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お手紙

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第一章

                       お手紙
 今八条学園高等部商業科では面白い噂が出ていた、商業科のその図書館においてだ。
 手紙を書くとだ、それでなのだ。
「想いが適うって?」
「そうなるって?」
「好きな相手の名前を書くと」
「それで」
「そうらしいのよ」
 女子達がこう話していた、商業科なので男子より女子の方が多い、だからこうした話は中々切実なものがあった。
「男は相当性格腐ってないともてるけれど」
「男はね」 
 商業科の男の特権だ。
「けれど私達はねえ」
「そういう訳にもいかないから」
「百合でもないとね」
「彼氏作るのも大変よ」
「もう奪い合いよ」
 そうなってしまうというのだ。
「そんなのだからね」
「それで相手が来てくれるのならね」
「やっぱりしたいわよね」
「そうよね」
 これが女子の意見だった、彼女達は必死である。
 それでだ、勝宮唯もだ、切実な顔で周りに話すのだった。
 小柄な方で黒い綺麗な髪をポニーテールにしている。大きな一重で睫毛の長い目がきらきらとしていて眉は細く整えている。胸は普通位だが全体的なプロポーションはいい、その彼女が困った顔でクラスメイトである愛実と聖花、かるた部の二人に言うのだった。
「図書館の噂だけれど」
「ああ、あの相手への手紙書いたらその人と一緒になるっていう」
「その噂ね」
「そう、それよ」
 三人でお昼を食べている、教室で弁当をだ。
 その中でだ、唯は二人に言うのだ。
「いいと思わない?それで願いが適うのなら」
「まあね、それで適うならね」
「そうなればね」
 いいとだ、二人も応える。
「私達もそう思うわ」
「それで、っていうのならね」
 愛実は自分の弁当のおかずのトンカツを、聖花はサンドイッチを食べている。どちらも彼女の家の店で作っているものの残りだ。
「まあ私達は最近そういう話は縁がないけれど」
「忙しいから」
 部活に店にその他のことにだ。
「何かとね」
「けれどそのお話は面白いわよね」
「どうかしらね、それで」
 唯は切実な顔で二人に問うた、自分のお弁当の薩摩揚げで御飯を食べながら。
「やってみたら」
「ううん、いいんじゃない?」
「悪くないと思うわ」
 これが二人の唯への返答だった。
「それで唯ちゃんの願いが適うならね」
「いいと思うわ」
「そうなのね、それじゃあね」
 唯は二人の言葉を受け取った、そしてだった。
 実際に手紙を書いてみることにした、それを決めてからだった。
 唯は二人の弁当を見た、そのうえでこう言った。
「二人共今日も美味しそうね」
「えっ、お店の残りものだけれど」
「私もね」
 どちらもだというのだ。
「昨日のトンカツの」
「サンドイッチの」
「いいじゃない、それが」
 唯はこう二人に言う。
「自分で作ったのよね」
「まあそうだけれど」
「実際に私達が作ったものだけれど」
 二人もこのことは認める、だが二人は唯にこうも話した。 
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