お手紙
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第二章
「けれどお店の残りものよ」
「自分で自分の為に作ったものじゃないわよ」
そうしたものではないというのだ。
「間違っても彼氏の為にとかじゃないから」
「その都度変わるから」
「トンカツだけじゃないわよ」
「その時の状況で全然違うものになるから」
選べないというのだ、何を入れるのかを。
「まあ、何ていうかね」
「唯ちゃんが思ってる様なものじゃないわよ」
「そうなの?」
唯は普通の家の娘なのでこうしたことはわからなかった、お店の娘の話は。
だから今は二人の話に目をしばたかせるだけだった、そしてこう言うのだった。
「じゃあ愛妻弁当とかは」
「ううん、ないわね」
「残りものシリーズだから」
そうした話とは無縁だというのだ。
「それ以前に私達って今そういうこととは本当に無縁だから」
「恋愛とかとね」
「そうなのね」
「だから、図書館でのこともね」
「そうらしいとしか言えないわよ」
このことについても唯にこう言う、だが唯はそれでも二人の言葉から決めたのだった。
「とりあえずやってみようかしら」
「そうなのね、書いてみるのね」
「図書館で」
「ええ、まあ二人の話を聞いたらね」
「いや、だかららしいとしか言ってないけれど」
「それで決められたの?」
「そうなの」
つまり話をしているうちに考えがまとまって決められたというのだ、そういうことだった。
「じゃあやってみるね」
「頑張ってね、それじゃあ」
「図書館でお手紙書いてね」
「ラブレターね、商業科の女の子って藁にでもすがらないと」
本当にそうした思いだった。
「彼氏出来ないからね」
「そうね、それはわかるわ」
「私達もね」
二人も恋愛には縁がないがそれでもこのことはわかった、二人にしても商業科の女子生徒であるからだ。
「男の子の数が少ないから」
「それもかなり」
「でしょ?相当性格が腐ってないと彼女が出来るから」
向こうから寄って来るからだ、これで出来ない筈がない。
「もう何でもすがるわ」
唯は決意した顔で二人に言った、そのうえで弁当の中の漬け物を食べる、そしてだった。
この日の放課後に早速だった、彼女はその商業科の図書館に入った。図書館の中は席が並べられ本棚という本棚には本が満ちている。
空いている席の一つに入って手紙を書きはじめる、だが。
それは思った様に進まなかった、一行書いてもだ。
「違うかしら」
相手に伝えるものだ、だからいつも以上に真剣だった。
それで書いても何か違うと思い書きなおす、尚3Bの芯の柔らかい鉛筆で下書きをしてからその上にボールペンの上で清書する、今は下書きだった。
だがその下書きがだ、どうにもだった。
「違う、こうじゃないわ」
書きながら言うのだった。
「何かねえ、もっとこう」
ロマンが欲しい、こう考えてだった。
本棚に行ってそこでまずはランボーの詩集を参考にしようとした、だがその時だった。
ランボーの詩集がある本棚に向かう途中でだ、図書館にいる女生徒達が別の本棚の前で立ち話をしているのを聞いた。
「ランボーってホモだったらしいわね」
「えっ、それ本当?」
「らしいわ、顔はよかったけれどね」
「そうだったらしいわ」
こう話しているのを聞いた、それでだった。
ランボーは止めることにした、だが参考にする詩は欲しかった。
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