死んだのじゃ。」

やっぱり死んだのか。
出来る事なら本当は夢であって欲しかった。
誰でも死ぬのは嫌だよね?
俺の反応を見た麻奈は少し珍しそうな表情を浮かべる。

「珍しいの。
 普通の人間なら現実逃避するか、儂の言葉を全面否定するかのどちらかなのじゃが。」

確かに否定したいけど車に衝突する直前までの記憶があって、それが俺が死んだという事実を突き付けているから否定したくても出来なかった。
俺は車の記憶を思い出して、ある事を思い出す。

「そうだ、子供はどうなった!?」

俺が歩行者道路に突き飛ばした子供の事だ。
一応、大丈夫だと思うがやっぱり気にはなる。

「お主が助けた子供は無事じゃ。
 怪我はしたがちゃんと生きておる。」

それが唯一の救いだった。
死んで子供も救えませんでしたなんてただの無駄死にだ。

「じゃが、お主は自らの命を捨ててまで子供を救ったその行動に儂は感動した。
 じゃからお主に二度目の人生をさずけよう。」

今、何て言った?

「二度目の人生?」

「簡単に言えばお主を生き返らしてやろう。」

と、信じられない事を言い出した。

「そんな事が出来るのか!?」

「可能じゃ。
 儂は神様じゃぞ。
 そのくらいの事は朝飯前じゃ。」

やった!!!!
これで読めなかった本が読める!!!!
こんな時にでも本を気にする俺ェ・・・

「じゃが、お主の世界で生き返る事はできぬ。」

俺ははしゃいでいるのを見た麻奈は気難しそうな顔をして言う。

「どうしてだ?」

さっきまで有頂天まで上がっていた気分が一気に下がった。

「これは神様の法律みたいな物でな、死んだ人間を生き返すのは法律に反するのじゃ。」

申し訳なさそうに麻奈は言った。

「でも、生き返してくれるって言ったじゃないか。」

「簡単に言う、と言ったじゃろ。
 正確にはお主を赤子からやり直す事ができると言ったのじゃ。」

「じゃあ、俺はもう一度赤ちゃんになるって事?」

「そうじゃ。
 じゃが安心せい。
 記憶や知識は引き継がれるようにはしておく。
 つまり外見はお主では無くなるが中身はお主のままという事じゃ。」

喜んでいいのかよく分からない配慮だな。
でも、生き返るのだから贅沢は言えないな。
俺は麻奈にどの世界に生き返る事ができるのか、聞こうとした時だった。

「じゃが、これも言い難いことなんじゃが、実はお主が転生する場所はもう決まっておる。」

「それって、どういう事だ?」

段々雲行きが怪しくなってきたぞ。

「儂は確かに神様じゃ。
 じゃが、儂の神様としての位は低いから自由に転生させる事が出来ないのじゃ。」

「それじゃあ、俺には二度目の人生をどこでするのか決める事が出来ないって事?」

麻奈は申し訳なさそうに頷いた。

「下手したら、エイリアンみたいな化け物の赤子から俺の第二の人生が始まるのか?」

想像するだけ気持ち悪い気分になった。そんな人生は嫌だ!!!!!
人に寄生してお腹から生まれるなんて俺は嫌だぞ!!!
本当にそうなったら、とりあえず死なせないように口から出て行くか?
と、既にエイリアンの出産の事について考える俺に麻奈は言った。

「安心せい。
 送る世界は中国の後漢末期から三国時代にかけて群雄割拠していた時代。
 いわゆる三国志の時代にお主を転生させる事が決まっておる。」

その言葉を聞いてだだ下がりだったテンションが一気に上がった。
三国志と言えば劉備、曹操、孫権が戦った俺が一番好きな歴史物語じゃないか。
だが、それを聞いて一つ疑問が浮かんだ。

「俺は三国志の事をよく知っている。
 誰が誰を殺し、誰がいつ何をするかも知っている。
 もし、俺が好き勝手したらその後の歴史が変わってしまうんじゃないのか?」

今の三国志の結末があるから今の世界がある。
もし俺が歴史を変えたらその後の世界は大変な事になるかもしれない。

「それに関しても問題はない。
 お主が転生する三国志の世界は三国志であって三国志ではない。」

何を言っているのか意味が分からなかった。
難しい顔しているとそれを見た麻奈はため息をつきながら説明してくれた。
いや、今の説明を受けてなるほど、って思う奴はいるのだろうか?

「よいか、簡単に説明するぞ。
 これからお主が転生する三国志は、お主がどのようにしてもその後の世界にはなんの影響がない。
 なぜなら、その世界の三国志と、お主が今まで住んでいた世界の三国志とは全くの別世界なのじゃ。
 じゃから、お主が好き勝手に三国志の結末を変えても、お主世界には何も影響はない。」

説明が難しくて全然分からない。
簡単にって言っといて全然簡単じゃない。

「もう少し分かりやすく噛み砕いて説明してくれ。」

「お主、実は馬鹿なのか?」

むっ。
少しいらっときたが我慢だ。
今、言い返しても馬鹿を肯定しているようなもの。
クールになれ俺。

「まぁよい。
 馬鹿でも分かるように説明すると世界そのものが全くの別物なのじゃ。
 お主の住んでいた地球をαと仮定すると、今から転生する所は地球βという事じゃ。
 その世界で三国志の歴史をどう変えようと、それは地球βの正しい歴史として刻まれるのでなんら地球αに影響はない。
 分かったか?」

さすがにここまで説明を受ければ分かる。

「俺が転生する世界はいわゆるパラレルワールドって奴か。」

「まぁ、そんな所じゃ。」

そうなら、初めからそう説明すればすぐに分かったんだが。
これを口にすると麻奈が怒りそうなのでやめておく。
しかし、まだ一つ疑問が残っている。

「俺達の三国志とその世界の三国志の違いはあるのか?」

世界が違うとも言っていたが、そうなると俺の知っているのと違いはあるのだろうか?

「それは転生してからのお楽しみじゃ。
 まぁ根本的な事は一緒じゃから安心せい。」

安心していいのか?
何だかものすごく怪しい気がする。

「でじゃ、お主を転生すると仮定して話を進めていたがどうするのじゃ?」

麻奈は改めて俺に聞いてくる。

「どうするって何を?」

「転生するのかしないのかどっちにするのじゃ?」

答えは決まっていた。
そんなのした方が面白いに決まっている。
もしかしたら、劉備といった英雄と会えるかもしれない。
こんな貴重な体験はその時代に生きていた人にしか分からないだろう。
けど、麻奈は俺の心情を読んだのか、次にこんな事を言い出した。

「もし、三国志の時代に行くなら覚悟するのじゃな。」

「覚悟?」

聞き慣れない言葉に俺は首を傾げる。

「そうじゃ、三国志の時代といえばまさに乱世の時代。
 人殺しなど日常茶飯事じゃ。
 お主はその乱世を生き抜く事出来るのか?」

テンションが上がっていたせいで大事な事を忘れていた。
そうだ、仮に転生してもすぐに死んだら意味がない。
確か、その時代は盗人や殺しなど行われた時代だ。

「後、こうやってお主を助けるのは今回限りじゃからな。」

じゃあ、今度死んだら本当に終わりって事か。
でも、待てよ。

「もし俺が転生しないって言ったらどうなるんだ?」

またもや、浮かんだ疑問を聞いてみる。

「その場合、お主の魂は浄化されまた新たな魂になるのじゃ。
 それに、記憶といった物は無くなる。
 輪廻の輪をくぐるという奴じゃな。」

つまり、二度目の人生を選ぶか此処で藤島縁という人生を終えるかのどちらかしかないって事か。
だったら、俺は・・・・・・

「分かった。
 転生するよ。」

「よいのか?
 お主を此処に連れて来た儂が言うのも何だが、今までよりもつらい人生になるかもしれんぞ。
 本当によいのか?」

「ああ、もう決めた。」

確かにすぐに死ぬかもしれない。
けど、こんな所でまだ俺の人生を終わらせたくない。
もし、死んだとしてもそれが運命だったんだと割り切ろう。
多分、実際にそうなったら開き直れる自信が全くないけど。

「わかった。
 これからお主を転生させる。
 後ろを見てみろ。」

言われたとおりに向くとそこには扉があった。
最初に此処に来た時には無かった。
この扉をくぐれば、転生するのだろう。

「その扉を開ければお主は三国の世界に転生する。
 後、お主に二つ贈り物がある。」

「贈り物?」

「一つ目は才能、二つ目は武器じゃ。」

「武器はなんとなく分かるけど才能って何だ?」

「神様は人間に才能といった潜在能力を決める事が出来る。
 お主には特別にその才能を贈ろう。」

「その才能は一体どういった才能何だ?」

「具体的に言うと開花すれば武では呂布を同等かそれ以上の才が、知では諸葛孔明も認める才が秘められておる。」

それってぶっちゃけチートじゃね?
そんな力があったら俺一人で無双ができるじゃないのか?

「ただし、開花すればの話じゃ。
 もしかしたら一生その才が開花しないかもしれん。
 仮に開花しても先程言った力は手に入らないかもしれん。
 あくまで可能性の話じゃ。」

「つまり、力が手に入るか入らないかは運と努力次第って事?」

「そうじゃ。
 次に武器に関してじゃが。
 お主今何かほしい武器はないか?」

武器か。確か三国志の時代って日本刀みたいな刀はまだ作られていないはず。

「日本刀がいいな。」

「日本刀か?
 よかろう、お主がその刀がほしいと願った時手に入るようにしておく。」

「そんな事が出来るのか?」

「当たり前じゃ。わしは神様じゃぞ。」

とても納得のできる説明だった。

「では、これで説明は終わりじゃ。
 さぁ早く扉を開けるがよい。」

「分かった。」

俺はドアノブを握る。

「そうだ、麻奈に言わないといけない事があった。」

「何じゃ?」

俺は振り向いてこう言った。

「俺を助けてくれてありがとう。」

俺が礼を言うと麻奈は少し驚いた顔をしたがすぐに笑顔になった。

「次のお主の人生が良い物であると祈っている。」

扉を開けると暖かい光が俺を包んだ。 
 

 
後書き
我が剣は愛する者の為に、リメイク始めました。
久しぶり読んでみると、こう言った感じだったなと思い出されました。
地の文など会話などを修正したり付け加えたりしています。
もしかしたら、ストーリーが変わるかもしれません。
劉備ルートから曹操ルートとかね。
結構修正しながらなので毎日は厳しいかもしれませんが、早めに投稿していくつもりです。

誤字脱字、意見や感想などを募集しています。 
< 前ページ 目次
ページ上へ戻る
ツイートする
 

全て感想を見る:感想一覧