妖精の十字架
しおりを利用するにはログインしてください。会員登録がまだの場合はこちらから。
ページ下へ移動
~It works together②~
翌朝、俺はバイクを異空間から取り出してギルドに向かった
余談だが俺のバイクは大型で黒い。街中を走ると人目につくため、若干遠回りする
「あ!クルスー!」
大きく手を振ってミラが駆け寄ってくる
俺はエンジンを切り、バイクから降りる
「おはよう。ミラ」
「おはよー」
「んじゃ、さっそくだけど行くか?」
ミラはうん!と首を大きく縦に振ってバイクに乗る。俺も続いてバイクに跨った
「・・・?あれ、seプラグは?」
seプラグを付けずに走り出そうとする俺を見てミラが疑問の声を出す
「あぁ。邪魔だから取った。中にラクリマ入れてんだ」
内蔵されているラクリマから魔力を抽出してこのバイクは走っている。まぁ魔力の充填が面倒だが、それを差し引いてもこのバイクは乗り心地が良い
「へぇ・・・じゃしゅっぱーつ!」
「おっけー!」
しばらくバイクを走らせていると海が見えてきた
朝日に照らされて幻想的な光の反射をしている
「きれい・・・」
背中から小さな声が聞こえ俺は肩越しにミラを見た。そこには銀色の髪を靡かせて朝日に照らされる少女の綺麗な横顔があった
「・・・あぁ」
今のミラの感想は海に対してのものだが、俺の言葉はミラ本人に向けてのものだった
「ねぇ、クルス」
「うん?」
一拍空いてミラが話し始める
「クルスは、私を置いてどこにも行かないよね?」
「当たり前だ」
「どんなに危ないクエストでもきっと帰ってくるよね?」
「もちろん」
俺の腰にまわされたミラの手に力が込められる
「私、不安なの・・・、いつかクルスがいなくなるんじゃないかって。お父さんを探しに行っちゃうんじゃないかって」
確かに俺は親父に会いたい。あって、一発殴ってやりたい。だが、ミラを、妖精の尻尾を置いてどこかへ行くなんて考えられない
「大丈夫だ。俺はどこにも行かない」
そういうとミラの手から力がふぅっと抜けた
そして規則正しい寝息を立て始めてしまった
「・・・眠かったのか?」
俺は振動対策してあるバイクから生まれるわずかな振動までも全て喰らいミラを起こさないように配慮した
「着いたな」
港に着くと何やら上流階級の貴族がぞろぞろと船に乗り込んでいた
その少し手前には何やらそわそわした落ち着かない男爵がいた。おそらく依頼人だろう
「ミラ、着いたぞ」
出来るだけ寝起きが良くなるように少しだけゆする
するとミラは跳ね起きた
「はう!?」
「おはよう。着いたぞ」
「えぇぇえ!?嘘・・・」
残念だが嘘じゃない
「折角のチャンス・・・」
確かに来る途中の海はきれいだったな。眺めとしては最高だ
「ミラ、時間が合えばまた乗せてやるよ(バイクに)」
「本当!?嬉しい!(クルスの後ろが)」
二人の考えがずれているとは露知らず依頼人のところに向かう
「依頼を受けた妖精の尻尾だ。あんたが依頼人か?」
「おぉ!お待ちしていました!」
握手を求められたのでしぶしぶ右手を差し出すと手をぶんぶん振り回された
「ありがとうございます!!実は今日のオークション、ちょっと訳あり客が多くて・・・」
「訳あり?」
ここで話すのもなんですので・・・と言われ、近くの喫茶に案内された
「では、改めて。私が今件の依頼主、ケビンと申します」
さすがはオーナー。立ち振る舞いが違う
「今回のオークションには訳あり、こう言ってはなんですが、親の七光がいまして・・・」
成程、やっかいな客だ
「しかも、それなりの魔導士の護衛がありまして、万が一のことを考え依頼しました」
「任せてください!私、いえ、クルスが何とかして見せます」
をい、俺任せかよ
「クルス・・・?ッてあぁ!」
突然手をたたいて何かを思い出したかのように目を見開く
「あの、覇界神!クルス・ハルバートさん!?」
「あぁ。覇界神ってのもクルスってのも俺だ」
そうでしたかぁと言ってケビンは胸をなでおろす
「でしたら安心ですね。クルスさん。万が一の時はお願いします」
「了解した。それと、港を降りた後の護衛ってのは?」
「そちらは、港に着いてから別の者から詳細をお聞きください」
そう言ってケビンは立ち上がった
「出港は午後3時ですので、それまでお二人でごゆるりと」
一礼して喫茶から出て行った
「ミラ、どうする?」
「?何が?」
「どっか遊びに行くか?」
即答だった
「あ!クルス!あれ見て!魚が水槽で泳いでる!」
ミラが指さしたのは水族館。入場は無料の観光地だ。ここの港では食用だけでなく観賞用の魚もよくとれるようでこうした水族館がいたるところにある
「いってみるか?」
「うん!」
中にはカップルばかりだった。しかもイチャイチャが多く若干混雑している
するとミラが恥ずかしそうな顔で手を差し出してきた
「・・・はぐれそうだから、だめ?」
薄暗いこの空間で肩と肩が触れそうな距離の少女からの切実なお願いを聞けない男子がいるなら見てみたい・・・
「いいぞ」
差し出された手を握る
「ふふ。クルスの手大きいね」
「まぁな」
水槽には一匹の魚が優雅に泳いでいる。その魚の少し後ろには同じ種類の魚が
「・・・ぁ」
小さな、か細い声が聞こえた
「あのお魚、強いね」
「ん?どっちがだ?」
ミラは指をさした
「追いかけているほう」
俺はもう一度魚を見た。・・・どちらかと言うと、前を泳ぐ魚に追いつけないか弱い存在に見えた
「だって、自分の力不足をわかってもあきらめないで追いかけ続けてる。とっても強いわよ?」
「・・・そうかもな」
ゆっくりと歩きながらいろんな魚を見た。足が生えている魚。体内のほとんどが水で出来ている海月・・・
どの生き物に対してもミラは興味津津で特にペンギンを気に行った
魚・・・じゃないがペンギンのコーナーが一番人気だった。所為もあり、ミラとはぐれた
「ったく、どこだ?」
ミラの髪はよく目立つ。人さえいなければにおいで居場所が分かるがここは人がおおすぎる
「ミラー!」
声をあげるが返事はない
「ん・・・?」
少し離れたところに何やらおかしな集団が見えた。決して身なりがおかしい訳でなく、集まり方が変なのだ。まるで誰かを囲むような・・・
「ってミラ!?」
囲まれていたのはミラだった
「面倒事かよ・・・」
俺はその集団に向かった
「なぁ、いいじゃねぇか?」
「いや!」
「ったくぅ久々の上玉、簡単に逃がすなよぉ」
ゲスだな
俺は一人のごろつきの肩をつかんだ
「アァ!?」
「悪い。そいつ俺の連れだ」
すると周りの男は汚い笑いをあげた
「おいおいおいおい!ナイト気どりかぁ?」
「やめとけよ、おれら闇ギルド狩人の巣に盾つくなっての」
肩の紋章をちらちらとわざとらしく見せて薄気味悪く笑う
俺はため息をついて手を離した
「いまさらおびえてもおせぇんだよ!」
俺がつかんでいた男が黄色い炎で殴りかかってくる
「ざこ、が」
その拳を左手で受け止め、即座にみぞおちに拳を叩き込む
巨体が沈む
「な、舐めやがってー!」
「先に舐めたのはそっちじゃない」
俺の登場で落ち着いたのかミラが呆れた表情だ
「貴様らに魔法はもったいないな」
蹴りを避け逆に蹴りを見舞う。振り上げた足はそのまま垂直に振りおろされ、一人を屠る
背後からフックが来るが、風の動きでばればれだ。しゃがんでかわし、振り向きざまにアッパーを繰り出す。顎を揺らして脳震盪を起こす
そいつの腹を蹴り、ムーンサルト。そして背後の男を沈めた
「・・・まだやるか?」
地味に魔力を放出し殺気として見せつける
「ひ!」
腰を抜かしつつ残った男たちは仲間を引きずりながら逃げて行った
「ふぅ・・・ミラけがねぇか?」
「大丈夫。ごめんなさい」
なぜあやまる?
「だって私の所為で面倒事に・・・」
「気にすんな。どうせノーダメージだ」
落ち込むミラをみかねて俺はそっと頭に手を添える
「ほら、笑えよ」
手を軽く動かしてなでる。さらさらの髪が指の間から擦り抜ける
「・・・んっ」
ミラの顔が紅く染まる
「怒ってない?」
「こんくらい妖精の尻尾にしてみれば日常茶飯事だろ?」
少しミラが元気をとりもどし、笑顔を見せた
やっぱり、ミラは笑顔がよく似あう
「・・・ペンギンのぬいぐるみでも買うか?」
「うんッ!!」
前言修正 ミラは笑顔が一番だ
後書き
書き終えて思った
これ、なんの二次創作??ラブコメか!?ww
次回からはちゃんとした(?)妖精の尻尾です!(汗
ページ上へ戻る