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夢遊病の女

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第二幕その九


第二幕その九

「わかったね、それで」
「わかりました。それじゃあ」
 伯爵のその言葉に頷いてである。彼は今は指輪をしなかった。そうして橋の前に向かった。それは彼だけでなく皆が続いていた。
 こうして皆で待つ。彼女は橋を無事に渡り終え待っているエルヴィーノの前まで来た。
 するとであった。エルヴィーノがアミーナにようやく声をかけたのだった。
「アミーナ」
「私を呼ぶのは?」
「僕だよ」
 この上なく優しい声をかけた。
「僕だよ、エルヴィーノだよ」
「エルヴィーノ?」
「目を覚ますんだ」
 こう彼女に告げるのだった。
「いいね、今ここでね」
「エルヴィーノ・・・・・・」
 彼の名前を聞いて少しずつ意識を覚ます。その彼女が見たものは。
 今自分の指に指輪を入れる彼女がいた。彼女は確かに指輪をしたのである。
 それを見たアミーナはまずは自分が見ているものを信じなかった。しかしそれを見てゆっくりと、だが確実な声でこう言ったのであった。
「これは・・・・・・夢では」
「夢じゃないよ。僕は君のことがわかったんだ」
「私のことが」
「そう、貴女は」
 彼の横にいる伯爵が言ってきた。
「潔白だ。そして」
「そして?」
「病気なのです」
 このことを彼女にも話すのである。
「夢遊病なのです」
「夢遊病?」
「眠ったまま歩いたりする病気だよ」
「それだったのよ、あんたは」
「そうだったんだよ」
 村人達もまた彼女に話した。
「実はね。それだったんだよ」
「それで今朝あの部屋にいたのよ」
「伯爵様の仰る通りだったんだよ」
「そうだったの」
 彼等に言われてあらためてそのことを知ったアミーナだった。
「私は。それで」
「うん、だからね」
「あんたは何もしていないのよ」
「それはもう皆がわかったから」
「それでは私は」
「疑ったりして御免」
 エルヴィーノは今度はアミーナに対して謝罪した。
「けれどもうそれは」
「ないのね」
「もう絶対に君を疑ったりなんかしない」
 それを確かに言うのである。
「そう、何があってもね」
「そうなの。もう」
「君は誰よりも誠実で美しい」
 そしてこうも言った。
「だからだよ。絶対にね」
「有り難う、それじゃあ」
「これでいいのね」
 リーザはそんな彼等を見届けて呟いた。
「もうこれで」
「そうだね。ねえリーザ」
 アレッシオが彼女に声をかける。
「これからだけれど」
「これからのこと?」
「そう、これからは」
「少し待って」
 それは待つ様に言うのだった。
 
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