ソードアートオンライン VIRUS
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生命の碑
前書き
牙桜さんからの感想を待つ
氷の剣士、フブキとその姉、メルムとともに生命の碑に向かうために転移門を通って始まりの街に来た。たしか、この街には三千人ほどの人がまだ住んでいる。そのためあってか街はとてもにぎわっていた。
「久しぶりだな、ここも。あの茅場の説明あった後、すぐに移動したしなー」
「たしかに、ここに来るのは俺らも久しぶりだな。最近は忙しいし、それにほとんどこういう低い層に来ることがなくなるからな」
「そうだね、ここに来るのは本当にひさしぶりだわ」
三人ははじまりの街に久しぶりに帰ってきて懐かしそうに建物などを見ていたが本来の目的を忘れているわけではないのでまっすぐと街の中心へと向かっていた。
「そういえば、ゲツガって結構料理手だれていたけどスキルレベルはいくつ位なの?私の予想であの味だったら800はくだらないわね」
「確かに、あれだけの味を再現できているんだ。相当なスキルレベルだろ?」
「ああ、900とちょっと、こう見えて料理は自炊するほうなんだ。NPCレストランもうまいけど、やっぱり自分で作ったのもうまいからな」
「そうなのか~、私も試しに料理スキルを入れてみようかな~?」
「姉さんが作る料理か~、何か失敗作ばっかり出来そうで心配だな」
「フブキ、ちょっとそこの路地に行かない?ゲツガ、ちょっと待ってて。フブキをちょっと、イタブ…じゃなくてO☆HA☆NA☆SHIしてくるから」
「おい、思いっきりいたぶるって言いそうになってたじゃねえか。それに結局は締め…」
「ゲツガもO☆HA☆NA☆SHIにさんかしたいの?」
「すいません、待っておくので手短に終わらせてください」
ゲツガは凍てつくほどの視線を受けて本能的に自分が助かるように、逃げようとしていたフブキの襟を掴んで持ち上げるとメルムに差し出した。
「おい、ゲツガ!何しやがる!」
「さあ、フブキ。あっちでO☆HA☆NA☆SHIをしに逝きましょうか?」
「嫌だ!絶対に嫌だ!!さっきのいきましょう、絶対に逝きましょうだよ!ゲツガ、助けてくれ~!!」
ゲツガはゴメンの意思を示すために手を合わせて軽く一礼した。そして、フブキとメルムはそのまま路地へと(フブキは無理やり)踏む込むと、しばらくの沈黙。
「ね、姉さん、止めよう。さっきのことは謝るから…」
「女性に対して口の聞き方のなってない弟にはちゃんとした躾をしなきゃいけないね」
「待って、姉さん、本当に悪……」
そう聞こえた後、フブキの悲鳴が聞こえると思ったら何も聞こえなかった。このときの沈黙時に流れる街のBGMは恐怖を覚えさせるような物に聞こえた。
そして路地に二人が入ってからしばらくしてようやくメルムが出てきた。その顔はどことなくすっきりしたような顔だ。そして、ゲツガに近づいてささやくように言った。
「女性に対しての口の聞き方がゲツガもなってなかったらフブキのようになるからね」
そう言うと先に行ってるねといって、生命の碑のほうにスキップしながら行ってしまった。ゲツガは、このとき、絶対に女には逆らわないほうがいいと本能が言っていた。
裏路地にいると思われるフブキを呼び出しにいくために裏路地に入ったゲツガはその光景を見て唖然とした。そう、血のようなものがあたりに飛び散り、フブキの口からもそれが大量に吹き出している。
「な、なんなんだ一体……」
ゲツガはあまりにもありえない光景をみて絶句する。血が出ることのないこの世界でこのようなことが起きるのかと考えてしまったが、そんなことが起きるはずもないと理解してすぐにその液体を調べる。
「この液体は!」
ゲツガはそれを掬うように集めて片手に集めるとタップしてアイテム名を調べる。その正体なんと…!
「これは、ただのトマトじゃねえか!!」
ゲツガはすぐに手からそれを離して地面にたたきつけた。しかしなぜこのようにトマトが散乱しているのであろう?そんなことを考えるがフブキを見ると恐ろしくて考えるのが怖くなった。
「とりあえずフブキを起こさなきゃな」
ゲツガはため息を吐きながら、フブキに近寄って身体にまとわりついているトマトの汁を払い落とした。そして揺らす。
「おいフブキ。起きろ。メルムが先に行ったぞ」
「……う~、や、止めてくれ、姉さん、それ以上はマジで死ぬ……」
まだ気絶しているのか、そう唸っている。ゲツガは仕方ないと思い、思い切り腹に向けてエルボーを振り落とした。
「おげぇ!」
「よう、ようやく起きたか」
「なんて起こし方するんだテメェ……」
腹を押さえて起き上がるフブキは、はっとなってすぐに周囲を確認し始めた。多分、メルムがいるか確認しているのだろう。
「大丈夫だ、メルムは先に行った」
そう言うとフブキは、息を大きく吐いてから立ち上がる。
「まったくひどい目に遭ったぜ。これで姉さんに受けた虐待の回数がもう指の数を全部合わせても足りないくらいになったぜ」
「それは、ご愁傷様」
ゲツガはそう言うと裏路地から出る。そして、その後にフブキも出てくる。
「メルムとは絶対戦いたくないな。俺でもって言うより絶対男は敵わないし尻の下にしかれるだろうな」
「姉さんに楯突かないほうがいいぞ。あの人普段は人にやさしいけど、時々怖い目にあってるんだからな、俺が」
「それはお前の自業自得かもしれないが絶対に逆らわないほうがいいってことはわかった」
「そのほうがいいな。俺だって命が惜しい。だけど、俺なんか悪いこと言ったか?」
「さっぱりわからん」
二人ともとてもどんかんなようだった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
ようやく生命の碑の前に着いたかと思うとそうではなく、ゲツガとフブキは道の真ん中に座らせられて説教を受けていた。
「なんで私が二十分も待たなきゃいけなかったの?」
「いや、姉さんの……いて」
ゲツガはフブキを横から小突いて視線を向けさせる。そして、アイコンタクトをとって見る。
(これ以上は何も言うな。また、やられるぞ)
(ん、これ以上言ったらやられる?……)
どうやらフブキはアイコンタクトの意図に気付いたらしく黙ってくれた。これで一安心だがさすがにこの状態は目を引きすぎるため、ゲツガは最終手段をとる。
「悪いと思ってる。久しぶりだったから迷っちゃったんだって。本当に悪いと思ってるから。ちょっと生命の碑を見終わったら現実と同じアイス作ってやるから」
「嘘、ほんと!?」
メルムはアイスと聞いて反応を見せた。この世界でもアイスはあるが氷を削ったものや氷単体のことをさすのだが、少し手間さえ加えればれっきとしたアイスを作れる。
「おまえ、そんなのも作れたのか」
フブキは感心したようにゲツガを見る。メルムは早くアイスが食べたいがために走って生命の碑がある、中央に向かった。
「早く、二人とも!!」
正座から素早く立ち上がった二人は顔を見合わせて走り始めた。
「ふー、何とか助かったな」
「まあ、とりあえず、メルムの機嫌は損なわないようにしないと本当に死んじまいそうになるからな。お前の一件でそれはもうわかっている」
「そうだよな~、俺は何か悪いことをしてるのかよく分からないけど」
「まったくだ。とにかく、急ごうぜ」
「ああ」
フブキは走る。しかし、ゲツガは足が遅いため遅れる形でフブキたちの後を追う。そしてようやく、生命の碑の前に到着する。
「ようやくついたね。えっと、ゲツガだから、G……Gの何段目かな?」
「そんなのは探すしかないだろ。えっと、ガイ、ガス……」
二人は一人一人の名前を呟きながらGの列を一つ一つ見ていく。そして一分ぐらいして見終わったのか、ゲツガを見る。
「確かにお前の名前はないな。一応横線に入ってるものも見たけどお前の名前はなかった」
「っていうことはこれでゲツガは本当に別の世界から来たことが証明されたのね」
「まあ、そういうことになるな。つうことは次の目的がチケットに書かれてるの忘れてたな……なんて書いてあるんだ?」
ポケットからチケットを取り出して目的を確認する。やはり氷の剣士に会うという目的が消えており新しい目的が出ている。
「えっと、生命の碑のGの列からダンジョンに潜れ……生命の碑からダンジョンに潜る?」
チケットにはそう書かれていた。しかし、意味がわからない。この目の前に立っている碑の中にGの列を見ても穴など見えないし、入り口すら見えない。
「どうしたんだ、ゲツガ」
フブキが聞いてくる。
「ああ、新しい目的が出てきたんだ。なんか、生命の碑のGの列からダンジョンに潜れって」
「なにそれ?生命の碑自体にダンジョンなんてあるわけないのに」
「いや、これが何か捻じ曲がったみたいに現れるんだよな。ここに来た時、何かそういうダンジョンに行ったからさ」
リクヤたちと入ったレプリカ施設を思い出す。あれは多分、ゲツガが来たことによって現れた特殊なダンジョンだろう。多分、ここも同じような感じで現れるはずだ。
「だけど、Gの列にお前の名前とか怪しいものとか一切なかったのにどうやれって言うんだよ」
「私たちが見ても何もなかったよ」
「そう言っても目的をクリアしないと……」
そして、Gの列を見たときに何か違和感を覚える。よく見ないとそこまで変わったところは見えないのだが、少し膨らんでるように見える場所がある。
「多分、あそこだ」
ゲツガはそこを指差すと、メルムとフブキも違和感に気付いたようであ~あと納得いくような声を上げる。
「じゃあ、あの出っ張りに衝撃を加えてみるか」
フブキはピックを取り出すとその膨らんだところに投げる。そして、そこにピックが当たると、そこのふくらみが押されて戻る。すると、生命の碑から何か光が出てきて月がたちを包む。
「何だこれ?」
「たぶん、ダンジョンに行くための転送じゃないかな?」
「そうだと思う、いやそうだと信じたい」
上からフブキ、メルム、ゲツガの順に声を出す。そしてしばらくすると転移結晶に似た浮遊感とともに視界が真っ白になった。
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